特集 2021年9月6日

ドライフルーツで果実酒を仕込むとすごい

季節のフルーツでしか果実酒が仕込めないことに、ずっと勿体なさを感じていた。いつでも仕込めて、すぐに楽しめる果実酒があったらいいのに。
そうだ、ドライフルーツを酒に浸けたらどうなるんだろう。

※この記事は、8月30日に公開した同名の記事に加筆・修正を加えたものです。詳しくはこちらをお読みください。

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。花を売った金で酒を買っている。

前の記事:北海道産「白樺の樹液」を買って飲んでみた

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2度目の梅雨がきて、雨の勢いが凄いなあなどと考えてるうちにまた夏になり、9月になるやいなや秋の空気になった。今年の天気はめまぐるしい。
感染症の流行で「外に出るな」と言われているが、そもそもこの天気の中外に出たくないのである。ヘルスケアアプリ曰く「あなたの今日の歩数は57歩です」。
おそらく今後も長いこと家にいるわけだから、家の中でできる趣味を増やしていかなければならない。
1回目の梅雨の時期はどうやって暇を潰していただろうとカメラロールを遡ってみたら、青梅を仕入れて梅酒を浸けていた。

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近所のおじいさんに庭木の梅を分けてもらったのだった

こちらの記事で、北向ハナウタさんも未来の自分に向けて梅酒を浸けているが、果実酒というものは素晴らしい仕組みだ。旬の果物を仕込んで(手間がかかるがその「ひと仕事した感」がまたいい)、あとは放っておくだけで出来上がる。
いつか元気がない日が訪れても、「自分には梅酒があるから大丈夫」という気持ちの担保ができる。

果物の旬の時期にしか果実酒を仕込めないというのは、ちょっともどかしいものだ。今のおうち時間に必要なものは、いつでも仕込めて、いつでも飲める果実酒ではないか。

そうだ、ドライフルーツを果実酒にできないだろうか。

まずは出場する選手の紹介です

思い立ったが吉日とばかりに、近所のスーパーと酒屋にあったドライフルーツを全種類買ってきた。

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マンゴー、アプリコット、イチジク、バナナチップス、プルーン。(※酒税法により、ブドウと酒類は飲用を目的とした混和ができないため、レーズンは使用できません)

酒に浸けたドライフルーツは、よくパウンドケーキなんかに入っているが、なぜか「ドライフルーツを浸けていた酒」は出回らない。フルーツの風味が移って美味しそうなのに、一体なぜなのか。

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というわけで、美味しくなる予定の精鋭たちがこちら。

左からアマレット、テキーラ(レポサド)、ダークラム、ブランデー、ウイスキー。
こういう場合の酒は「果実酒用だし…」と一番安いものを選びがちだが、筆者の経験上、「ちょっといいやつ」を選んでおくと仕上がりが格段に良くなる。

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浸けておく瓶の準備は通常の果実酒と同じ。筆者は洗ってすぐの瓶にスピリタスを吹きかけて、しばらく放置しておく。

果実酒を浸けるときは、腐敗や再発酵を防ぐために20度以上の酒を用いる。つまり、焼酎や今回買った酒群のような『蒸留酒』ならだいたいなんでもいける(ディサローノのアマレットはリキュールだが28度ある)。

以前、ライターの馬場さんがこちらの記事でドライフルーツを日本酒で戻して大変おいしそうであったが、長期保存と酒を味わうことを考えると、なおさら蒸留酒を使うのがおすすめである。

酒とドライフルーツ、組み合わせはあなた次第

さっそく仕込んでいこう。

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といっても、ドライフルーツを入れて酒を注いで終わりなのだから、手間としてはカップラーメンにお湯を注ぐ程度である。

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マンゴーにはテキーラ(レポサド)。理由は「南国のフルーツとテキーラはなんかよさそうだから」。
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ドライイチジクにはダークラム。これはもう飲まなくても美味しいことがわかる。わかってるんだからもはや飲まなくてもいいんじゃないか。
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気にせずどんどんいこう。プルーン(これはドライフルーツなのか?)にはブランデー。おつまみバリューパックみたいなものにもプルーンは入っていがちだし、きっと酒との相性も素晴らしいことであろう。
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アマレットはアンズの種を原料としたリキュールである。これでアプリコットの果肉を漬けるとどうなるだろうか。「頭痛が痛い」みたいな飲み物になるだろうか。それとも「ナイル川」や「サハラ砂漠」みたいな(以下略)
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担当編集の石川さんから「ナッツも入れたら美味しいんじゃないですか?」と素晴らしいサジェストが飛んできたが、残念なことに筆者は大半のナッツにアレルギーがある。一番ナッツに近そうだから、という理由でバナナチップスを買ってきた。

一度揚げられているのか、原材料に「ココナッツオイル」とある。果たして上手く浸かるだろうか。

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ナッツといえばウイスキー。故にバナナチップスにもウイスキー。ココナッツオイルの香りもうまいこと出てくれたら嬉しいのだが。
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酒を入れた直後はこんな感じ。

酒に対してドライフルーツの量が多いほど、フルーツのエキス分を濃く感じる仕上がりになるはずである。今回は厳密に図らず、「ひたひたになればOK」くらいのラフさで仕込んでみた。

「果実酒なのに氷砂糖いらないの?」と思われるかもしれないが、フレッシュな果実を使った果実酒に氷砂糖を入れる理由は、浸透圧なんかがこう…良い感じになって……果物のエキスを抽出させるためだ。
すでに諸々が凝縮されたドライフルーツに使用しても、さしたる効果はないのではないかと考え、今回は使用していない。というかめちゃくちゃ甘くなりそうだからやめました。

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これは要らない一手間ですが

果実酒の醍醐味は「ひと仕事した感のある仕込み」と思う。
ドライフルーツに洋酒を注ぐだけだと、いまいち「やってやったぞ!」感が少ない気がしたため、ラベルシールを作って貼ることにした。
こういった無駄な一手間で、「ていねいに作ったぞ」感が高まり、後の「自分には仕込んだ酒があるから大丈夫」という気持ちが強く担保される。刺激を求める方はぜひラベルシールメーカーをお求めいただきたい。

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ラベルを貼ると一気に商品っぽくなる。雑貨屋さんに売ってるオシャレギフトと自己暗示をかけると、そう見えなくもない。
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煮込むとどうなるか

よく「お酒のレシピは美味しそうだけど、お酒に弱い体質だから自分で作らない」というお話を伺う。
ドライフルーツ、酒で煮込んだらどうなるのだろう。アルコールが良い感じに抜けて、「洋酒風味のおいしい液体+おいしい液体を吸った果物」にならないだろうか。

というわけで、最後にデーツをダークラムで煮込んでみる。

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家にあったのに、存在をすっかり忘れられて果実酒になれなかったデーツたち。
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ダークラムをたっぷりめに投入。フルーツのコンポートや、洋酒煮のレシピはここで砂糖や蜂蜜、レモン汁を入れるものだが、今回は洋酒のみ。
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ひと煮立ちさせたら、弱火で15分ほど煮込む。
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興が乗ってきたのでシナモン(というか桂皮)をひとかけら投入。
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15分煮たところ。デーツが洋酒を吸ってぷにぷにになっている。というか、予想以上に吸われてしまい液面が低い。
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粗熱を取っている間にさらに吸われてしまった。パッツパツで、心なしか一回り大きくなったデーツ。残ったラムはシロップのようにトロトロ。

デーツ風味になった液体を楽しみにしていたのに、ほとんどデーツに吸われてしまった。わたしのダークラムを返しておくれ。どうやら、最初の投入時にもっと思い切った量が必要だったらしい。

一方そのころ仕込んだ酒は

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瓶に詰めて、翌日の写真。

すでに様子が変わりはじめていた。固かったマンゴーが生っぽい質感に戻ってきている。

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アプリコットはアマレットを吸ってぷるぷるに。これは期待が持てそうだ。
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一方不穏なバナナ。ココナッツオイルが浮きまくっているが、一体どうなるつもりなのか。

ラムをたっぷり吸ったデーツをいただく

酒をしばらく放置している間に、先ほどのデーツを試食してみよう。

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冷蔵庫で冷やしたデーツと、吸われてしまった残りの液体。

「おいしそう」よりも、「酒が減ったな」の気持ちの方がギリギリまさる。

種に気をつけながら、やわらかくなったデーツをいただきます。

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……あれ?

酒を返してなんてひどいこと言ってごめん。ちょっと引くほど美味しい。デーツの甘さと洋酒の香り、ねっちりした食感が合わさって、言うなれば洋風の羊羹。もしかしたらこの記事、タイトルを「今すぐデーツを洋酒で煮込め」に変えた方がいいかもしれない。

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冷蔵庫にクリームチーズがあって「僥倖」と思った
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「こんなに美味しい必要はないだろ」と怒りを覚えつつある。これを出してくれるバーがあったら通う。クリームチーズをバターに変えてもさぞ美味しく、さぞ太ることであろう。
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残った液体の方は、洋酒とデーツの香りでほのかに甘いシロップのようになっていた。
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これはもうコーヒーを淹れて
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手元にミルクフォーマーと暇な時間がある方は泡立てていただいて
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こうなるんですな。
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オシャレなカフェの秋限定ドリンクという感じがする。つまりすごくリッチ。

※煮込んでもアルコールが全て飛びきるわけではないため、運転前や妊娠中の方、お子様などはお控えください

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ドライフルーツ酒を飲んでみよう

さて、浸けて数日放置したドライフルーツ酒を試飲してみよう。
一ヶ月以上待たなければいけない果実酒とちがい、ドライフルーツ酒をいつ飲むかは作り手の気分次第なのだ。正直翌日からでも美味しく飲める。

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マンゴーやアプリコットなど、あきらかに生前(?)のすがたに戻っている。
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まずは筆者期待のマンゴーテキーラ。

浸けたてはテキーラの香りが強く、不安に思っていたが、数日経った今はしっかりマンゴーの香りがして嬉しい。それぞれの香りが複雑な調和を生み出していて、なんだかすごく高級な酒な気がする。

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見よ、この黄金色を。

一口飲んだ感想→「危ない」。
南国のフルーツの風味とテキーラのスパイシーさ、合いすぎる。マンゴーの甘さがテキーラにしっかり染み出して、「絶対そんなはずないのに異様に飲みやすい酒」になっている。
テキーラを吸ってシャキシャキの食感になったマンゴーも、筆者としては顔がニヤついてしまうほど美味しいが、インパクトの強いアルコールを感じるため(当たり前だ)お酒に弱い方は要注意。
しばらくノンアルコールの液体に浸けておくといい感じに酒が抜けるため、炭酸水等で割る時に一緒に入れておいて、最後にいただくのが良いだろう。

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個人的にはロックを推したいが、ジンジャーエール割り、フルーツジュース割りでも美味しくいただける。
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続いてイチジクラム。

香りの第一印象としては、黒糖や餡子に近い。先ほどのデーツといい、ダークラム×ドライフルーツ=餡子なのだろうか?

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飲んだ感じは、「このままで美味しい」というより「何かの材料としての美味しさ」。

ラムはサトウキビ原料のため、元からある程度甘い酒だが、ドライフルーツを浸けると酒というよりシロップの印象が強くなる。

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つまり、こんな感じでヨーグルトにかけると、たちまちスイーツの完成だ。

甘さが足りないときは蜂蜜を足すと良い。ヨーグルトのまろやかさが際立って、チーズのような印象になる。とても贅沢な味がして美味しいのだが、並みのカクテルよりも度数が強いため要注意(ダークラムとデーツよろしく鍋で煮込めば、ただのシロップとして美味しいレシピになるのかもしれない)。
ドリンクとして飲む場合は、ソーダ割りや、牛乳割りがおすすめ。

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見た目からして異質なプルーンブランデー。

「これって洋酒漬けじゃなくてシロップ漬けだっけ?」というテクスチャになっていた。
プルーンの甘酸っぱい香りをしっかりと感じるものの、黒蜜のような濃密さが食欲を煽る。

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煽ったのはそっちだぞ!と憤りつつ一口飲んでみる

だいぶ酸っぱい。こちらも酒というより、プルーン味の美味しいシロップ(度数30オーバー)といったところ。

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つまり、バニラアイスにかけると酸味と甘みの調和がとれるってわけ。

これがものすごく美味しかった。
バニラアイス、牛乳などといっしょにブレンダーにかけ、大人のフラペチーノ状態にして飲むのもいいだろう。

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これも筆者期待の組み合わせ、アプリコットアマレット。必殺技の名前みたいですね。

アマレットそのものの香りはほぼ杏仁豆腐だが、果肉が入ったことでジューシーになった。

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酒としてかなり美味しい!

アプリコットのフルーツ感と、リキュールの甘さがいいバランス。他の酒群と比べてアルコールが低め(といっても28度)なため、このままでも飲めるが、炭酸やお茶割りが美味しそうだ。

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特筆すべきがこの果肉

梅酒の梅のアプリコット版という感じ。正直、ドライのアプリコットはあまり好きな味ではなかったのだが、この状態のアプリコットは何個でも食べたくなってしまう。
クリームチーズを探しに行ったら、数日前の自分が空にしていた。おのれ。

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最後にダークホース、バナナウイスキー。

匂いはバナナが入ったパウンドケーキのようで、美味しそうだ。ココナッツオイルの香りもふんわり漂ってくる。

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怖々と味わってみた

これは……一体なんだ?例えて言うなら「異様に高アルコールのフルーツグラノーラ」。
不味くはないが、何を飲んでいるのかわからない。頭の中の引き出しのどこにも分類できなくて、とりあえず床に置いて散らかるタイプの味だ。

見た目は柔らかそうな果肉も、元の甘さが強くないためか、「もきゅもきゅした食感を持つ何か」になっていた。
カップラーメンの麺は一度揚げることによって小さな気泡をつくり、お湯を吸い込みやすくさせるらしいが、おそらくこのバナナも大量のウイスキーを吸っていることであろう。

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チョコバナナ…と唱えながらチョコレートアイスに載せてみた

アイスクリームが酒に負けている。今回作った他のなによりも強烈なアルコールを感じるし、「決して何とも馴れ合わないぜ」というバナナの強い意志を感じる。
筆者は特別な訓練(※)を受けているため完食したが、一度鍋で煮てから召し上がっていただいた方がいいかもしれない。

(※)…日々の飲酒


組み合わせを考えるだけでちょっとしたエンタメ

今回ドライフルーツ果実酒5種類と、デーツのおいしい何らかを作ってみたが、結果は

酒として美味しい…マンゴーテキーラ、アプリコットアマレット
シロップみたいになってしまう…イチジクダークラム、プルーンブランデー
お前は一体何なんだ…バナナウイスキー

であった。
おそらくデーツも酒に漬けると「シロップみたいになってしまう」カテゴリなのだろう。
もちろん今回試していないドライフルーツと酒の組み合わせでも、果実酒を仕込むことができる。
ステイホームで新しい趣味を探している方は、冬に向けてドライフルーツ果実酒を仕込んでみるのはいかがだろうか。

<お酒は二十歳になってから>

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