新幹線で置き去り2021-2022 2021年12月30日

雪のない上毛高原で冬の高原っぽさを求めさまよう~新幹線の駅にひとり置き去り~

上毛高原から雪を求めてさまよいました。なんで求めたのか。

思い返せば、2年前の「新幹線置き去り」で引いたのが、企画中で最も東京に近い大宮駅。

そして昨年の「難読駅へいってらっしゃい」では、これまた企画中で唯一の都内案件だった九品仏駅。

旅ネタ記事のハズなのに、2年続けて近い! 近すぎる!

今年こそは遠くに行きたい。上越新幹線を使うなら、埼玉は越えたい。もうちょっと贅沢を言っていいなら、関東平野を脱出したい。

そんな願いを持って臨んだ三度目の年末企画、僕が引いたのは上毛高原駅だった。

※この記事は年末年始とくべつ企画「新幹線の駅にひとり置き去り」の中の一本です。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

前の記事:食用グリッターで輝くファビュラス和食

> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

祝!年末企画で関東平野脱出

いやー、やりましたよ。ほんとね、信じていれば願いは叶うのだ。 ギリギリとはいえ関東平野の北西端である高崎を突破したわけだし。

ぶっちゃけ言うと、上毛高原に何があるのか全く見当も付かないんだけど、東京からそこそこ離れられたというだけですでにご満悦。旅気分もすっかり盛り上がろうというものだ。

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旅情が盛り上がりすぎて、朝食にバカっぽいおにぎりを買う。本当に麺とか入っててボリュームがえぐかった。

実際、新幹線のなかでも、今回の最近距離案件である熊谷駅を引いたライター3ykさんに

「ハハハ、近いほうが賑やかな分だけネタも多くて撮れ高ありますよ、たぶん」

などとイヤらしく近距離案件センパイ風を吹かしまくっていたわけで。我ながらテンション上がりまくってたな、あの頃。

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僕(と動画担当の編集藤原くん)を置いて新潟へと走り出す新幹線。約7時間後までのお別れだ。

そうこうしているうちに、いよいよ上毛高原に到着。ここで置き去られての、企画スタートである。

上毛高原、生命反応ありません!

新幹線ホームから改札階へ降りていって、まず感じたのが「上毛高原駅、人がいない」だ。

一度だけ改札近辺を駅員さんがスッと通り過ぎたけど、それ以外には誰も見かけない。なにかSF的なレーダーっぽいやつを確認しても、おそらく周囲に生命反応は無いはずだ。

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生命反応のない改札階。
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生命反応はないが、顔ハメ看板反応と巨大天狗反応はあった。

わー、なんかいきなり寂しいことになってきたぞ。

コロナ禍のここ2年間、まったく旅行取材的なことをしてないから忘れてたけど、そういえば新幹線の地方駅ってわりとこんな感じだったっけな。

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あっ、誰かいる!と思ったら、高原感(?)のあるフォトスポットの人形と鹿だった。やはり生命反応がない。

このまま駅にいても埒があかないので、まずは情報を求めて、駅に隣接している観光センターへ移動だ。

ここで駅近辺のスポット情報を教えてもらおう。

企画のルールとして「置き去りになるまでは現地情報の検索禁止」があるので、今のところまだ丸腰なのである。

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駅を出てすぐ隣が、みなかみ町観光センター。
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観光センター内もガランとしているが、奥の方には観光課の人がいた。良かった。

ここでひとまず、駅から歩いて行ける観光スポットをいくつかと、あと現地の美味しいもの情報を仕入れることができた。
観光案内で対応してくれたお姉さんに「この辺りで見応えのあるスポットって、どこかありますか?」と質問したのに対して、「……ええと、見応え、ですか?」と、時間にして約5秒ほどのフリーズがあったのは、やや気になるところだが。

思ったよりもサクッと手詰まりに

まずは、観光案内のお姉さんがフリーズから復旧後に最初に挙げてくれた「梨の木平敷石住居跡」に向かってみよう。駅から徒歩6〜7分と手頃な場所にある、縄文時代の遺跡とのこと。
ゆるい坂道をダラダラと降りていくと、まさに「梨の木平敷石住居跡」と書かれた納屋のような小さな建物が見えてきた。ん? これ遺跡?

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まさにそう書いてあるから間違いないんだろうけど、これ遺跡?
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回り込んでみると入口らしきものはあるが、入ってもいいものか判断つけづらい雰囲気。

どうやらこの遺跡は、縄文時代の住居跡を建物で囲って保護しつつ、見学ができるような作りになっているらしい。へえー。

ドアには見学可能な時間と「ご自由にお入りください」の記載もあるので、じゃあお言葉に甘えて入ってみよう。

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建物の中央がガラスで囲われた掘り下げ空間になっていて、そこに住居跡(石を敷いて作られた囲炉裏)がある、という構成なのか。

ほほー、敷石もみっちりしていてきれいに残ってるんだねー。へぇー。ふーん。

……とじっくり見たつもりだが、所要時間は5分ほど。なるほど、サクッと見終わってしまったな。

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道路向かいにはもうひとつ遺跡と郷土資料館があったが、この日は閉館していた。

最初のスポットにして、おそらくこの辺りで最大の見どころだったはずの遺跡が5分で見終わっちゃうというのは、なかなかに困った状況かもしれないぞ。

ここからさらに坂道を数分降りたところに道の駅がある、という情報も得ているんだけど……旅ネタ取材における道の駅って、正直なところ、最終手段でもあるのだ。他に行くとこないから道の駅に行くかー、的な。

なので、置き去りにされてまだ1時間も経ってない今、道の駅に行くのはできれば我慢したいところだ。

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まぁ、そう言いつつもあっさり道の駅に来ちゃったわけですが。
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巨大なめこが安い!キノコ好きなのでこれは買って帰ろう。
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あとは道の駅に併設の公園で、大きな遊具をしばらくボーッと眺めてた。

いきなり切り札を切っちゃったけど、どうしよう。まだ午前中だし。帰りの新幹線まで5時間以上あるし。

さすがに、これで上毛高原は終わりです!って言っちゃうわけにもいかないだろう。さぁどうする。

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行列のできる若どり焼き(冷や)と、りんご園のアップルパイ(冷や)

そこでタイミング良く思いだしたのが、観光案内で教えてもらった美味いもの情報だ。

この道の駅から少し行った辺りに、地元の人がこぞって買いに来る「若どり焼き」(テイクアウト専門)のお店があるらしいのだ。

観光客用ではなく、地元民御用達というのも興味をそそる。そりゃ食っておくべきではないか。

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「地元民がこぞって買いに来る」は本当だった。みんな車で来て、骨付きモモ10本とかの単位で買っていく。

この「高橋」というお店、基本的には甘辛いタレ味のモモ焼きがメインなんだけど、水を使わずに鶏の水分で蒸し焼きにしているので、非常にジューシーで美味しいとのこと。

たどり着いた頃はまだ人がいなかったんだけど、注文して待っているうちにも、僕らのうしろに行列がどんどん伸びていく。ついさっきまで「生命反応がないなー」とか言ってたのがウソのようだ。人、いっぱいいるじゃん。

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品物はビニール袋に入れて新聞紙にくるむ、という最近あまり見かけなくなったお持ち帰りシステム。

購入した若どり焼きは、再び道の駅の公園まで戻って、東屋(兼バーベキュー場)でいただくことにした。

今日の上毛高原は幸いにもぽっかぽかの好天気で、外メシもまったく問題ない陽気である。

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骨付きモモとボンジリ串を両手に、わんぱくスタイルでいただきます。

で、お味の方はと言うと、なるほど美味いなー。

かぶりつくと線維がほろっと崩れるほどの柔らかさで、それでいて肉の味はしっかりと濃い。あー、白飯が手元に無いのが勿体ない。

そりゃ近くにお店があったら買いに行くわな、って感じだ。

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動画担当で同行している藤原くんは、骨なしのモモ肉照り焼きにダイナミックかぶりつき。わんぱくだ。

ただひとつ誤算だったのが、温度である。若どり焼き、微妙に冷えているのだ。

あくまでも地元の人がテイクアウトして家で温めて食べる前提なので、提供時点ではアツアツである必要性がないのだろう。なのでシステム的には間違ってない。

とはいえ、焼きたての熱いところをガブッといけたらもっと美味かったはずで、これはちょっと悔しい。

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よく見ると、公園の向かい側の空き地には「高橋」臨時駐車場の看板が。週末はここもいっぱいになるほど人が来るらしい。どんだけ人気だ。

モモ焼き1本食べたぐらいだとまだお腹に空きがあるので、次はスイーツに行ってみよう。

ここからバスで10分ほどの場所にある観光農園「阿部りんご園」で食べられるアップルパイが、これまた地元民に評判らしいのだ。

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バス停を目指しての移動中に見かけた広場の遊具。パンダとか馬とかゾウとかではなく、なにか概念的な動物。
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こちらも移動中、何本も見かけた謎の矢印看板。カエルの冬眠場所を示しているのかと思ったが、マンホールの位置を示すための看板とのこと(帰宅後にググった)。

しかもテイクアウト専門ではなく、ちゃんと喫茶店として営業もしているらしい。それならちょっとゆっくりもできそうで、ありがたいな。

念のため事前に電話してみると、さすがにシーズンオフなのでリンゴ狩りはできないが、アップルパイはいつでも食べられるとのこと。わー、すぐ行きます。

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リンゴの木越しに見えるロッジふうの建物が、阿部りんご園の喫茶店。
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店内は焼いたパイとリンゴの香りがいっぱいで、小学生なら喜びのあまり飛び跳ねるんじゃないか。

うわさのアップルパイは、わりと酸味がキリッとした印象で甘すぎず、非常に美味い。サッパリしていて「何個でも食べられる」系のやつだ。おそらく、リンゴなんか食べ飽きている地元の人向けの味付けなんだと思う。

また、セットで頼んだ「アップルグリーンティー」がこれまた意外な美味。

要するに名前のまんま、リンゴジュースとグリーンティーを混ぜたものらしいんだけど、飲み始めは甘味の強いリンゴジュースなんだけど、後くちはグリーンティーでスッキリ。なかなかにハマり度合い強いドリンクである。

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「アップルパイのアイス添え」と「アップルグリーンティー」

しかしここのアップルパイ、初めて食べたはずなのに、なにか妙な既視感がある。しかもついさっき同じようなものを食べたばかりのような。

……そうか、冷えているのだ。

アップルパイなんだから、冷えてても若どり焼きよりは問題ないんだけど、ただ、メニューに「アイス添え」とあったので、パイの方は温めた状態で出てくるのを無意識に期待しちゃってたのだ。

いやまあ僕が勝手にそう思ってただけなんだけど。

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冬の高原っぽさを求めて移動する

アイスとか冷たいアップルグリーンティーを食べたあとなので、ちょっと身体が冷えるかな?と思ったんだけど、今日の上毛高原はなんなら東京よりも気温が高い(昼過ぎの時点で9度)ぐらい。

普通に歩いてたら、コートも脱ぎたくなるぐらいである。

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というか、歩いてたら汗かいてきたのでコート脱いだ。

上毛高原、改めて検索したら、周囲にスキー場が9つあるらしい。

しかしこの気温ではスキーもへったくれも無かろう。実際、目に見える範囲に雪の気配はゼロで、周囲の山もほとんど冠雪してないし。

スキー場は人工雪で営業してるのかもしれないが、これではどうにも“冬の高原に来た感”が味わえない。

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駐車場の除雪作業車軍団も、どこか所在なさげ。

ここから行ける範囲で、どこかガチ雪のある場所はないのか。観光サイトやらスキー場のSNSアカウントやらを調べていくと、ここからバスで45分ほど+ロープウェイで登った先にある谷川岳天神平スキー場がガッツリと営業中の模様。雪もたっぷりあるらしい。

それだけ移動しちゃうと「もはや上毛高原の範疇越えてないか」という気もするが、まあいいや。せっかく高原に来たんだから、雪の一つも見て帰ろうじゃないか。

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バスでしばらく走ってると、じわじわと雪景色が増えてきた。いいぞいいぞー。
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バスから見えた“魔王の要塞”的なかっこいい建物は、埼玉県川口市立の「少年自然の家」だった。
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バスの終点「谷川岳ロープウェー」。ここまで来ると、手が痺れるような本格派の「寒さ」を感じる。
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ここからロープウェイで約15分。標高1300mまで一気に上がる。
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着きました。

ロープウェイを降りて10歩ほど歩いたら、はい、雪。

コロナ禍の2年間、都内でろくに雪なんか見てなかったので、久しぶりの雪景色にテンションはめっちゃ上がる。

 

そして、こんな薄手のコートなんかまったく役に立たない寒さ。

靴も防水なだけのスニーカーだし。歩くたびに細かな粉雪が靴の中に少しずつ入ってくるぞ。もともとスキー場に来るつもりもなかったので仕方ないとはいえ、雪山を舐めすぎである。

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わー、フワッフワのパウダースノーだー!
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はしゃいでみたけど、数秒で脳が「このままだと死ぬぞ」という警告を出してくる。

まぁ、雪も見られたし、寒さも充分に満喫したので、これで良しとしよう。というかこれ以上は無理だ。

バスとロープウェイで往復2時間。スキー場の滞在時間は約20分。なかなかの贅沢ツアーと言えなくもない。

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スキー場レストランで自由に飲める水は、谷川岳の沢の水を直で引いてきたもの。水、美味い。

あとはもう再びバスに乗って、上毛高原駅に戻るだけだ。

移動にこってりと時間をかけただけあって、タイミング的にも新潟方面から他のメンバーが乗っている新幹線も、そろそろ着く頃だろう。

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これ乗って東京に帰ります。おつかれさまっした。

今回の旅、まとめると「あっさり風味の遺跡を見て、冷えた鶏モモと冷えたアップルパイを食べて、スキー場で水を飲んだ」という身も蓋もない感じにはなるんだけど……とりあえず、旅情は充分に感じられたように思う。

上毛高原、次に来るときはちゃんとスキーできる格好で来たいし、あとは宿を取って、若どり焼きを温め直して食べることにする。


谷川岳に行くまでは、若どり焼きとアップルパイでそれなりにお腹が膨れたつもりでいたんだけど、スキー場から降りてくると、猛烈な空腹に。

どうやら、身体が寒さに対抗するためにがんばってカロリーを燃やしたんだろうな。

新幹線を待つ時間、上毛高原駅の喫茶スペースで食べた「そばピザ」(そば生地に高菜とチーズ)が、これまた非常に美味しかった。そしてこれが今日初めての暖かい食事だったことに、あとから気がついた。

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見た目はややアレだが、そばの風味がふわっと感じられて美味しい。

 

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