特集 2022年5月24日

専門家と街の接着剤を見て歩く

都市の視界のどこかしらには接着剤がある。専門家に一から説明してもらった

パッと見える視界の中に絶対とは言えないまでもほぼ確実に存在するものがある。空気や水、都市においては接着剤もその一つだろう。専門家と一緒に街を歩くシリーズ、なんと今日は接着と接着剤を見て歩くのである。

動画を作ったり明日のアーというコントの舞台をしたりもします。プープーテレビにも登場。2006年より参加。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

50年接着剤メーカーにいる専門家と歩く

今回一緒に渋谷を歩いてくれる木村修司さんは接着剤メーカー・セメダイン勤続50年超の最古参社員だそう。検索をすると「接着剤博士」という異名まで出てくる。 接着剤について聞くうえではうってつけの方である。

一方、不安もある。街の接着剤を見ると言ってもそんなに話すことがあるのだろうか。違いが微妙すぎやしないか。だが聞いてみるとおもしろい話がたくさんあった。

セメダインの木村修司さん(左)デイリーポータルZ林雄司(右)

ビルのガラスは接着剤でついている

渋谷の駅前からスタートです

林:たとえばこの景色で接着剤使ってるところって考えると…。
木村:いっぱいありますよね。たとえばあそこの新しいビルがガラス張りでしょ。あれ全部、枠に接着剤でくっついてる

もちろん枠があってですが、そこに接着剤でガラスがついている

林:あれ接着剤なんですか! 大丈夫なんですか?
木村:大丈夫なんです。アルミサッシか何かだと思いますけど、枠とガラスはしっかりと接着剤でくっつけてパネル化して貼り込んでる。
林:ネジが見えないですもんね。
木村:ガラスのパネルの間もシーリング材という接着剤の一種で防水を兼ねて貼ってます。これは大変な量を使ったと思います。
大北:どのぐらいの量なんですか?
木村:何十トンかわからないぐらいですね。
大北:トン!
林:なんていう接着剤ですか?
木村:シリコーン系の接着剤。固まったらゴム状になる。電子レンジでチンする用のふにゃふにゃした容器、あれがシリコーンなんです。あれとベースは一緒。
林:地震がきたらビルのガラスが割れたりするんですか?
木村:割れないようにそういうのを使ってるわけ。これだけの高層ビルになると免震構造というのをとってるから、大きく揺れる。揺れたときにガチガチに固めた接着剤だとヒビが入ったり亀裂が入ったりしちゃうんですけど、シリコーン系ってゴム状だから柔軟に動いてくれる。歪(ひずみ)を全部吸収してくれるのですごくいいわけです。
林:接着剤がはがれることはない?
木村:ない!! 
林:すごい断言でしたね
木村:だから、ガラスは落っこちてこない。

接着剤の柔らかさってなんだ

大北:硬い接着剤もあるわけですか?
木村:あまり柔らかいのを使うとまずいという場合もあるので、硬い接着剤もたくさん使われてます。たとえばこういうICカードはICチップが接着剤でくっついているんですけど、柔らかすぎるとICチップが壊れちゃう。かといってカチンカチンだと耐えられない。硬さのバランスが難しい。

ICカードにチップがついてますよね?と木村さん

大北:ビルが揺れるときには柔らかいほうがガラスは割れませんでしたよね。ICカードを改札に何回も叩きつける衝撃のときは硬い方がいいんですか?
木村:衝撃も柔らかい方がいいんですけど、たとえば大きなタイルの床なんかの場合、あまりしなると今度はタイルが割れちゃう
林:柔らかいとICカードが割れちゃうんですね。
大北:衝撃もそれぞれ違いそうですね、大変そうだ。

テープも接着剤なんでしたっけ?

接着剤と粘着剤がある

大北:テープも接着剤ですか?
木村:テープも粘着剤という接着剤を使ってますね。
林:テープの接着剤はテープメーカーが作ってるんですか。
木村:そうです。接着剤メーカーも糊だけ作って、テープメーカーに納入したりしますね。このネバネバがいい効果を出す接着剤なんです。感圧型接着剤という。ギュッと押し付けてやると圧力に応じてくっつくという接着剤です。
大北:押すとくっつく。そう言われてみたらテープってそうか。
林:それは便利ですね。
木村:剥がせるというところがまた特徴で。

大北:接着剤の定義ってどういうことになるんですか。
木村:ふたつの材料を貼り合わせて、ある強度をもたせるということなんですけど、定義がちゃんと国際規格でも決まってますから。
大北:ごはん粒でくっつける場合は?
木村:それも大きな意味では接着剤なんですよ。だけど、今合成系の接着剤を接着剤って言ってますから、天然物は糊の分類に入ります。
林:天然ものは糊か。

過去に屋外広告を見た回がありましたが看板について

林:看板に貼ってるのも接着剤ですか?
木村:粘着剤の強力なやつです。ある時期が来れば剥がさないといけないから、剥がせるタイプの糊ということで、粘着剤を使ってます。熱にも強い良い材料。マスキングテープとかセロハンテープとか使うじゃないですか。あれもいろんな種類の粘着剤が裏に貼ってある。

屋外の映像も今後接着剤の出番となるかもしれないらしい

木村:あれは液晶かもしれませんけど、フィルムみたいな曲がったところでも貼れるタイプのモニターがそのうち出てきますから。ペロブスカイト型の太陽電池(※軽く柔らかい太陽電池で新しい技術)というのがあるんですけど、そういうのが出てくると、接着剤が出てくる可能性がありますね。
林:貼るところが曲面かどうかは大きいんですね。
木村:大きいです。

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接着は外しにくい

大北:平面のパネルだとネジとかになってるんですかね?
木村:ネジ留めもけっこう多いです。小さいパネルだと接着で貼るケースもあります。ただ、接着って困るのがひとつ、剥がすのが大変なんです。ネジだったら外せるじゃないですか。

車のボンネットには板が貼ってあるらしい

接着剤に乗ってるようなもの

林:車は接着剤多いですか?
木村:車は接着剤の塊みたいなもので。
大北:接着剤の塊だったんだ(笑)
木村:たとえばボンネットとトランクには裏側にもう一枚鉄板があって。その間を50箇所くらい団子状にくっつけたやつでペタっと貼ってある。我社の接着剤ですけど、振動にも強いし、フレキシブルにできてる。ガチャッと閉めても大丈夫だし、強さはあるのでぶつかったときもかんたんには剥がれない。
林:確かに剥がれてるの見たことがないですね。
木村:フロントウインドウも接着剤だけでくっついてる
林:へぇ!
大北:だけで!

ガラスってそんなに強く張り付くのか

木村:ダイレクトグレージングという方法でくっつけているんですけど、世界中みんなこういうことになってます。
林:工業用の接着剤はどうやって塗っているんですか?
木村:以前はマルチエジェクターと言って、ドサッと何十点も出すノズルがついていて、現在はロボット塗布です。
林:乾くのは時間がかかるんですか?
木村:工場は加熱硬化型といって、塗装するときの熱を利用して、熱をかけて早めに固めてしまう。だから自動車ラインの中で固まるようにできている
大北:スピードが求められるのか、色んな条件があるんですね。

林:接着剤って何に入れて納品するんですか?
木村:だいたいがドラム缶かコンテナで入れています。
大北:接着剤ぱんぱんのコンテナ!
木村:現場のタンクにドンと入れて、そこからユーザーさんが細かく分けたりして。

湿度(しつど)に左右されていた

林:加熱じゃない、できた瞬間固まっちゃう接着剤もありますよね?
木村:湿度で固まるというのがありますね。我社の主力商品はそういうのが多くて。置いておくと固まっちゃうので密封状態にしとかないといけない。
大北:湿度が"高い"と固まりやすい?
木村:固まりやすい。低いと固まりにくい。
林:一般的なセメダインのチューブに入っているのも湿度で固まるんですか? スーパーXとか。
木村:あれは湿度で固まりますね。湿度が高くて気温が高いと早く固まる。
林:夏と冬で違いますよね。
木村:冬は遅くなるんです。湿度が低くて気温が低いので。
林:湿度が高いほうが固まるのは意外ですね。乾いてるほうが乾きそうな気がします。

木村:創業のときのセメダインCという商品は、シンナーで溶かしたものなので、シンナーが蒸発すると固まってくれる。シンナーは温度が高くて湿度が低いほうが早く蒸発します。ところがスーパーXというのは、化学反応で固まるようにしてあるから、湿度と化学反応して、ああいうゴム状に固まってくれる。
林:だから今はそんなにシンナーの匂いがしないんだ。
大北:シンナーくさくなければ湿度に左右されるやつですか?
木村:いえ、2液混ぜるタイプもあります。あれは主剤と硬化剤を混ぜた化学反応使ってますから、そういうのは湿度と関係ない。あとは木工用接着剤みたいに水溶性のタイプもシンナーのと同じで湿度が低くて温度が高いほうが。
林:水分が飛ぶと。

渋谷でロケをしてると出てくる大盛堂書店

木村:あそこに書店あるでしょ。本なんかも接着剤の塊みたいなもので
大北:また出た!
木村:背張りのところはホットメルトという接着剤をたくさん使っているので。
林:あの書店の中にはかなりの接着剤がある。車も接着剤ですしTSUTAYAのガラスも接着剤。
木村:建物もそうですよね。みなさん接着剤に囲まれて生きてる。

接着剤がなければ飛行機に乗れない

大北:車の相談されるときってすごいプレッシャーじゃないですか。安全の部分もあるんですよね。
木村:たとえばブレーキライニング(ブレーキシュー)と言って、ブレーキを押さえつけて、熱がかかる部分。すごい耐熱性の接着剤じゃないと使えない。
林:何百℃とかになりそう。
木村:最大手の車メーカーさんのそれをうちで戦後すぐからやってまして。
林:へえ~、たとえば飛行機も?
木村:日本はGHQの指令で長いこと飛行機やれなかったでしょ。だからアメリカのメーカーが強くて。飛行機はすごいですよ。ほとんどが接着剤です。
大北:ははは(笑)
木村:軽量化のため。昔の零戦みたいにボルトとナットと溶接で作っていたら軽量化できない。
林:接着剤のほうが軽いんですね。
木村:軽くて表面に凸凹が出ない。だから、空気抵抗が良いものが出来上がる。今もうなくなっちゃったけどジャンボジェットは400人乗りぐらいでしょ。あれも接着剤で作ってあるんだけど、昔のボルトリベット溶接で作ったら何人乗れるかっていうクイズがあって。
林:何人なんですか?
木村:0人です。飛ばないんです。重くて。
林+大北:へー!
木村:それぐらい軽くできて抵抗が少ないツルツルの面が出来上がるのが接着の良さ。
大北:良い~。

ガラスは枠に貼り付けられていて、間はシーリング材で防水かねて埋められています

建物の防水も接着剤で

林:ガラスが貼り付いてるのって接着剤ですか。
木村:これそうですね。こっちの間はポリサルファイド。
林:また違うところですか。
木村:また違うタイプ。シーリング材(ポリサルファイド系)っていって防水を兼ねたタイプ。これも接着なんですよ。これが伸び縮みするもんだからよくくっついてないと防水が保てない。
大北:接着に接着を重ねてビルができてるんですね。
林:職人さんが入れるんですか?
木村:そうです。カートリッジっていうガンがある。職人技ですから素人さんがやると綺麗にできない。
林:接着剤も職人の世界がある。

枠の内側にガラスがはめ込まれて接着されている

大北:こういう枠で留まっているんですね。
木村:向こう側のサッシとこっち側のサッシの間に両側に充填接着剤を入れて留めてあるから。それでひとつのパネルに構成してます。
林:雨大丈夫なんですね。
木村:全然大丈夫です。動きに対してもやわらかいゴム状の物質がフレキシブルに吸収してくれるので。あまり硬く固めちゃうとぽんと当てただけで割れる可能性がある。
林:コンビニに車がぶつかった映像でガラスが外れてるのは見たことがない。割れてますもんね。

接着でとまっているかネジでとめられているか

ネジに嫉妬する接着剤メーカーの人

林:こっちはネジですね。
木村:修理するようなときは接着ができないんです。こういうのは修理したいからネジとかボルトのほうが便利。
林:思っていたイメージと逆ですね。接着剤が一時的なものかなと思っていたんですけど、逆なんですね

大北:ネジで留まってるのを見たら、ちきしょーっていう気持ちはあったりするんですか?
木村:しますします(笑)。
林:するんだ(笑)。
木村:接着を外で使い始めたのは歴史が新しいので。
林:へえ~、どれぐらいなんですか。
木村:高さ5mぐらいまではある程度使ってよいというのは前からあって、我社で一番最初に外壁に使ったのは35年前の京王線の聖蹟桜ヶ丘という駅の百貨店の外側の回廊。そこに大きなタイルを接着だけで全部貼ったんです。それが日本で最初の例なんですけど。
大北:1980年代か、けっこう新しめの技術なんだ。

接着剤で街の景色が変わった

木村:一番多く使われるようになったのは、阪神淡路大震災で当社の接着剤で使った外壁タイルがほとんど損傷なく落っこちなかったこと。
昔のモルタルセメントでつけたタイルがかなり落っこちちゃったので調査団がこれは大変だって、研究が始まって。官民共同研究ってお国と我々メーカーで一緒にやったら、接着剤のほうがけっこう保つじゃんって話になって。それから10年後くらいかな。JISに接着剤でも使えるっていうことが規定されまして。現在では外壁にタイルを接着剤で貼ってよい。

接着剤を使った外観、今のビルはこんな感じ

林: 80年代、90年代、あと最近のでビルの外面のイメージが変わってきたのは接着剤によるところですかね。
木村:そういうのもありますね。特にタイル系とかガラス系は接着剤が多くなってきましたから。
林:今のビルはつるつるですよね。
木村:昔は外壁塗装みたいな感じですけど。
林:こっちは1970年代ぐらいの。ちょっと古いですよね。あまり接着剤を使ってる感じが。
木村:ないですね。

こういうちょっと古めかしい建物は接着剤を前提としてない

木村:パネル接着というのもあって、タイルみたいなやつね。あれを裏側を接着剤で貼ったパネルを貼り込むという方法が増えている。
大北:建築の人と歩いたときに家が大体サイディングボードになったって話になりました!

冷蔵系の宅急便の荷台も接着剤だという

林:むしろネジを見るほうが珍しいですね。タクシーとかああいう看板とか。
木村:この宅急便の車なんかも。裏側のパネルとの間に断熱材が入ってるんだけど、それも接着。あるいは板そのものを強力な接着剤でつけてるケースもある。
大北:クール便の荷台のとこが。
林:この中の内側の箱と外側の箱の断熱材が。
木村:箱を接着するのだと自販機とかエレベーター。エレベーターなんかかなり接着でくっついてる
大北:内装の何かをくっつけているんですか。
木村:外側と内側二枚の板がありますから、それをちゃんと接着で構造的に強化するためにくっつけて。軽くできるのと表面にあまり凸凹出さないとか。
林:ネジよりは軽い?
木村:軽いですね。

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歯磨き粉の技術

でこぼこしたところによくくっついている

林:よくこんな凸凹したところに付きますね。
木村:大丈夫なんですよ。粘度が高いというか、歯磨き粉状の設計にしてあるので、凸凹でもいけるようにしています。チクソトロピーっていう技術がありまして、チューブから出すときはやわらかく出て、それが出し終わると粘度がぐっと上がってずれない。壁面でもぎゅっと。
大北:歯磨き粉って出るときと止まってるときと違うんですか?
木村:チクソトロピーっていうのは圧力をかけると粘性が落ちて低い粘度になるから出しやすい。出た後は、何も圧力が加わらなくなると粘度が上がってずれない。だから、歯磨き粉をブラシに付けても落ちてこない。
林:歯磨き粉ってそんなにすごい技術だったんだ。
木村:あのままの粘度で作っちゃったら出しにくくてしょうがない。
林:言われてみたらそうですね。

歯磨き粉はもったりしてるが、ぐぐーっと圧力があるとどろーっとなるという技術だそうだ

木村:接着もそういうのがある。壁面に使うときは特に。
林:その接着剤は一般向けにもあるんですか。
木村:あります。スーパーXは粘度が変わる時間をちょっとずらしてるんでやや流れるんです。
林:固くなるまでの時間もコントロールできるんですか?
木村:ある程度できる。そういう技術を使った接着剤もありますので。スーパーXデュオという新製品が出まして、スーパーXを塗って、お隣にもう一個のやつを塗って、合わさったところが瞬間的に反応して、ギュッと動かなくなる。
林:それめちゃくちゃ便利そうですね。
木村:残りはスーパーXみたいにじっくり固まって耐久性がいい。水にも強い。
大北:最初からバチンとくっついてくれるんだ、いいとこ取りだ。
木村:仮止めのテープとかいらない。面白い接着剤ですよ。
大北:……面白くない接着剤ってのもあるんですか?
木村:あるんですよ。あまり面白くないのが。
大北:(笑)

面白くない接着剤

5大くっつかない素材がある

林:全然つかないペットボトルみたいな素材とかもいけるんですか?
木村:世の中にくっつかないのが5つぐらいありまして、そのうちの2つがポリエチレンとかポリプロピレン。くっつかないんですよ。
林:セメダインさんの接着剤でもくっつかない。
木村:くっつかない! PPXっていう商品がひとつだけあるんですけどね。それ以外の商品では世の中的にはくっつかない。ポリプロピレンはバケツとかああいうところに使ってるやつ。あとフライパンに使うフッ素樹脂。あれもくっつかない。
大北:つるつるですよね。

フッ素樹脂加工されたシートでクラッチバッグを作ったことがある。つるつるすぎて持てなかった

木村:ポリアセタールやシリコーンゴムも大抵はくっつかない。ただシリコーンゴムはうちのスーパーXでつきますけど。
林:業者の人がくっつかない素材で看板作っちゃったりとかは。
木村:あるんですよ。そういう相談が。
林:なんでそんなんで作っちゃったんだって。

接着は分子同士の引っ張り合いだった!

大北:でもポリプロ系は世の中で一般的な素材ですよね。
木村:多いです。硬いものならライターであぶってやる裏技はあるんですけど。
大北:なんであぶるんですか? 凸凹をむりやり作るため?
木村:専門的にいうと極性がないから。電子の引っ張り合いのプラマイがない材料なんです。
林:接着剤が付く付かないって…。
木村:電子の引っ張り合いの話。
大北:……電子の引っ張り合いでついてる??
木村:我々含めプラスマイナスがどこかしらにあって、接着剤はくっつくようにプラスマイナスをはっきりとさせた材料を使ってる
大北:……プラスマイナスはっきり!?
木村:ところが世の中にプラスとマイナスを持ってない材料があって、さっきご紹介した5つ(ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアセタール、シリコーンゴム)は全然持ってない。磁石はプラマイでくっつくんですけど、磁石と反応しないタイプがまったくつかないのと一緒で、接着と材料はそういう関係がある。
大北:うお~!!
林:電子の話だったんですね。

ものは何でも分子でできていて、ぐっと近づいたときに引っぱり合う。接着剤を用いる「接着」にも何種類かあってそのうちの1つの形

木村:表面を熱で荒らしてあげて、分子構造を変えて、プラスマイナスを出してあげる。
林:物質を変えちゃうんだ。
木村:紫外線をうんと当てるとかね。薬品で長時間つけて表面だけを変えるとか、いろんな方法で表面を変えてあげれば。
大北:賢い伊東家の食卓…。

テープや粘着剤はずっとネバネバしっぱなし

大北:それってガムテープ※も同じですか? ペットボトルにくっつきますよね。
木村:ガムテープは接着剤と違って、粘着っていうネバネバでくっつけるという概念の商品なので、ポリエチレンでもネバネバ感が残ってる間はある程度くっつきます。ただ、他のものに比べればきれいに取りやすい。
(※ガムテープの本来は切手みたいな感じで接着剤にあたるらしいんですが、一般的に流通しているクラフトテープや布テープは粘着剤だそう)
林:粘着っていうのはネバネバでついて、その代わりに…。
木村:剥がれやすい。だけどネバネバが強いので比較的なんでもくっつく。
大北:ああ、テープだとガチッとは留まらないですよね。

なんでも接着剤になる

大北:ネバネバで付くっていうのと接着で付くというのは別なんですか?
木村:ちょっと違うんだよね。これ説明するとちょっと長くなる。でも、相手との距離がある距離に近づいたら必ず接着力が出てくる。
林:それは接着剤だから?
木村:なんでも。水でもくっつく。0.5ナノメーターっていう非常に小さい距離ですけど、物質同士が近づけば必ず接着力が出る
林:理論上そうなんですか? 水でも?
木村:水はものを近づけられるじゃないですか。水でくっつかないのはなぜかというと、ある程度はくっつくんだけど、液体だからひっぱると動く。接着剤として強度を出すためには水が氷に、固体になってくれないと困る。くっついて固体になると、固体同士がぎゅっとなるから。

液体だとずれてしまうので固体でとどまらないといけない。でも「ぐっと近づく」ためには液体で濡れないといけない。「液体→固体」になることが接着剤で重要っぽい

林:接着剤が固体になって、固体と接着するものの距離が短いというか、近いからくっついてる。
木村:そうです。たったそれだけの原理です。だから接着剤はほとんど液体でしょ。なぜ液体かというと距離を近づけさせるためには液体でないと無理
林:液体で近づけておいて、後で固体になる。それが接着剤
大北:「くっつく」って何かといったらめちゃめちゃに近づいている。めちゃめちゃに近づいたら「離れない」ものなんですね。……あれ? よくわからなくなってきた。AとBをくっつけたくて、間に1センチぐらい接着剤がもられていてもくっつきそうなイメージがありますけど。
木村:Aと接着剤がまずくっついて、Bと接着剤がくっついて、接着剤同士の分子も固まるから。
大北:ああそういうことか。
林:接着剤のせつは密接の接。
木村:なんであの接を使ってるかと言ったらそういうことです。あの言葉を使ったのもうちの創業者の今村善次郎っていう初代社長が、世の中に接着剤を。
林:接着剤って言葉はセメダインさんが作った?
木村:作ったかどうかはわからないですけど広めた。

雨の中、接着剤を説明していただきました…

薄く塗るのと厚く塗るのの違い

大北:薄く塗れとか厚く塗るとかあるじゃないですか。あれはどういう理屈で考えればいいですか。
木村:薄いと分子が近づいてるから、引っ張る力が強いのでかえって強度が出る。ところが、接着剤を厚くしちゃうと接着剤の分子同士がふにゃふにゃ動いちゃうから、剥がれにくいけど引っ張ってやると分子同士が切れちゃう。強度が弱くなる。だから、強度を上げたいときは薄くする。だけど、薄くすると今度は剥がす力に弱い。だから、ちょっと厚みを出してあげて、剥がす力にも強くする。これがスーパーXの原理。簡単に剥がれない。
大北:あー、薄くしろ厚くしろっていうのは耐久性の話でもあるんですね。
木村:耐久性を重視する場合にはやや厚め。ちっちゃなものにちょっとつけてやりたいときは薄くして硬く固めてあげる。使い分けをしてもらったほうがいいですね。
林:接着剤をわかってなかったです。

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