『こねる』と『発酵』の不安
わたしはホームベーカリーに対して及び腰だ。その理由はズバリ、『こねる』と『発酵』がわからないからである。
やれ弾力が出るまでこねろとか、2倍の大きさになるまで発酵させろとか…簡単に言ってくれるけど、それって本当にわたしでもできることなのか、にわかに信じがたい。
しかも、この2つの工程をミスるとどうしようもない仕上がりになりそうなのも怖いしヤバいと思う。
以上のことから、わたしはパン作りを遠い世界のお話として考えていた。
しかし、ひらめいてしまったのである。ちぎりパンを『契』の形にしたら『契りパン』になるな、と…。
わたしはスーパーに走った。強力粉とイースト菌を求めて。
手探りで生地作り
まずは牛乳にイースト菌を入れ、溶けるまで混ぜる。

…イーストが溶けない。
ちょっと温めてみたけど、これ以上温めると良くなかったりするのか。どうなんだ。このままいくか…。この判断が致命傷になったらどうしよう…。初っ端から不安だ…。


こねろと言われても、日常の動作で『こねる』って無いからな。これでいいのだろうか。
自分のイメージする『こね』をしてみる。手ごたえはゼロである。腕だけが疲れる。

ネットの情報によると、こねた生地って餅みたいにビヨーンと伸びるらしいが、これは伸ばしてもボソボソと千切れる。なぜ?もっとこねろということ?

確認のため、レシピサイトの画像を見てみた。生地がツヤツヤでピカピカしている。一方わたしのパン生地はなんだかボコボコだ。
これはわたしのやり方に問題があるという考え方もできるが、レシピサイトがめちゃくちゃフォトショで画像加工しているとも考えられる。わたしは迷わず後者の可能性に賭けた。

成功するのか…?
これまでの工程で取り返しの付かないミスをしてる可能性は十分にあり得る。その場合はこれからどう頑張ったって手の施しようがない。
行先不明の緊張感を抱きつつ、とりあえず発酵させるために50分間放置させた。
~50分後~

発酵後の写真を撮り忘れた。なぜならあまりにも発酵してなくて動揺したから。
本来なら2倍近く膨らむらしいが、1.3倍くらいにしかなっていなかったのだ。

ブチブチと生地を千切って丸める。悲しすぎる。これ、本当だったらスケッパーとかを使わないといけないくらいビヨーンと伸びるはずなのに。この時点でこんなわかりやすく失敗することあるんだ。
とりあえず丸めて、『契』の形にする。質感が完全に乾燥した粘土なので、うまくツヤツヤの丸にできない。
ここからもう一度発酵する。頼む。膨らんでくれ…。
~30分後~
やや膨らんだが、悲惨な状態に変わりはない。
後は焼くだけ。そう、焼くだけ…。挽回できるチャンスはもうここしかない…。
~20分後~

いかがだろうか。
…読者の皆さんの言いたいことはわかる。これはちぎりパンではない。形も『契』には見えない。しいていうなら、小さなスコーンの集合体である。

しかも、パサパサすぎて鉄板から引き上げるときに崩壊したし、こんな日に限ってダイニングの電球が切れた。もう散々だ。

初めてちぎりパンを作ってみてわかった。
よくネットで見る『ちぎりパンを焼いたらミッチミチになっちゃいました』っていうアレは、そもそもミッチミチになるくらいちゃんと発酵してふっくら焼きあがっているという点で、かなりレベルの高い失敗であることを。こねるのも発酵もやらかした場合の失敗は、全然映えないということを…。