特集 2021年2月9日

税の視点で街を歩く

これは経費にあたるの? 税理士さんと一緒に税の視点で街を歩く

これは経費にあたるのか? あたらないのか? 会社勤めをしない者たちが税金ノイローゼになる時期、確定申告が近い。

でも考えてみればあらゆるものが税金に関係してると言えるかもしれない。

もしかしたら街にあるものも全部、税の視点で見られるのではないか。専門家と街を歩いてへぇへぇ言わされるシリーズ、今回は東急東横線代官山駅周辺を税理士の高橋創さんと歩いた。

動画を作ったり明日のアーというコントの舞台をしたりもします。プープーテレビにも登場。2006年より参加。(動画インタビュー)

前の記事:専門家と東急沿線街歩き~総集編

> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

2月は確定申告があるので毎年税のことを考えている(一年経つとちょうど忘れるので)。

でも考えてみれば世の中にあるほとんどのものは経費だったりする。そうすると確定申告してる分だけ世の中のことについて「わかってる」こととなる。

何が言いたいかというと、確定申告してないあなたも税金の視点で街を歩いてみたらいいと思うんです。はい。

幸い、最近デイリーポータルZのライターでもある井上マサキさんが『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』という本を出した。同じく著者である税理士の高橋さんも迎えてお話を聞いた。

なお街を歩くといっても東京都はまた緊急事態宣言に入ったのでzoomで遠隔お散歩することになった。場所は代官山駅周辺。おしゃれなお店が多く税に関係するものも多いかもしれない。

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税理士の高橋創さん(右上)、最近高橋さんと昔話で税を説明する本を出した井上マサキさん(右下)、デイリーポータルZウェブマスター林さん(左上)は家で。左下の画面は代官山からzoomでつないでる筆者

大北「さあ私は今東横線の代官山駅に来ていましてzoomでつないでます。」
林「我々は家にいながらそれを見てあーだこーだ言うという、貴族の遊びみたいな企画をします。」
高橋「代官山駅の店のテナント代とか高そうですよね。」
林「高いでしょうね。東急電鉄が持ち物である建物を貸してるわけですよね。」
高橋「商業施設のブランドで人が来るので。のれん代みたいなのはあると思います。」

まずは話題は代官山駅の駅ビルから。

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代官山をぶらぶら歩く映像を見ながらみんなで喋ります。駅ビルのテナント料高そう

のれん代は正式名称

林「のれん代って企業買収したときとかよく聞きますけど、あれって概念ですか?」
高橋「概念です。目に見えないざっくりした差額を押し込むところなので。」
林「目に見えないものは全部のれん代にしちゃう。」

ん? ん? のれん代??

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のれん代??

※筆者はのれん代自体よく知らなかったんですが、企業が持ってる財産のうち、ブランドとか人材とかお金に代えられるないものをのれん代というそうです。
企業を10億円で買収したとして、そのうち土地とかお金に換算できるものが3億だとしたら、あとの7億はのれん代だそう。そもそもの10億が買いたい人の主観なのでその内訳はわからない。)

高橋「のれん代にしちゃいます。なので、帳簿上の数字を詰んでも100万にしかならないのを、お互いの合意で120万で売買しましょうってなったら『差額はのれん代』って。」
井上「えっ!? ちょっとブラックボックスですよね。」
高橋「ブラックボックスですよ。ちゃんと説明できる人がいたら尊敬します、僕。」
大北「『のれん代』というのは正式名称なんですか?」
高橋「貸借対照表に『のれん』って書いてるところもあります。」
大北「のれんの実物ないのに?」
林「国から怒られないんですか?」
高橋「怒られないです。帳簿ってどんな科目を付けても誰も何も怒らないんです。自分で作るものなので。」
大北「えっ!? 『ウンコ出る出る代』でも?」
高橋「全然大丈夫です。」
大北「えー!?」
※ここで驚いているのは、確定申告をするフリーランスは「この切手代は通信費で、宅急便は荷造運賃費? この会食は何費? 雑費って何?」と経費を何費にするかで一度は悩むからです。

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これは何費にあたるの…!?という悩みはフリーランスの原罪のようなもの

おのれのセンスで勘定項目

井上「説明できればってことですか?」
高橋「なんでもいいです。国が興味があるのは利益と税額なので、利益を計算するための内訳なんてどうでもいいんです。何費にしたらよいかわからなくて作業が進まないんですって言ってる人を見ると、そこじゃないんだよって思います。」
大北「そこじゃなかったのかよ…」
高橋「電車代が会議費とかに入ってても誰も何も言わないから。」
井上「ここ多すぎないって言われるのかと思ったりしてました。」
高橋「でも全部雑費とかにしとくと。追徴税額は出ないけど、ここ何?ってのは問い合わせが来ることはあります。」
大北「『うんこ出る出る代』はおいといて、雑費つっこまれるんだ!」
※「雑費」というのは分類しきれないときの項目
井上「ちゃんと付けてるのかっていう確認ですかね?」
高橋「ポリシーを持って、全部雑費だと思ってますと言えば、止めるすべはないので。何費にするかは法律じゃないんです。強いて言えばセンス。」
大北「センス!?」
井上「センスなんだ…!!」

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これからの経費の項目の分け方(センス)

高橋「これは何費、みたいな本を書いてる僕が言うのもあれですが(笑)」
井上「この先テクノロジーが進んで、空中移動代みたいな新しい概念が生まれたとしてもセンスで付けてよし。」
高橋「確定申告書にある何費って印字に当てはめると楽だからやってるだけで、なんでも良いんです。」
林「駅から出ないうちにいろんな知識を得てしまった…。」

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外のお店の看板などを見たり。飲食店はまかないなど意外なところに税がかかったりするという話だったり
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滅びろ!軽減税率!

林「普通の飲食がテイクアウトとか宅配とかやってますけど、そういうので会計処理が変わっったりするんですか?」
高橋「消費税の税率が変わりますよね。軽減税率は滅びてほしいと思って生きてるんですけど。」
井上「(税理士としては)大変だったんじゃないですか?」
高橋「2%払うから全部10%にして、って未だに思います。」
大北「全部税込み表記にしないとだめっていうルールありましたけどあれはどうなったんですかね。」
高橋「一時それがゆるんで、また改めて税込みになります。」
大北「へえ~」
井上「本のカバーを税込価格にして刷り直さないといけないから大変だっていうのをちょっと聞きましたね。」

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Gotoキャンペーンはやりすぎると税がかかります

お得のためなら要らなくてもいい!

林「GO TOイートのクーポン券とかもお店は処理とか大変なんじゃないですか。」
高橋「大変なのは使った側ですね。GO TOトラベル、GO TOイートを使いまくってる人いるじゃないですか。割引額とかクーポンの額が50万超えると課税されるんです。一時所得が50万超えたら課税だから。」
井上「得した金額が一時所得になる。」
高橋「ふるさと納税も一緒で、ものをもらったら課税対象なんですよ。国が設定している返戻率が今3割ぐらいと言われているので。150万ぐらい寄付しない限り大丈夫なんですけど。うっかり300万ぐらい寄付しているお客さんがいて。」
大北「ふるさと納税とGO TOトラベルを合わせて50万以上?」
高橋「合わせ技です。課税されるぐらいGO TOトラベルを使ってる人は、ふるさと納税もフルでやってるような人なんです。お得が好きという人はいるので。」
林「お得を学ぶ本とかありますもんね。」
高橋「お得な気分を味わうためならいらないものでも買っておくという。」
林「『健康のためなら死んでもいい』みたいな。」
高橋「税金でもそういう人いますよ。国に税金払うぐらいならキャバクラで使うって言ってる人とか。30万セーブするために100万使ってるようなものなので。」

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マンションの植え込みは経費? そもそも経費って?

売上があってはじめて経費がある

林「これはマンション? マンションだとしたら、ここの植え込みは経費?」
高橋「管理組合が管理費の中からやってると思います。管理組合も課税対象になったりするので。」
井上「そうなんですか?」
大北「管理組合って任意団体(※サークルとか自治会とか人が集まってるけど法人でないもの)って扱いなんですよね?」
高橋「そうです。集めたお金をみんなのために使ってるならいいんですけど、マンションが持ってる駐車場を他の人に貸してるとなると、マンションがやってる収益事業になっちゃうんです。営利行為になっちゃうから。税務署がつっこんでました。」
※任意団体でも収益事業をすると課税される。収益事業のための植え込みであれば経費となる

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敷地内に電柱があったら電力会社からお金が支払われる。その時点で課税される

高橋「ちょっと前に一番話題になったのが携帯の基地局。マンションの上に携帯の基地局を置いた場合。docomoとかからお金が出るんです。電柱も誰かの私有地にあったら電柱使用代が払われます。」
大北「へぇ~!」
井上「それを収入として計上しないといけない。」
高橋「そうです。docomoに貸してお金をもらうというのはマンションの管理とは全く関係ないことになるので。みんなから集めたお金をみんなのために使うなら、行って来いだから課税にならないんです。それを儲ける目的でなにかしだしたら課税なんです。」
大北「例外はないんですか?」
高橋「たとえば相撲の本場所や巡業は興行だけど公益事業にあたり課税されない。それは日本相撲協会が公益財団法人だから。日本相撲協会が公益法人を取り消しになるかが話題になった時、メディアの人に『相撲協会の帳簿を見てどう思いますか?』ってコメント求められて。『作ってる人は太ってると思います』みたいな話しかしなかった。」
大北「太ってそう(笑)」
林「文学作品とか絵を見てどう思いますかじゃなくて、帳簿見てどう思いますかってすごいですね。」

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店の前に置いてあるものは備品できっと経費として購入されたんだろうけど…

経費にあたるかどうか一番くわしいのは自分

林「この店の前に置いてあるものは必要なものなら経費ですね。例えばベンチは必要なくないですか?」
高橋「必要ですよ。経費になるかならないかは主観なので。」
林「国は言わないんですか?」
高橋「客観的に見てそれプライベートだよってなれば国が話をしてくるだけで。自分の商売に一番詳しいのは自分ですから、経費だと言えば経費っていうのが正しいと僕は思ってますけど。」
林「じゃあ今の店の前のベンチは要るんですね。」
高橋「あそこまで行列ができる予定なんですから。」
井上「予定でもいいんですか? 実際使われなくても。」
高橋「あたりまえじゃないですか。夢をみないで何が商売かって。」

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井上さんがいきなりギターを買ったら経費になるのか

井上「僕がミュージシャンになる予定でギターを買いました。これも経費になりますか?」
高橋「収入があればね。経費は収入があってはじめて生まれるから。」
林「井上さんが誰かの前で演奏をした瞬間に経費になる。」
井上「小銭を投げられた瞬間に。」
林「井上さんのギターが経費に変わる瞬間。」
大北「とくに美しくもない!」
井上「10円ぽいってされたら、そこから発生する。」
林「経費ライブ。経費のためにありがとうって。」
井上「たとえば劇団でも一人もお客が入らなければ経費にならない?」
大北「せつない話だ…。」
高橋「ならないですね。自分ちでやってるのと一緒ですからね。」
林「客は来ねーわ、経費にならねーわ、二重につらいですね。」
高橋「売上が立たなかったら申告をする理由がないので。経費かどうかなんてどうでもいいんですよ。」
林「税務署に行けないんだ。」
高橋「確定申告をする権利すらない。」
林「なにひとついいことがないな。」

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植木も経費、街を歩いていて視界に入る店のものはほぼ経費

減価償却の耐用年数、変わると衝撃

林「お店の前の植木だから経費ですかね。」
高橋「事務所の備品みたいなものですよ。それの防虫剤とか経費でいいんです。」
井上「木は減価償却の対象にもなりますよね。表で見ましたけど。りんごの木20年とかナシは26年とか。」
※減価償却とは何年も渡って使うものを買ったとき、費用を年数に分けて考え、毎年少しずつ税金を納める。買った年だけドーンと経費増えたりしなくなる。
高橋「あれは、りんご農家とかの話なんですよ。器具備品の植物は貸付用のものが2年、その他のものが15年。」
林「減価償却の期間(耐用年数)って誰が決めてるんですか?」
高橋「国ですね。財務省の人が決めてますね。ほとんどずっと変わらずに。変わった時はマジか!みたいなかんじになったりするので。」
大北「税理士の人の『マジか』はそんなところにあるんですね!」

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黄色いスポーツカーも仕事に使えば経費だろうか? 痛車は?

大北「あっ、マスク外そう運動の車が通りますよ。」
井上「やってますねぇ。車も減価償却の対象ですよね。」
林「車もちょっと派手すぎやしませんかみたいなことはあるんですか?」
高橋「大丈夫です。僕は黄色いFIATですけど、経費にしてますよ。」
井上「営業車にロードスターとかないだろっていうのはないんですか?」
高橋「早く行きたいんですって言えば大丈夫です。車って判断が難しいところですけど。」
井上「悩まれるケースあります?」
高橋「ワインバーが買ったランボルギーニはちょっと。あれは、迷ったというか、嫌でしたね。」
井上「税理士としてどうこうじゃなくて普通に嫌(笑)。」
高橋「経費になりますかねって言われて、なりません以外の回答が出てこなかったですもんね。」
林「軽トラだったらいいんですか?」
高橋「軽トラだったらいいと思います。」
大北「軽トラに痛車の装飾はどうですか? アニメ絵のカスタムに数十万。」
高橋「それはそれでいいと思いますよ。本当は車種とか風貌とかじゃなくて、何に使ってるかだけだと思うので。」
大北「ランボルギーニをがっつり商売に使っていたらいいわけですね。」
高橋「全然いいです。」
林「ランボルギーニ、トランクあるのかなぁ。」
高橋「あとは、運ばなければいけないワインさんたちが大事な子たちだから、送迎にはいい車でっていうなら止めはしないですけど。」
井上「ランボルギーニのエンジン音でワインがおいしくなるんだとか。りんごにクラシックを聞かせるみたいな。」

税の話はまだつづきます! 後編はまた来週に!

高橋さんと井上さんの本「桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?」好評発売中! 

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