👑今月の掲載作品
まずは超優秀作品。今月、記事として掲載した作品をふりかえります。
自分の名字と同じ地名のお祭りに行くと楽しい(3/6掲載、文園うどん)
編集部より寸評

そんな個人的な喜びがきちんと書いてある原稿だと思いました。変わった踊りをするとか、ファミチキ美味いよね、みたいな誰が見ても分かる珍しさや共感ではないので説明しないといけないんですよね。
でもそれって動画ではなくテキストの原稿が得意とするところなので、まさにデイリーポータルZ向きでした。
リアリティのあるディテールを重ねながら最後「本名、最高〜〜!」って一周回ってシンプルな感想にたどり着いているのがおもしろいですよね。(林)

「紙パックのミックスジュースをチューチュー吸いながら、中野駅方面に向かって歩いた」も満足感のにじみ出るいい描写だなーと思いました。(石川)
消えた?現在都内で「白いたい焼き」はまだ食べられるのか(3/22掲載、蜂木)
編集部より寸評

「あったね」って思われるだけ有名なので分かる人が多く、なおかつ「そういえば」という意外さがある。
間口の広さと意外性の両面を持ついいテーマです。こういうのを見つけたらもうバズったも同然です。(林)

以上2本です。おめでとうございます!!
🎉佳作
原稿掲載までは至りませんでしたが、面白かった作品を佳作としてご紹介します。
エイをわざわざ通販で買って色んな料理にしてみた話(あと100日で就活する田平)
調べてみると「アカエイの肝」が牛レバ刺しに激似らしいという情報を発見。
魚なのにレバーっぽい? 本当か?
というわけで、アカエイを通販で取り寄せてみることにした。
編集部より寸評

ウェブの読み物は情報としてあとで役立てるものが多いのですが、デイリーポータルZが求めているのは読んだ瞬間が楽しい文章なので全部まずくてOKです。
まずいんだけど、ローテンションで「!」をあまり使ってないところも好印象でした。
最後がまっとうな感じで締めちゃってるので、まずかったけどいい経験だったぐらい言っちゃってもいいんじゃないかな。真面目にならないで!(林)

世の中には何でもおいしく食べちゃう手練れの書き手もいますが、この原稿はその逆で、手探り感が良いなと思いました。自分に近い存在として感情移入しやすいというか。上手いだけがいいわけじゃなくて、こういう方向性って全然アリだと思うんです。
細かいことですが写真がどれも寄りすぎで窮屈な感じがするので、もうちょっと全体に引いてもよいのではと思いました。(石川)
服、日用品、建物など日常目にするものの大きさがわたしにはピンときていません。家具や家電も勘で買って失敗する日々。
そこで今回は、”絶対的サイズ感”を身につけるべく、普段あまりその大きさを意識しないあらゆるものの”実物”を目に焼き付けていこうと思います。
編集部より寸評

あと徐々におかしかったのが記事の長さ。長さっておもしろいんですね。
テンポと長さ、フォーマットで気になった作品でした。
元力士が家に来たんだから最初の挨拶でなんて言ったとかどこで着替えてもらったとか、とういうディテールが読みたいところですが、このテンポ重視のスタイルだと蛇足になっちゃうんですよね。そういうディテール書いたほうがキャラが伝わるというメリットはあります。(林)

じゃあどっちにすればいいんやという話ですが「長くしてテンポで読ませる」「短くしてインパクトで読ませる」両方のやり方があるんだと思います。書く前に「今回はこういうやり方で読ませよう」と決めて意識しながら書くと、それがわかりやすく伝わるので、読者にとっても楽しみ方がわかりやすい記事になると思いますよ!(石川)
👏もう一息
なんとくら寿司が万博に参加予定の国と地域を代表する料理を再現して販売するとのこと。マジか。
これは行くしかないということで、万博開幕を前に関東で食べられる32商品をすべて食べてきました。
編集部より寸評

コンプリートものは人を呼ぶ秘訣ではあるのですが、だとしたら冒頭に料理一覧をならべてランダムに読めるようにしておくほうがいいかな。
最初の方は那智勝浦で夕方のメロディが20時に流れていたとか、プールでしか見ないベンチがバス停にあったとかひとつの町にひとつエピソードがあるんですが、後半は淡々としちゃってるんですよね。
情報としてはくら寿司のサイトに載ってるので、「電車待ちに読むブログ」さんができるのは周辺情報、もっと言えば余談だと思います。(デイリーでもその考えで作ってます)
だからエピソードを最後までしっかり書くか、もしくはヘロヘロになってるのが分かる文章にして、ヘロヘロを楽しんでもらうという手もあると思います。(林)

どうやったら短くできるか考えたのですが
・店ごとに書かずに、ジャンルに分けてカテゴリごとにまとめて紹介(肉系、デザート系、とか…)
・地域に分けて…同上
・道中のエピソードも店ごとに書かずにまとめて紹介、食べるパートと道中のエピソードパートは分ける
・先に特に美味しかったものTOP5を紹介、あとは読んでも読まなくてもいいよのスタンス
などなどやり方はいろいろありそうです。
いずれにせよ、「労力をかけたときほど短く」を意識、そして長くなったときは「時系列をやめる」をまず最初に検討すると良いと思います!

シャウエッセンは至極のごちそうだと思う。
毎回ありえないほど美味いのに、ありえないほど身近にあるからだ。
あまりに唐突な愛の叫びですまないが、僕にシャウエッセンのことを語らせてくれ。
編集部より寸評

なのでウインナー作り体験を中心にしたほうがいいと思います。外に出て人がいると大なり小なり軋轢があるので文章にライブ感が出ますから。
ですが、後半で気になるところがふたつあります。
ひとつめはたとえば書き出しの「シャウエッセンへと愛が強まりすぎてしまった僕は、気がつくと茨城県にある下館駅にいた。」こういうところで「気がつくと」で済まさないで、どうして行ったのか、いつまでも食べてるだけの人生でいいのかと思ったとか、駅降りたら花粉がひどかったとか(たとえばです)、我を出したほうが記事に人が出ます。
ふたつめはひとりであることに寂しさを感じる描写があること。「愛が強まりすぎて」行ったわけですから、もうシャウエッセンとなって語っててもいいんじゃないでしょうか(たとえばです)。(林)

林も言ってる後半パートの寂しさ描写ですが、庭氏さんは油断すると自虐というか卑屈に入ってしまう癖があると感じます。読者は善人なので、寂しそうな人を見るとあざ笑ったりしないで、心配になるんですよ。また、楽しかったことと寂しかったことが両方書いてあっても、後者の印象が勝つんですよね。なので基本的にはポジティブなことを書いていくのが良いです!(石川)
おわりに
最後に、編集長 林からのメッセージで今月の月刊新人賞はおしまいです。では林さん、どうぞ。
工業製品やキャンペーンってもう主催者のサイトに情報は載ってるんですよね。じゃあ私たちはなにを書いたらいいかというと、「それが人にどう受け止められているのか」と「それに夢中になっている自分」です。
よのなかの出来事を自分がどう解釈したかを書く。解釈の部分が我を出すところだし、おもしろがらせるところです。そうすることで書き手の存在感を出すこともできます。
だから遠慮なく余計なことを書いて下さい。そしてその余計なことはクリシェなどで流さずにびっくりさせてくれると嬉しいです。
あと大事なことなんですが、無理はしないでください。記事のために行動するのではなく、素の熱意で行動したことをたまたま記事にした、という順序になってるのが理想です。記事のためにおかしなことするのって辛いし続かないので。思いついたけど実行するのは大変そうだなって思ったらやめていいです。