アフタートークとは
アフタートークは林と石川があの記事のあそこ良かったよね~とじんわり語り合う動画です。まさに演劇のあとのアフタートークをウェブ記事に対してやっている稀有な企画。
今回紹介するのはこの3本の文字起こし
熊本で町全体をバイキング会場とする
ししゃもになります / うっかりデイリー 2024年4月20日号
まずはこちらから!
石川:
面白かったですね。
林:
今年からナオさんの原稿を担当させてもらって、しっかり読んでいるんですけど、やっぱりいいですね。
石川:
いいですね。
林:
変わったことはしてないんだけど、よくこういうの書けるなってしみじみ思いまして…。
まずですね、 いきなり冒頭のとこが好きだったんです。
ナオさんのパチンコの思い出なんですけど、過去に2回だけパチンコやって勝ってやめてるんですよ。
林:
1回やってフィーバーして、そのあともう1回やったら、3人いた中で私だけが勝った。
>>そこで自分の一生分のパチンコ運を使い果たしたと判断し、以降、近づかないことにしたのである。
こういうエピソードなんですけど、こういうのって、負けて悔しいからやめた、とが通常の感情じゃない?
石川:
はいはいはい。
林:
2回とも勝ってるのにやめたっていうのがいきなり意外なんですよね。で、 そういうのあんのかなっていうリアリティもちょっとある。
石川:
はい。
林:
感情もクリシェじゃないっていうか…。よくある感情じゃないエピソードじゃないところから始まってるのが、好きだな。
前回も戸惑うために読んでるみたいなこと言ったんですけど、いきなり違ったところから始まるっていうのがたまらんなと。
石川:
確かにそうですね。
林:
あともう1箇所。この後、この記事でパチンコするんですよね。
石川:
はいはい。
林:
ラーメンばっかり食べてないで、パチンコしてみるんです。
だけど、パチンコのシーンの最後の方で、なんかパチンコの仕方がわかんなかったらしく。
「左打ちに戻してね!」って言われるんだけど、それが何のこと言ってるかわからない。
林:
ハンドルを左手で握ってみるとか、手をクロスしたりして。
>>安心していると、みるみるうちに球が無くなった。正直なところ、恥ずかしいのでもう早く終わって欲しいとすら思っていたので、逃げるように建物の外へ出た。ああ、緊張した!
石川:
パチンコしての感情、エピソードの展開としては勝って嬉しいか負けて悔しいっていう王道の2つですよね。
林:
そうじゃなくて恥ずかしいってところに行くのが面白い。
石川:ナオさんはこういう自分の心の声をちゃんと耳を傾ける人なんですよ。
林:
書き慣れてないと、すごくよかったとか、面白かったですとか、楽しかったです、みたいなよくある感情に押し込める。
その型にない感情、悔しい・嬉しい以外の「恥ずかしい」っていうのを見出して書いてるのがすごい。こういうのができたら永遠に文章って書けるって気がしたんですよね。
石川:
よくわかりませんでしたみたいな感じで書いてしまいそうですよね。
そこを恥ずかしいまでちゃんと掘ってる。
林:
街歩きって、珍しいものを見つけるかどうかだみたいな話はあるんですけど。
みんな同じところを歩いてて、面白いもの見つけるられるかどうかっていうのが、大きかったりするんです。
石川:
感情もそれで同じで、自分の複雑な感情をちゃんと見つけられるかっていうことも大事なんですね。
林:
とはいえ、すごくレトリックというか、文章の表現で気が利いてるなっていうのもある。
この透明のスープのラーメン食べて、『人懐っこいスープ』って書いてあるんですね。
石川:
『人懐っこいスープ』はすごいですね。
林:
こういうのすごい好きで、 似合わない形容詞を使ってるとおっ!て思う。
石川:
しょっぱいスープだとスープの話になっちゃいますよね。
林:
昔、「速足の写真」とか言うと、分かってるように聞こえる、って大山顕さんが言ってました。
石川:
明るい写真とかだと、写真の話だなってなるんだけど。
林:
地形も 「リズミカルな地形」とか言うと すごいわかった風のことになる。テクニックっぽい表現をしれっと、ナオさんが使っててすばらしい。
石川:
単に奇をてらってるわけじゃなくて、わかりますもんね。人懐っこいスープって想像がつく。
林:
ここでエキセントリックになりすぎて、アスファルトの匂いみたいなスープって言われてもね…。
しわしわのスープとかだと、ちょっとわかんないよね。人懐っこいはわかるんだよな。
石川:
わかりますね。
林:
こういうさ、誰も言ったことがない表現なのにわかるってすごいよね。
林:
おっていうのが1か所あります。すごい細かいとこを言うんだけど…。
>>すっきりとしつつ絶妙な甘みがあって和食と中華の融合的な、人懐っこいスープ。何時間も鶏ガラを炊いて……というのとは違うけど、バランスのいい味わい。黄色いちぢれ麺の弾力がよく、好きなタイプだった。たっぷり入ったワカメも嬉しいな。
石川:
「な」。ですよ。
林:
急に色気を出してくるんですよ。
石川:
気が付かなかったですね。
林:
ここで急にね、可愛さというかキュンとする感じを持ってくるのはうまい。
石川:
急に少年のようにね。
林:
強弱をつけるのはうまいですね。
石川:
はいはいはい。
林:
>>〇〇である、××であるかもしれない。
>>ですよね。
とかだである体のなかに急に『ですよね』、とか入れるじゃないですか。
石川:
はいはい。
林:
こういうのは萌えポイントなので、みんな真似するといいんじゃないかなって 思いました。
石川:
確かに。「です・ます調」と「だ・である調」を混ぜるみたいなのは割とよくあるじゃないですか。そこよりもっとなんか発展してる感じしますよね。
林:
「です・ます調」と「だ・である調」は統一した方がいいと文章の教科書には書いてあるけど、しないよね。
石川:
しない方がいいですね。
林:
ほどほどに崩す方が良い。あと、主語も統一しない方がいいよね。『僕、僕、僕、おれ』って急にかわる。
石川:
はいはいはい。
林:
校正から『主語が統一されてません』って言われると、『そういうこと言ってるんじゃないだ』っていう気持ちになるよね。
そこに正しさ求めると文章の色気がなくなるなと思います。
石川:
ナオさん、いい色気がありますね。
林:
ラーメン食べただけでもこんな意外な感情を自分に見つけてすごいな、と思いました。原稿もらって夜中読んでたんですけど、いいところがいっぱいありました。
うまさを出しすぎないんだけど『これはいいな、ちゃんとしてるぞ!』とて思った原稿でした。
しゃべっている動画はこちら