2022年ゴールデンウィークとくべつ企画 身近な絶景 2022年5月3日

渋谷・桜丘町のビルの間に不思議な壁がある

渋谷・桜丘町に不思議な壁がある。

専門家と歩くシリーズ(「変わりつつある渋谷の跡を専門家と見て歩く」)でも案内したが、今回はできた経緯を推理して図にしてみた。
 

こちらは2022年のゴールデンウイーク「身近な絶景」特集の1本です。
わざわざ行くほどではないけど、友だちと通りかかったら紹介したい。そんな絶景ってほどではない乙な景色を掘り出します。一覧は記事末尾に。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:並木橋で馬と羊が対峙している

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いきなり現れるポリゴン

桜丘町の再開発地帯を抜けたところにこの壁はある。

渋谷駅に近い方から3つ

いちばん渋谷駅よりの三角の壁
中央にあるのがソリッドな薄型タイプ
そして駅から一番遠いところにあるのがまた三角タイプ。

エキサイトバイクのジャンプ台のようなカクカクした塊が都会に現れるのがおもしろい。
先日の記事(「変わりつつある渋谷の跡を専門家と見て歩く」)で千葉工業大学教授の八馬智さんとどうしてこの壁ができたかを推測したが、その内容を図で描いてみたい。

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まずここはどういう地形なのか

ここは高台の端っこにあたる場所で急斜面になっている土地である。

スクランブルスクエア54階から撮った写真に説明を書き加えたものがこちら。 

線路沿いには低い道があり、ビルを挟んだ向こう側に高い道が通っている。
ビルは低い道を1階にして建っており、高い道に面している部分は2~3階になっているようだ。 

断面図

もともとこのような高低差がある地形なのだ。
これを元に推理した図がこちら。

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壁ができるまで物語

むかし、高い道に面して家があり、低い道には擁壁があった。
ある日、1軒(か数軒まとめて)がビルに建て替えた。ビルにしたとき低い道を1階として、擁壁を削ったのじゃ。
すると隣もビルにした。そのビルも擁壁を削ったので、互いに削った間に壁が残ったそうな。

この壁が現在の壁ではないだろうか。 

これがそれじゃないですかねえ
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古い空中写真で擁壁を見る

擁壁を豆腐のように切ることができるのかは不明だが、昔の航空写真には擁壁の上に家があるようすがおぼろげながら写っていた。

1975年・国土地理院撮影の空中写真(1975年撮影)に筆者加筆

線路の近いところまで民家と植物がある。擁壁の上にあった家々ではないだろうか。4年後の航空写真だと擁壁の姿が変わっている。

1979年・国土地理院撮影の空中写真(1979年撮影)に筆者加筆

1979年になると擁壁の一部が削られて低い道が広くなっている。さらに5年後は現在の姿に近づいている。

1984年・国土地理院撮影の空中写真(1984年撮影)に筆者加筆

1984年になると壁らしきものが見える。また、建物の影が伸びているのでビルが建っていることが分かる。
1975年から1984年のあいだに擁壁は削られたようだ。沢田研二がTOKIOを歌っているころに壁が現れたのだ。

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4年前にも壁の形が変わっていた

ストリートビューでは2018~2019年にもこの壁が一部削られていることが分かる。

2018年

2019年

道路拡幅のために壁の一部が削られている。

一部を削るなら全部取っちゃえばいいのにと思うのだが、そうしなかったことを見るとビルを支える大事な礎になっていたりするのだろうか。

東京の開発が生んだ巨大なオブジェ。経緯を考える楽しさを与えてくれる絶景である。

 身近な絶景 

友達と歩いてるときに「ねえここの電柱珍しくない?」って見せるような、よく見るとおもしろい景色をとりあげます。あえて「絶景」と呼んでみました。

2022年のゴールデンウイークに集中的に集めて、そのあとは少しずつ追加しています。

 

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