特集『あたりまえ入門』
誰もが持っている世間知らずの一面。いま、スポットライトで照らします。(企画説明)
グリーン車に乗ったことがない
東海道線を利用していると、車列の真ん中くらいに二階建てのかっこいい車両が挟まっているのを見かける。
グリーン車である。

今日もあるな、とこれまであたりまえに思っていたのだが、一方で、あそこには乗ってはいけないとも思っていた。だって別料金なんだろうきっと。


同じ列車なのになぜ料金が違うのか。
飛行機のビジネスクラスが高いのは、きっとシャンパンとか飲めるからだろう。なんとなく理解できる。でも東海道線でシャンパンはないはずだ。ならば、到着時刻も変わらないのに別料金なのはどういうことなのか。
グリーン車先輩に聞く
一度グリーン車に乗ってみたいが一人で乗り込んで失敗するのも嫌である。
そこで今回、よくグリーン車を利用しているという地元の先輩に乗り方を教えてもらうことにした。

吉村先輩には前日に事の次第を連絡し、東京駅で待ち合わせさせてもらうことにした。東京からグリーン車に乗って一緒に地元まで帰るのだ。興奮する。
ーー先輩、今日はよろしくお願いします。早速ですがグリーン車って誰がどんな時に乗るんですか。ちょっと意味がわからなくて。
吉村「おれはだいたい仕事がうまくいった日とか、楽しく飲み会終えた日とかに乗るかな。ほら、せっかく気分がいいのに帰りの電車で台無しにしたくないやろ」

確かにラッシュ時の東海道線は混んでいて、僕らは1時間くらい乗るのでそれだけでへとへとになるのだ。あれが避けられるのであれば別料金払うのもいいのかもしれない。
では先輩、乗り方を教えてください!
グリーン車の乗り方①:ニューデイズに行く
「だったらまずはニューデイズや」
グリーン車先輩は言う。
ーーまずは切符を買うのかと思ったら違うんですね。
「グリーン車は遠足みたいなもんやからな、まずはニューデイズに行くんや」


東海道線に乗って車内で飲食することはまずない。禁止されているわけではないと思うのだけれど、だいたい混んでいるし飲食できる雰囲気ではないのだ。
ところがグリーン車では大丈夫なのだという。ホームにニューデイズがあるのは遠足(グリーン車)に行く人のためだったのか。

そう考えるとグリーン車がますます楽しみになってきた。
僕はとくに熱心な電車ファンではないので、東海道線を移動の足くらいにしか考えていなかったのだが、それが遠足になるのであれば世界が変わる。
グリーン車の乗り方②:グリーン券を買う
「そしたらホームに自販機があるからな、そこでグリーン券を買うんや。みとけよ」



なるほど。先輩を見ていると確かにたいしたことない。新幹線の乗車券を買うのと同じくらいの手順である。
僕はスマホにSuicaアプリを入れているのでICカードを持っていないのだけれど、そういう場合は現金で買えるのだろうか。
「持ってないんか。なら知らんな。ためしに携帯そこ置いてみ」


「ならわからんわ、ごめんな」
いや先輩まってください。
このままだと先輩だけグリーン車に乗って僕は普通車で帰って終わりである。ぜんぜん遠足じゃない。
自販機に書かれた情報を必死で読み解くと、どうやらアプリのSuicaを使っている人はアプリ上でグリーン券を買うことができるらしい。自販機で現金での購入はできなさそうだった。


買えた!東京から僕が降りる駅まで1000円もしたが、新しい体験のための投資だと思えば安いものである。
しかし購入したというグリーン券はいつどこで誰に見せるのだろうか。
「見せるんちゃうよ、こう、車内でピッとやるんやで」

グリーン券はすでに購入済みなので、ICカードやアプリにその記録が残っている。それをグリーン車の車内で座席にタッチすることで確認するのだとか。
ものすごい複雑ではないか。こんなの一人ではぜったいに気づかなかっただろうし、僕は先輩に教えてもらったからいいものの、みんなどうやって学んだんだろう。確定申告とかもそうだが、誰も教えてくれない大切なことが世の中にはたくさんあると思う。
そんな苦言を一方的に先輩に訴えていたところ、電車がやってきた。ちなみにホームにあるグリーン券の販売機にぜんぶ詳しく説明されていました。
