まとめ
工事現場にあるものはふつう分からない。でもツイッターにはすごい人がいるのだ。たちどころに教えてくれて、むちゃくちゃ詳しくなる。それは逆に、社会を支える人たちはぼくたち自身の中にいるということでもあるのだろう。
前回の記事も合わせてどうぞ:
目に映るものの名前をできる限り知りたい
街にあるものは名前を知らないものばかりだが、みんなで見れば分かることがある。たとえば工事現場の風景。クレーンがいるな、トラックがいるなくらいしか普通は分からないものだが、みんなで見るとどうだろうか。
なんでもない街の風景でも、みんなで見ればたくさんのことが分かる、という経験を以前した。「目に映るものの名前をできる限り知りたい」という記事だ。
このなんでもない街の風景のなかで、名前を知っているものがあればなんでも教えてくださいと呼びかけたのだ。結果としてこうなった。
車はたんなる車ではなくトヨタのシエンタであり、木はただの木ではなくイチョウであり、アベリアである。世界はとても豊かで、そして名前はその入口になるということを知った。
ところで街にはいろんな風景がある。上ではおもに道路だったが、駅もあるし広場もある。いろんな場所で、おなじことをやってみたい。というわけで今回は工事現場の風景で同じことを呼びかけてみた。
もとの写真はこう。東京・渋谷駅前の再開発工事だ。
結果はこうなった。
今回もすごいことになっている。部分ごとに詳しく紹介したい。
工事現場にはあまりにもたくさんのものがあって息切れしそうなので、まずは周辺から見ていきたい。風景の左上はじつは駅なのだ。
まず左端に電車がいるのが見える。山手線だろう。でもそれだけじゃない。
三角屋根の2つの箱が転落検知装置(マット式)、その左側のは電力機器箱で、右側面に高電圧危険標が貼ってあります。右側は信号機器箱ですね。
— mipsparc (@mipsparc) July 24, 2020
あと、白い柵の上にあるバッテンがされた黄色い丸い板は臨時徐行信号機、その下のバッテンがされた四角い標識は速度制限標識ですね。
線路の横に謎の箱がいくつも立っているのを見ることがある。なんなんだろうなーと思いつつ、今日まで謎のままだった。転落検知装置に電力器具箱。そんなものたちだったのか。
鉄道周辺についてまとめるとこうなった。
植物が分かる人はすごいなあと思う。なぜ葉っぱだけで分かるのか。どれもそっくりなのに!
前回の記事で「ヤブカラシ」というものを知って、それだけは少し見えるようになった。地下茎を伸ばすので駆除が難しいという生き方がたくましいなと思って、ちょっと共感したのだ。
ふむふむ。
これパネルタンクっていうのか。でもこの柄は見たことあるような気がする。もしかしてヒシタンクっていうやつ?
植物や高いところにあるものなどをまとめるとこうなった。
左上はクレーンの支柱なんだけど、支柱のことをマストっていうんだね! 知らなかったー。
いよいよ工事現場の中を見てみよう。まずは重機からだ。
左側の重機
— らおん (@minmei_publish) July 23, 2020
クローラークレーン
三点杭打機(5軸)
ミニクレーン
バックホウ
アボロン付きテレスコピッククレーン
右下の赤もの
投光器
テレスコピッククレーン! クローラークレーン! パワーショベル! 重機の名前はかっこいい。それは異論がないと思う。
クローラークレーンとはこれだ。
真ん中の緑のやつ。足がキャタピラみたいになっていて、這うように進むからクローラークレーン、ということだろう。ひとくちにクレーンといってもいろいろいるんだね。
この赤いやつは高所作業車というそうだ。前のカゴみたいなところに人を乗せてアームを伸ばすのだろう。ほんとは背が高いのにふだんはこうやって身をたたんでいるとは奥ゆかしい。
まとめるとこうなった。
まず大事なこととして、ここに一面引かれてる鉄板は敷鉄板という。重機の重さを受け止めるためのものだ。ただ、それだけじゃない。
サイズは5尺 x 20尺で、重さは約2トンだそうだ。重い・・。
人の手ではとても持てないので、クレーンで吊るための穴が空いている。
なのだが、たまにこの吊り穴がないタイプの敷鉄板も見かけるのだ。どうやって持つんだろう。ケンシロウみたいな人が各現場に一人ずついるんだろうか。
手前左側にライトが4つついた投光器があるのだが、それは本当の製品名とは別に「ライトボーイ」と呼ばれていて、それで通じるそうだ。
業界での通称っていいなあと思う。
そしてこの、謎の柱たちは「H鋼土留壁」の「親杭」というものだそうだ。これを基点にしてここに壁を作ろうというのだろう。でも待ってほしいんだけど、なんでみんなそれが分かるの?
器具・装置についてまとめるとこうなった。
ものの名前というか、工法も読み取っちゃう人々も現れる。
「覆工ガード」ってかっこいいですね!と返したところ、次のように教えてくれた。
すごすぎる。いま重仮設工事中と見られるそうだ。現場を見ただけでなにが行われているのか、次に何がどうなるのかが分かってしまう。そういうものなのか。
こういう方もいた。SMW工法とはソイルミキシングウォール工法のことで、地中にセメントの壁をつくるということのようだ。CRMよりはSMWのほうが考えられるという。まったく分からないが、とにかくすごいということは分かった。
最後は地面そのものだ。工事現場は沖積面であり、右下に見える土は「撹乱されたもの」とのこと。地理に詳しい人がぐっと視点のスケールの引いてみせてくれる感じは素敵だなあと思う。
右下にある灰色のやつはセメントミルクというものをプレボーリングで根固め工法したものだそうだ。言葉の使いかたはたぶん間違ってるが、この方もすごい。
地面そのものはこうなった。
撹乱された土、かっこいい。自然のままではないというぐらいの意味だそうだ。
土壌学などの用語です。コンクリートのガラが混じっているようなのでそう判断しましたが、元々は腐植土や砂・泥などが堆積していたはずです。
— 苅谷愛彦 Yoshi Kariya (@yoshi_kariya) July 24, 2020
工事現場にあるものはふつう分からない。でもツイッターにはすごい人がいるのだ。たちどころに教えてくれて、むちゃくちゃ詳しくなる。それは逆に、社会を支える人たちはぼくたち自身の中にいるということでもあるのだろう。
前回の記事も合わせてどうぞ:
目に映るものの名前をできる限り知りたい
こんな感じで街にあるものの名前を知りたいよね、という感じの本が出ます! 書店によっては7月末には店頭に並びますが、8月3日発売予定となっています。よろしくどうぞー。
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