ふつう特集 2021年3月31日

和菓子屋でみたらしだんごを買う

あなたが最後に和菓子屋に行ったのはいつですか。

わたしは子供の頃、母親がたまに地元の和菓子屋さんで買ってきてくれたおだんごやおむすびを食べていたが、自ら足を運んで買いに行った記憶はない。

一人暮らしをして5年ほど経つが、どらやきや大福など和菓子が食べたくなったら、これまでコンビニやスーパーで購入していた。おだんごを買うハードルはかなり高く、あまり食べることはない。なにしろ4本入りパックは一人には多すぎる。

しかし去年、リモートワークが増えてから近所を散歩することが多くなり、気づいたことがある。

うちの近所和菓子屋多くない?

いや、気づいていなかっただけで、どこの町にもそれなりに和菓子屋ってあるのでは??

というわけで、今回わたしは戸塚駅周辺の和菓子屋におだんごを買いにいってきた。
お団子にもいろいろ種類があるが、個人的に一番「ふつう」のおだんごと考えるみたらしだんごを3軒食べ比べてみる。

1993年東京都生まれ。与太郎という柴犬と生きている普通の会社員。お昼休み時間に事務員さんがDPZを見ているのを目にしてしまい、身元がバレないかハラハラしている。

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時代や進み、いまやなにをとってもバリエーションのゆたかな世の中になりました。しかしそのベースとなるものを軽んじて良いのでしょうか。否! デイリーポータルZは春休みを記念し、「ふつう」を再発見します。
さあ、この店でいちばんふつうのものをくれたまえ!
 
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「うちのタレの味が一番おいしいって言ってもらえるの」

一軒目は西口からほど近い喜楽堂さん。
ショーケースを覗くとみたらしだんごらしきゾーンのラベルには「焼きだんご」と書いてある。

お店のおばあちゃまに、これはみたらしのことですか、と聞くと「そうそう。みたらしだんご以外にも、”焼きだんご”とか”葵だんご”っていったりするんですよ」とにこにこしながら答えてくれた。

「葵だんご」というのは初耳だ。
あとで調べてみたところ、ネット上ではそれらしい情報は見つからなかったのだが、wikipediaの「みたらし団子」に「みたらし団子の起源は、京都市左京区下鴨の下鴨神社が行う「御手洗祭」「葵祭」とされる。」とあった。
そのつながりと思われる。もしかするとかなり貴重な口伝をしてくれたのかもしれない。

今回の趣旨を伝えると、おばあちゃまは「お店によって全然タレが違うから楽しみね。でもお客さんにはうちのタレの味が一番おいしいって言ってもらえるの。うふふ」とさりげなく自慢を入れて照れくさそうに笑っていた。

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パックでなく紙経木に包んでくれるタイプ。やや小ぶりでスリムなフォルムをしている。

一口食べて驚いたのが、タレがほとんど甘くないこと。
そしてしょっぱさと酸味が強い。噛めば噛むほどおだんごの甘さが引き立ち、飽きが来ない。

おだんごがしっかり目で歯ごたえがあり、焼き目の香ばしさがたまらない。
和菓子屋のおだんごってこんなに個性があるんですね。なんでもっと早く買いに来なかったんだろう……。

学生だったら部活帰りに毎日通ってしまっただろうな。帰宅部だったけど。
そう思うような中毒性がある。チャーミングなおばあちゃまにまた会い行きたい。

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みたらしだんごの概念を具象化した味

二軒目は駅から少し歩いた秀山庵本店。
ここは「おいしいもの とつかブランド」に認定されているらしい。

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今回買いに行ったときは焼いていないみたらしだんご一種のみだったが、普段は焼いたもの、焼いていないものの2種類から選ぶことができる。

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ちゅるんちゅるんな見た目。あかちゃんの素肌のようなおだんごがかわいい。

さきほどよりおだんごが大きく、むっちりとしている。
食感はかなりやわらかく、タレはみんなが「みたらしだんご」といわれて想像するあの甘じょっぱいやつである。みたらしだんごの概念が具象化された味がする。
これさあ…嫌いな人いるんですか?

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やわらかくて甘いものを食べると人は笑ってしまう。

甘みがしっかりしていて、絶対にこどもがすきだなとわかる。
存在もしない孫に食べさせてあげたい味である。

後世に残したい名店入りとしてしっかりグーグルマップに保存しました。
ありがとうとつかブランド。

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すべてのバランスがとれている上品な味

最後は駅のすぐ近くにある大竹屋さん。
お店はこじんまりとしていて、気を付けていないと通り過ぎてしまいそうなところにある。
このお店もみたらしだんごではなく「やきだんご」という商品名だった。
意外とこちらの名前で呼ぶお店は多いのかもしれない。

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喜楽堂さんに似ているが、すこしおだんごが大きめ。

家に帰って開封した瞬間、香ばしい醤油のにおいが広がった。
味は甘さがやや控えめで、醤油の味がはっきりと感じられる。抜群のバランス感覚。

香ばしさがつよいので、これ、焼き立てで食べたら最高だろうなあ。
もちろんこのままでも十分おいしい。大人向けの上品な味がします。

それにしても食べれば食べるほど、同じみたらしだんごなのに、お店によってここまで違いがあるのかと感心してしまう。おだんごのやわらかさ、甘さ、タレの味など、こんなに個性を楽しめるおやつはなかなかないんじゃないか。

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秀山庵と大竹屋の2つを並べてみても全然違う。みんなちがってみんないい。

身近に和菓子屋さんがあるという生活

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去年ゲリラ開催したおだんごピクニック(参加者:月餅、ペットの与太郎)

物心ついた頃には駄菓子屋が廃れ始め、お菓子を買うとなったらまずコンビニに行く世代のはじまりである筆者は、買い物も商店街よりもスーパーに行きがちである。そのため、こうした個人経営のお店に入るのは少しハードルが高かった。

しかし一度入ってみるとお団子は1本単位で買えるし、いいにおいがするし、ワンコイン以下でおいしいを体感できる。お店の方となんでもない話をするのもいい。
売っているものはスーパーでもみかけるような「ふつう」のものなのに、ちょっと足をのばしてみるだけで、いいことづくめだ。

あと、年末はおもちを売っていることが多く、市販の個別包装のものとはまたちがった味わいともっちもちの食感がたまらない。今年のお正月にはかなりお世話になったし、来年も買うことを楽しみにしている。

決して行列のできる有名店でなくても、近所のふつうの和菓子屋さんでいい。
身近に和菓子屋さんのある生活は、わたしたちの心をちょっぴり豊かにしてくれる。
VIVA・みたらしだんご!VIVA・和菓子屋さん!

 さようなら2020年度! 春休みとくべつ企画「ふつう特集」 

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