日当山温泉郷の清武温泉
温泉地だの、泉質だの、混浴だの、全部なんだっていい。髪のベタつきが気持ち悪いから一刻もはやくシャワーを浴びさせてくれ。そう注文したところ友人が紹介してくれたのが清武温泉という浴場だった。


家族湯というだけあって全てが個室なのだが、ひとり1時間300円という圧倒的な安さ。いまどき牛丼も食えない値段で貸切の天然温泉に入れるのだ。
長屋の一室を選んで入る
値段よりも気に入ったのはそのシステムである。

敷地内には駐車場を囲うように長屋が建っている。なんだかキャンプ場のコテージのようだが、一室一室が簡素な浴場になっているのだ。
受付でお金を払うと空いている部屋の番号をいくつか教えてもらえるので、その中から好きなところに入る。全体的に大ざっぱだ。

車を個室のすぐ前に停められるのも便利だし、それぞれに部屋番号がついていたりして、そういうホテルみたいなのがちょっとおかしい。
天然温泉が300円はやっぱり安い
入るときに部屋に鍵はかかっていないが、もちろん施錠は中からできるようになっている。

受付の方とは別に清掃スタッフとおぼしき女性がいて、空室に出たり入ったりしている。人の出入りごとに細かく掃除をするのだろうか。何番と何番がいま空いたよー!と受付の人に声をかけている。過剰に下町感があっていい。



簡素ながら最低限の設備は整っている。脱衣場の畳で寝転ぼうと思えば寝転んで休めるし、プライバシーが守られる休憩室と考えただけでも300円はやっぱり安すぎる。


湯船は蛇口から出た温泉でじゃぶじゃぶと満たされていて、シャワーも付いている。シャワーなしまで覚悟していたのでこれは嬉しい。石鹸類は要持ち込みだ。
タイル張りといい湯船のすぐそばの窓といい、ばあちゃん家(ち)感がすごい。まさに家族の湯である。泉質についてはよくわからないが、ぬるめのお湯で気持ちよかった。もとより髪が洗えればなんでもいいのだ。

そういえば部屋にドライヤーがない。エアコンの風で乾かそうと思ったがなんとも微風である。ショック!学生の頃、雨に濡れてトイレのハンドドライヤーに頭を突っ込んだことを思い出す。
途方にくれて外に出ると受付に貸出用のドライヤーがあったことに気づいた。

ぜんぶがちょっとずつ変で、旅先ならではの経験だったと思う。こんなふうな長屋タイプの家族風呂は当地にいくつかあるらしい。
