――幼い頃に「かっこいい」と手にしていた枝の選定基準を大人になった今、知りたい。
そんな私の思い付きに編集部から橋田さんと古賀さんが付き合ってくれた。
駅で合流し、枝を見つけられそうな森林のある公園に向かう。
公園の入り口で、開始1分と立たないうちに橋田さんが早速優勝候補となりそうな枝を見つけていた。長さがあって、枝らしい枝だ。
橋田さんの見つけた枝は適度なしなりがあり、弓道で使う弓のようでもあった。
ほら、こうやって持ったらそれっぽく見える(※弓道未経験)。
かっこいい枝を探す
かっこいい枝を探す方法は、シンプルに「公園を歩く」だけ。
「自然のある所では、足元を意識すると枝が結構落ちている」「大きな木の下は枝が落ちている(考えてみたら当たり前だけど)」など、少し歩いてみただけでもいろいろなことがわかる。
枝以外にも落ちていたドングリにテンションが上がったりした。帽子かぶってて緑色のドングリはレア度が高い気がする。秋だな~。
良いと思う枝を持って歩き、より良いと思う枝に出会ったらリリースし入れ替える、という方式でそれぞれが最強の枝を探した。
「枝なんかそんなに違いなんかないんじゃないか」……。
公園に来るまでは、そんな不安があった。しかしどうだ。
途中、枝を見つけると手持ちの枝と見比べて、質感を楽しみ、真剣にオーディションがはじまる。数十分、ともに行動しているだけで枝に愛着が沸いている自分がいた。
「えーーーーどうしよう……選べない」
もうすでに、私たちはそれぞれの枝に違う良さを見出してしまっている段階に来ている。選べないのだ。
伝わりづらいと思うが、上の写真でいうと、右から
- 「他の枝に比べてマットな質感が気になる枝」
- 「赤みがあり、ごつごつしていてかっこいい枝」
- 「しばらく持ってたら愛着がわいてしまった枝」
- 「長さは短いが、逆にそれが魔法の杖っぽくてかっこいい枝」
の4種類である。さあ、あなたの好みの枝はどれに近いカナ⁉
ふと横を見たら、橋田さんがめちゃくちゃ真剣な表情で枝を悩んでいた。
古賀さんは枝分かれした枝を選びがちだし、橋田さんは長さのある枝を選びがち。私はというと、曲線を描くような枝に惹かれがちであった。
実際に探す前は、太くてまっすぐな枝がかっこいいのかなと漠然と思っていたのだが、どうやら違うみたいだ。「最強の枝」は、「自分の中」にあった。
枝ひとつとっても、「かっこいい」の基準はそれぞれの中にあり、“かっこいい枝を探す”という作業を通じても、その人の知らない面を見ることができた。こんな面は危うく一生知らないところだったが、知らなくても何ら影響がないやつである。
このわずかな時間でも個性豊かな枝との出合いがたくさんあった。雑貨屋でディスプレイされてそうな枝、汚くて触りたくない枝、青山フラワーマーケットで売ってそうな枝、呪術アイテムのような枝……そんな中から私もついに、見た時に「これだ~!」と思う運命の一本を見つけることができた。
その枝は、長さもあり、曲線が素晴らしく、この時間で出合ったどんな枝よりも素晴らしく思えた。
それこそ見つけた時は雷に打たれたような衝撃を感じた……と同時に、「枝に対してそんな大げさな感情を抱くのか」とどこか冷静な自分もいた。もう推しの枝に対しての情緒がめちゃくちゃである。助けて~! どうしてこうなってしまったのだろうか。
それぞれの推し枝が出そろった
この公園で実質トップの3本※が今ここに集結した(※なぜなら自分たち以外にそういう目で枝を見ている人がいないからなのですが……)。
自分的に個性豊かな枝が揃ったな~と思ってみているわけだが、地面だし枝だし、地味な絵面なのでどの程度伝わるのか不安で仕方ない。
それぞれの枝の推しポイントを本人に語ってもらうとともに、自分が思うかっこよさで持ってもらった。
①古賀さんの選んだ枝
- 枝分かれしててかっこいい
- 闇属性っぽい
- 呪術に使いそうな雰囲気の枝
普段の古賀さんはめちゃくちゃ明るく、太陽を感じさせるような人柄だが、どこか禍々しさを感じる枝を選んでいた。
古賀さんの暗い色のワンピースの雰囲気、手に持つと虫歯菌(イメージ)みたいになる。ハッ、これは枝を持ってはじめて完成する、トータルコーディネートだったのか……!
②井口の選んだ枝
- 自然が作り出した曲線美が美しい
- ちょっと指叉(さすまた)っぽくもある
- たぶん物理攻撃のアイテム
この枝はたぶんこう使う。
先ほどのは呪術アイテム的だったが、こちらはきっと物理攻撃系だ。
③橋田さんの選んだ枝
- 開始1分で見つけて、最初からずっと持っていたので愛着がある
- 長さとしなり具合が良い
- 先端がふさふさしててかわいい
そう! 折れた時の状態のせいなのか、こちらの枝は、先端がふさふさしているのだ。こういう状態の枝は探し歩いていてもあまり見なかった。
橋田さんは、枝の形状を強調したポーズで写ってくれた。
この枝は長さがあって、重量感もあって良い枝だ。そしてこの流れでいうと、きっと弓のように使って別の物を飛ばすように攻撃する(心が男児なのでつい武器で例えてしまう)。
せっかくなので、当メディアの自分以上に「心が男児」な編集部の男性たちにも枝を見てもらった。
改めて、①古賀さん②井口③橋田さんの枝である。
その場では盛り上がったものの、果たしてこの熱狂は参加してない人にも伝わるのだろうかと不安になっていたが、さすがは「心が男児」。しっかり汲み取ってくれた。
①の古賀さんの枝に林さんと藤原さん票、②の私の枝に安藤さんと石川さん票が入った。
曲線を評価されて純粋に嬉しい。橋田さんの枝も素晴らしい枝だったが、
「正直どれもいいチョイスだと思って、特に棒の形状じゃなくて先端の形に着目した橋田さんにはオッと思いました。でも井口さんの棒の「あえてこの形」な感じに最終的には魅かれた形です(②の枝を選んだ石川さん)」
「橋田さんのさきっちょがモケモケしているのは確かに惹かれたのですが、サイゼリヤで言えばパエリアみたいな感じで気にはなるけどやっぱりオーソドックスなミラノ風ドリア選ぶかなーという感じでしょうか。(①の枝を選んだ林さん)」
などの意見が集まった。心が男児、信頼できすぎる……。くどいようだけどこれ、ただのそこら辺に落ちている枝に対するコメントなんですよね……。みんなそれぞれやはり枝に対する推しポイントがあったし、ここまで広がると思わなかったので楽しかった。
雑誌などで、アイドルとかモデルとかがたくさん載っている紙面を見ながら「この中で誰が好き?」みたいなムーブがあるだろう。枝も……すぐできるし楽しいよ。
足元も見て歩くと楽しいよ
一日枝を探していて思い出したことがある。
そういえば、公園とかで枝を拾うのも、長いものや汚いものは親に止められたなあ、ということ。考えてみれば当たり前だけど、こうして長い枝を拾えるのも自分が大きくなったからこそなのだという謎の感慨深さがあった。
なお、運命的な出会いをしたものの、拾った枝たちは(通行の邪魔にならないよう)木の下に避けて戻してきたが、古賀さんは「明日もあるかどうか確認しにこようかな」と言っていた。
どうやら私たちは、この短時間で愛着がわきすぎてしまったようだ。
2020年10月7日 18周年とくべつ企画「デイリー棒タルZ」
ありがとう18周年! この記念すべき日、ライター総勢18名が棒にまつわる記事を書きました。議論紛糾の企画会議のすえ決まったテーマで、どうしてこうなったのかもはや誰も覚えていません。なぜという気持ちをどうか押さえて楽しみください。
11時~19時半まで30分おきに公開します。