すべての人間の憩いの場、田舎のジョイフル
僕が住んでいるのは宮崎県の人口11,000人ちょっとの田舎町である。地域の風習や自然が多く残る反面、牛丼屋やマクドナルド等のチェーン店はほとんどなく、唯一ジョイフルがある。
ジョイフルだけが町にあるとどうなるか。人種のサラダボウルとなる。そう広くない店舗にさまざまな人がぎゅっと集まる。
家族連れが訪れるのはもちろんのこと、女子高生のホットな遊び場にもなるし、ノートパソコンを扱うスーツの人もいたりして、果てには地域の草刈りを終えたお爺ちゃんたちの打ち上げ会場にもなる。
いちど、職場の上司(40代)が地域のじいさま方とジョイフルで打ち上げをしているのを見たことがある。上司はドリンクバーでコーラを汲み運ぶ給仕係をしていた。満面の笑みで。おらが町のジョイフルはそういうところだ。
「メガ盛り特製ダレの牛焼肉定食」 を注文
撮影日は年の瀬の夜であったが、席は半分くらいしか埋まっていなかった。帰省した方々で混雑していたらどうしようと思っていたけど一安心。
予習していたとおり「メガ盛り特製ダレの牛焼肉定食」 を注文する予定だが、いちおうメニューを見ておこう。ちなみに、ジョイフルは豊富なメニューと値段の安さでのし上がったファミレスである。
いつもは多様なメニューに悩むところだが、今回は値段だけを見ればいいので安心である。選択と判断がないというのは想像以上に心地よい。
目的のメニューを見つけた。うまそう!
「一番高いメニューってこれですよね?」念のため注文を取りにきてくれた店員さんに聞いておく。
店員さん困った様子で「そう……ですね、だと思います。」と答えてくれた。ふだん意識しないことなのだろう。俺、めちゃくちゃヘボい成金みたいになってるんじゃないか?
ファミリーレストランは楽しいなあ。
ついに来た!ジョイフルの最高額メニュー
待つこと数分、ついにジョイフルの最高額メニュー「メガ盛り特製ダレの牛焼肉定食」がやってきた。
メニュー名そのままのものがやってきた。見た目通り、タレのかかった焼肉のいい匂いがする。それにしてもジョイフルの料理は友達の家の夕飯っぽさがあっていい。馴染みやすいというか。
さっそくお肉から一口。
これは…甘辛くてうまい!味が強い!しっかり肉を食べている感じがする!
これは白飯が必要なやつだ。すべからく白飯をかっこむべきである。
当然の帰結として、肉を口に入れた次の瞬間、白飯がなくなっていた。
依然として肉はうず高く残っている。タレが肉山の中心部に多くかかっているのに気づかず、一番味の濃いところを攻めてしまったがゆえの出来事である。
ためしに肉と玉ねぎを箸で混ぜてみたら味はちょうどいい塩梅になった。あとはこの美味しいおかずだけを頬張ればいいのだ。ぜいたくな時間である。
それにしても鉄板に残る肉の油の量よ!いまどき、ここまでカロリーたっぷりで提供してくれるのは心強い。良いものを見せていただきました。
食べ続けていると少し味が濃く感じるようになってきたので、油の海で肉を泳がせてタレを落として食べてみたら、これがまたうまい。
そして、ふと気がついて驚いた。
店内の照明が鉄板の上に反射して映り、そこだけが満月のように白く輝いていたのである。アイ・ラヴ・ユー。
さすが最高額メニュー、風情のトッピングまであるとはおそれいった。
放心状態になる
勢いのままに白米を口の中につめこみ、肉を油で泳がせ、食事が終わったらなんだか放心状態になってしまった。日々の節制生活からするとメニューのパワーが強すぎたのだ。
あれ?いま食べたこのお肉、なんの肉だったっけ?なにがメガ盛りになってたんだっけ?
伝票を見ると確かに「牛肉」とあった。我を忘れるほどの盲目的な情動。人はそれを恋と呼ぶ。そして、肉と飯でふくらんだ腹。人はそれを満腹と呼ぶのである。
そういうわけでデイリーポータルZ読者のみなさま、本年もよろしくお願いいたします。