特集 2021年8月27日

木の寿命は葉の量と幹の太さで決まる~樹木の専門家と街を歩く

樹木医でもあり植裁の専門家である赤尾さんと渋谷の街を歩く

専門家と街を歩くシリーズ、今回は植物の回だ。とはいってもすでに植物図鑑の編集者、そしてハーブ王子と街を歩いている。今回はそこからさらに狭めて樹木である。樹木医であり、植裁の仕事をしている赤尾さんと街を歩く。

私達は街に暮らすうえで緑をやたらに気にする。緑が豊かだとか緑が少ないとか。私達が緑と呼ぶこの木について一から教えてもらった。

動画を作ったり明日のアーというコントの舞台をしたりもします。プープーテレビにも登場。2006年より参加。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

樹木医さんと歩く

小岩井農牧株式会社東京緑化支店の赤尾正俊さんと歩くのは東急東横線・田園都市線のある渋谷駅。赤尾さんの肩書で目につくのは小岩井という名前であるがその豆知識ですでに1へぇあった。

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右が樹木医でもあり植裁の仕事をしている赤尾正俊さん、左はデイリーポータルZ林雄司

なんで小岩井が?

大北:小岩井は牧場ですよね?
赤尾:岩手にある牧場の会社なんですが雫石というところに小岩井農場があって。私は東京で仕事をさせていただいてます。
林 :小岩井って岩崎(家)ですよね。
赤尾:よくご存知で。日本鉄道会社の小野義眞、三菱の岩﨑彌太郎
の弟の岩﨑彌之助、鉄道庁長官の井上勝、3人で作った会社です。
岩手県雫石に、東北本線で切り拓いた田畑・山林の面積を買い求め農場を作ろうとしたそうです。しかし、岩手山の麓で土地が悪く、一度はあきらめるのですが、岩﨑彌太郎の息子の久彌が土壌改良を行ない、酪農と林業を主体に経営することを決め、ここまでやってきたという流れですね。なので、小岩井は3人の頭文字をつなげた。
大北:岩崎弥太郎の岩なんだ。
林 :岩がすごい。三菱が出てきた。
大北:岩手の会社が東京で仕事してるんですね?
赤尾:三菱関係のビルのまわりの植栽とかをぼくらは東京でやっています。
大北:へぇ~、そういうことなんだ!

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ハチ公前広場からスタートです

植裁って? 何をしているの?

大北:そもそも植栽の定義ってなんですか?
赤尾:人為的に植えたものということで考えていただければいいのかなと。
林 :じゃあこの辺にあるのは全部だ。大阪に比べて東京は木があるってよく言いますけど、東京って木が大きいですよね。
赤尾:そうですね。この駅前でこれだけ人出があるのに緑をあえて残すというのは人が意識して計画してますよね。ないほうが歩きやすいは歩きやすいですけど。
大北:あ~、たしかに。計画した結果なんだ。
林 :ないほうが歩きやすいし、ほっといたらないですよね。
赤尾:維持するにもお金がかかるので。手入れはかかるし。
林 :どれぐらいかかるんですか?
赤尾:この1本維持するのに年間100万かかるかと言ったらかからないですけど、作って終わりじゃなくてメンテナンスが必要ですし。
林 :メンテナンスというのは枝を切ることなんですか?
赤尾:主にはそうですね。
林 :水はあげなくていいんですね?
赤尾:ここまで根付けば。水を吸える根が張るまではやらなければいけない。
大北:こういうところって、何かしらの水はあるんですか? 下は土になっているんですよね。コンクリートの下は。
赤尾:見た目以上に(根が)張っているんですけど。壁があって突き破れなければそのマス(※)の中で幹を伝わる雨とか、どこかの排水溝に忍び込んでたりとか。そうやって生き延びてたりもしますね。根っこが入っちゃって(排水溝の)水が通らなくなってたりとかもあります。

※植栽と土壌が入っているコンクリート枠。「植栽枡」「植込み」「花壇」とも表現する。

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渋谷区と書いてあるからこれは渋谷区の植裁だろうと。都道沿いの街路樹は都の植裁であることが多い。

街の記憶から植裁を決める

林 :植える種類はどう決めるんですか? この雰囲気だったらとかそういう選び方ですか?
赤尾:設計する側としたらそうですね。他にも街の記憶とかから引っ張ってくるときもありますし。
林 :過去そこに生えていたもの?
赤尾:言われとかもありますし…単純にデザインが洋風ってなったら、コニファーみたいなとんがった木を植えたり。見かけから入るときもありますし、ストーリーから入るときもあります
林 :最近ヤナギって見なくないですか?
赤尾:そうですね。銀座と皇居の回りはよく見ますけど。おばけを連想したりとか、設計に入れづらいというのはありますね。他にない形をしてるからいいんですけどね。
林 :へえ~、おばけのイメージが。新しいビル立てて周り全部ヤナギとかないですね(笑)
大北:設計する人たちが木を選ぶんですか?
赤尾:建物を設計する建築側にランドスケープ、景観を作るチームがいることもありますし、大枠のデザインだけ決めて最後は僕らみたいに植栽の業者に来ることもある。いろいろですね。
林 :この木は無理ですよ、みたいなのはあります?
赤尾:あります。でもそれが僕らの存在意義なので。デザイン目線で入る人には僕らのできない発想があって逆に面白い。僕らは木を知りすぎているので。現実にここでは無理だよねとか、そういう意識が強くなりすぎちゃう。
大北:無理というのは育たないこと?

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この木はグーグルストリートビューの10年前と見比べると3~4mくらい伸びてる

木の大きさは根っこの範囲に影響される

赤尾:そうですね。あとは大きくなりすぎるというのもありますし。
林 :グーグルマップのストリートビューで10年前の景色から見ると、けっこう木って大きくなってるんですね。ここも見るとこの木が10年前より伸びてるんですよ。
赤尾:すごく調子がいいと、1年で1m以上伸びるんですよ。これだけ土が少ないと水が減るのでそんなには伸びてないんですけど、それでも30〜40cmは伸びるんです。
林 :10年経てば3mぐらい伸びるんですね。
大北:木によって何mぐらいまでって決まってるんですか?
赤尾:ケヤキだと20mとか。根っこの範囲に影響されるので。いい例が盆栽ですよね。あれはいじめていじめて根っこも切ってあの大きさで維持しますよね。小さくても100年とか。

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この下は根が大きく広がっているはず。ケヤキの木

誰が植えている?

大北:植栽はだれが業者に頼むんですか。
赤尾:土地の所有者ですよね。道路の街路樹となると道路管理者。国道であれば国だし、都道であれば都。
大北:場所で判断するんですか?
赤尾:役所に管理図面があるので。ここは渋谷区って書いてあるので、渋谷区の所有なのかなって気はしますけどね。
林 :この辺は区が管理してるんですね。歩道にあるから。区のものですよね。
赤尾:最近だと木に番号が付いてます。通し番号を付けてたりするんで。
林 :これはなんですか?
大北:ケヤキです。
林 :ここにケヤキは無難な感じですか?
赤尾:表参道とかの並木で有名なケヤキですね。
林 :丈夫なんですね。
赤尾:そうですね。またよく伸びるし、形もきれいなので、街路樹の目的として日陰を作ったりとか、排気ガスが広がらないようにするとかあるんですけど、夏は葉っぱがあって、冬に葉っぱがなくなるケヤキは寒い冬には日差しも入ってちょうどいいところですよね。

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道路沿いの樹木は排気ガスを止める役割もあるそう。なるほど~

大北:なら街路樹は全部ケヤキでいいじゃないかっていう話ではないんですか?
赤尾:植物を知ってると飽きちゃうので、あの路線はイチョウにしたいよねとかあるんですよね。あとはいま生物多様性とかもあるので。いろいろな生き物が生育できる環境を考えたら、全部一緒にするのはあまりよくはないですよね。
林 :世田谷区の川を埋め立てた遊歩道が2mか3mおきにキンモクセイが植えてあって、秋はすごい匂いになるんですけど、あれは明らかに意図があるなって。
赤尾:そうでしょうね、秋を感じさせたいという。あれも芳香剤の匂いだからクレームが来ることもあるんですよね。人間の香水と一緒でいいと思う人はいいし。

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のんべい横丁にはおばけを連想させると話題に上ったヤナギがあります

飲み込むヤナギと木の寿命

林 :あ、ここヤナギですね。
赤尾:ヤナギは風情ありますよね。台風とかで倒れやすいので、植えないのはそれもあるのかもしれないですね。
林 :倒れやすいというのは確かにイヤですね。
赤尾:ここはあまり風を受けなそうなので。これ植枡から半分はみ出ちゃって大変なことになってますね。

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木が穴からはみ出ている。これは乗っかってるのではなく飲み込みにかかっている

林 :大変なんですか?
赤尾:この子の本来の根っこってこの中で収まってるんですけど、木って年輪が、年々外に拡がる。必ず。それができなくなるイコール死なんです。だから必死になって押すんですけど、これは壊れないし無理だってなったら障害物を飲み込みにかかるんです。それで飲み込み始めている。
大北:これ以上広がらなかったら死ぬんですか?
赤尾:死にますね。
大北:そこで止まるんではなくて?
赤尾:常に更新し続けていく。毎年1cm太るとしたら1cmを作るエネルギーって葉っぱから得た光合成の糖分とかで作るんですけど、どうしたって理屈的に年々量が増えないといけない。直径が増えていくので。そうすると葉っぱの量が変わらなければだんだん目減りしていって、年輪が細かくなって、最後は死んでしまう。それが寿命が来るということ。
林 :直径が大きくなると年輪を1cm増やすのにすごくエネルギーがいるから。薄くせざるを得ない。
大北:えー!? 木の寿命って葉っぱとのバランスなんですか? この木はそもそも寿命何年というわけではない
赤尾:ないですね。例えば重力がほとんどなくて折れたりしなければ葉っぱをどんどん増やせて、水もどんどん吸えればたぶん無制限に大きくなる。日本の場合は台風でもバキッといったりするし、乾燥しやすい場所だとどこかで限界が来て上は枯れてしまったりとか。現実的には制限がありますが。

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ガードレールを飲み込む木、デイリーポータルZの過去の記事より

林 :昔デイリーポータルZで新宿の水道道路のガードレールが全部こうなってて。
赤尾:すごい。まさにこの状態ですね。押したいんだけど押せないから飲み込んでいく。こうなっちゃうと取れないんですよ。
林 :押したいけど1年に1cmだと、たしかに15年20年ぐらいでこうなりますもんね。
赤尾:こういうところって緊急事態なので。エネルギー注ぎ込むので1cm以上行ってるかも知れないですね。弱いところは急激に太りが早くなったりしますね。幹とか見てても妙に一箇所だけボコッて膨らんでたりすると、ここに空洞があって、太らせないと折れちゃうっていう反応があったりしたのかなって見ますね。

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これもケヤキだが、街路樹から飛んできたもの

街路樹じゃないケヤキもある

赤尾:これもケヤキですね。こぼれ種。どこかの街路樹から飛んできてここに根付いてる。勝手に生えてきたやつを、僕らは実生(みしょう)って呼んでます。ケヤキは面白くて、細かい枝が秋になると実をつけて枝ごと取れるんです。それがプロペラみたいに回転するので、風に乗って飛びやすい。鳥とかに食べられてって感じではない。自分で飛ばして。ちっちゃい実で。
大北:ケヤキって街路樹のイメージですけど勝手に増えてくんですね

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新しい商業施設であるMIYASHITA PARKに来ました。植裁の意図を聞きます

商業施設の植裁を見る

林 :こういうふうに新たに設計して植える場合って、(植物は伸びていくので)何年後に完成のイメージなんですか?
赤尾:それぞれの狙いがあるので、100年先に持ってくるのかわからないですけど、商業ビルだと50年で建て替えるとか、建て替えのプランがあると思うので、それにどうしてもしばられちゃいますよね。ここの場合公園なので、そんなに短いサイクルでは考えないでしょうけど。

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コナラとタブノキ。向こうがわを隠す目的だろうと

林 :これとかは明らかにまだ植えたばっかりですよね。まだまだ大きくなる予定?
赤尾:はい、能力的には。これはコナラっていうドングリがなる木、これはタブノキって言って20m30m級にさせようとすればなる木なんです。この間隔だと近すぎるので、そこまで大きくすることは考えてない。
林 :これで完成なんですかね。
赤尾:もうちょっと大きくなるぐらい。あとはその大きさを維持していく。
大北:大きさの維持は根をいじるんですか?
赤尾:植木はそこまでできないので、上だけを切っていきますね。
林 :この向こうの建物が見えなくなるぐらいが。
赤尾:それが設計意図だと思いますね。
大北:種類も全部わかりますか?
赤尾:そうですね。普通に植えてるものなら。

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エゴノキやこの下にもいろいろな種類が植わっている

赤尾:これはエゴノキっていって、実の外側にエゴサポニンっていう物質があって、石鹸の代わりになったりとか、潰して川に流すと毒流しと言って魚が上がってくるので、漁に使ったとか言いますね。これは日本の関東に生えてる木を選んでる気がしますね。
林 :けっこういろんな種類がありますね。
赤尾:後ろのやつを入れるとさらに。これはソヨゴっていう、葉っぱが風でそよぐからソヨゴ。
林 :いい名前。いっぱいありますね。
赤尾:あれはマサキっていう木ですし、これはシラカシっていう木ですね。下も入れたら種類がいっぱい。
大北:これは植栽の業者の人がやってそうって感じですか?

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イヌシデ、名前の由来は実にあるそうだ

赤尾:渋谷区なので、渋谷区から設計会社に委託すると思うので、ランドスケープの設計の人がいるんだと思いますね。これはイヌシデですね。しめ縄とかにシデっていう白い紙の、実があれに似たようなものが出るので。シデの中では特徴がないとかでイヌって言われてますね。あとはアカシデとかクマシデがあって、クマと比較してイヌって言われてるんだと思います。
林 :イヌはけっこう蔑称としてありますね。
赤尾:植物系ではだいたい蔑称ですね。

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もみじの紅葉ってどういうこと?

紅葉ってなに?

赤尾:これはイロハモミジですね。よく紅葉するモミジの代表。
林 :秋になると紅葉するんですね。
赤尾:秋じゃなくても新芽とかで、ぶつっと切られちゃってますけど、これはやばいと思って使わずにいた芽があったんですけど、急激に切られたから慌てて出して、緑の色素が間に合わなくて赤く見えちゃうんですよね。葉っぱ出そうって出しているので、赤い色だけ目立っちゃってる。
林 :光合成できない。

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やばいと思ってあわてて出したところ、緑が追いついていない

赤尾:本当は(緑色が)必要なんですけど、赤い色で紫外線から自分が死んじゃうのを防いでおいて、その後葉緑素を作っていくという。
林 :紅葉って秋になると葉緑素がなくなるんですか?
赤尾:そうですね。自分で葉っぱを落とすよって思った時にこの中で葉緑素が分解されて赤が目立ってくる。
林 :そもそも赤がデフォルト?
赤尾:中に入っているんですね。自分を守る色として。紅葉の時にはさらに合成されて鮮やかに赤くなります。
大北:へー、紅葉というのは、赤くなるんじゃなくて緑じゃなくなるってことなんですね。
赤尾:そうです。そう考えてもらえると。

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室外機の風がずっと当たるムクノキ

植物の生き死に

林 :室外機がいっぱいあるような環境は植物には厳しいんですよね。
赤尾:葉っぱは風が当たると乾燥しちゃうのでけっこうやられちゃいますね。
林 :まず葉っぱがだめになるんですね。
赤尾:ここよくがんばってますよね。ムクノキ。勝手に生えてきちゃったんだと思うんですけど。あそこにまるい実が付いてますけど、あれを食べた鳥がウンコしてこういうところに出てきたんじゃないかと。人間も食べられるんですけど。
赤尾:ムクノキは葉っぱがザラザラしてて紙やすりの代わりに、漆器を研ぐのに使っていたらしいですね。これで覚えます。触って。

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しわしわっとして元気がないのは室外機のせいかと

大北:しわしわっとしてるのは風のせいですか?
赤尾:この辺はそうでしょうね。葉がちぎれちゃってるのは。幹はフェンスを飲み込んで苦しそうですよね。
林 :すごいな、これ。金網飲んでるんだ。

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金網を飲み始めてるところ。手前に枯れちゃったところ

大北:年輪が増える時に金網にあたるんですか。
赤尾:あたる。押せないから巻き込む。何年か目には上も下も来てくわえこんじゃう。かわいそうですね。自然の山とか歩くとつるが巻き付いていて、つるに負けちゃうときもあるけれどつるを飲み込んでるパターンとありますけど、自然の中での競争、力がこういうところで生きてる。
林 :ほとんど切れそうですね。あそこの金網のところとか。
赤尾:くっついちゃえば中で一体化しているので。
林 :くっついてると中でまた管ができるんですか?
赤尾:縦方向の管が。水のやり取りはできるようになります。上下がつながれば。
林 :すごいな。
赤尾:金網が中に入っているだけですね。厳密には雑菌とか付いているのでそれを身体の中に入れた状態になるのでよくはないですけど。水がいかなくなって死んじゃうということはないです。
林 :僕はたくましいなと思ったんですけど、かわいそうなんですね。
赤尾:実が落ちる場所は選べないから、そこで生き延びる能力があるというたくましさを感じますね。

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折れて枯れてしまっている。葉っぱがついている

葉っぱの役割

林 :厳しい環境でよく勝手に生えてきてここまでなりましたね。ここ、急に枯れてるのがあります。
赤尾:これは折られちゃったのかな。
林 :折っちゃうとこうなっちゃうんだな。

大北:葉っぱの役割は陽の光と反応してパワーを作ることですか。
赤尾:光合成っていう。生化学反応で水と二酸化炭素と光エネルギーで糖分を作るんですね。無機物から有機物を作る
大北:根は水からなんですか?
赤尾:根の役目は水とか無機物、肥料分みたいなものを吸収する役割。あと自分自身を支える支柱の役割。
大北:この場合、風で葉っぱが枯れちゃうと、光合成ができにくくなって、バランスが取れなくなって死ぬ?
赤尾:あとは自分で枯らすパターンもあると思います。どんどん葉っぱから水を奪われるし、無駄だと思えば自分で枯らして他のほうにエネルギーを回す
大北:へー! 葉っぱはあるだけで水は出てっちゃうから。
林 :根から吸収した水をリターンの少ない葉っぱに渡すよりは枯らす。

事件の香りがする木

赤尾:さっきのモミジもそうですけど、葉っぱから自分の蓄えたものを吸収してから枯れるんですよ。そのあとで葉っぱを落とすんです。葉っぱがついたまま枯れてるっていうのは間に合わずにいきなりボキってやられたから、何かしらの異常事態が起きてる。こういう状況を見ると何か起きたなって。

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葉っぱがついたまま枯れていたらなにかがあったと思え(体感的に私達はそう思ってるイメージがありますね)

大北:事故っぽい状況と。
林 :松本清張みたいな推理だ。
大北:事件なんですね。木における。

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見づらいですが、葉っぱがきれいに落ちた枝がありました

赤尾:葉っぱがきれいに落ちてる時は「もう無理!」って自分で養分とかを吸収してから落としてる
林 :これは自分で撤退したやつですね。
赤尾:これがあるべき姿なので。

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どこを見て判断するのか

大北:赤尾さんは木を見たときにどういうところを見てるんですか? 健康状態?
赤尾:職業病だと思うんですけど、いいところより悪いところを見るようになっちゃって。茶色くなってるとか、すごい小さいなとか。

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先のほうが小さくなっている

 林 :小っちゃいなとか。これか。これは何が起きてるんですか?
赤尾:これは難しいですね。水がここまで来れなかったかな。芽の中に次の葉っぱとかは用意されているので、給水して膨らんでいくイメージなんですよ。こんな大きさで止まっちゃったということは水が来なかったのかなと想像してます。それか最初の芽が小さいのしか作れなかったか。去年の光合成が足りなくて。ここ、ちょっと難しいですね。他の大きいのは出せてるので、どうしてこれだけこんなになっちゃったのかな。
大北:そうやって推測するんですね。これが止まっちゃったものと判断したのは他と比べて明らかに小さいからですか?
赤尾:小さいのと、この芽が出て、1cmぐらいしか伸びれないんです。他のやつをみると、ここのシワシワから伸びて10cm近く伸びてるじゃないですか。同じ環境で同じ系統の枝なのに。これはちょっと変だよねって思いますね。

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他は10cmくらい伸びているが…

木は葉がどれだけあり根がどれだけありで決まる

林 :このところどころ枯れてるのは?
赤尾:虫が食べたあとですね。けっこうケヤキはいろんな虫が食べるので。でも虫自体はいないですね。
大北:虫が食うこと自体は木にとっては悪いことではない?
赤尾:ないほうがいいですね、その分稼ぎは減ってるので。このぐらいであれば見かけ上の問題で枯れちゃうことはないですね。葉っぱが全部なくなるぐらい丸裸にされちゃうとさすがに翌年の生育が心配になって、それが毎年来るといつか木が枯れちゃう。さっきの年輪の話と一緒で、稼げなければ年輪が太れないので。
大北:葉っぱの多さが大きさとか寿命に直結してくるんですね、見方が変わってきた…!!

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ところどころ枯れているのは虫が食べたもの

赤尾:この辺の葉っぱは暑さで維持できないなって自分でふるってる葉っぱだと思いますね。
大北:暑いと維持ができないんですか?
赤尾:暑いと水をもってかれちゃうので切り捨てますよね。悪い時は全体の葉っぱをバッてふるって秋ぐらいに芽が吹き出すとかありますね。特に梅雨明けいきなりビルの回りの木とかが緊急事態を感じて葉っぱをふるうというのがありますね。
林 :ふるう?
赤尾:葉を落とすことをふるうと僕らは言いますね。
大北:葉っぱがバーッと落ちたらビルの管理者の人は嫌がりますね。
赤尾:掃除のおじちゃんとかがグチを(笑)。
林 :なんで急にこんな時期に。
赤尾:冬じゃないのに。大変なんだよって。まあ普通に冬には言われますけどね。冬にケヤキとか葉っぱを落とすので、大変だよって言われます。
林 :冬も葉っぱを落とさない木にするというのはあるんですか?
赤尾:それを望まれることは多いですね。クスノキは常緑樹といわれいていて1年中葉っぱがあるんですけど、春先に新芽を出した時に古い葉っぱを全部落とすんです。時期が冬じゃないというだけで結局更新している。2〜3年もつ葉っぱもありますけど。落ちてることは落ちてます。
大北:常緑樹と言われてるものでも1年で葉っぱは落ちてるんだ。
赤尾:落ちてますね。

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暑すぎると梅雨明けあたりに葉っぱを落とすそうです

林 :全然変わらない木ってないんですか? 掃除のおじさんが喜ぶような。
赤尾:サボテンとか。サボテンはトゲが葉の名残だったはずなので。あまり詳しくないですけど。
(注:赤尾さんから後日、サボテンのトゲについては諸説あって枝の名残という説もあると教えてもらいました)
林 :そうやって考えた結果サボテンだらけになったらおもしろいですね(笑)。
赤尾:葉っぱが落ちるのも季節変化なので、景色が変わってよしと思ってもらえれば。

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ここの植裁のテーマとは?

ここの植裁のテーマは誰が作ってるかも考えると…

大北:植栽のテーマってわかります?こういう意図があってこうやってるんだなって
赤尾:ほっとけば生えてくるというか、本来自然であればこの辺りで生えてくるような自生の植栽ですよね。
林 :それを無視してユーカリとかを植えるのは?
赤尾:役所主導の建物だと厳しい気はしますね、今の時代は。生物多様性の配慮とかの面で。外来種を積極的には入れづらいですね。
大北:じゃこれは渋谷区に生えてる木?
赤尾:渋谷区が自然豊かな場合だったら生えてくるだろうというものを選んでいる気はしますね。勝手な想像ですけど。そういうテーマで1階の植栽は。
(後編へつづく)

後編の公開は来週を予定しています。まだ2/5あたりなので濃い後編をお楽しみに

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