デイリー棒タルZ 2020年10月7日

「現状品」のフルートを落札しました

フルートはじめました。

オークションサイトで「現状品」というキーワードがある。

だいたいが壊れていたり難があったりする品物なのだけれど、何が届くかわからないギャンブル性が好きでよく手を出しては失敗している。

今回は現状品のフルートを買ったのでご報告です。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:本当に買ってよかった機材~明るいレンズ編~

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

オークションサイトの「ジャンク」とか「現状品」といったキーワードが好きで、よく検索している。

現状品と言うのはつまり「壊れているかもしれないけど安くするから文句は言いっこなしね」という品物のことである。売り手の正直さというかやる気のなさが感じられていい。

ついこの間も現状品の機械式時計を2万円で買ったのだけれど、お店に持って行ったら修理見積もりで5万円かかると言われた。ちなみにその時計はきれいなものを探してもだいたい5万円くらいで買える。現状品あるあるである。

ではなぜ人は(というか僕は)リスクを冒してまで現状品に手を出し、失敗し、それでも学ぼうとしないのか。

それはそこに夢があるからだと思うのだ。

現状品には夢がある

一度冷静になってこれまでの人生を振り返ってみると、現状品に手を出すときの僕のマインドとしては

「もしかして出品者が詳しくないだけで実際は壊れていないかもしれない」とか

「もしかして自分で直せるかもしれない」とか

とにかく物事をいい方向に考えていることが多い。

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このパソコンも「現状品」だった。電源部分が壊れているらしく、思い出したようにたまに立ち上がる。

現状品は買ってから届くまでの期間がすべてである。その期間にいかに夢を見られるか、だ。

この前の時計も買ってしまってから毎日いろいろ調べて「3万くらい得したかもな~」なんて自分を言いくるめようとしていた。翌日壊れた時計が届いて過去の自分を呪う。

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「カメラ好きの知人から譲り受けたものです」という説明には注意である。「もしかしたら不具合があるかもしれませんが、わたしには知識がないのでわかりません」という責任回避のニュアンスを含み持つ。こういう出品物にはたいてい不具合がある。このレンズは曇っていた。

それでも守りに入らず夢を追いかける。これはもうそういう人生を選んでしまったからしようがないのである。

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たまに当たることもある。最近買った「現状品」の中で当たりだったのがこの南部鉄器。1500円だった。

熱くなって本題を忘れて書き進んでしまったが、今回は棒の話をしなきゃいけないのだ。ここから徐々に棒の話にシフトしていきたいと思う。

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現状品のフルートを買った話

楽器屋さんに行くと奥の方に金銀に輝く楽器が収められたガラスケースがあると思う。

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こういうゾーンだ。
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まばゆいばかりである。

前にギターを弾いていたころはよく楽器屋に通っていた。

楽器屋で高いギターを冷やかしたあと、80円のピックとか450円の弦なんかを買って帰るわけだけれど、常にこのキラキラしたコーナーを横目で見ながら通り過ぎていた。この楽器は、誰がいつ買うのだろう、と。

先日、ビールを飲みながらオークションでいつものように「現状品」を漁っていると、あるじゃないか、あのコーナーにあった楽器が。

【現状品】フルート【格安】

好きな二つのワードに囲まれたフルートである。オセロだったら「ジャンク」に変わっているだろう。値段は999円、現状品ならではの低価格である。体が勝手に動いて入札した。

それからしばらく入札したことすら忘れていたのだけれど、先日出張中に「落札ありがとうございます。送り先おしえて」というメールが来ていた。一瞬サギかと思ったが、リンクをたどると現状品フルートだった。買ったなそういえば。

出張から帰ると家にフルートが届いていた。送料は1200円だった。

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この状態で届いた。

いくら現状品が好きだからといって、いきなりフルートを買う人はなかなかいないだろう。その発想はなかった、というやつである。

それにしても楽器屋のあのまばゆいケースでは20万円くらいで売られていたフルートを、僕は999円(送料別)で手に入れたのだ。この常識を超えたお得感こそ現状品ハントの醍醐味である。

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どうやって組み立てるのかすらわからなかったけど、つなぎ合わせたら見たことある形になった。

さすが現状品だけあってケースとかには特に入っておらず、プチプチで巻かれて送られてきた。分割されたパーツを適当に組み合わせると、そこにはなんとフルートが現れたではないか(あたりまえだ)。

さっそく眺めてみよう。

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かっこいい。宇宙の背景と相まって銀河鉄道を思い出させるメカメカしさである。

初めて触ったフルートはひんやりしていてかっこよかった。ざっくりした例えだが、スターウォーズみたいである。

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フルートにはいたるところにからくりが見られた。

可動部分が多くてさわりがいがある。

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小さなボタンを押すと
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連動してまさかなところが開いたり閉じたりする。

おわかりかと思うが僕はフルートについてはまったくの素人である。

この楽器、押すところが20以上もある。いったい人を何本指だと思って設計しているのか。

しかしそれぞれの機構が実に論理的に組み合っており、機械式時計を見るように、その動きを見ているだけで面白い。買ってよかった。思い出したけどちょっと前に買った機械式時計はいま5万かけて修理されている。

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かっこいい。
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ところどころへこんだり傷がついたりしているが、現状品マニアはそれすら味ととらえるよう教育されている。

せっかくなので眺めているだけでなく、音を出してみようじゃないか。

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どうやっても指の数が足りないだろう。何人で吹く想定なのか。

フルートなんてしゃれた名前を名乗っているが、言ってしまえば横笛である。こどもの頃に祭囃子で吹いたことがあるぞ。経験者だ。

適当に構えて数あるボタンの気に入ったところを押し、豊かな気分で吹いてみた。

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かつてここまでフルートが似合わなかった人がいただろうか。
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虚無僧の中の人。

 

 

「ヘポ~」

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鳴った!

現状品フルートは見事に鳴った。楽器だから鳴るのは当たり前なんだけれど、こういう当たり前すら喜べる、それこそが現状品の良さだと思う。


買ってよかったです

どこをどう押すと音階が奏でられるのかは謎のままだが、単なる銀の棒に終わらなかったのは感動である。久しぶりに現状品で納得の買い物ができた。これからもこういう感動を大切に、現状品を買っていきたいと思う。その前にフルート習いたい。

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レバーが一つ取れていた。

 

2020年10月7日 18周年とくべつ企画「デイリー棒タルZ」
 
ありがとう18周年! この記念すべき日、ライター総勢18名が棒にまつわる記事を書きました。議論紛糾の企画会議のすえ決まったテーマで、どうしてこうなったのかもはや誰も覚えていません。なぜという気持ちをどうか押さえて楽しみください。
 
11時~19時半まで30分おきに公開します。
 

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「現状品」のフルートを落札しました(安藤昌教)

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