特集 2021年6月15日

どうして街はこんな形なのか?建築の専門家と街を歩く

街は建物だらけだがなんでこんな形なのか? 建築の先生と街を歩いた

かねてから不思議だった。どうして家はこんな形をしているのか。効率を考えたら四角い直方体がみちみちに並んでるはずなんじゃないか。

専門家と東急沿線の街歩きシリーズ、今回は念願の建築の専門家と街を歩く。

神田さんによると私達が住んでいる街がこんな形をしているのは法律によるところも大きいという。そういえばよく分かってなかったこと、まだまだたくさんありました。

動画を作ったり明日のアーというコントの舞台をしたりもします。プープーテレビにも登場。2006年より参加。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

高名な先生を呼んだ

なんで家ってあんな形なんだろうか。なんで街はこの高さなんだろうか。建築に詳しい人と街を歩いて何から何まで洗いざらい教えてもらいたい。

そう思って建築に詳しい人を探したら高名な先生がつかまった。東京大学名誉教授、日本大学理工学部客員教授である神田順さんと東急東横線祐天寺駅周辺を歩くことになった。

神田さんは東大で32年間先生をやっていて著書もたくさんある。大田区長選にも出たそうだ。「なんで家は真四角じゃないんですか?」とかアホな質問をして申し訳ないが、恥は筆者が引き受けるのでみなさんは思う存分へぇへぇ言わされていってほしい。

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神田順さん。長らく東大で教鞭をとられた方。建築の中でも構造設計が専門だそう

大北:今日は東横線祐天寺駅ですがご縁があるんですか?
神田:祐天寺には電車からも見える聖パウロ教会というのがあるんです。僕は前に竹中工務店に居たんですけど、そこのお堂を施工するにあたって屋根の設計がそのままじゃ不安だからやり直そうといってかかわることになって、最後現場で計測まで立ち会ったんですよね。

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祐天寺駅前からスタート。神田さんが屋根の再設計をして現場まで立ち会った教会があるそうだ

建築は設計者と施工者2つある

林 :「屋根の部分が不安だから」というのはもともと設計された方から施工者の建設会社に話があったんですか?
神田:建築物になにか問題があると施工者が対応しないといけないんですよね。なので問題が起きそうなものに対しては施工者である建設会社は自分たちでチェックする。それはある程度意識を持った会社じゃないとできないとは思います。
逆に本来設計者がちゃんとやってるのに、余分なことをやらせるみたいなこともある。両方とも良心的にやっていればうまくいくものの、そういうケースは今もしばしばあります。この前の外の階段が落っこっちゃったやつも設計がどのぐらい関係して、施工がどのぐらい関係するかというのがあるんでしょうね。
林 :設計と施工の2つあるんだ。
神田:施工者が勝手にやっちゃったんだって報道もされてますけど、安くていいものができれば、変更してそうしたほうがいいわけですよね。でも安くていいかげんなものになっちゃうこともあるわけですよね。

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線路沿いを歩きます。駅前は建物が高い。これも決まってるそう

街の高さは決まっている

大北:こうやって見た時に、建物の高さってある程度は決まっているんですか?
神田:普通の人には全くわからないですよね。区ごとに地域地区図があってネットで誰でも見られるようになってるんです。今はここ。商業地域だとか容積率がどのぐらいで高さ制限がどのぐらいとか書いてますね。住宅地はまた細かくいっぱい分かれていて、第一種低層住居専用地域だと高さ10mとかって決まっている。

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目黒区の地域区図。区のホームページなどで出てるそうです

林 :10mだと3階建ぐらいですか?
神田:マンションでもよっぽど低いものなら4階もだけど、5、6階になるともう建てられないわけですよね。そういうのがこんなに細かく枝分かれして。自分がどこに住んでいるかによって、2階建てであってもいきなり隣に10階建てが立っちゃったりすることもあるわけですよね。

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今いるピンク色は近隣商業地域で高さ20mまで。緑は第一種低層住居専用で10m。黄色は17m。なんでこんな形をしているのだろう?

このままだと街が高くなる一方

林 :これは誰が決めてるんですか?
神田:各自治体ということになりますね。各区で都市計画の委員会を作って長年に渡ってやってます。建築基準法で第一種住居地域とか全部細かく区分けされてるんですね(用途地域区分)。それを各自治体が都市計画のマスタープランに落とし込んで、委員会で承認するという形で決まっているんです。
でも、ずっと規制緩和をしてきているわけですよ。今までは高さは10mしかダメと言っていたのをこの辺は人が混んできたから20mまでにしようとか。今までよりもたくさん建てられる方向にしていってる。
大北:厳しくなることはなくて、全部ゆるくなっていく?
神田:ゆるくすれば新たにいっぱい建てられるわけでしょ。すると地価が上がってみんな喜ぶ。減らすのはダウンゾーニングっていうんですけど、すごくやりにくいですね。見かけの上では今まで持っていた価値が下がるので。本当は全部10mに制限しておくと、街としては空もゆったりしているし気持ちがいい。なので総論ではなるべく規制してほしいと思いながら、自分の家はゆるめてほしい。どうしてもそうなりますよね。
林 :自分たちの横に建つのはイヤですけど。たしかに。

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ここは駐車場があるからスッキリしてるが、たしかにみちみちだと圧迫感がある

大北:そもそも低層の街は気持ちいいんですか?
神田:圧迫感もないし、低層にするとある程度ゆったりしないといけないから、庭も広めになるんですよね。ひとつひとつの敷地の面積が広くなる。どっちかというとそういう傾向にあって。低層でぎっしり建てちゃうと息苦しいというか。
林 :長屋というかスラムというか。
神田:スラムみたいになっちゃいますね。住居地域で標準的に言われている数字が※建ぺい率60%以下で容積率が200%以下
※敷地面積のうち建物の広さが60%を超えず、○階建ての建物の床面積を合わせたものが敷地面積の200%を超えない

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10m×10mに8m×8mの2階建てを建てた時は建ぺい率64%。1mずつ内に入っただけで36%も面積が少なくなる

林 :それだとゆったりする感じですか?
神田:本当はそれぐらいだとゆったりしないんですけどね。敷地の60%というと、10m四方100平方メートルの土地があって(塀などで)1mずつ後退しても64%(10mで1mずつ後退すると8mになる)。2mずつ後退すると36%。駐車場(※建物ではない扱い)を作りたいとかいったらさらに(建物でない部分を)広く取らないといけない。60%というと、ほとんど庭が取れないぐらい
林 :60%で庭が取れないんだ。
神田:それが200平方メートルとか300平方メートルとかもっと広ければ、同じ2mずつ削ってもそんなに減らない。小さい方が減りますよね。 

縦10m×横10m=100㎡の敷地から塀などで1mずつ後退したら
→8m×8m=64㎡(64%)
60%分建物があるとして庭にできる余地は4%=4㎡
縦10m×横30m=300㎡の敷地から塀などで1mずつ後退したら
→8m×28m=224㎡(約74%)
60%分建物があるとして庭にできる余地は14%=42㎡
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あちら側はちょっと低くなっている。高さ10m、建ぺい率60%容積率200%の街

街の区切りが見えてくる

神田:今商店街を入ってきたので近隣商業地域ですね。そうすると建ぺい率80%容積率300%ですね。この道をまっすぐ行って線路沿いに入ると60%、200%。
大北:この区域の形はどうやって決まるんですか?
神田:今までの既得権とかそういうのでしょうね。
林 :街づくりって建物を自由に建てていいのかと思ったら、わりと、官というか行政が描いているんですね。
大北:あそこで変わるんですかね。
神田:正面の茶色いのがちょうど10mぐらいですかね。ちょっと超えてるようにも見えるけど…。
大北:ちょっとならオーバーしてもいいんですか?
神田:いや、だめです。オーバーしたら。
林 :ここに建物を建てますって申請をした時点で行政からのチェックがあるんですか?
神田:建物を建てる時に、今だと民間の建築確認機関とか行政も受け付けますけど、そういうところに図面を出してチェックするんです。建築基準法に適合してないと建てられない。

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なぜ家が直方体でないのかは容積率の上限の可能性

大北:マンションを建てましょうってなったときに、高さまでめいっぱい建てたいわけですよね。
神田:なるべく安く作ろうとするとね。
大北:そのわりには今見たところとかもへこんでたりガタガタしてるじゃないですか。
神田:そういうのは容積率がいっぱいになってるかもしれない。容積率300%だとそれでギリギリだとか。
林 :容積率っていうのは。
神田:床面積を全部足して、それを敷地の面積で割ったもの。
林 :よくある木造3階建てだと…
神田:建ぺい率60%だったら3階で容積率180%使うことになりますね。容積率200%で3階の建物だと建ぺい率60%を超えてしまうし、いろいろですね。
林 :決まってる高さと容積率のせめぎあいというか。
神田:高さと容積率と、さらに斜線制限というのがあって。斜めの線。道路斜線というのと北側斜線というのが2つあって、北側斜線は日照が当たるかどうか。北側のある高さから斜めに斜線が決まっていて、道路斜線は道路の向こう側の境界線から斜線を引いてその高さ以内にしなさいって。
大北:建物の屋根がそういう形になってるんですか?
神田:全部がそれで決まってるかわからないですけど。斜線制限と容積率と建ぺい率で敷地の中にだいたいどんな形が上限かというのが決まっちゃうわけです。
林 :建築の設計というのは自由に形を描くよりも、制限の中にいかに収めるかが大事なんですね。
神田:はい。そうなってるのが僕は残念
林 :先生の本で建築基準法でガチガチに決まってるのがおかしいって書いてましたね。
神田:今は自分が作るというよりは建売だったりするとデベロッパーですよね、開発業者が見た目にかっこよくて、なるべく面積がたくさんあって、なるべく安くて…となると、建築基準法を満たしていかに安くするかというのが設計の腕みたいになっちゃう。周りの雰囲気を考えるとこのぐらいの大きさで、こういうふうにやりましょう、って法律と関係なしに決められればいいんでしょうけど。
大北:法律と業者でこういう見た目になってるのか…!

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低層住居専用地域に並ぶ木造3階建て。30年くらい前に3階建てがぼちぼち建ち始めたように思うが(大阪の住宅街で)、今は3階建てが多そう

外の素材だけでは分からない木造と鉄筋

神田:これが今多い木造三階建です。
大北:木造か鉄筋かってどうやって一瞬でわかるんですか?
神田:たしかに、今はわからないですね。こういうのはだいたい木造だと思ってます。昔の木造は外壁も全部板張りだったりするから、歴然とした木造ですよね。だけど今は木造でも外側にモルタル塗って加工したり、タイル貼ったりボード貼ったりするのでなかなかわからないですよね。

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同じような家が建ち並ぶ一角。大きなお屋敷を分割して分譲したのだろうか

神田:ここもある程度広い敷地だったと思うんだけど。
林 :世田谷とか目黒ってお屋敷があったところがなくなって6軒ぐらい建ちますよね。
神田:そうすると緑がなくなっちゃう。散歩してても、他人の家であってもゆったりしているほうが気持ちいいですよね。
林 :他人の家でも街に余裕がある感じがしますもんね。ここなんて1億しますね。
神田:45坪、150平米。建ぺい率60%、容積率150%の高さ10m。あと防火地域と準防火地域などで壁の材質を何にするとか法律で決まって。

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空き地があって1億円以上する

 

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この辺りは農地だったろうから地形に合わせて曲がった昔の道ではないかと

耐火基準によって見ためが変わる

大北:先ほどの耐火基準というもので外から見える印象は変わってくるんですか?
神田:今木造だとサイディングボードっていう耐火性のあるボードを貼って、板と板の間の隙間にコーキング剤を埋めて、上からカバーして雨が入ってこないようにしてますね。
林 :基準があって板が貼ってあるって、知らないとなんとなく見過ごしちゃいますけど、おもしろいですね。

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耐火ボードが入っているという

 

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四角い家、モルタルが入っているという

神田:あれなんかはモルタルが塗ってあるわけですね。ひび割れがすると雨漏りの原因になるから上から何か塗る。すると模様ができちゃう。
林 :あれは補修済みということなんですね。
神田:窓の周りって割れやすいんですよね。モルタルを塗るんだったら下に金網みたいなものがあって、割れないような算段をするんですけど。どのぐらいの厚みでやるかで割れたり大丈夫だったり。

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窓の周りのモルタルは割れやすいそうだ

建築はミスが分からないのでチェックが厳しい

林 :モルタルの下に金網をつけるというのは設計と施工のどちらが決めるんですか。
神田:設計が指示しているのが基本ですね。
林 :設計はそこまでやるものなんですね。
神田:そして作る時には作る工事者が管理をします。例えばコンクリートを打つとなったら何立方メートルいるかとか、設計図を見て計算してやるわけですよね。それで配筋(※鉄筋の置き方)がちゃんとできてるかとか工事者の立場で管理をするんですけど、設計者が自分の設計の意図通りにできてるかの監理もする。工事管理と設計監理、2つの管理があるんです。
設計監理をどのぐらいちゃんとやっているかが質に繋がったりするんですけどね。設計者も設計料をあまりもらっていなかったりするから、そこまで管理できなかったり。
大北:なんで建築だけそんなに厳しい目があるんですか? IT企業がアプリを納品するとなってもそんな厳しくないですよね。
神田:基本的には一品生産ということですよね。電子部品でも機械部品でも設計通りにできてなかったら売れなくなって使えなくなってすぐわかりますよね。建物の場合は構造におかしなところがあってもなかなかすぐわからないんですよね。一品生産ということから法律で厳しく決まってます。

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変わった家を見る目も変わってくる
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なぜちょっと地面から下がってる家がある?

窓があるかどうかまで法律で決まっている

林 :こういうちょっと下がってるというのは工夫なんですか?地面を下げて高くならないようにですか。
神田:高さ制限があるから、3階建にするためには1階を下げないとということじゃないでしょうか。
林 :そういうのはいいんですね。
神田:いいですね。ただ全部地下になっちゃうと、健康上問題があったりするので、地面を掘り下げても周りに隙間を作れば。擁壁(壁状のもの)とかで。
林 :全部地下だといけないんですよね。
神田:住宅の場合はある程度居室には窓がないといけないことになってます。
林 :そういうルールも建築基準法ですか。
神田:はい、今はエアコンもあるし、光も空調もコントロールできるからある意味で時代遅れかもしれません。
林 :そういう部分まで法律があるというのは意外というか、違和感がありますね。

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住宅街を抜けて駒沢通りまでいきます。大きな道路沿いは建物が高い地域

神田:1919年に市街地建築物法という法律ができたんですね。それまでは建築に関する法律はなかったんだけど、市街地をある程度しっかりしたもので建てておかないと、という危惧もあって、ニューヨークだとか海外の法律を参考にして作ったんですね。
林 :1919年って関東大震災の…。
神田:前ですね。その時に佐野利器という人がこういうふうにやれば耐震的な建て方ができるよって計算法を発表していて、それに合ったものが壊れてなかったということも確認できたので、それを法律に取り込もうと。それで、簡単な地震の評価法を提案して、サンフランシスコとか日本とかニュージーランドとか世界で同じような規制をするようになったんですけど、そのときは市街地の中の建物だけだったんですよ。しかも警察がコントロールするっていう。
それを1950年に我が国の建築物全てこれでやりますっていう風に建築基準法という形で範囲を広げたんですね。このへんでも戦前の家は法律関係なしに作っていたんじゃないかな。1950年以降建て替える場合には全部基準法に則ってるはずです。

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1950年の建築基準法で街はこうなっている

戦後にみんな建てまくった

大北:なぜ建築基準法ができたんですか?。
神田:焼け野原だから早く家を作らないといけないけど、あまりひどいのを作ると困るから最低限これだけは守ってくださいというわりとシンプルな法律で作ったんですけど。それが今は改正、改正、で膨大な建築基準法になってしまってます。
林 :最初のその基準がないとスラム化するというか家がみっちりになっちゃう。
神田:そうですね、道もなくなってしまうぐらい。特に戦後は1945年に焼け野原になって、1950年の法律ができるまでに勝手に建てちゃった人がいっぱいいると思うんですよ。道路もなくて幅が1mしかない通路とかね。建築基準法上は通路だったら4mないといけない。
林 :その時は良かったんですね。その基準があるっていうのは。

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教会が見えてきました

モルタルとコンクリート

林 :教会ですね。これは鉄筋ですか?
神田:これは鉄筋コンクリートです。
大北:コンクリートとさっき言ってたモルタルとは違うんですか?
神田:砂とセメントだけで作ったのがモルタルで砂利が入ってない。砂利と砂とセメント混ぜたのがコンクリート。それに鉄筋で補強したのが鉄筋コンクリート。コンクリート造は全部鉄筋で補強されているので鉄筋コンクリート造の略ですね。
林 :砂利が入ってるコンクリートのほうが丈夫?
神田:何をもって丈夫というかですけど、コンクリートってもともと引っ張ったら割れちゃうよ、押す分には大丈夫だよ、という性質のものなんです。引っ張った時に鉄筋が入っていれば(その力は)鉄筋が持ってくれるよ、ってなってるんですね。砂利が入っていてもコンクリートより強い石なので石が割れることはないわけですよね。
※モルタルとコンクリートのどちらが「強度」が高いのかというのは解説サイトごとに違う。「強度」の捉え方が違うようだ。モルタルは強いがひび割れしやすく、コンクリートは押されるのに強いが引っ張られると弱いという特徴がある。コンクリートの方が安価。
大北:モルタルは基本的に木造の上に塗るものなんですか?
神田:鉄筋コンクリートでもきれいに仕上げようとするとモルタルを乗せる。外側でも内側でも表面をきれいにしようとしたらモルタルを塗る。木造の場合そんなに分厚くできないので石を入れたコンクリートだと仕上げにくいからモルタルで仕上げるということですね。
大北:どっちもかなり丈夫だけど、モルタルの方がきれいに仕上がるってことですね。

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一部高くなってるのは塔で建物高さとは別に決まってるそうだ

大北:神田さんはどういうことをやられたんですか?
神田:屋根がコンクリートで床のスラブ(平面部分)を打つとだいたい1/20とか1/30の厚さが要るんですけど、ここは40mあるのに40cm(1/100)だったんですよ。非常に薄い。しかもそれを四角い桶みたいなものをひっくり返したものを型枠にして、食べるワッフルみたいな形なのでワッフルスラブっていうんですけど、特殊な屋根になってますね。それを応力解析とかいろいろやって、鉄筋を力の流れに合わせてたくさん入れるようなことをやってました。
大北:先にワッフルがあったんですか?
神田:最初からそういう設計だったんですね。だけどその形とか鉄筋の量とか設計変更を提案して、設計者の了解のもとでやったということです。
林 :図面上で計算ができるんですね。
聖パウロ教会の屋根についてはこちらのサイトで神田さんが書いています

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斜めになっている建物ってある。これは斜線のせいだろうと神田さん​​
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敷地みちみちに建っている家とそうでない家があるのはなぜか
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なぜみちみちに建っているのか

大北:上野とか東京の東側を歩くと、道路ぎりぎりまでみちみちに家が建ってませんか。それはなんでですかね。建ぺい率100パー?
※建ぺい率を守らない家を新たに建てるケースはほぼないようだ。一見60%超えてそうな家でも別に敷地があったり意外と守られてるという。
神田:一応、道路に対してはギリギリまで建てられることにはなってますけどね。住民協定とかで必ず2m後退しましょうとか協定を作ればね、田園調布とかね。地域で自分たちのルールを決めてます。昔はみんな小さな家でも無理矢理でも塀を作ってましたよね。鉄筋コンクリートだと防犯上のことも大丈夫だからギリギリ敷地まで。
大北:あーたしかにビルっぽい建物が多いですね。鉄筋コンクリートだと塀はないのか。

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駒沢通りに来た。道路の向こうの高さが20mに

なぜ道路沿いの建物は高いのか

林 :駒沢通りに。ここは急に変わりますよね。建ぺい率80%、容積率300%。
神田:高いのが建ってますね。向こう側は20mなんだ。設計する人は必ずこれを見て確認しないと設計したのに建てられないってことになっちゃう。
大北:道路沿いは高くしていいっていうのはどういう理屈なんですか?
神田:風通しもいいし、ということですかね。圧迫感も少ないし、狭い道路に大きなものが建つと圧迫感もあるから。
林 :高層ビルから見ると甲州街道沿いにビルが並んでいるので、道が見えなくても高いビルでわかりますもんね。

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道路沿いに高さ17mの黄色の地域

地域の人で街を決められないか

神田:街区(※道に囲まれた1区画、ブロック)と別にこういうふうに細かくするっていうのは、やっぱりどうなんでしょうね…。事前にそうなってたから変えられなかったというのはあるかもしれないです。
理想としては、地域の人たちが設計の段階で専門家も交えてあーだこーだ言って、こんなの建ててもらっちゃ困るとか、このぐらいの高さにとか、そういう建築が許される時代だと思うんですよね。戦後すぐはなるべく早く建てなきゃいけないというのもあったし、今は自分の敷地の中なら法律を守ってたら自動的に許可されるわけです。規模が大きかったりすると住人説明会があったりするけど、それも形骸化していて。人口も減っているし。
林 :無理して家を高くしなくてもいいわけですね。
神田:新しいものを建てるなら、前よりいいものにしてほしいって周りの人は思うわけだから。経済のブレーキになるかもしれないけれど、長い目で見ると環境が良くなって居心地が良くなると思うんですよね。

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林 :柄は別になんの規制もないわけですよね。
神田:ちょっと派手だけど楽しいかもしれない。
林 :すごいきれいにグラデーション塗ってますよね

どんな街にするかも話し合うべき

大北:そもそもどんな「いい」街を目指すものなんですか?
神田:将来の街がどうあるのかっていうことをまずやらないといけないでしょうね。例えばここは高さ10mと17mが入り組んでいるけれど将来的にどうしたらいいんだろうっていう話をやれればいいのかもしれないし。高くするとこんな形になりますよって専門家が絵を書いて、低くするとこうなりますよって。
大北:それを町ごとで話し合いましょうってことですか。
神田:まちづくり協議会という名前のそれに近いシステムがあるんですけど、制度的にそういうふうにできるのかな。
林 :前に小学校の通学路を研究している方と歩いた時に、ニュージーランドかどこかで街づくりをしている事例を言ってましたね。
神田:ニュージーランドなんかもともとイギリスから来て、どういう街を作ろうかって自分たちで話し合って街を作った歴史があるから、脈々と続いているんだと思います。そのあとから法律ができてるから。
林 :昔からある街よりもニュータウンのほうが話が早いというか。
神田:そうですね。

だんだんわかってきた街がこうなってる理由。来週公開の後編になると「おおお、わかってきた…!!」となります、続きます。

本文中で林が「先生の本で建築基準法でガチガチに決まってるのがおかしいって書いてましたね。」と言ってる本はこちらです。

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