特集 2022年1月11日

日本一高い看板はここ! 屋外広告を見て渋谷を歩く

屋外広告の専門家、光伸プランニングの原壯さんと渋谷を歩く

渋谷は広告でできている街だという文章を読んだことがある。屋外広告の専門家に聞くと、短期媒体では最も渋谷が激戦区なんだという。

屋外広告の世界とはなんだろうか。渋谷駅前を出発してセンター街を通り抜けた前回の最後からの続きで、今回はまた渋谷駅前に戻るまで。これで看板のこと、すべてわかった気がする。(前回の記事はこちら

動画を作ったり明日のアーというコントの舞台をしたりもします。プープーテレビにも登場。2006年より参加。(動画インタビュー)

前の記事:日本で最も看板激戦区の渋谷を専門家と歩く

> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

看板は一つのメディア

前回に引き続き、渋谷の看板を一緒に見てくれる専門家は屋外広告の会社である光伸プランニングの原壯さん。 

ここで屋外広告の少しおさらい。看板は一つの媒体であり、各々にオーナーと広告代理店がいる。代理店がクライアントに広告を売って、広告をデザインし、原さんのような会社に印刷や施工を頼む。

屋外に広告を掲示する専門家である原さんとデイリーポータルZ林さんと3人で渋谷を歩く。

HITと見える看板、あれを見て「空いちゃってる」と原さんは言うが…​

看板広告をまとめて売る形がある

原 :けっこうこの辺は広告が空いちゃってます。
林 :そっか、これ代理店の看板ですね。
大北:これ見たことありますけど広告代理店なんですか?
原 :これはヒット(HIT)さんっていう媒体社の看板です。ヒットさんって、渋谷で10面セットでウン00万ってまとめて売ったりしてますね。高速道路にもあります。ネットワークボードと言って、高速道路に30面ありますよ、とか、渋谷地区に10面・15面ありますよってまとめて一つのクライアントに売る。そういう手法をとられている会社さんです。
林 :ああいうの見て電話する人もいるわけですか。
原 :いると思いますね。だいたい空いてるところは電話番号を入れる。最近空いてるところが多いから。
大北:おー、ここもそうですね。すぐ近くに

この看板見たことある…!
山下智久と書かれたポスターが6枚貼ってある看板

今はポスターが看板になっている

原 :これ見てください。ポスターボードと言って、ポスターを同じビジュアルで貼ってあるんですけど、最近こういうのが多くて。これを50ヶ所とか100ヶ所とか。大きな場所じゃなくて、広告費も高くないけど面数いっぱい貼れて、制作費も安い、という屋外広告が流行ってる。銀座、新宿、原宿エリアとかも。原宿エリアだと同じクライアントが100面ぐらい同じものをあちこちに。許可証も取ってるんです。ほら、屋外広告許可を取ってますよって。

許可証とってますよマークがある

林 :この場所は借りてるわけですもんね。
原 :サイズにもよると思いますが、オーナーさんから借りて月10万ですよとか、5万ですよとか。そういうふうに借りてネットワークしてる。屋外広告って高所とか大きいとこだと制作施工の値段が高くて一回出すと何百万になります。これだと制作費は100枚出しても50万とか100万以内で収まります。面数稼げて露出できるからお得。
大北:なるほど、一個あたりが安いんですね。
林 :渋谷の明治通り沿いでも見かけてなんだろうなって思ってました。
原 :けっこう最近流行ってるんです。

バス停が今デジタルサイネージ化

渋谷や東京の都心で見かけるバス停のデジタルサイネージ

原 :バス停の広告も最近LEDになってますね。昔あれも印刷だったんですけど。
林 :今、紙の看板がサイネージに変わってるんですか?
原 :交換ラクだし、何社も入れられるし。紙だと交換できないから。最近増えてます。

海外ファッションブランドの看板

海外のブランドは世界的にまとめている

林 :ファッションブランドはこだわりあって色校が細かかったりとかありますか? 
原 :ここぐらいのファッションブランドになると、中国でまとめて作ったりする可能性もあります。グラフィックはさすがに国内で作ってるんじゃないかな。僕らも海外のブランドのウインドウとかもやりますけど、資材は海外から送られてきて、組み立てて不足の部分は日本で補って納品する。
林 :本社がこういう感じって、決めちゃうんですね。
原 :一括でコントロールする。
林 :きっとシンガポールも日本もこんな感じなんでしょうね。
大北:世界で統一されてるんだ。
原 :このウインドウサイズだったらこのセットがふたつとかひとつとか決められて入ってくる。

真ん中にあるもの、先程の山下ポスターボードである

林 :あ、また山下さんのポスターがあんなところにある。
原 :脚立とかはしごで貼ってますよ。職人とバイト一人とか。誰でも貼れちゃう。
林 :もうちょっと大きいもの貼ってもいいのに。
原 :(ビルの屋上にある広告を見て)あれもネットワーク系ですね。一ヶ所だけだと広告が埋まらないというケースが多くて。原宿でも表参道でもどこの街に降りても同じ広告が見えるようにとか。大きくなくていいからいっぱい出せる媒体です。ちょうど今のり塩があちこち出てますね。サンヨンボードっていうんですけど、3m×4mなんで、サイズはいろいろあるんですけど、だいたいそういう呼び方をしていて。
大北:3m×4mが一般的なんですね。
原 :そう、このタイプのボード。
林 :3m×4mの制作物を作っておけばいろいろなところに貼れる。
原 :これは紙なんです。コストを下げるために水糊で貼ってる。
大北:このボードはどこか一社が持ってる?
原 :JUNさんって。アパレルのJUN。これ、※ジュンボードって言うんですけど。ジュン アンド ロペ・エンターテインメントっていう広告媒体を扱う会社があって。ジュンさんが走りですね。ジュンさんが一番最初に自分たちのブランドの広告を出すのに媒体を作って、それを飲料メーカーさんに売ったりとか、お菓子メーカーに売ったり、他社に売るようになって屋外媒体事業として事業化して。

※呼称が色々出てきたが 3m×4mの看板サイズがサンヨンボード、ポスターで構成された看板がポスターボード、同じ看板をたくさん出すのがネットワークボード、JUN社ではこういう枠の看板を「FASHION BOARD」と呼称し、外部からはジュンボードと呼ばれる。

大北:え、70年代にガーンっていったブランドのジュン?
原 :70年代とか80年代ですかね。屋外の広告を出す人がジュンボード空いてる?って聞いたりする。みなさんご存じないかもしれないですけど。
林 :まさかあのジュンとは思わなかった。ジュンは安泰ですね。

新しく建ったパルコの壁。看板いくらでも作れるだろうに

建築家は看板を嫌う

林 :パルコはあそこの壁に広告を貼ってもいいのに貼らないですね。
原 :建築家さんが作ったビルは広告を貼らない傾向が。
林 :確かにヒカリエも貼ってないですね。
原 :リノベーションと建て直しで再開発、ってなると広告は排除されるか、館内にサイネージが建てられて終わるかですね。
林 :新幹線の野立看板もそうですけど看板って嫌われがちですね。新幹線の看板面白いですけどね。

林「広告がないとオフィス街っぽくなりますよね」たしかに
同じく山下ポスターボード、なぜ交互にはられているのかは見た目じゃなかった

原 :これ、なんで交互に貼られてるかというと、渋谷区が同じポスターを横に並べることを許してないんです。
大北:へえ!
林 :行政がそこまで!
原 :ちょっと理解しにくい規制ですけど、渋谷区ルールがあるんです。
林 :渋谷区側も交互に並べりゃいいってことじゃねーよって思ってるかもしれないですね。でも結果的にいい感じになっていて。
原 :大きな絵柄を貼れないようにとか、いろいろあの手この手で規制をかける。

原 :VANSだ。これも横に並んで貼っちゃいけないんで。B1サイズですね。 
スパンドレルという板状のものに貼られている
いったん広告です

視認性が値段を決める

林 :これだけ大きいと見るためにも距離が必要ですね。こんなふうに見上げる人いない。
大北:向こうにいる人が見る用?
原 :さっきののり塩じゃないですけど、そこまで高さや大きさはいらなくて。日本の場合はいっぱい出てるほうが広告効果としてはあり。
林 :高さって値段に関係あるんですか? 
原 :ないですね。どこからでも見えるかとか、視認性があるかとかが決め手になってくる。交差点の角だったり、遠くから見えるところ。あとは値段が高いところから決まっていって。あそこがいくらだからここは7掛とか。

渋谷109の看板、このときはアップル社

看板の価格は一番高いところから決まっていく

原 :渋谷って一番上のところは109の1500万とかが基準になっていて、視認性がこれだけ落ちるからとか影だからとか、じゃ半額で、とか決まっていく。駅前通りになると700万〜800万で、だんだん奥に入っていくとまあまあ安くなっていく。
林 :渋谷って歩行者が中心じゃないですか。高速道路だとか車用だと値段も違ったりしますか?
原 :違うでしょうね。高速道路や幹線道路の大型媒体は、もともとたばこの看板だったところが多いんですよ。
大北:え? たばこの看板?

たばこの看板がたくさんあった

原 :タバコの広告に規制が入って、一切外に出せなくなったのが十数年前かな。今の渋谷のヤクルトとかが付いてるビジョンのとこって、マイルドセブンの広告がずっと付いてたんです。20年前とか。

高速道路沿いもほとんどタバコの広告でキャメルとかキャスターとか広告が付いていたのが、一切出せなくなって。それを媒体会社や代理店が看板を集めて商品企画して、名古屋・東京・大阪で30面、半年で数千万です、ってメガトンボードみたいな言い方をして、アップル社が付いたりとか。携帯とかスマホが出る前の屋外広告が人気だったときです。

上に切れてるがスクランブル交差点のヤクルトのサイネージ

林 :たばこの会社は自社で看板を持っていたんですね。
原 :持っていたんです。(注:正確には媒体社や広告代理店から「買って」いたそうです。業界的に年間契約で買っている媒体は「持っている」という言い方をするとのこと)
聞いた話ですけど、たばこ会社の基準はすごく厳しくて道路からどれぐらいの角度で見えるとか決められていて。たばこ会社が出してる看板がネットワークされているならそれはぜひともみたいな、流れがあったらしく。
林 :たばこの規制でそんな市場ができたんですね。
大北:米軍払い下げみたいな、元JT看板。
原 :今となっては調べられないですけど、横長の大きな媒体とか、道路沿いとか、意外にたばこだったかもってところはありますね。
林 :たばこが残してくれたんですね。
原 :そこをコカ・コーラさんが買ったりとかアップルさんが買ったり。
林 :今高速道路はお墓の広告が多いですね。
原 :だいぶナショナルクライアントから変わっていきました。
林 :きぬた歯科が入ることになるんですね。
大北:私達の大好きな人たちが…。

最初はグッチやシャネルが走らせていたというトラック広告も今は…

原 :光るトラックも最初はカシオさんがやったり、映画とかナショナルブランドが競ってやってたんです。シャネルが3台ぐらい広告繋げてずっと走らせたりとか。今はほとんどホストかキャバクラか、求人か漫画喫茶か。
林 :バニラがね。
大北:にぎやかにやってますね。
原 :だいぶ移り変わりが。
林 :そうやって変わっていくんですね
大北:媒体というものはだんだん庶民的になっていくのか…。

看板の最盛期はたばこが規制された後

原 :屋外広告は渋谷もまだニーズはあるんですけど、全盛期は15年ぐらい前で。NTTdocomoが新機種出しますって言うと、渋谷ジャックでau、docomo、Vodafoneどこが抑えるのか、みたいな。109から見えるところは全部docomo、とか。
林 :景気のいい時代ですね。
大北:バブルよりそこなんですね。
林 :たばこの看板がリリースされたりして。
原 :たばこの看板が設置されたときも、タバコの会社の広告で潤った人たちはいっぱいいたらしいです。全国リサーチして、いい場所だったら買ってくれるので。マンションなら管理会社にアタックして、管理会社に交渉して、屋上に看板付けさせてくれって。年間これだけ払うから修繕費が安くなるぞという話から始める。
大北:ほえ~!

前回学んだルール、看板広告は1壁面の30%までという規制があります

まだまだ看板を描く職人たちもいる

林 :あのビアホールは30%超えてませんか。
原 :これは横も含めての壁ですね、繋がってるから30%は超えない。
大北:区の条例に違反したらとっちめられるんですか?
原 :罰金があるぐらいで、実はそんなに厳しくない。
林 :ビアホールの看板は全面だけど下品じゃない。
原 :かわいいですよね。これ描いてますね。
林 :どうやって描いてるんですか?
原 :原稿があって、トレペみたいなやつに下書きをして、中を埋めて塗ってくみたいな。壁画の専門の職人さん集団ってまだいるんですよ。
林 :大きいトレペがあるんですか?
原 :分割にしてテープで張り合わせながら位置を出して足場組んで。
林 :沖縄って建物に直に描きますよね。
原 :描いてるのは描いてるので味があっていいですよね。
林 :壁がデコボコなのにきれいに描いてますね。
原 :腕がいいんじゃないですか。

こういうのも一つ一つ看板である

でかい印刷の今、昔

大北:基本的に国内に印刷業者があるんですか?
原 :国内にありますよ。5m機とかでかいの持ってる会社さんは横浜とか、神奈川とか、大阪とか福岡にもあるので。
林 :インクジェットができる前はどうやっていたんですか?
原 :それこそ僕がこの仕事する前ですけど、美術のネコっていう出力機があって。テレビ局の美術会社さんが持っていて。もっと粗くて解像度も低い、遠くから見れば絵がわかるけど、近くから見たらぼやぼや、みたいな。それがはしりですかね。
林 :昔の看板の見ていた、もやっとしてた印刷はそういう機械だったんですね。

原 : 3Mさんが出てきて、トナーでデジタル印刷をするのがその次で。その後からインクジェットですね。インクジェットは色が最初は合わなくて大変だったんですよ。
林 :再現されないってことですか?
原 :同じものを印刷しても昨日と今日で色が変わるとか。そんなのザラだったので。湿度とか温度とか、インクそのものの安定性とか。出力機そのものの安定性がだめで。
林 :プリンターだからってスイッチ一つで出てくるわけではないんですね。
原 :今でも調整は必要です。素材は何がいいかとか、屋外だとそれぞれの場所が違うので。貼った後剥がれなければだめだし、剥がれたくないところが剥がれちゃだめだし、施工絡みというか。

剥がれなかったもの

剥がれないときが悲劇

林 :剥がれちゃったクレームはあるんですか?
原 :ありますね。最近はないですけど。過去に。
林 :逆に剥がれないとかもあります?
原 :あります。剥がれない時は悲劇。糊が残ってプチプチ切れるので剥がすのに半日とか1日とか。冬だと糊が固まっちゃうから特に剥がれない。地獄のよう。屋外は夏は暑いので、夜に施工することが多いですけど、たまに日中に行くとシートが伸びるんです。3m×3mに貼ろうと思っても、10cm伸びて絵が合わないとか。中に入らないといけないクレジットとかの文字が出ちゃうとか。
林 :どうするんですか?
原 :あらかじめ計算してあまり伸ばさずにそーっと施工するとか。あらかじめ小さめに出力しておくとか。
林 :夜はシュッとなるんですか。
原 :なります。気温差でギュッとなります。シワ入ってますって言われても夜になって消えますとか、翌日に消えますって説明して。そのへんが難しい。
林 :夜になって消えるとかほんとかなと思いますけど。
原 :消えなくてクレームになったとかも。屋外はいろんなことに左右されるから難しいです。

原 :あと作業車が入れないところとかはブランコ、窓掃除のブランコの人たちが上から降りてきて施工するとか、うちでもけっこうやったりしますけど、アクロバットにやる集団がいたり。鳶職みたいな感じ。
林 :その仕事はたくさんありそうですね。これだけ看板が多いと。
原 :多いと思いますよ。でも、全盛期よりは減ってると思います。

なぞのビル。解体前なのか看板めいたものが全部はがされてココイチとタイ料理屋が

原 :渋谷はルールをちゃんとしているというか、うるさいと言えばうるさいんでしょうね。
大北:ほかの街に比べて。
原 :でもみんな真面目だからメチャクチャなことはしないですよね。

広告の街渋谷を象徴するようなビルが

林 :すごいな。こんなだったんだ。このビル。
大北:これは看板のあとですか?
原 :看板が付いてましたよ。短期の媒体が売ってたと思う。
林 :いまはココイチしかやってないのかな。
大北:これがさっきの直接貼るタイプの。
原 :そうです。スパンドレル。
林 :この建物の壁の外側にもう1枚ついてますね。
原 :あの上の方のは剥がそうと思って剥がれなくてあのままにしてるんですよ。
林 :剥がしたかったんでしょうね。
原 :あまり状態が良くないと上から3枚4枚重ねたりするんです。下の方にタレントさんの昔の写真とか、契約終わった広告が出てくるって話がけっこうあったりする。
林 :その前を剥がさずに貼っちゃう人がいるわけですね。
原 :剥がれないから貼っちゃう。
林 :いつか剥がす人が。
原 :ババ抜きみたいな。誰が最後やるか。

これもオーニングといって広告にあたる場合があるとか

林 :レストラン入り口の屋根というか。これも広告なんですね。
原 :これも屋外広告にあたる場合があるんです。その場合は申請を出さなきゃいけなかったりする。オーニングといって、テントみたいな。ここはたぶんビルの敷地だからはみ出てないんでしょうけど。

しわしわっとしてあるのは糊のあとだろうと

糊とともに人類が発展する

原 :これも重ねて貼ってある。ムラムラしてるのは糊が残った跡なんですよね。
林 :前のやつが剥がれなかった。
原 :剥がそうと思ったけど剥がれなかったとか。
林 :いいや、貼っちゃえってなったのか。
大北:前の痕跡が見えてくるのか~。
原 :こんな何mmでも糊が残るとわかっちゃうんです。そのために糊を落とさなきゃいけない時は糊を落として。
林 :糊を落とす洗剤があるんですか?
原 :ホワイトという白ガソリンで落とすか、火気がだめなところは糊落としのスプレーを使ったりしますけど、だいたいオレンジオイル系とか。それでも落ちなければトルエンを使いますけど、屋内だと持ち込みができないので。
林 :どれぐらい落ちるのか見たいな。プロが使う糊落とし。
大北:ものはどんどん良くなるわけですよね。糊自体も。
原 :だいぶ良くなって、良いところのものを使えばそんなにトラブルもない。
大北:なるほど、人類は発展していってますね…。
原 :糊がしっとりしてるとか糊が硬いとか貼った職人さんによって違うみたいです。

林 :看板って場所管理するのめちゃくちゃ大変ですね。渋谷のどこに看板があるか。場所ごとに期間があって、どこが貼るとか。
原 :だいたい媒体会社は全部バラバラだから、貼る方も大変。
林 :代理店もそうですけど。
原 :施工もふたつの看板が重なっちゃったりすると、2チーム作らないといけないのか1チームでできるのか。おしりが決まってるじゃないですか。人がいる間はできないので。お金がかかってもいいので2チームでやるとか。時間との勝負。

いったん広告です

施工を優先させて看板が布になっている

林 :雨が降ったら作業は中止ですか?
原 :最近シートじゃなく幕になってきてるのはそのへんも大きくて、糊じゃないので、土砂降りでもロープを結んじゃえば広告を出せる。そういう側面もあるんです。

渋谷スクランブル交差点すぐ近く。シート。道路を規制して夜中に貼るそうだ

大北:糊とシートだとキレイなんですか?
原 :あそこの壁なんかはシートじゃないとできないじゃないですか。裏に回らないので。でも最近はシートじゃなくて、幕をしっかり巻くというところが多いですね。
林 :あそこの壁の広告はシートなんですね。
原 :あれはシートです。すごく大変だと思います。建物側2車線潰して中央分離帯を作って、ガードマン全部立てて歩道のところにも全部バリケードして、カラーコーンを2、3mおきにおいて。
大北:昼間にやったら大渋滞になるやつ。
原 :ここはけっこうめんどくさいところ。
林 :ゴンドラではなく?
原 :下に作業車だと思いますよ。
林 :こんなに高いところでも?
原 :全然いけます。一番高いところで50mいけますから。
林 :10階建てぐらい?
原 :そこまでいかないですね。7階から8階。直線で行けば10階建ての上までいけるんですけど、かごをそっちにこっちにと動かせないから。

あんなところに貼ったらすぐ変えるのもったいない

林 :この広告、早々にやめないでほしいですね。
原 :たぶんそんなに長くやらないんじゃないですかね。
林 :半年ぐらい貼っておいてほしい。
原 :ああいう幕(写真右の11.18と書いてある広告)は上から降りてくる。窓掃除の職人さんが4人ぐらい降りて、ひもを。
林 :全部ひもを結ぶんですね。
原 :一個ずつ穴に通してギュッギュって引っ張りながらブランコで降りてきてやる。

MAGNETの文字の上に枠がある

大北:あれも看板なんですね。
原 :ここは懸垂幕なのでレールが入ってます。昇降機が付いている懸垂幕。
林 :簡単にできるんですね。
原 :誰でもできる。上と下に棒をセットしてぐるぐるってやるとレールの下を降りてきて。

林 :このビルの壁に貼っていいですかって代理店が行ったわけですよね。
原 :ここ7〜8年前ですけどやったことがあります。
大北:オーナーが別にいて許可とるんですか?
原 :共同所有になってる場合がけっこう多くて。109も共同所有だったりするので。一社に声をかけても、そこから先のオーナーに許可をもらったりとか、大型のビルになると大変です。
林 :めんどくさそうですね。
原 :中型のビルならワンオーナーなのでその人がいいよって言えばやらせてくれるけど、大型の所有者だと簡単ではない。

大盛堂書店のビル。看板の出し方について指摘が入ったという噂があった

原 :この広告って全面だったんですよ。今片面しか広告がついてないですけど、看板が向こう側にも付いてるんです。今までは折れて全部の広告だったんですけど、渋谷区から指摘が入って、広告がでかすぎるって、半分に削らされた例なんです。10分の3ルールが適用されたらしいよって一時話題になって。どこがどう適用されたかわからないですけど、そういう情報だけは出回る。
大北:ほお~! 業界裏話が今私達のもとに!

グランサガと書かれてるところも工事がそろそろ

大北:あれ、もっと大きくしようと思えばできるんですかね。
林 :グランサガのとこ。
原 :前は壁面広告が3面付いてて。東横線の渋谷の媒体で一番高いと言えばここで1800万の媒体が付いていたんですけど。
林 :渋谷で一番高かったら日本で一番ぐらい?
原 :じゃないですかね。日本で一番高い媒体だと思いますよ。銀座の長期媒体で比べると別ですけど、短期で言えばここが一番高い。

取材協力

光伸プランニング
https://koshin-p.jp/company/


広告の街、渋谷の屋外広告について知る

渋谷が広告の街だと聞いたことはあったが、そこはターミナル駅なのはそもそもだが、JTがたばこの看板をたくさん持っていたりだとか、スクランブル交差点で視認性がよかったりだとか、オーナーの開放具合だったりだとか文化的要因以外にも看板の事情のたくさんあるようだ。

そしてだんだんと大きな看板よりも小さくたくさんの看板が好まれたり。渋谷のマークシティにドーンとダイソーが入ったり、ホストのトラックが走っていたり、高速道路沿いの大きな看板が墓地や歯科のものになっていったり。ちょっとこう、小さくなっていく日本が垣間見えてしまって、胸がキュンとしてしまったのだった。悪い意味で。

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