いざ注文
高校時代からの友達を呼び出した。

やってきたのは池袋のしゃぶしゃぶ温野菜。

注文はタッチパネルから。
そしてお目当ては…
こちらの梅たんしゃぶ。赤い出汁が特徴的だ。美味しそう。いや、もう美味しい。見るからに美味しくなる要素しかないからだ。しかも名前に『極み◯◯』とか『本◯◯』とか付いてると、よりナイスな雰囲気に見える。
加藤「梅たんしゃぶは期間限定だけど、2色鍋にできるみたい。」
佐伯「じゃあそうしよう。」
2つ選べますと言われたらそうするしかない。逆にこういう時に1種類だけで良しとする人はすごい。強い武士道精神の持ち主と言えるだろう。
佐伯「で、これってどういう注文システムなのかな。こういうの理解するの苦手なんだよね…。」
わたしも加藤も、しゃぶしゃぶ温野菜は初めて来る店。しかも注文するのは食べ放題。気軽に立ち寄れるチェーン店と言えど、私は緊張していた。
頭にクエスチョンマークを浮かべながらタッチパネルを無造作にスライドしていると、紙のメニュー表を一瞥した加藤が落ち着いた調子で言った。
加藤「はい。完全にわかった。」
佐伯「早い!すごい!」
すかさずタッチパネルの主導権を加藤に献上する。数多の飲食店を渡り歩くことで鍛え上げられた勘を発揮し、流れるようにパネルを操作する加藤。
慌てて記事のために事の流れを書き留めようとメモの準備をするわたし。メモ帳を開き、ペンを握った時には、既に注文は完了していた。
加藤「あー、〆のうどん美味しそー。でも中華麺もいいよね。それはそれとして米も食べたい。全部いくか。」
初手の注文が届く前から〆の話。揺るぎない胃への自信を感じる。
そういえば6年前に加藤と福岡に行ってもつ鍋を食べたときも、メニュー表を見るなり『〆は明太雑炊にする?ちゃんぽんにする?』と問われた気がする。友達の良いところが変わっていない喜びを噛みしめる。
梅たんしゃぶは春の味
加藤「来た来た。」
佐伯「火鍋と梅たんしゃぶのハーフ&ハーフ!」
梅たんしゃぶコースオリジナルの野菜の盛り合わせと共に、鍋が登場。
この勾玉みたいな鍋、本物は初めて見る。まさに外食の鍋って感じでテンションが上がる。
『この波型の仕切りがいいよな。真っ直ぐじゃないのがイケてるぜ…』なんて思いながら、わたしがノロノロと写真を撮っている間に、加藤はドサドサと鍋に具材を投入する。
あっというまにスタンバイ完了
気になる梅の鍋のお味だが…今この瞬間、春が来たかと思った。爽やかな梅の出汁と具材のケールの相性も素晴らしい。何故ケール?と思っていたが、なるほど、美味しいからか…(当たり前)。タンをケールで包むことも忘れ、無心で食べてしまった。
あと、別個で付いてきたこの梅のタレが美味しい。
大根おろしと梅ソースを和えたもので、これを付けるとさっぱりした味で肉のボリューム感がゼロになる。食べれば食べるほどお腹が空く味だ。
加藤「具材珍しっ。何これ。」
佐伯「それは紅芯大根と金美人参を細長く切ったやつみたい。」
加藤「芋づる式で取れちゃうから、もう一気に全部食べちゃうわ。」
佐伯「味はどう?」
加藤「そりゃ美味しいよね。」
佐伯「もう全部美味しいのかもしれない。」
佐伯「もう片方のやつは火鍋だよね。火鍋って初めて食べる。キムチ鍋とは何が違うの?」
加藤「火鍋の方がもっと香辛料とかが入ったスパイシーな感じかも。でもここの火鍋は結構優しめだね。」
佐伯「火鍋初心者的にはかなり食べやすくてうれしい!」
爽やかな梅タンしゃぶと、コクのある味わいの火鍋。この二者間を反復横跳びすることで、それぞれの良さが際立ち、箸のスピードが上がる。