特集 2024年12月28日

ライターが選ぶ「この記事にはやられた」自分以外の傑作記事2024

年末が来たぞ~!!!!

というわけで、今年も一年の記事をふりかえる時期がやってまいりました。

まずはその第一弾として、デイリーポータルZのライター陣に、自分以外の記事で好きなものを選んでもらいました。同じサイトの書き手ならではの、リスペクトと悔しさにあふれたチョイスをどうぞ。選者によるコメント付きです。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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べつやくれい・選

三遊亭小遊三の推しぬいを作り、推し活をする(唐沢むぎこ)

「推し活」という文化がある←わかる。
「推しぬい」←わからないからやってみたい←わかる。

ここまではいいんですよ。でもそれが「小遊三のぬいぐるみを作る」になって「なんで?」ってなりました。「推し」が独特すぎるよ!

ぬいぐるみの顔が妙に似てるところも、途中の全裸のところも、シースルーのポーチに詰め込まれたところも、数々の小遊三エピソードも、インパクトしかなくておもしろかったです。(べつやく)

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安藤昌教・選

遠くから双眼鏡で見てもホラー映画は怖いのか?(石井公二)

僕も怖がりなので全体的に言いたいことは理解できるんですが、納得はできないんですよね。だって遠くでホラー映画見たら怖くなさそうじゃないですか、怖くないって絶対。

と、やりもせずに言い切るのもよくないなと思いつつ、結果なんて人それぞれかもしれないし、そんなことより僕はこういう全編言い訳みたいな記事が好きなんですよね。

最後の囲みが寿司のことしか言ってないのもよかったです。ホラーどうしたんだよ。(安藤)

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古賀及子・選

冷凍の今川焼きが自然解凍できるまで一緒に過ごす【そして自然解凍の方がうまい】(トルー)

自然解凍するって、つまり放っておくってことじゃないですか、でもトルーはそこに「一緒にすごす」という側面を発見した、これは本当にすごいと思いました。

企画としては、一緒にすごすことをする、そのために行動があれこれ試されているんですが、そもそも私たちは自然解凍していたとき、これまでももしかしたら冷凍食品と一緒にすごしていたのかもしれない。あれは放置ではなく、共栄だったんじゃないか。そんな可能性が見えました。冷凍食品と人のあいだにこんな密接な感情が起こり得るとは思わないし、とにかくエモーショナルでした。

別れによる痛みとそこからの再生を描いた映画といえばミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』ですが、感情の変遷を描くという意味ではそれに並んだと私は思います。最後の一文も見事です。(古賀)

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ほり・選

Googleマップのレビューで☆3未満の滝をめぐる(唐沢むぎこ)

「低レビューの滝をわざわざ見に行く」の計画立案~移動~遭遇 の一連の感情の起伏がたいへん興味深かったです。

低レビュー滝のついでに秩父華厳の滝に立ち寄り、あまりの迫力に呆然とするシーンが特に好きです。

全体を通して、唐沢さんの行動力を見習いたいと思いました。(ほり)

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江ノ島茂道・選/岡田有花・選

レゴ踏み比べ(トルー)

トルーさんの普段見れない表情がたくさんある動きのある記事ですきです(江ノ島)

タイトルのわずか6文字で爆笑した名作。うちにもレゴがよく落ちていますが、「踏み比べる」という発想が新しすぎて「すげえ!」と興奮しました。どれがより痛いか実証されて学びが深いだけでなく、顔写真がすべてぶれてて痛そうなのも最高です。(岡田)

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北向ハナウタ・選

友だちと2ショットの自撮りを撮りたい(佐伯)

言ってしまえば「友人との会話の書き抜き」なんですけど、自分の周りではあまり見かけないタイプの魅力的なキャラクター(加藤さん)と、友人との2ショットの自撮り、というこれまた自分には縁遠い文化がとても印象深く面白かった記事です。「自撮りって、思い出じゃないことを思い出にする行為なの。」は名言ですね!

佐伯さんの記事、今までのデイリーの記事たちとは被らないような角度だけど、じゃあどこのメディアに載せるんだと考えるとやっぱりデイリーだよな、という感じがして毎回楽しみです。(北向)

伊藤健史・選

子どもの三つ編みを1ヶ月練習してわかったこと(爲房新太朗)

三つ編みをしているお子さんはよく見かけるし、一見なんでもないんだけど、あれ、なにげに難しいんじゃないの?あんな繊細にさっと結えられるもんなの?といった日常の謎の解像度が、私と同じ素人?の挑戦と戸惑いを経てぐんと上がっていく過程に共感しまくりでのめりこんで読みました。

ていうかあれ自分でできるんだ。(伊藤)

井上マサキ・選

実物大の白紙で世界中の名画を感じる(石井公二)

自分が木になってみかんをもがれたり、会議中に小豆を炊いたりなど、今年も大暴れしていた石井さん。

実物大の白紙を貼って「モナリザ」と言い出したときはもう、なにがなにやらで笑いましたが、だんだん本物感が漂ってきたうえ最後に白紙で模写大会まで開いているがすごかったです。「見える」とはなんのか?(井上)

石井公二・選

ピーマンをコップにして飲む(トルー)

トルーさんのご自宅だけで完結するシリーズが好きなのですが、中でもこの記事はタイトルと画像を目にした瞬間「凄すぎる…」と震えました。シンプルだけど鋭い切れ味。こんな記事を書けたら、と思います。(石井)

石川大樹・選

革新的レトロ手芸本『ギャルのセーターシリーズ』を参考にセーターを編む(佐伯)


担当編集としての原稿への返信を見返したら、すべてを物語っていたので引用してコメントと代えさせていただきます。

「拝読しました。めちゃめちゃ面白かったです…過去最高傑作かもしれない…。

前半部であれこれ妄想で彼向けセーターへの猜疑心を語っているところ、ここがすでに今回いつもに増して濃い情念がこもっていておもしろかったのですが、特筆すべくは終盤それがすべて崩壊していくところだと思います。展開としても面白いし、「脳内を覆った雲が突風に吹き飛ばされる…」あたりからのダイナミックな描写もすごくて、完全にマンガとしてコマ割りまで含めて頭に浮かびました。何なら脳内アニメ化もできそうです。すごい…。

それだけの展開があるうえにちょっとポジティブなのもいいんですよね。さわやかな読後感。前半あれだけ猜疑心をあらわにしておきながらこの読後感に持って行けたのはすごいです。記事全体で見たときに、ひねくれとさわやかの両立というか。いや大傑作だと思いました。ありがとうございます…」(石川)

トルー・選

扇風機をハンディファンにする(江ノ島茂道)

考えもしなかった斜め下のアイデアなのに、タイトルとトップ画像でやりたいことがすぐに理解できて爽快でした。

撮影中辛そうなのもすごく楽しいです。アグレッシブさが透けて見えるからでしょうか。(トルー)

んちゅたぐい・選

室内ゴミ捨て場を作る(とりもちうずら)

(収集車来ちゃう…けど捨てに行くの面倒だしなぁ…次の回収日でいいかな…)をまさに繰り返している日々なので、「燃えるゴミ 毎日」の貼り紙が沁みました。結局ゴミ捨て面倒問題は何も解決していないところ含めて大好きです。

謎の黄色いヒモを差し色にするところで、ゴミ捨て場が生け花に近いということに気づかされました。(んちゅたぐい)

窪田鳳花・選

飴玉は2個舐めてもいいかもしれない(月餅)

まずタイトルで吹き出して笑いました。「食べてもいいかもしれない」って。知らんがな。

内容はサッパリしつつも文章や行動が所々おもしろくて、まさに僕が好きだったインターネットそのものです。得体のしれないにーちゃんねーちゃんが少しだけ変なことをする。最高です。

読後、俺がやりたかったのはこれなんだ!と多大な影響を受けてショート記事を書きまくりました。(窪田)

爲房新太朗・選

けん玉チャレンジをカラオケに導入してみる(安藤昌教)

とにかくけん玉が成功した写真が面白い、比喩でなく涙が出るほど笑いました。紅白での緊張感もこうだったろうなというのもなぜか伝わってきたし、反動で成功したときの盛り上がりたるや。これ書いている最中も見返して笑っています。(爲房)

こーだい・選

コストコのクマのぬいぐるみと最期に踊りたい(鳳花)

ぬいぐるみもこれだけ大きいと、人格を獲得していきなりしゃべったり動き始めるんじゃないかと緊張感がありますね。

それはそうと、「ぬいぐるみ終活問題」に切り込んだ意欲作だったと思います。「愛着がわいちゃって捨てられない」って窪田さんが何回も書いてるんですけど、めちゃくちゃわかります。

試行錯誤して躍らせるところも面白いし、「終わったらやっぱり捨てちゃうのかな?」って、最後までハラハラしながら読めました。(こーだい)

佐伯・選

好きな場所で洗濯物干したい(トルー)

トルーさんという素材を存分に活かした無添加のおもしろさが味わえてうれしい記事です。素朴で爽やかな衝動が魅力的ですが、最終的に己の身1つでなんとかする勇ましさは武士のようでグッときました。

写真も良くて、マイクスタンドを慌てて支えるところとか最高です。躍動感。ちょっとオシャレな感じさえします。橋田さんとのやり取りもなんか良いです。もっと見たい。(佐伯)

まいしろ・選

「ティンパニに頭から突っ込む曲」のコンサートを見てきた(石川大樹)

タイトルと画像でいまから何が起きるかわかっているのにそれでも読みたくなる記事でした。

ちょっとコミカルな写真が続く前半の演奏パートと、奏者の方が熱く語る後半のインタビューパートのギャップも好きです。

「紙は意外と高い」「かたい紙だと怖い」みたいな実際やった人にしかわからない話もめちゃくちゃおもしろかったです。(まいしろ)

三土たつお・選

超音波さんぽ(林雄司)

ふだんの生活のなかにまだ知らなかった面白さがある、というのを発見するのが本当に好きなんですが、これはまさにそうでした。

こんな音が聞こえるのか!という感動がまずあって、なんか変な音が聞こえる、どこからだ・・? これか? なぜだ・・?と、見ながらとてもわくわくしました。(三土)

鈴木さくら・選

オーライオーライを分かる(林雄司)

「オーライ」ひとつでここまでおもしろい時間を提供してくれる林さんに脱帽です。わたしは毎日車に乗る人生を送っているので、車に乗らない人生を送っている人の感覚が知れて勉強になりました。たぶん。

橋田さんと井上さんの身振り手振り、表情にも笑ってしまいました。現場の雰囲気が細かいところまで伝わってくる、臨場感あふれる記事です。URL(understanding-alright-alright)もよい。(鈴木)

唐沢むぎこ・選

倦怠期の犬に好かれる禁断の方法とは!?(ヨシダプロ)

冷たいもも(柴犬)の心を取り戻すため、ドッグフードの袋で服を作るヨシダプロさん。できあがった手作りの権化のような服、それにしっぽをふるもも...。こんな万人が笑顔になれる裏切りがあるんやと嬉しかったです。(唐沢)

まこまこまこっちゃん・選

異国で羊を買って、お世話になった学校に寄付をする(拙攻)

何もわからない環境と、しかしなぜか色んな人が協力に名乗り出てくれてなんとかなっていく雰囲気がたまりませんでした。記事の終盤で写真に写っている人たちがことごとく笑顔なのも最高です。(まこまこまこっちゃん)

林雄司・選

世界をきらびやかに見せてくれる記事を選びました。こんな場所があるのか、こんな意味があったのか、こんなことをしてもいいのか。
いいじゃんこの世、おもしろそうじゃんって気になります。
もうデイリーポータルZじゃなくて「るるぶこの世」って名前にしてもいい。
あと、取材記事が苦手なので取材して解き明かしていく記事を書いてくれるのは本当にありがたい。(林)


以上、ライターが選ぶ他選傑作記事集でした。

注目はやはりトルーの多さ!
同業者に愛される、ライターズ・ライターとしての地位を確立しています。

それでいてみんなの記事のチョイスが全然かぶらなかったのも印象的。正統派インタビューからかなり抽象的な企画まで、幅広い記事に感化され合いながら、みんな自分の記事を書いています。

というわけで、来年もデイリーポータルZは(うっかり全員トルーみたいな記事になってしまわないように気をつけつつ)楽しい記事をお届けしていく所存です。

どうぞよろしくお願いします。

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