特集 2021年9月29日

東京のタクシー運転手が必ず受ける「地理試験」を解いてみる

タクシー運転手の「地理試験」を解いてみました

東京でタクシー運転手になるためには、東京の地理について出題される「地理試験」に合格しなければいけないらしい。これは、東京の地理をどのくらい理解しているかを確かめるための試験だ。
なにやらおもしろそうなので、みんなで集まって問題を解いてみた。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

前の記事:たぶん日本一でかいカントリーサインを見に行く

> 個人サイト 新ニホンケミカル TwitterID:tokyo26

タクシー運転手が受ける「地理試験」とは?

タクシー運転手になるためには、普通二種免許という免許が必要なのは、皆さんご存知だとおもう。通常は二種免許を取得し、タクシー会社に入社すればタクシー運転手として仕事ができる……のだが、東京、神奈川、大阪の特別指定地区の場合、国土交通省の国家試験である「地理試験」というものを受験し、合格しなければいけない。

地理試験は、通りの名称、交差点の位置と名称、ランドマークや各種施設などの位置と名称、高速道路の出入口などの位置と名称などから、全40問が出題され、32問以上正解すれば合格となる。

地理試験問題集、1冊930円です

この地理試験問題は、予習するための問題集があり、東京エリアの試験問題集は、南砂町の東京タクシーセンターに行けば、受験する予定がない人でも買える。 

南砂町の東京タクシーセンター、地理試験はここで行われるので、タクシー運転手なら必ず行ったことがあるはず

地理試験は、タクシー運転手を志望している人にとっては、かなり難しい試験だという。しかし、試験内容は、自分の住む東京の町のことを問うているので、ふだん東京で暮らしている人にとっては、難問ということもないのではないか。

ぼくは、鳥取から上京して25年、すでに故郷に住んだ時間よりも長く東京に住んでいる。施設名やら地名だったら、わりとわかるかもしれない。

そんなわけで、東京在住歴の長い人々と、現役のタクシー運転手に参加してもらって、みんなで過去問を解いてみることにした。

左上から、古賀さん、筆者、ぜつさん、左下から北村さん、林さん

参加してもらったのは、編集部の古賀さん、現役タクシー運転手のぜつさん、ライターの北村ヂンさん、編集部の林さん。

ぜつさんは、デイリーポータルZの企画記事にたびたび参加してくれるタクシー運転手で、詳しくはこちらの記事などをみていただきたい。曰く、ふだんは経堂付近で営業することがほとんどで、地理試験はもちろん過去に一度合格はしたものの、今はあまり自信がないという。

林さん、北村さん、及びぼくは、自動車の免許をもっていな……かったのだが、北村さんは、今年の春に普通免許を取得した。ただ、林さんは生まれてから50年、ぼくと、北村さんは、20年以上、東京に住んでいる。

古賀さんは、普通免許はもっているものの、ペーパードライバーで、車を運転することはほとんどないが、東京在住歴は40年ちかい。

 地理試験問題はこちら

以下、みんなで解いてみた地理試験の問題だ。後半で答え合わせをするので、興味がある人は、自分でも解いてみてほしい。

※下記問題は、公益財団法人東京タクシーセンター刊『輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験 地理問題例集』2019年p4-7及びp70-71からの引用。なお、引用にあたり、わかりやすくするために、問題文の一部を修正した。
※編集部より 問題は公益財団法人東京タクシーセンターホームページでも掲載されています。みなさまもぜひ!

地理試験問題

問題① 次の幹線道路名および交差点名を「幹線道路・交差点図」の中から探し、その番号または記号を解答欄に記入しなさい。

05.jpg
①幹線道路名と交差点名の問題
06.jpg
幹線道路交差点図(クリックで大きなサイズの画像が開きます)

問題② 次の施設等を「施設関連図」の中からさがし、その番号を解答欄に記入しなさい。

②施設名の問題

 

08.jpg
施設関連図(クリックで大きなサイズの画像が開きます)

問題3 次の施設・建物等は何市または何区にありますか。右記の解答群の中から選び、その記号を解答欄に記入しなさい。

③施設・建物等がどこにあるかの問題

問題④ 次の『乗車地』から『降車地』までの、最短経路で経由する交差点名を下記解答群の中から順番に選び、その記号を解答欄に記入しなさい。

④最短経路の問題

問題⑤ 次の幹線道路の近くにある駅と、その駅付近にある施設・建物等を右記のA群およびB群の中からそれぞれ選び、その記号を解答欄に記入しなさい。

⑤幹線道路と駅と施設の問題

普段営業している場所以外はやはり難しい

本来、試験は60分あるらしいけれど、全員30分ほどで答え終わった。(以下敬称略)

古賀:私は、問題④がもうダメ、まったくわからない。哲学堂がどこにあるのかもさっぱりわからない……。

林:そんなフィクションみたいな名前の建物がね。

古賀:そう、実在するかどうかも、ほんとにあるのっていう……。(※あります)

ぜつ:私は(普段、経堂(きょうどう)付近で営業しているため)皇居より東側はまったくだめですね……。あそこでなにか区切られているような感じはしますね。

経堂と皇居の位置関係。皇居より東側には、中央区、台東区、江東区、墨田区、江戸川区などがあります

ぜつ:この地理試験、個人タクシーになるときは、さらに難しい地理試験があるらしくて、それは覚えなきゃいけない項目が8000項目ぐらいあるんですよ。ただ、無事故無違反だったら、その試験は免除されるんです。僕は免除されたんですけど、受けた人は1年以上かけて勉強してやっと合格するみたいな……。

西村:うわー、なんかそれ、試験というよりも罰みたいですね……。

林:まえ、タクシー乗ったときに、運転手さんが「尾久(おぐ)」のことを「オキュウ」って言ってて、うわーこれつかねーぞって焦ったことありますけどね。

西村:地理というか、地名の読み方とか、そういう土地鑑みたいなものは人それぞれですからね。

ぜつ:本当は覚えてなきゃいけないんですけど、やっぱり普段行かないところだと忘れちゃいますね。

林:地名の読み方だと「等々力(とどろき)」のことを「ララリキ」って読んでる人がいて、それからずっとララリキの呪いにかかっちゃって、いまだに僕「ララリキ」って読んじゃいますもん。ララリキ渓谷。

古賀:語感がいい! 楽しそう!

尾久と等々力の位置
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