「楽をしようとしたら人生がちょっとだけつまらなくなってしまった」という寓話のような結論となった、今回の企画。
そもそも、ブルース・リーが映画「燃えよドラゴン」のなかで言った名ゼリフ、「Don't think. FEEL!」は、絶対にこういう意味ではないと思います。
キッチン用品売り場などでたまに目にするも、きっと自分の人生には一生縁がないと思っていた「やたらと長いバーベキュー用の金串」。
素直にその運命を受け入れるのも寂しいので、自分なりの使い道を考えてみました。
大きなスーパーやホームセンターなどのキッチン用品売場やアウトドアコーナーに、やたらと長~いバーベキュー用の金串が売ってることがありますよね。あれを目にするたび、プール付きの一戸建てに住むアメリカ人家族が、その広い庭で、串がしなるほどの肉塊を刺し、炭火で焼いて豪快に食らう!
ビールがぶがぶ! みんなで大笑い! みたいなシーンをつい想像してしまいます。
そして僕は、日本の賃貸マンション住まいの自分には一生縁がないんだろうな、と卑屈に笑うばかり。だけど本当にいいんだろうか?
あの金串と仲良くなることなく一生を終えて。
もしかしたらあいつ、すっごいいいやつかもしれない。とびきり優しいやつかもしれない。めちゃくちゃ気が合うかもしれない。よし、一度あいつと遊んでみよう!
というわけで、買ってきてみました。
名前が「ビッグマウント」。これまでの友達には確実にいなかったタイプ。長さ440mmって、完全にキッチン用品の枠を越えてません?
※あまりに気候がいいので無駄に公園からお送りしています。
ではでは、この金串とどうやって遊ぶか? つまり、どう使ってみるか?
ふと思いつきました。お酒のつまみをコース仕立てで刺していってみてはどうか?
と。
実は僕、飲み会や晩酌が大好きなんです。テーブルにあれこれおつまみが並んでいる状況って、最高に幸せですよね。ただ、「あれこれ並んでいる」ということはつまり、「自ら選択しなければいけない」ということ。
ところがですよ?
あらかじめ、「最初はこれを食べて、次はこれ。中盤に野菜っぽいものも挟んどくか」という感じで考えておいて、その順番に串に刺しておけば、飲み食いしてる最中は何も考えなくてすむじゃないですか。めちゃくちゃ楽。そのぶん、料理やお酒の美味しさだけをぞんぶんに感じることができるのではないか?
まさに「Don't think. FEEL!」。
ではさっそく、「おつまみDon't think棒」を作っていってみましょう。
大好きなうえに「串に刺しやすい」という新たな長所を知ることができた、皮ごと食べられる種なしブドウ。この時点でもう、今日金串君と遊んでみて良かった!
鮭おにぎりを刺してみました。
で、思ったんですが、順番を考えるの、けっこう頭を使いますね。まぁ逆に刺してってるからというのもあるんだろうけど、それを差し引いても、実は飲み会の最中って無意識に、「おつまみ順」をかなり考えてしまってるものなんだなぁと実感します。
その脳のメモリをフルに「FEEL!」に割り振れるこのあとの飲み、楽しみだな~!
最後に刺したのは、王者の貫禄たっぷりのから揚げと、生のホタテ貝柱。
ほら、飲み会の最初ってお刺身で始まるのがいちばん豪華な感じするじゃないですか?
そこでなんとか串に刺して食べられる刺身を探したところ、これがベストという判断になりました。
今日はもう何も考えなくていいんだ。なんという開放感!
おつまみがこの先たっぷり潤沢にあることが視覚的に見えるのも嬉しいですね。
いざホタテを串からかじりとり、もぐもぐ。チューハイごくり。お次はから揚げもぐもぐ。チューハイごくり。
えっと、なんなんでしょうかこの感覚。さっきちゃんと自分が順番を考えて用意したにも関わらず、その場で何も考えなくていい状況になってみると、おつまみが自動で与えらてくるみたいな感覚になって、自分がものすごくダメ人間になった気がします。
あとなんていうか、張り合いがない!
いや、ちゃんと美味しくはあるんですけどね。
そんな不思議な感覚を味わいながら、引き続き食べ飲み進めていたところ、コロッケゾーンでちょっとした問題が発生。
すると、どっぷりとかかったソースと油っこい衣、そして甘じょっぱいイモの風味が口のなかに広がり、「ここでちょっとご飯を食べられたら幸せだろうな~」と思ってしまった。ところが、おにぎりがあるのは串のまだまだ先。いきなりあっちにかじりつくのは行儀が悪いし、今日の企画意図ともずれてしまう。
けどな~、キュウリとトマトなんて食べたら、コロッケの余韻完全に消えちゃうんだよな……。
しかたないので、なんとなく釈然としない気持ちを抱えつつ順番通りに食べていったんですが、心底実感しましたよね。「選べることの自由さ」と「今まで選べていたことがどれだけ幸せだったのか」を。
「楽をしようとしたら人生がちょっとだけつまらなくなってしまった」という寓話のような結論となった、今回の企画。
そもそも、ブルース・リーが映画「燃えよドラゴン」のなかで言った名ゼリフ、「Don't think. FEEL!」は、絶対にこういう意味ではないと思います。
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