牛乳以外も素敵
今回は飲まなかったが、牛乳以外についてもざっと触れたい。




牛乳好きのためのお店かと思いきや、牛乳嫌いな人にも広々と門戸が開かれているのは、素敵なことだと思うのだ。
瓶入りの牛乳をぐいっと飲み干すことに憧れている。わたし調べでは、それを思い切り楽しめる場所は3つある。牧場、銭湯、そしてミルクスタンドだ。
ミルクスタンド。沿線民にはおなじみかもしれない。秋葉原駅と御徒町駅にある瓶牛乳を立ち飲みできる売店である。
なかなか立ち寄る機会がなかったのだが、さいきん秋葉原の近くで働く機会ができた。ミルクスタンドを堪能するチャンスではないか。あそこで売っている瓶の牛乳、ぜんぶ飲み比べてみたい。
秋葉原駅のミルクスタンドは、総武線の上下線ホームのそれぞれ1店舗ずつある。いずれも売店の脇に箱型のスタンドが置かれていて、なんとも味わい深いいでたちだ。
ここの商品の二大巨塔は瓶に入った牛乳とパンだ。そして瓶の牛乳は基本お持ち帰りができない(後述する一部をのぞく)。買ったその場で飲み、店員に瓶を預けて帰るシステムになっている。
ここでしか飲めないってなんと刹那的なんだろう。ぐっとくる。東京の駅と刹那はよく似合う。
よくみると、牛乳以外の飲み物もけっこう置いてあって、飲むヨーグルト・フルーツ牛乳・コーヒー牛乳・野菜ジュースなどなど盛り沢山だったりする。全部好きなやつだ。全種類飲みたいくらいなんだけど、今回は心を鬼にして牛乳だけを飲み比べる。
ちなみに。せっかくならしぼりにしぼり、生乳100%の「種類別:牛乳」だけ飲み比べるつもりでいたのだが、間違えて生乳100%ではない「種類別:乳飲料」も何本か飲んでいた。工程が全部終わってから気がついたため、勝手ながら飲んだやつについては、飲み比べのメンツに入れさせてほしい。
まずは初日である。
牛乳を飲むのは約1年ぶり。おそるおそる口に運んでみると……
お。甘いぞ。牛乳ってこんなに甘かったっけ。久しぶりの牛乳の洗礼にぶわっと目が覚める。「牛乳ってうめえ!」という、どストレートな気持ちがあふれてきた。1本目だけど、もう満足度が高い。
あとをひかず、さっぱりしているのも素敵だ。「よっしゃこい!」と気合たっぷりに構えていたのに、そんなことお構いなしに、さらっさらと胃に吸い込まれていった。名前の印象から、ねっとりした感じを想像していたのにちょっと意外である。
続いて選んだのは東毛酪農の「みんなの牛乳(生乳100%)」だ。
おお。牛乳ってこんな味がするんだ!
衝撃が走った。しっとりしたコクがあって、パッケージに負けないくらい、味にも存在感がある。クリームを飲んでいるみたいだ。
ちなみにこの牛乳のビックサイズに限り、予約すれば、瓶のテイクアウトが可能なんだそうな。
そしてもう1本、フルヤの「かずさ牛乳(生乳100%)」も飲む。
わたしがずっと前から知ってる牛乳の味ってこれだ!と思った。
基準はおそらく給食の牛乳である。なつかしさから小学校の校舎を思い出し、廊下に干されたぞうきんのことまで思い出してしまった。ぞうきん、牛乳をふくと大変なことになりがちだったよね。
とはいえ、そこまで思い出す必要はあったのだろうか。なんだか申し訳ない。牛乳にあやまりたくなってきた。
今日は下の2本である。
「濃厚クラウン」は、牛乳以外の成分の割合が半分近くあるが、「牛乳本来の味を追求して誕生した」とのことだった。きっとわたしには計り知れない事情があるのだろう。
濃厚という名前のとおり、とってもとっても濃い牛乳だった。
1位といわれると抱きがちな「おいしさ間違いない」の先入観に揺さぶられつつ口に運ぶ。
新鮮さがびしばし伝わってきた。「わたし牛乳です!」と、自らのアイデンティティを歌い上げてくる感じ。牛乳の味の濃さを愛している人が喜びそうな味わいだ。
5本目で自分の好みがちょっとわかってきた。
どんどんいこう。
おおーーーっ、今までなかったタイプの「うまい」がきた!甘さやコクをはじめ、いろんな味わいが主張しあっているけど、バランスがいい。このチームで競合プレゼン戦ったら勝てる。
もう十分幸せだったのに、さらに幸せがたたみかけてきた。品がある味。すごいコクがあって、甘さ控えめでしっとり。おいしいの嵐がふきあれている。
そして最終日。
飲む前から確信していたが濃い。すっごく濃い。Photoshopに例えるなら、牛乳レイヤーが2つある感じ。味が2倍になっているみたいなのだ。特にしっとり感がすごい。
思わず「我らが」と枕詞をつけてしまったが、どこで飲んでも、おいしい牛乳はおいしい牛乳の味がする。マヨネーズにとってのキューピー、ケチャップにとってのカゴメ、お酢にとってのミツカン的な王者の安定感を感じる。
甘みが余韻のように、口のなかに残る感覚があった。良質な牛乳なんだろうなぁという味わい。ただ、これまでに飲んできた輩たちが錚々たるメンバーすぎるため、彼だけを評価するのは難しい。なんと贅沢な悩みなんだろう。
……というわけで全12種類飲んだうえでの好きな牛乳ベスト3はこちらだ。
1位「北アルプス厳選牛乳」
2位「みんなの牛乳」
3位「おいしいミルク」
生乳100%の高い牛乳ばかり。高い牛乳はおいしいのだ。
とはいえ、すべての高い牛乳が自分にとってのおいしいofおいしいとはかぎらない、というのも発見だった。
1年でいちばんカルシウムに満ち足りた1週間が終わった。
今回は飲まなかったが、牛乳以外についてもざっと触れたい。
牛乳好きのためのお店かと思いきや、牛乳嫌いな人にも広々と門戸が開かれているのは、素敵なことだと思うのだ。
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