都内唯一の巨大ニュータウンプロジェクト、スカイテラス南山
見て欲しい景色がある。
筆者は多摩川沿いに住んでいるのだが、その橋の上からよみうりランド方面をのぞむと、真新しい住宅街が屏風のように広がっている。
通るたびに、すごい、なんだなんだと目を奪われていたのだが、これでもほんの一部なのだそうだ。
調べてみると想像以上にビッグなプロジェクトだった。
正式名称「多摩都市計画事業稲城南山東部土地区画整理事業」(いかついので「スカイテラス南山」という愛称がついている)という、都や稲城市も絡んだ87ヘクタール、計画人口7600人という大規模なニュータウンづくりが今、行われている。
87haというと、上野公園が 53ha、明治神宮が70haくらいの規模感。
でかい。
それも、何もない里山だったところにだ。
施工期間は2006年から2025年3月まで。
いやー、令和の今、『平成狸合戦ぽんぽこ』のようなニュータウンづくりが見れるとは。
国土交通省のHPを見ると、都内で計画・建設中の3000人以上のニュータウンはここのみ(2018年時点)。全国でも珍しい。
そんなダイナミックな街づくりを感じながら、今を記録するという意味で、実際に歩いてみよう。
90m近い高低差がとにかく壮観だ
もともと、南山地区というのは標高約120m、高低差90m近い里山だったそうだ。
先行の多摩ニュータウンだって、こんなに高いところに作られた街はそうない。
どこからアプローチしても、ダイナミックな高低差が待ち構えている。もともと、高度経済成長期に良質な砂がとれるということで、削られ崖になっていたところなのだ。その改良もふくめての開発なのだという。
そして、これだけ高台にあるということは、どこもかしこも見晴らしが最高だ。
でっかくでたなと思うも、たしかに埼玉方面まで、段丘状になってゆるやかに広がる「平野」を感じることができる。
新宿から30分弱でこのスケールを味わえるのだ。
こんな場所で育ったら、SNSが気にならない心の広い大人になれたりするのかもしれない。
完成前の今だから見れる、突如あらわれた多摩のウルル
閑静な住宅街の隣で今も土木工事が行われるスカイテラス南山。
7600人の街を作るのだから、家だけを作ればいいってものではない。
20年近くかけて、道路やトンネル、商業施設や学校、病院などさまざまな施設も一緒につくられるのだ。
2006年~2025年までの期間と聞くと、もうほとんど完成しているように思えるが、面積でいえばまだ半分程度しか完成していない。
今も大規模な土木工事の真っ最中なのだ。
閑静な住宅街のすぐそばに、ウルル(エアーズロック)があるではないか。多摩のウルルだ。
ここも、ほんの少し前は雑木林だったのだろう。
そして、もう少しすると見晴らしのよい住宅街へと変わっていくのだろう。
そんなハザマでしか見れない光景だ。
小学校ができたのが2015年、ヤオコーが2016年、そして最初の宅地分譲が2018年からはじまった。
多摩ニュータウンが1971年に最初の入居を開始したのに比べると、50年近く遅れての街びらきだ。
その分、環境保護を目的とした反対運動も根強かったようだ。
以前の姿を知る人と知らない人では、受ける印象も違うのだろう。
なんにしろ、令和の時代に、都内でこれだけ大規模なニュータウンづくりが見られるのはもう最後なんじゃないだろうか。
若い街なので、通りには下校中の子どもたちがたくさん歩いていた。
この束の間の光景が、誰かの懐かしい思い出の景色になっていくんだろうな、と思う。