グリーン車の乗り方③:並ぶ
僕たちの乗る東海道線がやってきた。いつもなら長い列に並んで、乗れたとしても座れることなんてほぼ期待できない。
ーー先輩、僕らグリーン券を買ったのに並ぶんですか。

「並ぶよ。グリーン券買っても満席で座れないこともあるからね」
ーーえ!そんな!そしたらどうするんですか?先輩の言ってたピッもできないってことですよね。
「あきらめて払い戻しするか、空いてる電車くるまで待つか、だな」
なんと。グリーン車は指定席ではないので、グリーン券を買っても満席だったら座れないらしいのだ。そんな理不尽な遠足はない。
「ディズニーランドでも入口で券買ってキャプテンEOの前でまた並ぶやろ、あれと同じや」
理解はできるが納得はできない。不満と心配とがないまぜになった表情を浮かべる僕の前に、グリーン車が停まりドアが開いた
「お、ラッキー空いてるやん」


さすがグリーン車である。夜のラッシュ時間帯にもかかわらず、空席を見つけることができた。
せっかく二階建ての車両なので二階に乗るのかと思いきや、先輩は一階の最後列にまっすぐ向かった。この理由は後に判明する。
グリーン車の乗り方④:上にタッチする
無事座席を確保できたらいよいよタッチである。先輩はICカードを、僕は携帯を、座る座席の上のセンサーにタッチする。


センサーは座席の上の荷物棚に内蔵されているので小さい子どもだと届かないのではと思ったが、そもそも小さい子どもは一人でグリーン車に乗らないだろうからいいのかもしれない。
グリーン車の乗り方⑤:座席を倒す
グリーン車の座席は新幹線みたいに「個のスペース感」が感じられるしっとりとした良い座り心地だった。
「座ったら迷惑にならない範囲で席を倒す。これがグリーン車の醍醐味や」

なるほど、先輩が一番後ろの席を選んだのは全部倒しても迷惑にならないからだった。普通車ではたとえ運よく座れたとしてもリクライニングはできないのでこの体験は尊い。

「しかも触ってみ、椅子ふかふかやろ。これで帰るとほんと気分よくて天国やで」
これがグリーン車の威力か。なるほど確かにこれは快適だ。いつも帰宅時に乗っているのと同じ電車とは思えない。
僕たちは快適な空間で人生について語り合いながら帰路についたのでした。

ーーところで先輩、これ降りる駅に着いたらどうやって降りたらいいんですか?またピッてやるんですか?
グリーン車の乗り方⑥:座席を元の位置に戻す
「降りる時は何もせんと降りたらええよ。あ、座席は戻してな」
ピッとやるのは乗る時だけで、降りる駅が来たらそのまま降りたらいいらしい。ただし倒した席は降りる時に戻す。これにもグリーン車先輩ならではのしぐさがあった。


グリーン車という人生
これまで乗ったことがなかったグリーン車は、同じ区間を移動したのにまったく別の体験だった。しかも何度も乗るとありがたみが薄れてしまう感じではなく、乗れば毎回気分よくなれるタイプの体験だと思う。
これから先、一人で乗るかと言われたら少し躊躇するが、先輩みたいになにかいいことがあった時の隠し玉として持っておくのはいいなと思いました。

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