特集 2021年5月18日

「渋谷の一階は一人飯の店」飲食のプロと街を歩く

飲食店プロデュースの会社の人と渋谷を歩いた

専門家と街を歩くシリーズ、今回は飲食のプロと渋谷を歩いた。

インバウンドと再開発に沸いたと思ったらコロナ禍で急激に元気のなくなった街、渋谷だがそれでもたくさんの飲食店は営業している。

ふだんはお客さんの目線で渋谷を歩くが、今回はお店側からの目線で渋谷を歩いてみる。そしてまさか味の兆楽が超優秀店舗だったなんて…!!

2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

前の記事:小麦粉&卵&乳を熱したら何らかのお菓子になるのか検証

> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

飲食店をプロデュースする人と渋谷を歩く

今回渋谷を案内してくれるのは飲食店のプロデュースをする株式会社ザップ・ダイニング インスパイアー代表の大橋義也さん。東京カルチャーカルチャー※の飲食も含めて今まで60店舗くらい手掛けてきたそうだ。

今日はデイリーポータルZ編集部林さんと株式会社ザップダイニングインスパイアー代表の大橋さんと同社東京カルチャーカルチャー運営責任者松田さんと4人で渋谷の飲食を見て歩いた。

※デイリーポータルZと同じ会社のトークイベントライブハウス東京カルチャーカルチャー。

001re.jpg
60店舗近く飲食店をプロデュースしてきた大橋さん(右)これくらいの幅の細長い水槽を置いた配置したアクアリウムレストランを作ったそうだ

水槽のあるレストラン作った

林 :水槽のあるレストラン作ったんですよね? 
大橋:あれは完全に僕の趣味を生かした店舗なんですけど。熱帯魚&水槽オタクなんです。で、飲食もやっていたので。得意技の組み合わせという簡単な発想で(笑)
林 :流行ったんですか?
大橋:スーパーヒットして。
林 :夢がありますね。
大橋:水槽薄いんですよ。25cmぐらい。それで6mとかある。こういうのだと普通魚が泳がなくなるんです。いかに魚を綺麗に泳がせるかと、いかに水槽の下に水の浄化システムだったりを置けるようにするか、あと客席をレイアウトできるか。それと水槽の荷重です。
林 :かじゅう?
大橋:荷重が一番大きい問題です。要は重さです。水槽の荷重ってだいたい2mぐらいの水槽で1tになるので、その荷重に耐えられるかどうかを考えてレイアウトする必要があります。そういうことを理解している人間じゃないとあれって作れないので、たぶん日本で僕しかできないかな(笑)
大北:想像のつかない問題ですね。

002.jpg
渋谷を歩いていきます。大橋さん林さん、筆者、カルカルの松田さんも一緒に

林 :水槽あると客単価をちょっと上げてもいいんですか?
大橋:客単価を上げるか集客人数をとるかですね。私の手掛けたリゾートレストランの場合は集客人数を狙っていこうという方をとったので、客単価は実は4000円ぐらいなんです。
林 :回転させたいから早く帰さなくてはいけないとかあるんですか?
大橋:飲み会とか合コンって長居をそんなにしないので、仲良くなって次行こうってだいたい2時間
林 :おれは割とラストオーダーまでいるタイプなので、そんな人はあまりいないんですね。

代わりに飲食店をする仕事

大北:大橋さんの今の仕事って飲食店をプロデュースするんですよね。
大橋:プロデュースと運営受託があって、うちは運営受託をメインにしてます。最近承った案件だと外資食器ブランドさんがショップとカフェを併設で出店したいのでカフェの方だけ運営してくれませんか、とか。
林 :食器屋さんがやるのは大変ですもんね。
大橋:あとは高層タワーマンションの住居者専用のスカイラウンジや個人ビルオーナー様のカフェなどですね。
大北:ああ~、そういうのも誰かがやってるわけですよね、なるほど。

003.jpg
『渋谷横丁 in RAYARD MIYASHITA PARK』という新しい商業施設にできたフードコートの飲み屋版みたいなところ。オープン直後から連日賑わっていたが…

 渋谷横丁で店の作り方を見る

大橋:まずあれ見ますか。渋谷横丁。今渋谷で話題になってるのって渋谷横丁と夜パフェとか。
林 :これって恵比寿横丁と同じ会社ですか。
松田:浜倉さんっていう(※株式会社浜倉的商店製作所、プロデューサーは浜倉好宣氏)。
林 :横丁のプロがいるんだ。
松田:横丁にも何種類かあるんですけど、恵比寿横丁と一緒で、渋谷の肉横丁とは別。
大北:横丁にも流派があるんだ。
林 :肉ブーム来てますか。肉寿司とか。
松田:そこからちょっと経ってますね。
大橋:肉横丁とか肉フェスとか。肉はみんな好きなのでそれをまとめることによって注目度をあげるやり方ですね。この横丁は肉じゃなくて、地方、北海道だとか四国だとかエリアごとに並べた横丁が集まってますよ的な見せ方になってますね。

P1233273.jpg
去年の夏にできたのだが古びたテント地のような看板。中は地域で分かれている

汚しの専門業者がいる

林 :エイジングがすごいですね。古く見せる。
大橋:あえて、ね。
林 :こういうのが得意な人がいるんだろうな。 
大橋:あえて汚しをつけてということはやったことがあります。意外と難しいんですよね。
林 :なかなか古くならないんだ。
大橋:そうですね。塗装業者さんの中でもこれ専門の業者さんがいらっしゃるぐらい。メイクでも特殊メイクさんがいるのと同じですね。
林 :その業者さんが来ると新品の店がいきなりこんな風になっちゃう。
大橋:ディズニーの中の岩のデコレーションを描いていたりするところなんかはその道のプロですよ。

004.jpg
新品でこの状態だった。歴史の先生と街散歩のときに聞いた「つくられた伝統」は飲食の常套手段

コロナ禍とテイクアウト

林 :みんなすごいテイクアウトやってますね。持ち帰りストリートになってますね。
松田:予定ではインバウンドの取り込みをメインとした24時間営業する予定だったようですが、コロナの影響で…。
大橋:緊急事態宣言が出てアルコールが提供出来ないですからね。食堂としていかに生き残っていけるかとなると、デリバリー、テイクアウト、ランチ。ごはんを食べてもらう部分での戦略に短期間で切り替えなければいけないので。
※撮影時点では緊急事態宣言が出されることになったが東京都の飲食店がどういうルールなのかは分かってなかった

005.jpg
今はお弁当を売っている人が声を張り上げていた

林 :この辺のお店だと支援金をもらっても。
松田:合わないです。家賃がかなり高いと思うので。
大橋:今発表されてる支援金だと、一日4万円〜10万円位という内容なので。
林 :1日4万円の利益だと売上的にはどれぐらい稼がないとならない?
大橋:約3倍なので12万円位になると思います。
大北:売上の3分の1が利益っていう感じなんですね。
林 :それだと支援金もらっても赤だし、店を開けるしかない。

006.jpg
すぐそばにある本物の横丁。かなり狭小な店舗が並ぶ。補助金でやっていけないのは大きな店だという
007.jpg
DVDのラムタラ跡地にもんじゃ焼きお好み焼き屋が入って繁盛しているそうだ

渋谷七不思議、お好み焼き屋の少なさ

大橋:ここは比較的新しいお店さんで、もんじゃ焼き、お好み焼き屋さんですけど、もとはラムタラというCDとかDVD屋さん。ここはスーパーヒットしてます。
大北:ええー!? なんかそういうイメージがないですね。
大橋:鉄板焼き、お好み焼き屋は僕も渋谷でやりたかったですね。渋谷の七不思議というのが僕の中にいくつかあって、渋谷って何故か、てんぷら屋さんが少ない。もうひとつ、何故かお好み焼き屋さんが少ない。理由とか原因はないと思います。おそらくたまたま。
林 :その2つは街にあれば必ずお客さんが来る業態なんですね。
大橋:いいロケーションや適切な価格で出店すればお客さんが入ることはわかっていました。ここの方はそれが読めていたんでしょうね。
大北:そういう情報って地域の店舗数とかいちいち数えるわけですか。
大橋:一般的なグルメサイトで見ても、なんとなくわかりますね。圧倒的に少ないよねっていう、七不思議がエリアごとにあるんです。
大北:へー、エリアごとに。ここに出そうと思ったらまずそういうのを見るんですか?
大橋:僕は渋谷に住んでいたり仕事もしているので気付いただけですけど、そこまでやる方がいらっしゃるかはわからないですね。
大北:少ない業務から狙うというのはあんまり。
林 :穴が。
大橋:明確にニーズに対して足りてないっていう業態は結構あります。
林 :逆に渋谷にありすぎる業態ってあるんですか。これは多いな。
大橋:ラーメン業態が多いですね。あとはお肉系の業態も多いですね
大北:あ~あるあるあるある!

008.jpg
チアガール居酒屋なんてあるのか。この場所はチアガールが客引きをしているらしい

飲食においてパクリはOK

林 :こういうのってどうですか?色物。チアガール居酒屋。
大橋:最近チアガール系の業態が何軒か出てきてて。
松田:普段はチアガールの格好をした子が呼び込みしてます。
大橋:昔だとバニーちゃんがいる飲み屋さんだったのが、そこからメイドさんになって、チアガールになって。風営法と飲食の間のところの業態っていうイメージですかね。それのノーマル版がガールズバー。
林 :こういうのって誰かが発明して広がるんですかね。真似していいものなんですね、
大橋:基本的に飲食業界はほぼパクってOK(笑)。飲食に関して権利で守られているのは店舗の商標とロゴぐらいしかないので。
大北:たまにネットで見かけますよね。レタスしゃぶしゃぶの店がすぐ近くでパクられたりとか。
大橋:たくさんあります。ほぼ同じようなロゴで、お好み焼き屋さんだったり。飲食の場合は店名やロゴ等意匠登録出来るもの以外は基本的に真似がOKなので。

009.jpg
スクランブル交差点そばのビルの9Fにあるしゃぶ葉は女子高生の聖地になってるそう

インスタの神風が吹いたしゃぶしゃぶ屋

松田:このしゃぶ葉ってすかいらーくがやってるんですけど、しゃぶしゃぶってわりと高いイメージじゃないですか。しゃぶ葉は渋谷の女子高生や女子大生の聖地になっていて、女子学生さんが沢山来店してます。食べ放題で、ドレッシングとか調味料があるんですね。そういうのを女子学生さんならではの発案で、掛け合わせて、自分なりのものを作ったらインスタにあげて。僕一回行ったんですよ。満席で、男はおっさん俺ら2人だけ(笑)。
林 :そういう神風が吹くこともあるんですね。
松田:豚しゃぶを自分で作って豚しゃぶカレーにしたりとか。

010.jpg
スクランブル交差点そばのスターバックスコーヒーは世界一の売上の店舗で有名だそうだ

センター街は日本最高級の坪単価

大橋:ちなみにここのスタバは世界で売上ナンバーワンみたいで、しかも圧倒的らしいです。(※現在も売上第一位かは未確認)
林 :飲食店って一日どれぐらい売り上げればOKなんですか?
大橋:ひとつの指標としては、面積に対しての売上って考え方をするんです。店舗規模にもよりますが、月間で1坪20万〜25万売れるとまあまあヒット店。ただ、こういう路面店であるとか駅構内であるとか、立地が良かったり商品力が高いと1坪で50万や70万売れたりします。
林 :8坪の店なら、月間160万ぐらい売れれば良いんですか?
大橋:計算式がいろいろありまして、小さい坪数ならもう少し売っていかないとだめなんです。50〜60坪の中規模店舗で、席数が60~70席のお店は坪20万位が一つの指標になります。20坪位の小さいお店だと坪30万ぐらい売上欲しいですね。もちろん家賃や人件費等にも影響されますが。
林 :お店を坪数で見たことがないので、そういう感覚がもう。
大北:あそこにあるみたいな松屋の一般的な店舗で何坪ぐらいなんですか?
大橋: 12、13坪とか15坪前後ですかね。
大北:松屋は月に400万ぐらい売らないといけないのか~。
大橋:1坪3.3平米ですので。だいたいこのエリアの1坪当たりの家賃相場が5万円以上で、6万とか7万とかも普通にあります。この辺りは日本における飲食家賃としては最高単価に近いと思います。下手すると銀座とかの1階よりも高いぐらい。
大北:この辺が一番高いのか、センター街の路面店ですしね~。

012.jpg
日本最高価格級の坪家賃単価を誇るセンター街路面店。松屋も大変だ
いったん広告です

渋谷の秘境に行く

大橋:渋谷センター街の再開発が入る地域、ちょっと見ます?
林 :見ます。そういうのが大橋さんのところに来るんですか?
大橋:相談が来たりとか。センター街の一角にゴーストタウンがあるんですよ。
大北:公には出てるんですか?
大橋:公には出てないです。
林 :ここですね。
大橋:表は渋谷のセンター街ど真ん中で一番賑やかで、そのすぐ裏がこれ。
大北:ほんとだ、私道って書いてある。
林 :ここね。ネズミいますよね。お、ハエがすごい。
大北:ハエの数がすごいな。なにかとよくない。
林 :この辺も全部キレイにするんですね。
大橋:ここの陰に隠れてタバコ吸う人とかいろんな人が多いので、渋谷区としても何とかしたいんだと思います。
大北:こういう再開発ならまあしたほうがいいなとなりますね。

014.jpg
センター街の脇道みたいな全部ビルの裏側という私道がある。虫が多く人が怖いそう

センター街にラーメン屋が多い

林 :こうやって見るとたしかにラーメン屋多いですね。
大橋:ラーメン屋さんとか、最近増えてきたのはお寿司屋さんのスタンド型(立ち食い)が増えてますね。
林 :ありますね。このチェーンはずっと昔からありますね。

015.jpg
立ち食いのお寿司って増えましたね

大橋:ここがタピオカブームの火付け役となったお店。当初はここに絶えず30人ぐらい並んでましたから。ここがすごく儲かってるんじゃないかということで、タピオカブームがバッと波及したんですね。今は縮小傾向ですけど。

016.jpg
ここが火付け役かどうかはさだかではないが、センター街のど真ん中で行列を作り続けたタピオカ屋の存在は大きいだろう

林 :タピオカってやっぱり儲かったんですか?
大橋:かなり儲かったと思います。後発で追随した方は時すでに遅しでダメージがあったと思いますが。先程言ったように飲食って丸パクリがOKなんですけど、出す場所やタイミングを間違えると逆に命取りになる。
大北:遅れて真似しても全然いける場合もあるけど、だめなときはだめ。

017.jpg
数店となりにまたタピオカのお店。ここはタピオカとラーメンストリートなんだという

渋谷の路面店は回転率重視

大橋:ここにもタピオカがありますね。ここは意外とセンター街の奥の方ですけどラーメン街なんですよ。名前変わりましたけど味丸さん、関西の神座さん。この先にもう一軒チェーン店も。渋谷っていうのは、なんでもあるんですけど、一階路面に関しては回転率を重視するのでひとり飯ができる店が多い。ただビルの上になると2人とか3人とか4人で使うようになる。
林 :一階が一人向けなんですね。
大橋:家賃が高い分、回転させる必要があるので。1階で4名用の席があるお店ってあまり見ないと思うんです。ファーストフードでも2名席や1名席が主流です。
大北:おおー! そういう目で渋谷を見たことなかったです

018.jpg
センター街の奥の方にみょうにラーメンとタピオカが並ぶ通りがある

大北:ラーメンもタピオカも回転率が高いってことですか?
大橋:そうですね。短時間でお客さんを回していく。例えばダイニングでお酒飲みながら食べて1人、2時間で4000円。ただ、ラーメンの場合って800円の人がだいたい1時間で4、5人来てくれるんですよね。利益的収益的にも回転するほうが良い。
大北:へえ~、売上的にもラーメンとタピオカが勝つんだ~

019re.jpg
渋谷肉横丁はビルの2F~。

大北:渋谷肉横丁もやってるみたいですね。
大橋:肉横丁のシステムというのは大きな物件をマスターリースしたところが、いろんなところに声をかけて区画で貸してるパターンが多いですね。今ウーバーイーツ用にゴーストキッチンがありますがその店舗版ですね。
林 :自分で借りるよりも短期間で借りられる?
大橋:短期間というよりは、小さい形でほどよく借りられるというのと、全体でひとつという見せ方もできるので集客が期待できる。でも意外と儲かっているのはこういうお店です。この中華屋さん兆楽は渋谷に二軒あるんですけど、スーパー優秀店舗です。

019.jpg
渋谷にポツンとある町中華、ここ優秀店舗だったのか…!

味の兆楽は飲食店の人に言わせると「めっちゃ優秀」

大北:どのへんが優秀店舗なんですか?
大橋:街の中華屋さんってどこに行ってもありますよね。渋谷だとあまりないんですよ。ひとり飯で中華がサクッと食べられるところが、ラーメン屋さんは多いんですけど、飯もの屋さんになると、意外とハンバーガー屋さんとかそういう形になってしまって。
林 :確かに。
大橋:ここは売上が相当良いと思います。
林 :やっぱそういうのって見てわかります?
大橋:わかります。あと一人焼き肉で有名なライクさん。
大北:最近できたチェーンですか?

020.jpg
元牛角の人がはじめた一人焼肉のチェーン店、焼肉ライク

松田:このオーナーが最近よくテレビ出てますね。牛角を作った方が牛角を売却して。全部売って、自分は別のプロデュース会社を作って、肉のノウハウがあったので最初にこれを立ち上げて。
林 :肉のノウハウって、やっぱり肉なんですね。
大橋:アイディアでしょうね。見てわかるように、一人のスペースがコンパクトなんですね。狭い中で下に引き出しがあって、そこにおしぼりからおはしから全部入っていたり、お水も押せば出るようになっていたりとか。
林 :ホールの人がいらない?
大橋:数が少なくて済む。拭き掃除ぐらいでいいようなシステムになっている。これは一人焼肉っていう目の付けどころと、レイアウトとシステムがとても優秀。
林 :580円って牛丼よりちょっと高いぐらいの値段ですね。

021.jpg
あるメニューに特化した店舗は2階にあっても人が来るそうだ

飲食店選びにおいて目は舌に勝る

大橋:あと面白いのがチャーハン専門店。
大北:ここずっとありますよね。
林 :こういうのもいい。
大橋:ビルの3階で上のほうなんですけど、こういう特定のメニューに特化したお店はそこそこ美味しければ生きていけますよね。
大北:2~階3階とかと1階はどういう違いがあるんですか?
大橋:あきらかに視認性の違いですよね。目に入って見るところで人間はジャッジしますから、次のジャッジは舌からくる記憶なんです。あれ美味しかったからまた行ってみようかな的な。
大北:へえ~、舌に勝るんですか?目は。
大橋:初回に関してはそうですね。

022.jpg
チェーン店の定食屋もより専門的になっているという。こちらは焼き魚定食をメインに据えるしんぱち食堂。焼いてるのが見える。

専門性の強いチェーン店が増えている

大橋:こういうシズル感を出す、音を聞かせたり匂いを出したり、作ってるところを見せるというのは最近けっこう来てますね。
大北:ここだと作ってるのが見えるんですね。
大橋:匂いも出ますし。
林 :新しいイオンモールの食堂街ってガラスが上までなくて匂いが出るようになってますよね。
大橋:ここも比較的新しいお店ですね。
大北:しんぱち食堂。
松田:昔と違うのは専門性の強い店舗が増えている
大橋:今までお魚を食べられるお店ってどこがありましたってなった場合、お寿司屋さんか居酒屋でつまむかとか、大戸屋さんのランチとか、そういう選択肢ぐらいしか意外となかったですよ。そこにきて、干物のお魚に特化した専門店。

024.jpg
キャプション

林 :ここは魅力的ですね。俺、入るなあ。安いですか?
松田:一番安い定食で570円。この量で。安いですよ。
大橋:こういう店を「魚の食べられる店」って頭の中で整理するわけですね。昨日肉食べたしな~最近脂っこいものばっかり食べてるな~ってなったときに自分の引き出しが開いてここに来る。
大北:頭の中の魚フォルダに570円の店があると来ますね。なるほどなー、魚とか大きいジャンルにニッチな専門店で切り込んでいくのか~
大橋:あえて焼いてるのを見せてるんですけど、ちょっと残念なのが、魚を焼くと脂が跳ねてガラスについてしまい、見えなくなっちゃうんですよね。見せ方を工夫するともっと良かったかもです。
大北:うわー、そこまでは作る時にはわからないですね。
大橋:そうですね。

025.jpg
焼いてるのが見えるがガラスが脂で汚れやすいという。気づく人いないだろうな~、そういうノウハウの積み重ねの世界なんだろう
渋谷を飲食のプロと歩く記事は後編に続きます。ここまでみたいなボディーブローのように効いてくるへぇへぇした話題や、渋谷に住んで渋谷で働く大橋さんがおすすめするうまい店というお役立ちな話題もあります。来週の火曜公開予定です。お楽しみに。

専門家と街を歩くシリーズ バックナンバー

テーマ:中世日本史 場所:世田谷 ゲスト:谷口雄太さん
日本史研究者と街を歩くとどれだけへぇへぇ言わされるのだろう?
日本史の研究者と世田谷を歩いてへぇへぇ言わされまくる
テーマ:通学路 場所:中目黒 ゲスト:小山田裕彦さん
「子供の道は猫道と一緒」通学路の視点から専門家と街を歩く
通学路の専門家と子供目線で街を歩く
テーマ:植物 場所:久が原 ゲスト:小林由佳さん
植物図鑑を作ってる人と街を歩いてへぇへぇ言わされたい
植物は進化の先を行く!植物図鑑を作る人と街を歩いてへぇ~と言わされたい
テーマ:鉄道 場所:横浜 ゲスト:栗原景さん
鉄道に詳しい人と街を歩いてへぇへぇ言わされたい
鉄道は何通りもの楽しみ方がある! 鉄道に詳しい人と街歩きしてへぇへぇ言う
テーマ:植物 場所:渋谷 ゲスト:山下智道(野草研究家)
渋谷駅前の線路沿いに長芋やラズベリーが生えている
タワレコの隣に蕎麦が生えている~渋谷の植物を見て歩く
テーマ:石 場所:二子玉川 ゲスト:西本昌司さん
専門家と街の石を見て歩きへぇへぇ言わされまくる
百貨店には化石が埋まっている~専門家と街の石材を見て歩く~
テーマ:のぼり  場所:新丸子 ゲスト:堀江賢司さん
おしゃれな街に印刷物はない~街の印刷を専門家と見て歩く~
のぼりは世の中の変化に強い~街の印刷を専門家と見て歩く~
テーマ:税金 場所:代官山 ゲスト:高橋創さん
税の視点で街を歩く
目に映るものはだいたい経費~税の視点で街を歩く
テーマ:コピーライティング 場所:戸越銀座 ゲスト:森田哲生さん
「そのコピーは誰に向かって言ってるのか?」コピーライターと商店街を歩く
テーマ:タクシー 場所:三軒茶屋 ゲスト:ぜつさん
「回送でも停まる」タクシーの運転手さんと街を歩く
「どの道から行きますか?」「知らねーよ」タクシー運転手と街を歩く
テーマ:飲食店 場所:渋谷 ゲスト:大橋義也さん
「渋谷の一階は一人飯の店」飲食のプロと街を歩く
「結局メニューが一番大事」飲食のプロと渋谷を歩く
テーマ:建築 場所:祐天寺 ゲスト:神田順さん
どうして街はこんな形なのか?建築の専門家と街を歩く
どうしてこんな家ばかりなんだろう?建築の専門家と街を歩く
テーマ:考古学 場所:大井町 ゲスト:谷口榮さん
大井町駅前の通りは歴史を横断できる~考古学者と街を歩く
公園にある古墳を専門家と見る~考古学者と街を歩く
テーマ:植栽 場所:渋谷 ゲスト:赤尾正俊さん
木の寿命は葉の量と幹の太さで決まる~樹木の専門家と街を歩く
建造物に植物があると街になじむ~樹木の専門家と街を歩く
テーマ:民俗学 場所:渋谷 ゲスト:室井康成さん
路上飲み対策にも恋愛の南京錠をかけるのも民俗。民俗学者と街を歩く
テーマ:屋外広告 場所:渋谷 ゲスト:原壯さん
日本で最も看板激戦区の渋谷を専門家と歩く
日本一高い看板はここ! 屋外広告を見て渋谷を歩く
テーマ:土木 場所:渋谷 ゲスト:八馬智さん
都市景観の専門家と渋谷の土木を見て歩く
変わりつつある渋谷の跡を専門家と見て歩く
テーマ:接着剤 場所:渋谷 ゲスト:木村修司さん
専門家と街の接着剤を見て歩く
街にはどれくらい接着剤が使われているのか? 専門家と見て歩く
テーマ:お金 場所:渋谷 ゲスト:田内学さん
専門家と街を歩くシリーズ、思い切ってお金の専門家を呼んでしまう

▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ