特集 2019年10月6日

観光地としてのニュー新橋ビル2019

東京の街は常に変わり続けている。新宿駅の工事は永遠に終わらないし、駅前のカフェはタピオカ屋になるし、オリンピックに向けて国立競技場は新しくなる。

そんなアメーバのように姿を変え続ける東京の中心部、新橋にあるニュー新橋ビル。サラリーマンの聖地として名高いこのビルを2006年に編集部の古賀さんがレポートしている。

「おやじビル」とも呼ばれるニュー新橋ビルはこの13年で何か変わったのか、はたまた何も変わらないのか。令和という新しい時代を迎えた今、改めてレポートします。

※この記事はデイリーポータルZ開設17周年企画「名作カバーまつり」のうちの1本です。
元記事:観光地としてのニュー新橋ビル

1992年東京生まれ。普段は商品についてくるオマケとかを考えている会社員。好きな食べ物はちくわです。最近子どもが生まれたので「人間ってすごい」と本気で感じています。(動画インタビュー)

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ニュー新橋ビルは今でもニュー新橋ビルだった

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こちらが皆さんご存知ニュー新橋ビル。今も昔も変わらぬ網みたいな外観。

結論からいってしまうとニュー新橋ビルは13年とあまり変わっていないように見えた。もちろんお店の入れ替えは少なからずあるが、新しく入ったお店の多くが「13年前もそこにあったよね?」という風格を携えているのだ。

郷に入れば郷に従えという言葉があるが、郷のパワーが尋常じゃない。ニュー新橋ビルのおやじ力をなめてはいけない。

とはいえ13年という時間はけっこう長い。小学一年生は大学二年生になるし、新卒は課長くらいになっているだろう。細かい部分で変わっているところはあるはずなので見逃さないようにしたい。

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古賀さんも推奨していたビルの壁面を下から眺めるやつ。13年前と全く変わらないみためだが確かにかっこいい。木に生えている時のキクラゲみたいだ。

ニュー新橋ビルは1971年に竣工しており今年で開業48年を迎える。もう少しで半世紀だ。

48年前の東京がどんな感じだったのか27歳の筆者には知る由もないが、当時はかなりおしゃれなビルだったんじゃないかと思わせる見た目をしている。

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新橋駅鳥森口近くから見るとシンメトリーのようで美しい

ニューと付いているが新橋ビルが別にあったわけではない。いきなりのニューなのだ。生まれながらニューの運命を背負わされていることからもこのビルに対する当時の期待感がうかがえる。

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ビルのロゴもハイカラな感じがする
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入口近くの自動販売機がこのビルで一番新しい空気を放っていた。てか自動販売機もオープニングセールとかあるんだな。

さて、ビルの中だが、これがまぁ本当に古賀さんがレポートした時とほとんど変わっていない。同窓会で「全然変わらないねー」と言われる人の10倍は変わっていない。

1階にはチケットショップや洋品店、ジューススタンドなど13年前にもあったものばかりなのだ。すぐに分かる変化といえばパチンコ屋があったと思われる一角が薬局に変わったことくらいか。

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都内の駅前の一等地にこんな感じの店ラインナップが揃っているのはある意味奇跡だ
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古賀さんが唐突だと書いていたお店も健在だしすごく混んでいる。創業が明治18年ということで簡単には潰れてやらないぞという意気込みを感じる。
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でもその向かい側には名古屋名物の味仙が今年の3月にオープンしたりしている

まだオープンから半年くらいしか経っていないとは思えない馴染み具合だったが、新しいお店も新しく見えない一因として一つのお店の区画が小さいことが影響しているのかもしれない。

どうしてもこじんまりしてしまうので、昔からそこで細々やってます感が出てしまうのではないだろうか。

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これは地下1階の地図だが、この区割りの細かさはなかなかお目にかかれない。江戸の町かよ。
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そして気付いた。このロゴは縦に書くと左端に縦棒が揃って美しい。知ってるとちょっと自慢できるサラリーマントリビアです。

ここまでお店のラインナップが変わっていないということは今も昔もサラリーマンが求めるものは同じということだろう。

出張のために安い切符をチケット屋で買い、昼は立ち食いでさっさと済ませ、夜はいつものおかずと酒で飲めれば良いのだ。若者の街と呼ばれる渋谷や原宿にはない安定感がそこにはある。

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洋服の青山も健在だが棚はちゃんと新しくなっている
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ニューフェイスの薬局は入口が近未来っぽい。薬局店内とニュー新橋ビルとの照明の明るさの差よ。
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メニューは最新のそば屋。若者がタピオカならおじさんは花椒エリンギで勝負だ!

おじさんを唸らせるテナントが目白押しの1階で筆者が一番気になったのがこの自動販売機だ。

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一度も見たことのないクッキーの自動販売機

テナントとテナントの間にひっそりたたずむクッキーの自動販売機である。完全に昭和からタイムスリップしてきた販売機だ。

「湘南」というのもよく分からない。湘南といえばサーファー=サラリーマンよ、時代の波に乗れ!ということだろうか。いや、どうことだ。

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商品も手作り感にあふれていてすごくいい。湘南マンマ、どこにいるんだ。

この自販機は古賀さんが取材した13年前にはあったのだろうか。当時はなくて最近設置されたのだとすればかなり攻めている。

でもこういうものの存在がニュー新橋ビル全体を味わい深いものにしてくれている。こういうのを味わうだけでお腹がいっぱいだ。

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トイレットの文字もいちいち味わい深いのでちゃんと味わいましょう。

ちなみに2階にはマッサージ店が多く、3階にはクリニックや飲食店、事務所、4階には雀荘やクリニックが入っており、こちらも古賀さんの記事を読む限り雰囲気は13年前と変わってないようである。

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これが令和の新橋駅前のビルの一角です
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4階の屋上は今でもあがれて気持ちがよい
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洋服の青山の看板がでかくて良い

何年も前から変わらぬ雰囲気は上層階にいけばいくほど健在なので「観光地」としてニュー新橋ビルを楽しむならしっかり4階まで巡るのがおすすめだ。 

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飲食店は変わっているのか

13年前に古賀さんがいち押しと書いていたジューススタンドにも行ってみたい。当時1階に2つあったジューススタンド「ベジタリアン」と「オザワフルーツ」はどちらも健在だった。

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やっぱり惹かれるのはオザワフルーツ

ジューススタンドなんてこんなにずっとお店を出していられるものなのかと思っていたが、少し見ていただけでもけっこうたくさんのお客さんがジュースを注文していた。

面白いのは「ベジタリアン」と「オザワフルーツ」の客層の違いで、華やかな雰囲気の「ベジタリアン」は外国人観光客がメインの客層なのに対して「オザワフルーツ」はサラリーマンが中心だ。

いかにも前日飲み過ぎましたというサラリーマンが「バナナジュース」とかを注文してグイッと一杯ひっかける姿には思わず「新橋だな~」と声が漏れた。飲み過ぎたサラリーマンと健康を気にするサラリーマンがいる限りここのジュエルスタンドは安泰だろう。

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レジの前の煮たまごも健在!
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他であまり見ないダイコンジュースを頼んでみた

ダイコンジュース、思ったよりも飲みやすい。ダイコンと一緒にレモンの輪切りをこれでもかと入れていたからだろう。というより、あのくらいレモンを入れないと青臭さと辛みで飲めたものではないのだろう。

実際、最後の方はだんだんと辛みが出てきて、大根おろしを作った後にでる汁を飲んでいるような気分になってきた。めちゃくちゃ焼き魚を食べたくなってきたぞ。

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というわけでランチは地下1階の飲み屋街で焼さんま定食
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あ、さっき飲んだコンビだ
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食後に出てきたコーヒーの入れ物がいかつかった。普通「コーヒー、ロックで」と頼まないとこんな風にでてこないだろう。

基本的には定食of定食といったメニューを出すお店が多いのは今も昔も変わらない。もちろん客層はほぼサラリーマンだ。そこには「映え」など気にせず腹を満たす男たちの背中が並んでいた。

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いつの時代もサラリーマンを温かく迎えてくれる提灯たち

地下1階も基本的には昔ながらの居酒屋が立ち並んでいるが、その中で目についたのは「飲み物。」が2店舗出来ていたことだ。

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カレーは飲み物
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焼きそばも飲み物なのか

新橋のサラリーマン、年月を経て歯が弱くなってきているのかもしれない。


再開発前に行こう

昭和の香りをふんだんに残すニュー新橋ビルだが、なんとこのビルも再開発が予定されているという。SL広場とともに2022年までに解体されてしまうのだ。

この独特な雰囲気が楽しめるのもあと2、3年。今のうちにサラリーマンの聖地巡礼を楽しんでおこう。

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飲み物だという焼きそばを食べたが普通の焼きそばだった

 

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