特集『あたりまえ入門』
誰もが持っている世間知らずの一面。いま、スポットライトで照らします。(企画説明)
新聞の読み方を教えてもらおう
何を隠そう私は生まれてこの方新聞を読んだことがない。
小学生くらいの頃までは実家で新聞を取っていたのだが、等身大のわんぱく坊やだった当時の私はテレビ欄と4コマ漫画にしか興味がなかった。
大人になったらむつかしい活字の部分も読むのだろうなあと子供心にぼんやり思っていたのだが、思いのほかそういった機会もなく、気がつけば齢三十を過ぎてしまった。
このままではいけない。正確にはいけないのかどうかも分からない。ちょっと新聞の読み方を教えてもらってもいいですか。


このあと新聞を読んでいる人にとっては本当にあたりまえのことが出てくると思うが、驚かないでほしい。
新聞は必ずしも全部読むものではない
――のっけから初歩的な質問で恐縮なんですけど、新聞ってどっちが表紙でどこから順番に読むものなんですかね……?
奥山さん 『朝日新聞』と書かれた方が表紙ですね。左上にページ数が書いてあります。

奥山さん そして順番なんですけど、ぶっちゃけ新聞社の中の人も 1ページ目から全部読むことはあんまりないです。自分が関係あるところや、興味のあるところから読んであとは時間があればくらいの感じですね。
――えっ、全部読まなくてもいいんですか?

奥山さん 新聞の表紙の紙面を『一面』というんですけど、まあ一面と社会面は読んでおこうかな、みたいな。だいたいそれでその日の大事なニュースが分かるので。

奥山さん 新聞社には社会部とか政治部とか色々な部があるんですけど、一面は部署横断のオールスターで作っています。それぞれの部署が取材した記事の中から一番大きな記事が載るわけです
新聞には速報と雑誌の二つの側面がある
一面には一番大事な記事が載っている。なるほど、理解した。それでは中の記事はどうなのか。
奥山さん 基本的にはページごとに取り扱う内容が分かれていて、経済面と呼ばれる紙面は経済に関するニュースを、国際面は国際情勢などのニュースが載っています。経済面、国際面というのも左上に書かれているんですよ。

え〜わかりやすい。確かにこれなら興味のあるところだけつまんで読むのもカンタンだ。
ぱらぱらとめくっていくと他にも「文化」「スポーツ」「リライフ」とさまざまな紙面が並んでいた。ん?「リライフ」?

奥山さん 実は新聞にはニュース面という前日に起きたニュースを取り上げる紙面と、特集面という作り置きしている紙面があります。この『リライフ』は特集面で、インタビューとかコラムとかが載っていて雑誌のような内容になっています。
――えっ、雑誌ですか?

奥山さん この速報的なニュースと雑誌的な記事という異なるタイプの情報が一つのパッケージになっているというのが新聞の発明なんです。
もともと朝日新聞は、時代劇に出てくる瓦版的な親しみやすいニュースを伝える『小新聞(こしんぶん)』として生まれたんですが、その後、政治に関する論考など硬派ニュースを扱う『大新聞(おおしんぶん)』の要素も盛り込むようになり、これは便利だということでヒットした経緯があります。

なるほど……。ここまで聞くと冒頭で奥山さんが言っていた「1ページ目から全部を読むわけではない」という発言の意味もよく分かる。
ニュースの中でも自分の興味のある分野のページを読めばいいし、特集面だって気になるところをつまんで読めばいい。毎日届く中で気に入った連載やコラムがあれば追っていけばいい。色んな人が色んな観点から広く親しめるようになっているのだ。
