夜のウォーキングはクモがやたらと見つかる
痩せるために歩き始めたらウォーキングにハマってしまい、余裕があるときには2時間くらい歩いている。街灯すら控えめな田舎道には金儲けのためにわたしの注意を奪う刺激的な広告が一切なく、とても気分がいい。

広告のかわりに目に入ってくるのが生き物たちである。山間部すぎて人間はほとんど見ないが、いまはちょうど田んぼに水が張られている時期なのでカエルとよく出くわす。
また、冒頭でも触れたようにクモの光る目がやたらと見つかるのだ。ヘッドライトの明かりを反射して輝くクモの目は、キラッと光るタイプの隠しアイテムみたいで探すのが楽しい。狩猟・採集で生計を立てていた太古の血が騒ぐ。



クモを観察してみると、前方についている2つの目が光を反射しているようだ。数メートル離れたところからでもわかるほどの輝きで、クモが後ろを向いていてもピカピカ光るので見つけやすい。

時間と距離を基準にするのはもう古い!クモの数だけ歩け!
それではキリのいいところでクモを100匹見つけるまで歩いてみよう。何分何キロ歩いたとかはもう古いですよ。令和のウォーキングはクモ100匹です。




これが、おもしろいのだ。まず、先に触れたように隠されたものを見つける楽しさがある。
光に近づいてみるとアスファルトの白い模様だったりしてガッカリすることもあるが、そうかと思えば立て続けに3匹見つかったりするギャンブル性もいい。

続けていると技術が高まってより遠くのクモが見つけられるようになるのもいい。


見つかるクモは巣を張らずに徘徊して獲物を捕らえるタイプが多く、逆にそれを捕らえるのは生き物として優位性を感じられていい。
そして、光を反射しながら動くクモの目は流れ星みたいできれいだ。地上の星とはクモのことだったのだ。だからクモを食べるツバメに地上の星の所在を聞いていたんですね。納得です。



クモ100匹ウォーキングはスクワットとしてきつい
クモを探し続けてかれこれ2時間歩いている。
長い時間歩くのは慣れているのだが、見つけたクモの写真を取るためにしゃがんでまた立ち上がるときの動作が足にきいてきた。単純にスクワットとしてきつい。クモ100匹ウォーキングはスクワット100回ウォーキングだった!


下ばかり見て歩き続けて、気づけば家もなにもないような場所に来ていた。イノシシとおぼしき獣の気配がする。墓がある。
こういうときに恐怖を感じないコツは、わたしは神様に愛されているから不都合は何も起こらないと自信を持つことです。たいていそれで乗り切れます。

クモを100匹見つけるまでウォーキングすると3時間40分歩くことになる
歩きはじめて3時間を過ぎたころ疲れで意識がぼーっとしてきた。ワンデイコンタクトの目が霞む。眠い。それでもクモの光を捕らえる能力は冴えまくっている。気持ちよくなってきた。潜在能力の使い道よ!




長時間歩くことによる足の疲れはあるものの、ほかにない満足感があるからこのウォーキングは不思議だ。眠気と体力さえなんとかずっとやっていられる。もう人間の趣味はこれだけでいい。


最後の一匹を見つけたとき、時刻を確認すると0時を回っていた。

かかった時間は3時間39分39秒。サンキューサンキューで縁起がいい。距離は8.88kmでこれまた縁起がいい。8の羅列は「パチパチパチ」という拍手の音を表すものとして動画サイトで使われることがあるのだ。ほら、神様から愛されているでしょう。楽しかった。
