特集 2023年11月20日

稲城の山の上に今、ダイナミックな‟令和の多摩ニュータウン”が造られている

人口減少が加速する日本である。

いくら東京といえど、かつてのような山を切り開いて宅地造成するニュータウン計画なんて、そうあるものじゃない。

山が丘に変わり、街が丸ごと誕生するような、ダイナミックな時代。

賛否はあれども、その勢いを直接感じてみたかったな…

と思っていたら、ありました。

あの多摩ニュータウンの、すぐそばに。

山が街に変わる過程を今、見られるのだ。

平成元年生まれ。令和から原始まで、古いものと新しいものが好き。

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都内唯一の巨大ニュータウンプロジェクト、スカイテラス南山

見て欲しい景色がある。

筆者は多摩川沿いに住んでいるのだが、その橋の上からよみうりランド方面をのぞむと、真新しい住宅街が屏風のように広がっている。

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昔の人が見たら、蜃気楼なんじゃないかと思うような天上の住宅街
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同じ場所から2008年の風景。まだ何もない里山だ
fitm, CC BY-SA 3.0 DEED, via Wikipedia Commons
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2段になった丘。黒屋根の住宅街も見晴らしがよいだろうけど、そのさらに上にも建ち並んでいる

通るたびに、すごい、なんだなんだと目を奪われていたのだが、これでもほんの一部なのだそうだ。

調べてみると想像以上にビッグなプロジェクトだった。

正式名称「多摩都市計画事業稲城南山東部土地区画整理事業」(いかついので「スカイテラス南山」という愛称がついている)という、都や稲城市も絡んだ87ヘクタール、計画人口7600人という大規模なニュータウンづくりが今、行われている。

87haというと、上野公園が 53ha、明治神宮が70haくらいの規模感。

でかい。

それも、何もない里山だったところにだ。

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2004年、真ん中の緑の山が計画地区だ(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より、整理番号/CKT20041X、コース番号/C6、写真番号/1、撮影年月日2004/10/15)
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2019年、道路の開通や区画整理がすすみ、街ができ始めている(国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より、整理番号/CKT20191、コース番号/C66、写真番号/51、撮影年月日2019/10/30)

施工期間は2006年から2025年3月まで。

いやー、令和の今、『平成狸合戦ぽんぽこ』のようなニュータウンづくりが見れるとは。

国土交通省のHPを見ると、都内で計画・建設中の3000人以上のニュータウンはここのみ(2018年時点)。全国でも珍しい。

そんなダイナミックな街づくりを感じながら、今を記録するという意味で、実際に歩いてみよう。

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場所は赤丸のあたり、以前記事にした多摩ニュータウンのすぐそばだ(東京都都市整備局HPより、赤丸は筆者による)

 

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90m近い高低差がとにかく壮観だ

もともと、南山地区というのは標高約120m、高低差90m近い里山だったそうだ。

先行の多摩ニュータウンだって、こんなに高いところに作られた街はそうない。

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まずこれが橋の上から見えていた、一段目の住宅街
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絵になる階段。ここでもうかなりの高低差だが、さらに上がある
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階段を登っていくと…
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整然と並ぶ上の段の街並み。まだ見下ろされている…!
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さらに進んでいく
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右奥へ登っていくとようやく上の段にたどり着く

どこからアプローチしても、ダイナミックな高低差が待ち構えている。もともと、高度経済成長期に良質な砂がとれるということで、削られ崖になっていたところなのだ。その改良もふくめての開発なのだという。

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そして、2023年11月現在、まだまだ造成中だ
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最寄り駅である稲城駅から続くのぼり坂。大きくカーブするので坂自体はなだらかだが、くねくねと魅力的な階段がみえる
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近づいてみると壁のよう。こういう急で見晴らしのいい階段が好きだ

そして、これだけ高台にあるということは、どこもかしこも見晴らしが最高だ。

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息があがりつつ、振り返ると新宿方面がくっきりと
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別の場所から都心方面。麻布台ヒルズができて東京タワーが小さくみえるようになった
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代々木のドコモタワーとスカイツリーが兄弟みたいにみえる
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スカイテラス南山には「関東平野を見渡す丘の街づくり」というキャッチフレーズがあるのだ

でっかくでたなと思うも、たしかに埼玉方面まで、段丘状になってゆるやかに広がる「平野」を感じることができる。

新宿から30分弱でこのスケールを味わえるのだ。

こんな場所で育ったら、SNSが気にならない心の広い大人になれたりするのかもしれない。

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見上げると調布飛行場へ向けて、小型飛行機がゆったりと飛んでいく

 

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完成前の今だから見れる、突如あらわれた多摩のウルル

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ブルーシートファン垂涎の丘

閑静な住宅街の隣で今も土木工事が行われるスカイテラス南山。

7600人の街を作るのだから、家だけを作ればいいってものではない。

20年近くかけて、道路やトンネル、商業施設や学校、病院などさまざまな施設も一緒につくられるのだ。

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道路ができておらず、行き止まりになっている場所も多い

2006年~2025年までの期間と聞くと、もうほとんど完成しているように思えるが、面積でいえばまだ半分程度しか完成していない。

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立ち入り禁止区域にはこわいライオンが待ちかまえている

今も大規模な土木工事の真っ最中なのだ。

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「エアーズロックだ!」と興奮した丘

閑静な住宅街のすぐそばに、ウルル(エアーズロック)があるではないか。多摩のウルルだ。

ここも、ほんの少し前は雑木林だったのだろう。

そして、もう少しすると見晴らしのよい住宅街へと変わっていくのだろう。

そんなハザマでしか見れない光景だ。

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実際は小高い丘程度の規模なのだけど、妙に雄大にみえる
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地層ファン垂涎の丘(?)
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引いてみると開発途中の土地が広がっている

小学校ができたのが2015年、ヤオコーが2016年、そして最初の宅地分譲が2018年からはじまった。

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広大な住宅予定地。山の向こうは今も昔ながらの谷戸(昔から人が住む、里山の谷の部分)が広がっている
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住所があらたに作られてく現場。ちょっとワクワクする

多摩ニュータウンが1971年に最初の入居を開始したのに比べると、50年近く遅れての街びらきだ。

その分、環境保護を目的とした反対運動も根強かったようだ。

以前の姿を知る人と知らない人では、受ける印象も違うのだろう。

なんにしろ、令和の時代に、都内でこれだけ大規模なニュータウンづくりが見られるのはもう最後なんじゃないだろうか。

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完成済の住宅街と、夕陽を浴びるウルル

若い街なので、通りには下校中の子どもたちがたくさん歩いていた。

この束の間の光景が、誰かの懐かしい思い出の景色になっていくんだろうな、と思う。

 

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