特集 2024年2月24日

革新的レトロ手芸本『ギャルのセーターシリーズ』を参考にセーターを編む

高度成長期頃に巻き起こった手芸ブーム。
わたしは今、その渦中で発行された手芸本を集めるのにハマっている。

そして、当時の手芸本(主に編み物本)を読み漁る上で、どうしても見過ごせない存在がいることに気付いた。

『彼』だ。

当時の手編み界隈で旋風を巻き起こした一大ジャンル、それが「『彼』のセーター」だった。

なぜ、編み物本は『彼』を必要としたのか。編み物本における『彼』とはなんだったのか。


今回は、実際にセーターを編みながら、編み物本における『彼』の存在について考えていく。

社会人。体育が嫌い。大人になった今でも大抵の物事を「体育よりマシか、否か」で判断している。

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手始めに、わたしが最近ゲットしたイチオシ手芸本の表紙を見てほしい。

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(※「絵を見て編む ギャルのセーター/ニットのデザイン・津川良 絵・秋月志穂」(日本ヴォーグ社)書影)

もうこの時点で最高。
その名も「『絵を見て編むギャルのセーター』シリーズ(全3作品)」。

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幻のレーベル『VOGUE COMIC BOOKS』。
(※左から
「絵を見て編む 春夏ギャルのセーター/ニットのデザイン・佐久間真理恵 絵・呉山幸子」(日本ヴォーグ社)書影
「絵を見て編むギャルのセーター PART2/ニットのデザイン・たむらひとみ 絵・秋月志穂」(日本ヴォーグ社)書影
「絵を見て編むギャルのセーター/ニットのデザイン・津川良 絵・秋月志穂」(日本ヴォーグ社)書影)

なんと、版元は日本ヴォーグ社。
日本ヴォーグ社と言えば、手芸本の老舗出版社だ。
現在日本ヴォーグ社から発行されている本はオシャレで洗練されたものばかりだが、こういう方向性(オモロ一辺倒)を試みた時期もあったんだなと思うと、日本ヴォーグ社に対するLOVEの気持ちが高まる。

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内容は漫画形式になっている
(※「絵を見て編むギャルのセーター PART2/ニットのデザイン・たむらひとみ 絵・秋月志穂」(日本ヴォーグ社)p.15 より引用)

本シリーズは全3作あるが、大まかな話の流れは全て同じだ。

『編み物初心者の主人公がボーイフレンドに手作りセーターを編む』

以上である。多分みなさんが想像する通りのストーリーだ。
これぞいわゆる「『彼』のセーター本」である。(本の中で明確に『彼』が登場して、掲載作品の多くがメンズものの編み物本を総称して「『彼』のセーター本」と勝手に呼んでいます)

しかし、わたしがこの手芸本で最も特異だと感じたポイントは漫画のストーリーではない。

わたしが驚愕したのは

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(※「絵を見て編むギャルのセーター PART2/ニットデザイン・津川良 絵・秋月志穂」(日本ヴォーグ社)p.19 より引用)

この大胆すぎるページ構成である。

もしかしたら、漫画の要素を織り交ぜた手芸本は他にも存在するかもしれない。

※「絵を見て編むギャルのセーター PART2/ニットのデザイン・たむらひとみ 絵・秋月志穂」(日本ヴォーグ社)p.26,p.27より引用

しかし、こんなにも大胆にイラスト&ポエムにページを割いたものは他にあるだろうか?いや、ない(多分)。

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初心者は2週間でセーターを編めるのか

今回のテーマは以下の通りだ。

①『彼のセーター』を編む人の気持ちを全力で考える
②2週間で編む

編むのは、ギャルのセーターシリーズ一作目に掲載されているこのセーター。

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主人公『ミッチ』が『彼』のために初めて編んだセーターです
(※「絵を見て編む ギャルのセーター/ニットのデザイン・津川良 絵・秋月志穂」(日本ヴォーグ社)書影)

①彼のセーターを編む人の気持ちを考える

いくつかの「『彼』のセーター本」を読むにつけ、だいたいは初心者向けを謳っているものが多かった。
超基本的な技術を知っていれば大丈夫、程度の温度感。
つまり、彼のセーター本のターゲット層のスキルは、ピッタリわたしといっしょってことだ。すごく都合がいい。
自分、一応メリヤス編みできます。よろしくお願いします。

そして、②『2週間で編む』について。

なぜ2週間なのか。その理由は、

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(※「2週間で完成!彼のかんたんセーター」(日本ヴォーグ社)書影)

これを読んだからだ。

この本の掲載作品は、今回編もうとしているものと同じくらいのレベル。

初心者でも2週間でセーターを1着編むことはできるのだろうか。それを実験したい。

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2週間で編めるって本当ですか?

とりあえず毛糸を用意した。

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毛糸400gって多い。ちょっとギョッとする。
お菓子を作る時、とんでもない量の砂糖を測りながら「マジか………?!」と思う、あの感覚に似ている。

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「今日(2月1日)から編みはじめれば2週間後は丁度バレンタインじゃん。よーし、そのスケジュールで行こう。」と思ったのだが、初っ端で普通に寝落ちしたので全然進まなかった。見たか。これがリアルだ。

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1週間で編めると言っている本もある
(※「いつもふたりは、セーター気分。」(雄鶏社)書影)

まず、この「2週間」とか「1週間」っつーのは、どういうスケジュールで生きてる人間の話なんだろう。

例えば、料理本の「30分で完成」はまとまった時間であることが想像できる。しかし、手芸本は「◯日で完成」とは言っても、「◯時間で完成」とはなかなか言ってくれない。
「◯日」と「◯時間」の間には含まれるニュアンスに大きな差がある。それに、無職の14日間(2週間)と、趣味に仕事に大忙しの14日間(2週間)でも、捻出できる時間には大きな差がある。

スキルに伴う必要時間の差異も、料理と手芸では結構違うと思う。普段料理をしない人だとしても、3日間かけて炒飯を作ることは考えにくい。しかし、普段手芸をしない人が1ヶ月かけて袋小物を作るのは、まぁまぁあり得ると思う。
手芸作品は腐らない。それが救いであり、重荷でもある。

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編んでも進まないけど、編まないよりは進んでいる

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