タクシー運転手が受ける「地理試験」とは?
タクシー運転手になるためには、普通二種免許という免許が必要なのは、皆さんご存知だとおもう。通常は二種免許を取得し、タクシー会社に入社すればタクシー運転手として仕事ができる……のだが、東京、神奈川、大阪の特別指定地区の場合、国土交通省の国家試験である「地理試験」というものを受験し、合格しなければいけない。
地理試験は、通りの名称、交差点の位置と名称、ランドマークや各種施設などの位置と名称、高速道路の出入口などの位置と名称などから、全40問が出題され、32問以上正解すれば合格となる。
この地理試験問題は、予習するための問題集があり、東京エリアの試験問題集は、南砂町の東京タクシーセンターに行けば、受験する予定がない人でも買える。
地理試験は、タクシー運転手を志望している人にとっては、かなり難しい試験だという。しかし、試験内容は、自分の住む東京の町のことを問うているので、ふだん東京で暮らしている人にとっては、難問ということもないのではないか。
ぼくは、鳥取から上京して25年、すでに故郷に住んだ時間よりも長く東京に住んでいる。施設名やら地名だったら、わりとわかるかもしれない。
そんなわけで、東京在住歴の長い人々と、現役のタクシー運転手に参加してもらって、みんなで過去問を解いてみることにした。
参加してもらったのは、編集部の古賀さん、現役タクシー運転手のぜつさん、ライターの北村ヂンさん、編集部の林さん。
ぜつさんは、デイリーポータルZの企画記事にたびたび参加してくれるタクシー運転手で、詳しくはこちらの記事などをみていただきたい。曰く、ふだんは経堂付近で営業することがほとんどで、地理試験はもちろん過去に一度合格はしたものの、今はあまり自信がないという。
林さん、北村さん、及びぼくは、自動車の免許をもっていな……かったのだが、北村さんは、今年の春に普通免許を取得した。ただ、林さんは生まれてから50年、ぼくと、北村さんは、20年以上、東京に住んでいる。
古賀さんは、普通免許はもっているものの、ペーパードライバーで、車を運転することはほとんどないが、東京在住歴は40年ちかい。
地理試験問題はこちら
以下、みんなで解いてみた地理試験の問題だ。後半で答え合わせをするので、興味がある人は、自分でも解いてみてほしい。
※下記問題は、公益財団法人東京タクシーセンター刊『輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験 地理問題例集』2019年p4-7及びp70-71からの引用。なお、引用にあたり、わかりやすくするために、問題文の一部を修正した。
※編集部より 問題は公益財団法人東京タクシーセンターホームページでも掲載されています。みなさまもぜひ!
地理試験問題
問題① 次の幹線道路名および交差点名を「幹線道路・交差点図」の中から探し、その番号または記号を解答欄に記入しなさい。
問題② 次の施設等を「施設関連図」の中からさがし、その番号を解答欄に記入しなさい。
問題3 次の施設・建物等は何市または何区にありますか。右記の解答群の中から選び、その記号を解答欄に記入しなさい。
問題④ 次の『乗車地』から『降車地』までの、最短経路で経由する交差点名を下記解答群の中から順番に選び、その記号を解答欄に記入しなさい。
問題⑤ 次の幹線道路の近くにある駅と、その駅付近にある施設・建物等を右記のA群およびB群の中からそれぞれ選び、その記号を解答欄に記入しなさい。
普段営業している場所以外はやはり難しい
本来、試験は60分あるらしいけれど、全員30分ほどで答え終わった。(以下敬称略)
古賀:私は、問題④がもうダメ、まったくわからない。哲学堂がどこにあるのかもさっぱりわからない……。
林:そんなフィクションみたいな名前の建物がね。
古賀:そう、実在するかどうかも、ほんとにあるのっていう……。(※あります)
ぜつ:私は(普段、経堂(きょうどう)付近で営業しているため)皇居より東側はまったくだめですね……。あそこでなにか区切られているような感じはしますね。
ぜつ:この地理試験、個人タクシーになるときは、さらに難しい地理試験があるらしくて、それは覚えなきゃいけない項目が8000項目ぐらいあるんですよ。ただ、無事故無違反だったら、その試験は免除されるんです。僕は免除されたんですけど、受けた人は1年以上かけて勉強してやっと合格するみたいな……。
西村:うわー、なんかそれ、試験というよりも罰みたいですね……。
林:まえ、タクシー乗ったときに、運転手さんが「尾久(おぐ)」のことを「オキュウ」って言ってて、うわーこれつかねーぞって焦ったことありますけどね。
西村:地理というか、地名の読み方とか、そういう土地鑑みたいなものは人それぞれですからね。
ぜつ:本当は覚えてなきゃいけないんですけど、やっぱり普段行かないところだと忘れちゃいますね。
林:地名の読み方だと「等々力(とどろき)」のことを「ララリキ」って読んでる人がいて、それからずっとララリキの呪いにかかっちゃって、いまだに僕「ララリキ」って読んじゃいますもん。ララリキ渓谷。
古賀:語感がいい! 楽しそう!