まずこの記事は前回の散歩の記事のつづきである。
参考『日本史研究者と街を歩くとどれだけへぇへぇ言わされるのだろう』
読んでなくても楽しめるのだが、ざっくり振り返ると戦国時代の世田谷は吉良氏という家柄の良い武家が治めていた。戦国時代は実はバリバリの身分制なので家柄だけでブイブイ言わせてた。といったところだろうか。
ふしぎ発見!方式になりました
記事は好評だったのだが反省点もある。動画を見てもらえないのだ。しまった。試食コーナーで大盤振る舞いしすぎた。
なので今回の記事は動画を見て答えがわかるようにところどころクエスチョンにした『世界ふしぎ発見!』方式で実験的にいくのでお付き合いください。
動画自体は一番最後に置いているので気になる方は先にそちらを。
「案外新しいです」と谷口先生が言う豪徳寺に入ってすぐある三重塔は平成18年建造。ものすごく歴史があるように見えて14歳くらいです。
豪徳寺といえば招き猫伝説。井伊直孝が猫に招き入れ館内に呼ばれたとされているが…ここで衝撃の事実は動画にて。
「歴史は楽しんだもの勝ち。武器として使えると思います」と谷口さんから。歴史スポット最大の成功例ともいってしまってもいいのではと思えるこの猫の量。
この豪徳寺で見たのは井伊家のお墓。ふだんなら「ふ~ん、どこがおもしろいのだろう?」となるような場所でも歴史の先生と行くとすごい。
ここには江戸時代の井伊家の代々の当主の墓や側室やお付きの者などさまざまな人が眠っている。ここで見るべきは身分制。墓によって前に出る/出ない、高さや大きさなど身分によって扱いが全然ちがっている。
幕末の大老井伊直弼は井伊家の最後の方の当主でもあるし一番立派。ここでクエスチョンです(言いたかった)。井伊直弼の墓だけなにがちがったでしょう?
戦国時代といえば下剋上。しかし下剋上とはいっても殿様を倒したとしてもまた別の殿様を連れてくるらしい。身分制は維持したうえで実力を奪うのが目的。つまり「バリバリ身分制」なんだという。
井伊家は彦根藩なので彦根にも墓がある。どうやって移動していたのだろう? という問いに「日本史って思った以上に移動すごいですよ」と谷口さん。領主ともなると領地は各地にあるし都にも行くので出張しまくりだそうだ。
谷口さんが世田谷の吉良家を研究して気づいたのは多摩川沿い、江戸湾の品川湊、横浜が支配下にあったこと。どうやって移動していたのかは動画にて。
「港超重要です、品川湊、江戸湊(今の日比谷あたりまであったそうだ)、横浜」と来てなにかに重なると思いませんか? その重要拠点が現代日本のあれに重なるとは!!
前回は世田谷を治めていた吉良氏の話だったが、その後どうなったか? 北条について小田原攻めで攻められた側の吉良氏は北条が負けたことにより家は千葉に移転。ただし「お前ら吉良家は三河にもあるから名前変えろ」となって蒔田と変えたそうだ。
家の名前の扱いがやっぱり現代の感覚ではない。「彼らからしたら私たちが非常識なんですけどね」と谷口さん。
忠臣蔵の吉良は三河の吉良家の人らしいが、あの騒動で吉良家自体つぶれてしまった。となると千葉にいる蒔田がどうなったか…?? 家の名前のこだわりようって、そりゃ田舎のじいちゃんばあちゃんに小うるさい人いるはずだな~。
ここぞとばかりに谷口さんに歴史の疑問を聞く。
日本の馬は小さかったから実は乗れなかったって本当? 弓って実は人に向けてというより雨を降らせるように上に射ってたって本当? これは谷口さんの見解だそうだが「弓馬の道、という言葉があるので馬には乗ってたと思いますよ」と。
刀馬の道ではないから刀より弓が重んじられたのだろう。上に射ってたかは動画を見てご確認ください。
ふつうの戦国武将もここぞというときには源氏とか平氏って名乗ってたって聞いたんですけど? と聞いてみると源とか平は名字とは別の姓というもので名字も姓もどっちも持っているのだそうだ。
天皇からもらった名前が姓で、名字は地名にもとづいたりする家の名前。なので豊臣秀吉はずっと羽柴秀吉でもあった。
ここでクエスチョンですが、藤原、源、平、橘、など姓に共通するものとはなんでしょう? そして真田丸でも採用されていたという豊臣秀吉の正しい読み方とは??
ちなみに農民は名字を持ってなかったというのは間違いで、あれは持ってたけど名乗る慣習がなかったのだそう。へぇ~
授業では「作られた伝統」という話をするそうだが、歴史の新しい/古いは案外わかりにくく、え? これが新しいの? というものがけっこうあるらしい。
たとえば二礼二拍手一礼。「これが意外と新しいんですよ」と谷口さん。こりゃ別にしなくてもいいっかなとなるかどうかはあなた次第です!
初詣も新しい歴史だそうでおもしろい研究があるようだ。そして逆に古いというのが谷口さんが教えてくれたあの催し。中世武士がすでにやっていたとは…
吉良氏のお墓は井伊家と比べて狭いし小さいし中世風の墓石。ただし中世の武士団というのはだいたいこれくらいだそうだ。墓が大きくなっていくのは江戸時代に大名として権力が確立されてから。
この勝光院は吉良氏が建てたお寺。戦国武将がなぜお寺を建てるのだろう? 供養のためだったり、あとお寺から建ててほしいと頼まれて建てるパターンも。
下からの要望で動かされていたというのが戦国武将についての最近の研究での流れだそうだ。お寺も建てるし頼まれて戦争もしなくてはならないし、と。
その流れで大河ドラマの戦争のはじまり方の描き方も変わってきているらしい。村同士の小さないざこざがそれぞれ上の殿様にお願いして争いになり、今度はそれぞれより大きな大名にお願いして戦争になる。そんな戦争が日本史ではたくさんあるらしい。
大名が実は下の人からの要望で動かされていたというのが最近の研究だそうだが、とはいえ野心を持ったあの残酷な武将の側面もなかったわけではなく「研究は振れるのでまた変わると思います」と谷口さんは言う。
事実は変わらなくても解釈が変わるし、説明が変わる、そうするとストーリーが変わるという。永遠に研究がつづきそうだ…
上町駅からスタートして、世田谷城、豪徳寺、世田谷八幡宮、勝光院、とまわってまた上町駅に帰ってきた。1時間半ですべて回れる世田谷吉良氏めぐりはめちゃくちゃコンパクト。
とはいえ、勉強せず手ぶらでいくと招き猫買って終わりだったろう。日本史研究者と歩くとここまで濃い散歩になるとは… また連れていってもらいたい
さあこの動画を見て3倍へぇへぇ言おう!
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