特集 2023年12月25日

コイを捕まえるところからイラク名物のマスグーフを作りたい

憧れのマスグーフをみんなで作りました。

メソポタミアが産んだイラクの名物料理、マスグーフに憧れている。別名コイの円盤焼き。背開きにしたコイを丸ごと焼くらしいのだが、焼いたコイっておいしいのだろうか。気にはなるけど中東は遠い。

猟師をしている友人のアリサさん(父親がイラン人)と、あれ一度作ってみたいよね~と話していたら、仕事で年の半分は中東に行っている斉藤さんという料理好きの方をお招きして、マスグーフを作る会を開催してくれた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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まずは川にコイを捕まえに行く

マスグーフに必要なのは、もちろん新鮮なコイである。その辺の魚屋ではあまり売られていないので、アリサさんがわざわざ池袋の中華食材店で生きたコイを購入してくれることになった。

でもどうせなら捕まえて食べたいよね~ということで、希望者は午前中に網を持って集合。

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この日は12月なのに気温が20度以上あったので寒くはなかった。

アリサさんが事前にコイが溜まっている場所を調べてくれていたのだが、数日前に大雨が降った影響なのか、そこには一匹もいなかった。これは自然が相手なので仕方がない。

きっと下流に流されたのだろうとゴミ拾いをしながら川を下っていくと、コイらしき魚影が水中に消えていくのを目撃。少し深い場所だったので、先発隊が陸路から下流に先回りをして、川が細く浅くなっている場所で待ち伏せ。そこに追い込むという作戦が決行された。

私はコイを追う係として、バシャバシャと適当に網を振り回していたのだが、川を逆走してきたコイが私の網にドスンと突っ込んできてネットイン。思わぬ形で無事に天然のコイを捕まえたのだった。

なんだか二年分くらいの運を使ってしまった気がする出来事だった。

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「え?」って思った。
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立派なコイが捕れた!超うれしい!

こうして捕まえたコイを持参して斉藤さんと合流したのだが、現地では養殖の丸々したコイを使うそうで、野生魚のマスグーフは食べたことがないと喜んでくれた。

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上の二匹が池袋で買ってきた養殖のコイ、下が捕まえたコイ。
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コイを背開きにする

斉藤さんが現地で学んできたシリアの家庭料理を同時進行で習いつつ、イラクの名物料理であるマスグーフをみんなで作っていく。その会場はイラン人を父に持つアリサさんの家という平和な空間。戦争反対。

マスフーグの作り方は至ってシンプル。生きたコイを背開きにして、内蔵をとって、塩を強めにして、しっかりと焼くだけだ。

現地では、ちょっとしたご馳走としてマスグーフ専門店で食べることもあるし、開かれたコイを買ってきてバーベキューのように屋外で焼くことも多いとか。

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音大を卒業し、青年海外協力隊としてシリア赴任などを経て、現在はNPO職員としてイラクの医療支援に関わっている斉藤亮平さん
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気絶させたコイの鱗をとらずに、そのまま背開きにして、内蔵を抜く。
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身側に強めの塩を振っておく。一匹はトルコのサルチャという発酵トマトペーストを使ったタレが塗られた。
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ものすごく旨味が濃いサルチャ。
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大きな魚を直火で焼くのは難しい

マスグーフの理想形は、地面の上で焚火をして、その近くに開いたコイを立てる方式だろうか。だがその環境を用意するのはなかなか難しい。

そこで今回は専門店スタイルではなく家庭料理版として、バーベキュー台を使った焼き網式でチャレンジとなった。このサイズの焼き台が家にあるというのもすごい話だが。

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火持ちの良い広葉樹の薪を燃やす。

鱗がついたままの皮側を下にして(皮は食べない)、直火で焼くことで煙の香りを纏わせるのがポイントと思われるが、さすがに火の勢いが強すぎる。

すでにすっかり日は暮れているので、程よい熾火になるのを待ってなんかいられない。コイを捕まえるところからやっているのでお腹はペコペコだ。

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いくら鱗のついた皮でも、さすがにこれだと焦げそうかな。

どうしたもんかとみんなで相談した結果、網を立てた状態で無理矢理固定して、火にかざすように焼くという、より本場感のある焼き方が導き出された。ナイス皆さんのDIYセンス。

こういう行き当たりばったりの試行錯誤が一番楽しい。

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囲炉裏でアユでも焼くかのように、火に立てかけられた背開きのコイ。
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しかもこの方法なら4匹同時に焼けるという大きなメリットもあった。
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シリアの家庭料理も習いました

焼けるまでかなり時間が掛かりそうなので、先に斉藤さんが作ってくれたシリアの家庭料理をいただく。

どれもまったく知らない料理だったが、不思議と懐かしく感じる味だった。これもまた詳細をレポートしたいけれど、長くなるのでいつか別の機会にて。

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まだ青い麦の皮をローストして乾燥させた、香ばしい香りがするフリーケ。スーパーフードとして注目されているらしい。
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ギーで炒めたフリーケを鶏のスープで炊いたもの。トンブリとか蕎麦の実とかハタハタの卵を思わせるプチプチした食感がおもしろい。素揚げしたアーモンドのトッピングが現地流。
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中東でよく食べられるという乾燥モロヘイヤ。
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同じくギーで炒めて鶏のスープで煮込み、スパイスなどで味付けをしたもの。生のモロヘイヤでは出せない奥深い味だ。
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細いパスタを油で揚げて、湯取りしたバスマティライスと混ぜて、おこげができるまで再加熱した、ダブル炭水化物のそばめし的な料理。二つの食感がとても合う。
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モロヘイヤにレモンをギュッと絞って、このライスと一緒に食べると最高。

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