今度は全区役所の中をじっくり鑑賞したいぞ
今回は、外観を眺めるために通りすぎるだけで終わったが、おそらく、建物の中に入ってじっくりいろいろと見て回れば、もっと面白いものがありそうだ。区役所の建物それ自体にも、いろいろと事情もあったりして、なかなかおもしろい。
次はもっと時間をかけてめぐりたい。
東京には23の特別区があるが、これらの区役所を1日で全部回ることはできるだろうか?
東京23区の区役所は、それぞれどんな建物なのか。知っているようでよく知らない。
ふつう、役所の用事といえば、出張所や支所に行けば事足りることが多いので、自分が住んでいる区の区役所本庁舎にさえ行ったことがないという人もおおいかもしれない。
まだ見ぬ区役所はどんな形をしているのか……みてみたい。区役所といっても、23区内をぐるぐる回るだけだから、1日で回れるんじゃないか。
公共交通機関を使うと23区すべてをまわるのはちょっと無理そうだけれど、バイクだったら余裕で行けるのではないだろうか。
さて、23区の区役所をめぐるにあたって、次のルールを決めた。
① 日の出から日没ぐらいの明るいうちに回る。
② 区役所の建物の写真を撮る。
③ 区役所の看板と一緒にセルフィーする。
④ 引き返して同じ道を走るのは最低限にする
ということにした。
季節は冬。しかも、冬至という昼間の時間がもっともすくない時期に①のルールはなかなかきびしいものがあるが、まあしかたがない。
ルート検索アプリで全23区の区役所をピックアップし、それぞれつなげてみたところ、だいたい8時間でまわれるとはじき出した。8時間ならば、朝の6時ごろからスタートして、夕方の5時ごろまでかければ11時間もあるからじゅうぶんだろう。
中央区役所をスタートし、隣の江東区役所から、ゲートブリッジで東京湾を越えて大田区に突入、そこから、品川、目黒をまわって、世田谷から環七にそって江戸川までグルっまわり、そこから西に向かって墨田、荒川などを経て都心の豊島、新宿、渋谷、港あたりをまわって、最後の千代田区役所まで、おおよそ8時間である。
出発当日、家でグダグダしているうちに、すでに時刻は7時をこえた。
すっかり日は高く明るくなっていたけれど「まあ8時間もあるし、中央区役所までうちから10分もかからないからな」と、たらたらと出発の準備をしつつ、8時前に出発した。
土曜日だったので、区役所は閉まっていた。といっても、区役所に記念スタンプなどがあるわけではないので、やはり建物の写真を撮るぐらいしかすることはない。
この中央区役所は、1969(昭和44)年に完成した建物で、窓ガラスよりも茶色い壁が目立つ重厚で渋い作りの建物だ。近々建て替えするとかしないとかいう話がある。
さて、ここまでですでに8時50分ごろである。
ここではたと気づく。これって1日で回るのはむりじゃないか……と。
なぜなら、区役所に到着して、バイクを停めるところを探し、バイクを停めてヘルメットを外し、手袋を外してアクションカメラとナビアプリを一時停止して、写真を撮れる場所を探したうえに何枚か撮影して、周辺にあるものをいくつか撮影して、終わったらまたヘルメットかぶって、カメラとナビアプリを起動して、手袋はめて発進……していると、ひと区役所での撮影はどうしても20分はかかってしまう。頑張っても15分はかかる。
ということは、23区分の区役所の撮影を15分で終わらせても、それだけで345分。つまり、5時間45分もかかる計算になる。もし、トイレに行ったり、ボーッとしたりして30分かけていたら、11時間30分もかかる。
え、なにこれ。バイクで走る時間より時間がかかるじゃん。
あくまで区役所に「全部行く」のが目的なので、タイムアタックが目的ではない。無理して事故を起こしたりするよりも安全を優先したい。ええ歳こいて、ふざけたうえに交通事故なんか起こしたくない。
というわけで「1日で」というのは早々にあきらめた。
中央区役所の次に、江東区役所。そしてわざわざゲートブリッジをこえて大田区役所へ向かった。
おそらく、このツーリングでは街の中をトロトロ走ることになると思うので、せめて最初だけでも見晴らしの良いところを走りたいということで、わざとゲートブリッジを通過するルートを組んだ。
ゲートブリッジの眺めは最高だったけれども、数分で終わった。そして、大田区役所は蒲田駅前の入り組んだ場所にある。
大田区役所は、もともと駅前の商業ビルとして建設された建物が、バブル崩壊で計画が頓挫し、無人ビルとなっていたところを、大田区が購入して区役所にしたものだ。
したがって、ビルの外観が、新宿の都庁舎だとか、恵比寿ガーデンプレイスみたいな、20世紀末(90年代)に建てられた建物の雰囲気によく似ている。
なお、目黒区役所も、元々は千代田生命の本社ビルだった建物を使っている。村野藤吾設計のめちゃくちゃかっこいい建物だ。
目黒区役所については、前に実際に行ってレポートしているが、すこしだけ中の様子をふりかえってみよう。
目黒区役所は、かなりこだわって建てられているので、中も見どころ十分である。
これ以降、最後に行った千代田区まで、一挙にまとめて見てみたい。
豊島区、渋谷区、文京区、墨田区などは高層ビルに建て替えしているところが多く、写真を撮るのに難儀した。
一方、個人的には荒川区、新宿区、葛飾区、中央区、目黒区などのレトロモダンな建物の区庁舎がかっこよかった。
とくに荒川区の区役所は緩やかに湾曲し、どっしりしている。いかにも「役所」といった堂々とした雰囲気がたまらない。
数年前まで高層ビルに建てかわるまえの渋谷区役所も、ゆるやかにカーブしたなかなかいい感じの建物だったようなきがするが、今は高層ビルのシュッとした建物になってしまった。
なお、世田谷区の区庁舎も良かったけれど、これは現在解体工事中であった。おそらく、このかっこいい建物はもうすぐ見られなくなってしまう。
新宿区役所は、歌舞伎町の無料案内所だとか、個室ビデオの店舗があふれる街の中に突然存在しており、ゴッサムシティ感がすごい。
こういったバリバリの風俗街の中に立地する区役所は、他にはなかなかないのではないか。
葛飾区は、葛飾区議会の真っ白な建物が印象的な建物だ。低層の住宅街の中に突然ぬっと真っ白い箱のような建物が現れるので、なかなかおもしろい。
雰囲気としてはジャングルの中にあるボロブドゥールみたいな感じである。ボロブドゥール行ったことないからわからないけれど。
本庁舎は、緩やかな階段を登った先にあり、いかにも昭和の庁舎建築といった形でたまらない。
葛飾区役所の中には、取材でいちど入ったことがあるけれど、区役所の中に「葛飾区指定金融機関派出所」というこち亀の正式タイトルみたいな派出所があった。
初日は、中央区役所から練馬区役所まで行って、6時頃までかかった。1日目は板橋区役所から墨田区役所までで、そして3日目は荒川区役所から千代田区役所まで行った。
区役所の滞在時間もさることながら、幹線道路の渋滞もかなり時間をとられた。
おそらく、区役所での滞在を必要最小限にして、もうちょっと日の長い夏場の、お盆のような車がすくない時期にぐるっとまわれば、1日でいけなくもないのではないか。
とにかく、区役所ごとに、どんなことをどんなふうにやるのかによって、1日でまわれるかまわれないかのわかれめになるだろう。
今回は、外観を眺めるために通りすぎるだけで終わったが、おそらく、建物の中に入ってじっくりいろいろと見て回れば、もっと面白いものがありそうだ。区役所の建物それ自体にも、いろいろと事情もあったりして、なかなかおもしろい。
次はもっと時間をかけてめぐりたい。
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