食べ放題はエンターテインメント
あれよあれよという間に、注文した品で机が埋まっていく。食べ物がどんどん運ばれてくるのって、それだけでエンターテインメントだ。
しかも気付いたらオプションの薬味まで用意されていてびっくりした。
一味唐辛子・大根おろし・ポン酢・万能ねぎ
飲食店にある薬味類って誰が頼むんだろうと思ってたんだけど、そうか、こういう人が…。
佐伯「この黒い器は何?」
加藤「蒸した芋。塩辛乗ってるやつ。」
佐伯「鍋の食べ放題で芋…?!」
加藤「芋好きだから。」
加藤に限ったことではないが、食に前向きな人は芋が好きというイメージがある。
わたしは小食なので芋にさして興味がない。なんなら、最近までは苦手だった。
芋は、噛む度に口の中でモコモコと膨らむ。次第にそのモコモコは喉元まで侵略して、息が止まりそうになる。その感じが怖い。以前そういうことを言ったら、『芋は喉に詰まらせてナンボ』と言われた。『相容れない』と思ったが、それ以降芋に対する苦手意識は薄くなった。
猛烈なスピードで鍋の中の具材が入れ替わる。マロニーを大量投入した辺りから、水位も明らかに下がっている。慌てて追加の出汁を注文した。1人だったらだしの追加注文なんて絶対しなかっただろう。
佐伯「そう言えば、梅たんしゃぶの汁、意外と赤くないね。」
加藤「それ、多分あれだよ。赤い色素の発生源であろう紅芯大根とかを私が早々に全部食べたからかも。」
佐伯「回転率が速すぎたんだ、美味すぎるあまり…。」

つくづく思うが、少食の人間が大食いの人間とつるむメリットはあるが、逆はない。

しかも、個人的な観測上、少食の周りには少食が集まる傾向にあると思われるため、わたしにとってこのような大食漢の友人は唯一無二で感謝してもしきれない存在なのである。
佐伯「それ何食べてるの?」
加藤「芋。」
佐伯「また芋頼んだの?!」
加藤「うん。でもちょっとお腹いっぱいになってきた。」
佐伯「じゃあそろそろ〆入る?」
加藤「そうだね…でもわたし、限界来てからゾーン入るタイプだから心配しないでね。」
佐伯「スポ根みたい。」