特集 2025年4月10日

TRPGの世界に入門する

テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(以下TRPG)というものをご存じだろうか。ゲーム機を使わず、紙やサイコロを用いて人と人が対話をしながら進めるアナログゲームである。

興味はあれどどうやって遊んだらいいのか分からず、遠巻きに指をくわえ続けて十数年。指も随分ふやけてきたところで、ついに遊ぶことができたのでここに記させてください。

1993年群馬生まれ、神奈川在住。会社員です。辛いものが好きですが、おなかが弱いので食べた後大抵ぐったりします。好きな調味料は花椒。

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よし、テーブルトークするぞ

何を隠そう私はゲーム好きである。SwitchやPCでコンピューターゲームも嗜むし、ボードゲームのようなアナログゲームも大好きだ。最近は人生ゲームくらいの大きさのボードゲームを集め始めてしまい、今最も欲しいものは「収納」とされている。

そんな私だがTRPGはやったことがなかった。対話して進めるRPGなんて絶対楽しいだろうに、何をどうしたらいいのかさっぱり分からなかったのだ。

そうやって日々もじもじしながら過ごしていたところ、なんと普段務めている会社にTRPG歴10年以上の猛者がいることがわかった。これはいい。ぜひ教えてもらおう。

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ライターのほりさん含め、ほうぼうに声をかけて遊んでくれる人に集まってもらった。こうやって色んなコミュニティの人を集めるといつも(おれなりのアベンジャーズだな......)と思う

ふわりさん以外は私同様全くの未経験者である。対よろ(対戦よろしくお願いしますの略)。

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TRPGもデジタルゲームのRPGも基本は同じ

そもそも対話型のRPGってどういうものなんだ。デジタルゲームのRPGであれば、勇者みたいな操作できるキャラクターがいて、町の人に話しかけたり戦闘で敵をやっつけたりするわけだが、全然違ったりするのだろうか。

『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』を参照しながら教えてもらった。まずは座学の時間です

ふわりさん:
大体デジタルゲームのRPGと同じです。TRPGにはゲームマスターと呼ばれるゲームを進行する役割の人がいます。その人が「今あなたたちはどこどこにいて、こういう状況です」と説明するので、そうしたらプレイヤーは「ここに行ってみようぜ」とか行動を起こすわけです。その繰り返しで頑張ってゲームクリアを目指そうという感じですね。

なるほど〜。コンピュータゲームのシステム部分を担う人がいて、その人に進行してもらうことで皆でゲームをプレイする感じなんだ。もしくは笑点。ゲームマスターは春風亭昇太さん。

ふわりさん:
できる行動の幅が広いので、遊ぶ人の数だけ物語が生まれるのが面白いところですね。今回遊ぶのは「クトゥルフ神話TRPG」と呼ばれるもので、普通の人間が怪異と相対し、頑張って生きて帰りましょうというお話です。まずは皆さんが操作するキャラを作っていきましょう。

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あまりにも緻密なキャラ作成が楽しすぎる

曰く、キャラクター作成では記入項目が記された「キャラクターシート」という紙を埋めていくのだが、最近は紙ではなくもっぱらWeb上に便利なサービスがあるのでそれを使うことがほとんどらしい。

そうして共有されたページがこれだ。

https://charaeno.com/ より。気になる人はリンク先から見てみてね 

す......っごい量あるよこれ!!

能力値や技能、持ち物までは想像がつくものの、下の方には「イデオロギー」「重要な人々」「秘蔵の品」といったコンピュータゲームでも全ては描き切れないような背景情報を入れる欄まである。ちょっとこれ緻密すぎませんか。

今回はお試しということで、ふわりさんの誘導の元カンタンに情報を埋めていった。

そして俺たちはこうなった。劇的すぎるビフォーアフターだ

各キャラクターの詳細は以下の通りである。興味のある人は時間のある時にお茶でも飲みながら見てください。
ほり / りばすと / かつけん / hosoyama

最初は量に圧倒されてしまったが、項目を埋めていく内にキャラクターにリアリティが生まれてきて段々楽しくなってきた。おのずと愛着も湧いてきた。

作成中も「いやその設定おかしいでしょ!」「力強いのおれしかいないのか!」などわいわいしながら作成した

ああこれ、この時点でちょっと面白すぎるかもしれない。まだゲームは始まってないのに。 

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シナリオを遊んでみよう

さあ、キャラクターが完成したら実際に遊ぶ時間である。TPRGではゲームマスターはあらかじめ用意されたお話に沿ってゲームを進行していく。その一つ一つのお話を「シナリオ」と呼ぶらしい。

今回は公式アプリ「クトゥルフ神話TRPG ルールブックPLUS」にて無料公開されているシナリオ「もっと食べたい」をプレイ。シナリオによってかかる時間はまちまちだが、大体3~4時間のものが多いらしい。

なんだかちょっと不穏な様子。以下、素材の出典は記事最下部にあります

ふわりさんにゲームマスター(クトゥルフ神話TRPGではキーパーと呼ぶそうです)をやってもらい、ほかの4人が実際に遊んでいく。よっしゃ、やるぞ。

遊ぶにあたっては進行に便利なツールが詰まったサービスを利用。TRPG、対話以外の何もかもがハイテクすぎる

※以降、シナリオ「もっと食べたい」のネタバレを一部含みます。詳細な内容については突っ込みませんが、気になるな~~という方はぜひ遊んでからお読みください! 

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ロールプレイは最初ちょっともごもごする

物語は中華料理屋に登場人物が集合するところから始まる。

ふわりさん「皆さんは初対面で共通の知人・石澤に集められたところです。どんな感じで集まってるんでしょうか」あ、もう任せられるんだ!
「あ、すいません、誰ですか」「りばすとです。もしかしてかつけんさんですか」「あ、そうです」「石澤さんに呼ばれて来たんですけど......」「あ、僕もです」「えっ、同じなんですね。やばくないですか」「やばいですよね」「うん、やばい」すごい内容のない話をしてしまった

うわあ、急にキャラクターとしてしゃべるのすごい緊張する。でも全く知らない人といきなり喋るときってこうなりませんか。ならない?

ふわりさん「さあ、中に入りましょう。中には石澤(画像左)がいます。『おお~久しぶり!元気してた?』」そうか、プレイヤー以外のキャラクターはキーパーが演じるのか

先ほどまでのおろおろしてしまった我々と比較して、キーパーの堂々たる佇まいたるや。これがTRPGの猛者か......と素直に感じてしまった。

さらにふわりさんは「りばすとはまだ峠攻めたりとかしてんの?」「あんまりおばあちゃんを困らすなよ」などと、ストーリーを進めつつキャラ設定(おばあちゃん子のヤンキー)にも絡めた会話を展開してきた。あの緻密なキャラ設定が早速物語に反映されている......!

さらにさらにキーパー(というかふわりさん)は女の子のキャラクターも口調や息遣い、発声の工夫により少しの違和感なく演じてみせた。すごい、すごすぎる
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ダイスだ、ダイスを振るんだ

お話が進んでいくと人を説得したり調べものをしたり、何か行動をしたくなるタイミングが出てくる。誰でもできることではなく、一定の能力が必要なものもある。例えばものを壊すには筋力が必要とか、そういう話だ。

能力があれば必ず成功するわけではなく、ダイスを振ってその行動の成功・失敗を判定する。

これはかつけん(インドの天才数学者)が「説得」という技能で相手を言いくるめ、不審者扱いを免れたところ。サイコロも選ぶだけでコロコロ~と画面を転がってくる

これがことのほか楽しいのだ。選択肢から選ぶのではなく、こんな行動をやってみるといいんじゃないか?と自由に考えるのは一種の謎解きみたいだし、その結果うまくいくかどうかはサイコロ運の神頼み。ついついサイコロを凝視してしまうし、結果に一喜一憂してしまう。

「ヤンキーなので『威圧』で人を呼び止めます!サイコロ振ります!」と宣言したら、「人を呼び止めるのは特に能力は必要ないのでそのまま呼び止めて大丈夫ですよ」と言われてしまった。しまった、サイコロを振りたすぎた

そして行動に成功しようが失敗しようがキーパーの語りによってうまいことお話が続いていく。これ、ひょっとしてキーパーがとにかくすごいっていう話なんじゃないか......?

また、ここで最初のキャラ作成が効いてくる。力の数値を高く設定したキャラクターは力任せな行動が成功しやすいし、賢いキャラクターは説得や調査といった行動が成功しやすいようになっているのだ。ようできとる......

お話の中では敵と戦うことも。サイコロ運が悪く、ほりさんが他のキャラクターなら一撃で死ぬような攻撃をくらったが生き残っていた。ほりさん「体格の良いキャラクター(体重190kg)を作ってよかった......!」

プレイヤーとゲームマスターが作り上げる物語

強大な敵を命からがらやりすごし、お話はエンディングへ。

「あいつ、おっかけましょう!」「外外!」「おれはばかだから難しいことはわかんねえけどよ......!」初めのぎこちなさはどこへやら、終盤はすっかり夢中になってプレイしてしまった

クリアすると報酬としてキャラクターが成長したり、ダメージを回復したりできる。そう、今回作ったキャラクターはこのシナリオだけでなく、ひきつづき色んなシナリオで遊ぶことができるのだ。

色んなプレイヤーやゲームマスターとシナリオを練り歩き、そしてキャラクターである自分自身が成長していく。その軌跡全てが一つの物語になる。これがTRPGなのだ。

なるほど、面白い。

ちょっと......次のシナリオっていつやりますか?


ゲームマスターってすごい

デジタルゲームのRPGと違って、TRPGの行動には制限がない。ゲーム中、何を言ってもどんなに突飛な行動をしてもゲームマスターがうまく吸収して物語につなげていっていた。

シナリオには一応台本があるはずなのだが、どのくらい書き込まれているのだろうか。せっかくなので最後に見せてもらった。

こんな感じ。もっとフローチャートのように行動パターン別の対応方法とかがあるのかと思ったが、この場所にはこんな情報がありますくらいのざっくりした情報しかない。じゃあやり取りの中で容易に発生するイレギュラーは全部アドリブなんだ

 

聞けば円滑な進行のために、シナリオの読み込みや立ち絵・BGMの選定などで準備に5時間もかけていたという。もっと長いシナリオではリハーサルをすることもあるとか。(ただし、このあたりをどれだけやるかは割と人それぞれらしいらしい)

やっぱりゲームマスターがすごすぎるな......

 

プレイにあたって利用させていただいたもの:

シナリオ:【公式】クトゥルフ神話TRPG
ツール:ココフォリア
背景画像:【公式】クトゥルフ神話TRPGみんちりえ
​​​​​​​立ち絵:Carlmaryわたおび桃源郷社

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
ゲームプレイの楽しさを書こうとしたらゲームマスターのすごさに圧倒されてしまったり、ロールプレイの気恥ずかしさにためらったりする、初見プレイならではの感想がグッとくる記事でした。「体重190kgでよかった......!」みたいな現実ではありえない危機一髪が体験できるの、めちゃくちゃ楽しそうです。りばすとさん、こういう初々しいレポートを書いてもらうと抜群なので、またどんどん未体験のことに挑戦していってもらおうと思います。(石川)

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