特集 2020年5月22日

目に映るものの名前をできる限り知りたい

写真に映っているものの名前をなんでもお教えてください、と呼びかけたところ、あらゆる分野の人からものすごい量の情報が寄せられ、写真がたちまち名前で埋め尽くされる、という経験をした。

顛末を紹介します。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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> 個人サイト ツイッター(@mitsuchi)

先日、慶應大学教授の石川初さんがこういうツイートをしていて、とても素敵だった。

 

石川さんは植物に詳しいので、草花の名前が分かる。そこで自宅前の路上にそれらの名前をぜんぶチョークで書き込んでみたという。ぼくにとっては渾然一体の「草」に見えていたものが、じつは「ドクダミ」「リュウノヒゲ」といった別々の名前を持つ植物だということがありありとわかる。こんなふうに世界の解像度が上がるのはとても素敵だ。

この石川さんの試みを植物に限らず目に見えるあらゆるものでできないかと思い、ツイッターでこんなお願いをしてみた。この写真に写っているもので、名前が分かるものが1つでもあれば教えてくださいと呼びかけたのだ。

 

するとたちまちたくさんの人があらゆるものの名前を教えてくれた。車の名前、植物の名前、路上の設備の名前、建築物の設備の名前。たった1日でものすごい情報量になった。

もとの写真はこんなふうだ。

moto.jpg

教えてもらった名前を書き込むと結果的にこうなった。

kekka.jpg

すごい。しかし文字が小さすぎて読めない。教えてもらった時系列もふまえつつ、部分ごとに詳しく紹介していきたい。

車の名前

まずは車の名前だ。

 

 

ぼくにはどれがハイエースかも定かではないのに、(トヨタ)ハイエースのさらに細かい型番がまず飛んできた。これはすごいことになりそうだと思った。その後もいろんな方に教えてもらったが、こちらの方のまとめがすごかった。

 

なんと。ほんの一部しか見えていない車もあるのに、なぜ分かるんだろうか。

一部しか見えていない車については詳しい人でも同定が難しいようで、そういう人たちの間で意見が交換されることがあった。

 

 

ぼくは詳しい人どうしが自分には分からない言葉で話し合っているのを見るのが好きだ。神々の世界を垣間見ている気持ちになる。しかも会話のもとになっているのは一枚のなんでもない写真なのだ。

車についてまとめるとこんなふうになった。

kuruma-matome.jpg

 

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路上の設置物

路上に置いてあるものたちについても情報が寄せられた。

 

 

三角コーンについてはメーカーと製品名が、自販機については「サントリー」ではなく「ユカ」という自販機メーカーの名前が寄せられた。たいがいである。

驚いたのは、マンホールの蓋についてのこの指摘だ。

 

マンホールの蓋は、元の写真だと斜めにつぶれてほとんど何も見えない。それを「駅からマンホール」さんは、謎のテクノロジーで正面顔に復元し、しかもそれをもとにもとの蓋の種類や業者を推定しているのだ。神業!

まあそれを言うなら、頂いたどのコメントもただ「すごいですね…」と返すしかないくらいのすごさなのは間違いない。

路上の設置物についてのまとめはこんなふうだ。

 

rojou-matome1.jpg
rojou-matome2.jpg

 

植物の名前

ぼくは植物の名前が分からない。端的にいうと、どれも同じに見える。だから植物がわかるのこと人は昔から心から尊敬している。

 

 

ここに世界の知恵が集まっているようすにぼくは感動したし、とてもありがたかった。二つ目のツイートの「Hajime Ishikawa」さんは、冒頭で紹介した石川初さんだ。植物だけでなく路上のブロックも教えてくれている。ありがたい。

植物についてもやはりこの小ささでは見極めるのが難しいようで、苦しみながらお互いで会話をしているようすがあった。「中央分離帯にあるのはメリケンカルカヤかも?」という意見に対して、時期が合わないかもしれないというようなやりとりだ。

 

ありがたい。植物についてまとめるとこんなふうになった。

 

shokubutsu-matome1.jpg
shokubutsu-matome2.jpg

 

地面そのもの

地面そのものの各部分にも、やはり名前がついている。

 

横断歩道に使われている塗料は「溶融式樹脂塗料」というそうだ。もはや知らないことしかない。

 

苅谷さんは大学の地理の先生である。最新の研究成果を教えてくれた。すごいことだ。その他みんなに教えてもらったことを合わせ、地面についてのまとめはこうなった。

 

jimen-matome1.jpg
jimen-matome2.jpg

 

上空のもの

 

上空の高いところにあるアンテナ類についてもみんなは目を向けていた。当初は「それは八木アンテナ」です、というレベル感の指摘が多かったが、次第に、「もっといえばVHFオールチャンネル型12素子共同受信用高性能アンテナです」というように強まっていく感じがすごかった。

 

上空にあるもののまとめはこんなふうだ。

sora-matome1.jpg

 

建物にかかわるもの

最後は建物だ。

ふつうに街を歩いていると、視界の上半分はだいたい建物だ。しかしぼくは建物の細部についてまったく言葉を知らないので、「建物だなあ」くらいのことを思うしかなかった。視界の半分についてその感想しかないのだ。それが悔しいと思っていた。

しかしツイッターは広い。建築に詳しい人たちが、建物についても名前を教えてくれた。

 

名前を入れ直して拡大してみた。

tatemono-matome1.jpg
tatemono-matome2.jpg

「層間スパンドレル」!
「磁気質45二丁タイル」!

なんと。やっぱり一つ一つ名前がついていたんだ。当たり前なんだけど、それが分かるのがとてもうれしい。

 

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なんだかすごいもの

これまでのどの分野にも含まれないが、なんだかすごいものだ。

右端を走っている車に書かれていたロゴである。その書体が分かったという。

すごい。まったく分からないんだけど、とにかくすごいことは分かる。

これらのいろいろを合わせた全体像は、むしろこちらのツイートを拡大してもらうのがいいと思う。ぜひご覧ください。

 


感動している

こんなにいいインターネットがあるか、という感じだった。ぼくの目は開かれ、知っていたつもりで知らないことばかりだということが分かる。

名前は、もちろんその奥につづく広い世界の扉にすぎない。でも、名前を知らなければそれを調べるための入口にも立てない。層間スパンドレル! ぼくは今回のことで建物を含むあらゆることについて調べる手がかりをもらった。ありがとうございます!

追記:続編も公開しました
→工事現場にあるものの名前をできる限り知りたい

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