螺鈿やったるで

螺鈿(らでん)とは、貝がらを加工して装飾する伝統技法です。箱やお盆など、いろんなものの装飾に使用されてきました。

金沢ミュージアムの公式サイトより引用

私は大学生のころ東洋美術史を専攻しており、たくさんの螺鈿作品をこの目で見てきました。螺鈿に対する審美眼はさぞムキムキバキバキに育っているはずです。
今回は失敗を恐れず、勘で螺鈿をやってみます。
100均の材料で螺鈿チャレンジ
さて、早速材料をそろえてみました

わかってます。やや無謀さがにじむ材料のチョイスだということは。でも、私はたくさん螺鈿を見てきたのでなんとかなると思います。
螺鈿細工でよく漆を使うことは知っているのですが、乾かす時間がかかることも知っているので、紙粘土で代用し、あとで上から黒く塗ろうと思います。
ちょっとでも工芸品めかそうと六角形の器を選んでいるところに、小賢しさを感じますね。

ワンポイントで桜の花びらを散らして可憐な器に・・・たのしみです。
まずは、貝がらの内側のキラキラを剥いでいきます。カッターを突き立てるも、


貝は丈夫です。それなら、貝の外側からやすりをかけて、薄くするのはどうでしょうか。


貝は丈夫です。

隣にいた暇そうな四谷くんに「クラフトボス 甘くないイタリアーノ」をプレゼントし、労働力を買い叩く形で一緒にやすりをかけてもらいました。

内側のキラキラ層がかすかにあらわになってきました。
しかし、思い描いていたほどペラペラにはなっていません。薄いキラキラの膜をカッターで加工する予定だったのに・・・これじゃあ器に貼れません。
割る
仕方ないので、やすりをサボタージュして貝がらを割ることにしましょう。
バキバキに割れば、ある程度は平たくなって貼り付けられるようになるでしょう。

伝統的な螺鈿に、こんなうどんみたいな工程があるとは思えませんが、こうするしかありません。
バキバキと音がしたので確認してみると、

四谷くんから、「え?そやって割るんやったら、やすりかけた意味ある?」と横槍が入りましたが、聞き流し、ウキウキしながらそっと机に戻そうとしたその瞬間、

男梅と一緒に、床にカケラをぶちまけてしまいました。シャラーンと甲高い音が部屋に響きます。すごくショックでした(主に「片付けが面倒」という理由で)。
でも、美術史を5年研究した私は負けません。
器に貝のカケラをちりばめていく
六角形の器に貝のカケラを貼り付けるために、紙粘土で覆っていきましょう

Tシャツ&ジーンズで壁にもたれて螺鈿細工する私。

自分の寝グセはそのままで、つづいて貝がらを貼り付けていきます。
本当は、イメージ図どおりに桜の花びら形に切ったほうがいいとは思うのですが、貝がらが固すぎてそもそもカットができません。
貝がらを粘土に埋めてしまい、そのあと粘土を切り取る段どりに変更です。(ずっと段取りがフレキシブル)


「これ大丈夫かな」が頭をよぎります
四谷くんが「・・・黒く塗ったら見違えるんちゃう?今は泥んこ遊び感強いけど」と心を一刺しする言葉を投げかけてきました。
美術史研究室の課外学習で日夜螺鈿細工を見たあの経験はなんだったのか・・・。
粘土をきれいに削ることも意外にハードでした。
じゃあ、もうカケラの形を生かして貼り付けていきましょう。案外抽象的でモダンなデザインになるかもしれません。

「臨海学校の思い出」のようなクオリティに。
後世に残したくない
しかし、四谷くんが言ったように、黒く塗ればあらゆる欠点を隠せるかもしれません。
すがる思いで黒く仕上げたのがこちら・・・

黒の塗装ではどうにもならず、「螺鈿」という言葉の広義が「貝がらを用いた装飾」だから、かろうじて螺鈿と言える代物になりました。


螺鈿細工をつくる現代芸術家の方が「漆の装飾品は何千年と残ってしまうので、この時代を象徴するようなデザインであったり、美しさが伴っているものを作りたい」と語っていました。

螺鈿の技術が確立して何百年何千年と経っているのに、こんなのを作ってしまって・・・。
あとで調べたら、カッターで削る・やすりでけずるのは螺鈿細工のやり方としてはあるみたいなのですが、圧倒的技術力不足による失敗でした。
後世にこれが残ると、未来の人々から2025年に生きた人全員がなめられるんじゃないかと不安です。


この記事は失敗ウイークの1本でした
あとからお知らせしてすいません。できるかどうか分からないことをやってみる記事シリーズです(企画説明)