神社でピザ窯に出会うなんて思わなかった
「彌榮神社」は大阪市生野区桃谷にある。JR鶴橋駅、あるいはJR桃谷駅からそれぞれ徒歩10分ほどの距離だ。
ある晴れた日に鶴橋あたりを、「どこにたどり着いてもいい」ぐらいの気持ちで歩き回っていたらたどり着いたのだった。
“文禄年間(1592年~1595年)に旧國幣大社熊野神社より御分霊を移して御祭りしました。”という由緒があって大変歴史ある神社だが、境内にはちょっとのどかな雰囲気が漂っていて、手作りらしいこんなアマビエ像があったりする。
「親しみを感じる神社だな」と思いながらふと眺めた敷地の隅に、ピザ窯があるのを発見したのであった。
窯のすぐそばにチラシがあったのをもらってみると、ピザ窯は一般にも貸し出しているようで、20歳以上の代表者が事前に申し込めば、9時~17時まで、1日5000円で利用させてもらえるらしい。なんだか面白そうである。
よく晴れた日に再び神社へ
「神社でピザを焼いてみよう!」と決意した私は、後日、「彌榮神社」の社務所に問い合わせた。ピザ窯を借りるとして、どんな準備が必要なのか、気を付けるべきことはあるのか。
聞いたところ、以下のようなことを教えていただけた。
・窯の利用は一日に一組限定で、シーズンなどに関係なく、すでに予約が入っている日、祭礼・催しなどが神社で行われる日をのぞき、予約することができる
・薪やトング、ピザカッターなどピザを焼いて食べるための最低限の備品は用意してもらえる
・近隣のピザ屋さんが対応可能なタイミングであれば、ピザ生地を用意してもらうこともできる(別料金が必要)が、その場合でも、生地に乗せるトッピング類は自分で用意する必要がある。もちろん、生地から自分で用意してもいい
・神社側はあくまで場を提供しているというスタンスで、アルコール類も節度を守った範囲でなら飲んでよし
・朝9時から利用できるが、開始時間や終了時間は自由。ただ、17時までに必ず窯や周囲を綺麗にし、片付けまで終える必要がある。
・屋根のない境内が会場だから暑さ寒さ、日差しへの対策などは各自で行う必要がある。台風・強風・豪雨などの悪天候の場合は使用が中止になる場合もある。
それを踏まえた上で予約させていただいたのだが、当初希望していた週末にはすでに別の方の予約が入っていて、平日に開催することにした。
何人かの友人に声をかけたのだが、みんな仕事があって(そりゃそうだ)、急な誘いにこたえてくれたフリーライターの橋尾さんと私との二人での実施となった。これはちょっと異例なことのようで、だいたいみんな10人とか20人みたいな大勢で利用するらしい。「お二人で!?それは贅沢ですねー!」と言われた。ちなみに何人で利用しても利用料は変わらない。
とにかく無事予約できて、生地も用意してもらえることになったので、当日、事前にトッピングだけを用意していくことにした。
あとこれは重要なのだが、たとえば当日、境内でトッピング用の野菜をカットするというのは難しい(包丁やまな板などは備品にない)。なので、たとえば輪切りのピーマンを乗せたければ、事前に輪切りにしたものを持っていく必要があるのだ。キッチンばさみを持っていけば、それでできる程度の簡単な調理は可能だが。
と、そんなわけで、事前に自分が焼きたいピザのイメージをしておいて、具材のカットなども済ませてから出発した。
それに加え、せっかく鶴橋も近いのだし、と、駅近くでキムチを買ったりもした。
そういう過程を経て、ついに神社に到着。
まずは薪に火をうつすところから
境内にたどり着くと、ピザ窯の前にテーブルと椅子が用意されていた。神社の中にいきなり素晴らしい祝祭の場が生まれたような感じで、すでに愉快である。
社務所に声をかける。宮司の長澤伸幸さんが出てきて、一通りの流れを説明してくれた。
ピザを焼くにあたり、まずは薪を燃やして窯全体に熱を行き渡らせる必要があるという。今回は薪に火が行き渡りやすいようにあらかじめ窯の内部に並べてくれていた。が、常連さんはそこから全部自分でやるのだとか。
着火剤も入れてくれていて、新聞紙にライターで着火しさえすれば、あとはじわじわと薪に火が移っていく。まずはそれがしっかり燃えるまで待ち、1時間ほどすると窯全体があたたまってくるのだとか。
火がついたら、様子を見ながらとにかく辛抱強く待つのみ。この時間を楽しく過ごすための手軽なおつまみがあるといいだろう。