特集『あたりまえ入門』
誰もが持っている世間知らずの一面。いま、スポットライトで照らします。(企画説明)
田舎過ぎて出前できない
出前。それは家から出ずとも飲食店がおいしい料理を届けてくれる、素晴らしいサービスである。
ウーバーイーツが広まってから出前文化はさらに盛り上がりを見せ、もはや出前を頼んだことがない人はディズニーランドに行ったことがない人と同じくらい希少生物だろう。
そしてわたしも、その希少生物の一人だ。
出前に不安があるわけではない。むしろ一歩も外に出ず食べ物が手に入るなら、可能な限りそうして生きていきたい。
ではなぜ出前を取ったことがないのか。
自宅が田舎過ぎて、出前が来てくれないだ。

今の自宅はもちろん生まれ育った実家はさらに田舎で、家族が出前を取っている姿など見た記憶がない。
10代後半~20代前半のあいだ東京に住んでいた時期があり、その時はまわりも飲食店だらけだったが、役者を志して極貧バイト生活を送っていたためとてもじゃないが出前を取るお金などなかった。
こんな感じで、田舎過ぎて出前できない→都会だけど出前するお金がない→また田舎過ぎて出前できないという、出前とは縁がない人生を送ってきた。
このあたりで、そろそろ出前を取っておきたい。
親戚を頼る
初出前を取るにあたり、以前こちらの記事で一緒に沖縄の謎フルーツを食べてもらった親戚のMちゃんを頼った。
Mちゃんを頼った理由は2つある。
1つ目は出前依頼経験者であること。2つ目は、わたしより街中に住んでいることだ。
そう、いくら出前を取りたくてもわたしの家は出前対象範囲外で出前が取れないため、うちより街中に住んでいる誰かを頼らざるを得ない。
田舎は田舎でいいんですけどね。畑で取れたばかりの野菜をたくさんもらえるとか。

今回は2通りの方法で出前を取る予定だ。
② 最新の出前の取り方、ウーバーイーツで出前を取る
わたし自身初出前なのだから、 流行りだしたのが数年前でもわたしにとっては最新なのだ。
まずはウーバーよりなんとなく時間がかかりそうなイメージの電話での出前注文から試す。
電話で出前を取る
電話での出前注文は、Mちゃんもやったことがあるようなないような…という感じだった。大丈夫、わたしと一緒に右往左往しよう。
そもそも電話で出前を取るには、注文先となる飲食店をどうやって探せばいいのか。
ウーバーはおそらく出前可能な飲食店一覧が出てきたり、メニューが見られたりといった機能がありそうだと予想しているが、電話注文は飲食店探しの糸口が見つからない。
試しに「町名 出前」でネット検索したが、出てくるのはチェーン店、もしくはウーバーや出前館といったデリバリー大手の情報ばかり。かろうじて検索に引っかかった個人店も「出前を注文する」ボタンをタップすると、ウーバーや出前館のページに遷移してしまう。
便利な世の中になった反面、飲食店に直接注文し直接届けてもらういわゆる出前文化が衰退しているのを目の当たりにし、時代の流れを痛感した。
そんな中かろうじて電話で出前を受けてくれそうな飲食店を2軒発見。1つは昔ながらの町中華、もう1つはこれまた歴史がありそうなうなぎ屋だ。
Mちゃん
「わたし、蕎麦の出前を取ってみたかったんだよね。あのユラユラ揺れる装置がめちゃくちゃ気になってて。ラーメンもきっとあの装置で運んできてくれるよね?」
沖縄出身者であるMちゃんは、地元で蕎麦の出前に使うユラユラ揺れる装置を一切見たことがなく、これまでずっと気になっていたそうだ。
わたしも沖縄が好きで何度か旅行で訪れているが、言われてみればたしかに沖縄では見かけない気がする。というか、沖縄にはそもそも日本蕎麦屋が少ない。
しかし沖縄そば屋があれだけたくさんあってもあの装置を見かけないということは、沖縄そばはあまり出前しないのか…?
思わぬところで新たな気づきがあった。
装置も見たいし、まずは町中華でラーメンを出前してみよう。

この町中華が出前をやっているという情報はネットの口コミで発見した。古くからある町中華でお店が運営しているホームページはなく、口コミを頼りに電話する。
まずはそもそも口コミ通り出前をやっているかどうかの確認が必要だ。
町中華のおばあちゃん
「はい、〇〇(店名)です。出前?あー、ごめんなさいね。出前はやめちゃったんです。前はやってたんだけどねぇ…」
ガーン。そのパターンがあったか。
口コミにあったように以前は出前をやっていたそうだが、残念ながら今はやめてしまったとのこと。あのユラユラ揺れる装置でラーメンを持ってきてほしかったけど仕方ない。
気持ちを切り替え、次はうなぎ屋に電話だ。
うなぎ屋はホームページに出前をやっていると書いてあった。その情報が今も変わりなければ注文できそうだが、作るのに時間がかかる料理なので、当日注文で大丈夫か少し不安だった。
「もしもし、かんたろう(店名)です。出前ですね。やってますよ!」
ヤッター!うなぎ屋はホームページの記載通り出前をやっていた。
しかも時間のかかりそうなうなぎ丼を、なんと30分以内に届けてくれるという。予想以上のスピード感で、逆にもう少し時間をかけても大丈夫ですよと余計なことを言いそうになった。
そして少量の注文ながらとても快く注文を受けてくれ、料理が届く前からなんだかハッピーな気持ちになった。