バニラアイスのファンの方々へ
こんなに「ふつう」「いつもなら選ばない」を連呼して、サーティーワンのバニラアイスのガチファンの方々に叱られないだろうか。結構人気フレーバーらしいので、そこそこファンはいるはずだ。
分かり合えないとしても、ちょっと歩み寄りたかったんです……という気持ちは伝えておきたい。
「サーティワンアイスクリーム」には昔からよく行っているが、「バニラ」のアイスを選んだことがない。
近年は「ポッピングシャワー」というフレーバーが好きで、「サーティワンでポッピングシャワー以外を注文するのはもったいない」と思ってるほどだ。
そんな私に舞い込んだのが「バリエーションがある商品のなかで、一番普通のやつのよさを見直そう」という企画。この機会を逃すと一生選ばないような気がしたので、食べに行ってみよう。バニラを!!
まず個人的な思い出を少し振り返ってみる。中学生のころ、生活圏内にサーティワンアイスクリームができた。国内1号店は1974年らしいので、私の地元・島根に初出店したのはそれから20年後らしい。全国チェーンの店が地元に初出店すると大体長蛇の列ができるが、サーティワンのときもそこそこできていた。
とはいえ、スタバが島根に初出店したときの列に比べたらまったく大したことなく、店の前と中にちょっと並んでた程度だったが……。
31種類もあるアイスクリームへの物珍しさと月ごとに出る新フレーバーが楽しみで、友達と連れ立ってそこそこ通った。
開店してちょっと経った10月。まだハロウィンがそんなに盛り上がってなかった時代に、ハロウィンの「パンプキンプリン」というアイスが登場した。かぼちゃアイスにいい感じに絡むほろ苦カラメル。確実に自分のいる文化圏にはなかったものだ。
その後「ロッキーロード」という雪解けのロッキー山脈の岩だらけのでこぼこ道を表現したチョコレートアイスが出てきた。アイスクリームなのに山脈だの岩だのと言い出し、しかもマシュマロが入ってるだなんてただごとじゃない。
最初は珍しがっていたが、そんなサーティワンのテンションにこちらも慣れてきて、ナチュラルに通うようになった。
そんなあるとき……、新しく「ポッピングシャワー」というフレーバーが出た。ファンシーな色のアイスにクリスマスカラーの飴が混ざってる。飴はドンパッチみたいに口に入れるとパチパチ言う。
あああああ……美味いし楽しい……!!!!
サーティーワンへ行くたびに、こればかりを食べるようになった。他のフレーバーを注文したいときにはだいたいダブルにし、ひとつはポッピングシャワーにする。
「近年こればかりだなぁ」と思ってはいたが、先日信じられないことに気付いた。なんと20周年だというのだ。え……?? 20年間ポッピングシャワーばかりを食べている……だと……??
よく考えたら私はサーティワンでバニラのアイスを食べたことがない。もしかしたら一度ぐらいはどさくさに紛れて食べたことはあるのかもしれないが、記憶にない。
サーティワンへの思い入れ自体はそこそこあるほうだとは思うのだが、基本中の基本、ど定番について全然知らないのだ。
サーティワン以外のバニラアイスを食べる機会はたまにある。ミルクが濃厚なタイプが好みなので、私が好きなのはバニラアイスというよりミルクアイスなのかもしれない。
コーヒーに浮かべたり、ウィスキーを混ぜてみたり……というアレンジを加えるためにバニラアイスを使うこともよくあるが、よく考えるとそれってバニラアイスであることを否定するような行為のような気がする。
今日はそんなことはせず、ちゃんとそのものを味わおう……!
……という訳で、レギュラーサイズをコーンで注文。
あっ、普通だ。それ以外に感想が出てこないぞ、どうしよう……!? と思うほどに普通だ。
「バニラが濃い!!」とかでもない。
「ミルクが濃厚~~!!」とかでもない。
すげえ普通のバニラアイスだ。
意外性がなく、「思ってた味と違う……!!」ということが一切起こらなさそうな安心感がある。「クセがない普通~~~のバニラアイスが食べたい!」と思ったときにこれを選べばまず間違いないだろう。
サーティワンで浮かれたアイスを食べると沸き起こるフワついた感情がまるで現れず、落ち着いた気分でアイスクリームを完食していた。
「安心感と落ち着きのアイスだな……」と見直した。
こんなに「ふつう」「いつもなら選ばない」を連呼して、サーティーワンのバニラアイスのガチファンの方々に叱られないだろうか。結構人気フレーバーらしいので、そこそこファンはいるはずだ。
分かり合えないとしても、ちょっと歩み寄りたかったんです……という気持ちは伝えておきたい。
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