「メンツ潰し/潰され」のエンタメ力
ドヤっと大きくでて自慢した人が、ぺしゃんこに潰される様子は見ててすごく面白いものだった。前述したラップバトルもそうだが、スポーツなんかも「たくさん練習して強いとされてる人」が「みんなの前で負ける」というメンツ潰れを見るハラハラ感を楽しんでいるのかもしれない。人間って怖い。
ただ、潰される練習をしているといい感じに「慣れ」も発生するので、なるべく潰され慣れておいて今後の老いに備えようと話しました。

「メンツを潰す」という言葉をたまに聞く。でもメンツを潰すってなんだろう。
ビジネス書には「仕事で誰かのメンツを潰すと、敵が増えていろいろ終わる」と書かれていた。
よくわからないのに「潰すと終わる」なんて怖すぎる。
じゃあ、合意のもとでメンツを潰し合えば、どんな気持ちになるかわかるのでは?実験してみました。
メンツの潰し方はいろいろあるっぽいのですが、今回は
このやり方で試すことにしました。
相手の功績を立てずに、軽々しく上回っていきます。
自慢を潰していくという流れなので、まず、誰かが自慢しないと話がはじまらない。
「自慢なんてないよ」「ふだん使わない脳の引き出しだから難しい」と黙ること1分……
やばい、普通に褒められた。これでは、ただ自慢しただけになってしま……
しかし、今日はメンツを思う存分潰す会である。
渾身の自慢を潰され、バカにされ「メンツを潰されるってこんな気持ちになるんだ」と一瞬で理解ができた。
鳴海さんとは3年間一緒に働いたことがあり、仲が良かったというこれまでの関係性も効いている。
というのも、この話題でもし負けるなら英語が上手な郡司さんだと予想して自慢したのだ。
まさかこっちにぶん殴られるとは思ってもいなかった。そしてなんて恥ずかしいんだろう。悔しい……。
今ので全員要領がわかった。この後、会話の流れやテンポを考えずどんどんメンツを潰しあうことになる。
郡司「魚をさばくもすごいですけどね!僕は味からこだわりたいなって」
さらにボコボコにされている。そんな元上司の様子を、私は
「気持ちよく喋ろうとしたのに潰された」「このあと魚レシピとか話そうとしたのに」と郡司さんにクレームが飛ぶ。しかし今日はどんどん相手を上回っていい日なので、郡司さんが正解である。
一旦休憩して雑談になった。
なんとなく鳴海さんの野球の話になる。
私たちはメンツのことも忘れ、普通に話していた。しかし突然郡司さんが
切り込みの鋭さ、追い込みの美しさに「うますぎるよ」「今のかっこよかった」と郡司さんは賞賛までされることとなった。
同じような感動を覚えたことがある。ラップバトルだ。相手が即興で言ったことに対し、韻を踏みつつ華麗にディスる。今の郡司さんの潰しは、ラップバトルの神回を見た時の気分とそっくりだった。
ボロボロにされた鳴海さんでさえ「上手だね」と最後は褒めていた。
結局3時間にわたってメンツの潰し方を研究をすることになり、大いに盛り上がった。
今回わかったことをまとめると
鳴海さんがTOEICガチ勢だったこと、郡司さんがラー油を自分で作っていることなど、今回初めて聞く話が多かった。
「自慢前提」「それを上回ってOK」という特殊な会話設定なので、出てくる情報が大体新情報なのだ。
飲み会の終わりによく「また同じ話しちゃったな…」と思うが、今回はそうした後悔がほぼなかった。
途中、私が郡司さんのメンツを潰してやろうと、勝てるものを考えて
メンツを潰す方も、ただ潰すだけだとダサくなって逆に恥をかいてしまうのだ。盛り上がる潰し方、技術力のある潰し方が要求される。
他人を下げたい!という思いだけでぶつかると、ただ品のない野暮な人になってしまうことがわかった。
「メンツを潰し合う」といっても、会社内で起こる本気の潰し合いなどとは違い、仲が良いこともあって心の安全が確保されている。
最初は潰されてびっくりしたが、すぐに慣れて「絶対にお前を潰すぞ!!」という物騒な決め台詞がでたり、認められた範囲のケンカごっこが楽しかった。
逆に最後は「もっと潰して潰して!」と潰しを求める状況にまで到達していた。
今回は楽しかったが、もしこれを現実世界で何も了承もなくやられたら「あぁん!? ナメてんのかコラ」となることもよくわかった。仕事などに支障がでる理由もよくわかる。
ただ事前に潰しの合意を結び、やりあうのは面白い。勝者のドヤ顔、敗者の負け顔、感情がジェットコースターのように浮き沈みし、汗だくになりながら楽しんだ。
誰かのメンツを潰したい時は、ぜひ潰す前に合意を取ってお楽しみください。
実は上のやり方以外にも、メンツの潰し方をいろいろ試してみたのだが
その中で、簡単で盛り上がったのが「メンツ潰し大富豪」である。
やり方は
書き終わったら、大富豪の要領で「強さ」順に出していき、一番最後に札を出した人の勝ち。ではやってみますね。
途中の優劣がよくわからなくなるが、要は最後に一人がぶっちぎればよいのだ。「志村けん」「渡辺直美」これ以上はもうないというカードが続くが…
どっちも譲らず、せーので最終カードをお互い出すことになった。せーの!
この方法なら、カードを出しながら「どこで会ったんですか!?」など話もどんどん広がる。そして最初に行った自慢によるメンツの潰し合いよりライトでやりやすい。
ぜひ飲み会で暇になったら、メンツ大富豪の方からお試しにやってみてください。
ドヤっと大きくでて自慢した人が、ぺしゃんこに潰される様子は見ててすごく面白いものだった。前述したラップバトルもそうだが、スポーツなんかも「たくさん練習して強いとされてる人」が「みんなの前で負ける」というメンツ潰れを見るハラハラ感を楽しんでいるのかもしれない。人間って怖い。
ただ、潰される練習をしているといい感じに「慣れ」も発生するので、なるべく潰され慣れておいて今後の老いに備えようと話しました。
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