友だちに聞く
友だちの加藤をバーミヤンに呼び出した。
加藤:バーミヤンのワインってぬるいのよ。それを、飲み終わった凍結レモンサワー(凍ったスライスレモンが大量に入っているサワー)に入れると、いい具合にワインは冷えて、レモンは溶けるわけ。
佐伯:すげー。サングリアじゃん。
加藤:これ、あたしの発明だから。記事に書いといて。
佐伯:わかった。
慣れた手つきでレモンを潰す加藤。
その間にも料理は次々と運ばれてくる。働き者の猫型配膳ロボットからは何度も「你好!」「謝謝!」「再見!」と言われた。
ほんとうに、何度も言われた。
加藤:で、本題は?
佐伯:今日は「友だちと2ショットの自撮りを撮るにはどうすればいいのか」っていうのを聞きたくて。
加藤:はぁ。
佐伯:まずどう声をかければいいのかとかー…。
加藤:で、撮る。
佐伯:待って、早すぎてわかんなかった。
加藤:だって、写真撮る時にいちいち声かけないでしょ。
佐伯:えッ。そうなんだ。それは加藤だけじゃなく?
加藤:ほとんどの人はね。相手が目上の人なら一言いうけど、友だちには言わんし言われないかな。
佐伯:それで嫌じゃないんだ。
加藤:嫌じゃない。そういうものだから。
何も言わなくていいのか。知らなかった。何も言わなくても撮っていいって、そんなの言ってくれないとわからないし…。
早口で「あの、写真撮っても、い、いいカナ??」と言う前に知れてよかった。ただ、スムーズにスマホを取り出して自撮りの構えをできるかは、全く自信がない。
加藤:でも、友だち未満の関係の人ときとかは一言言うかな。居酒屋で隣になった人とか、スナックの飲み仲間とか、ネットで知り合った人とか。
佐伯:ネットで知り合った人?
加藤:Spoon(※)。
佐伯:Spoon?!Spoonって実際会ったりとかあるんだ!?
加藤:あるでしょ。
佐伯:そうなんだ…。知らない世界だな…。
(※音声専用のライブ配信アプリ。通話とかもできるらしい。)
時に小技を効かせつつ
加藤の話にへぇへぇとうなづきつつ、「それ一口ちょうだいよ」と言おうか迷っている間に、皿はあっという間に空になる。あっぱれだ。
タブレットメニューをパーっと見た加藤が次に注文したのは担々麺。そして追加でトッピングまで付けるこの余裕。ラーメンにトッピングを付けるのは、胃に自信がある人あるあるである。
佐伯:自撮りってさぁ、一回で何枚くらい撮ってんの?
加藤:大体の人は1〜2枚かな。でもわたしは連写する。
佐伯:その心は。
加藤:相手にウケるから。「めっちゃ撮るじゃん〜!」って、相手がどんどん笑顔になるのがかわいいから。パラパラ漫画みたいにすまし顔から笑顔に移り変わって、いい写真が撮れる。
佐伯:すご。完全にテクニックで笑顔引き出してんじゃん。
加藤:そうだよ。他人と自撮りするときは、自分がスタジオアリスになるんだよ。
なるほど、それならわたしでも真似しやすい。
わたしがほうほうと言いながらメモを取っている間にも、加藤は流暢に喋り、飲み、そして食べ続ける。
加藤:そもそもわたしのここ数年の友人関係って、社会人オーケストラ(以下:オケ)でのことがメインだから、若干特殊かもしれないんだけど大丈夫?
佐伯:それは全然大丈夫。でもさ、オケってほぼ初対面の人がいっぱいいるんでしょ?そういう関係性だと撮られるの嫌な人もいるんじゃない?
加藤:いるね。
佐伯:それってどう見分けるの?
加藤:まず、自撮りの前に他撮りを試みる。その時にカメラを避けようとする人とは自撮りしない。
佐伯:なーるーほーどーーーーー!!!!!!!
加藤:他撮りの時にカメラを向けられてノリノリでポーズを取るような人は、さっきやったように無言で自撮りの構えをしても大丈夫。
佐伯:すげー!そこら辺ちゃんと考えてやってんだ!!!策士!!!!!!
加藤:で、写真苦手な人とは、お菓子交換する。写真には残せなくても、なんかしらの思い出としてね。