ジップロックを経由するということ
とんでもないことに気がついてしまった。お菓子の中身を一旦ジップロックに入れ、ジップロックから取り出して食べると、微妙な気持ちになれる。
普段われわれはお菓子を食べるとき、お菓子ごとに用意されたパッケージからお菓子を食べる。パッケージはお菓子の保存だけでなく、ビジュアル面でお菓子を美味しそうに見せる役割を持つ。
一方ジップロックはどうだろう。ジップロックはお菓子の保存の役割は果たすが、ビジュアル面で美味しさを向上させることはない。パッケージから取り出して食べるのとジップロックから取り出して食べるのでは「袋から取り出して、食べる」という行動は同じはずなのに、美味しさが確実に違うのだ。
大丈夫ですか
大丈夫ですか?ついて来られていますでしょうか。今回はいろんなお菓子を、ジップロックを経由して食べてみるという企画です。
ここから実験が始まる。買ってきたお菓子を一種類ずつジップロックに入れ、取り出し、食べる。夢のような企画だ。なんて素晴らしい企画を思いついたんだろう。
ここから一気に14品を試し、評価していく。
【Case 1】ベビースターラーメン。
まずはベビースターラーメン。美味しいけどすぐこぼれるので、みんなも保存するときはジップロックに入れればよいと思う。
んー。なんかいつもと違う。いつもよりボソボソする。ふだんベビースターラーメンを食べるとき、僕はほとんどノールックで食べているのだが、ジップロックの場合は透明なのであの縮れた麺をずっと見ながら食べることになる。すると食感がいつもよりボソボソする。
あと、取り出し方も変わってくる。ふだんは手のひらで受けて食べるが、ジップロックの場合はわざわざつかみにいって食べる。すると、触感でもボソボソ感を感じることになる。
ベビースターラーメン
背徳感 |
★★★☆☆ |
工場っぽさ |
★★☆☆☆ |
原型のわからなさ |
★☆☆☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★☆☆ |
今回はジップロックでお菓子を食べるときの「微妙な気持ち」を「背徳感」「工場っぽさ」「原型のわからなさ」という謎の3軸に分解し、評価していく。
皆さん本当に大丈夫ですか。僕は大丈夫です。今回の記事はこういうのがあと13個続きます。
【Case 2】果汁グミ
果汁グミにはジップロックのような密閉機構が最初から存在する。そのため、果汁グミをわざわざジップロックに入れて保存する事態は現実では全く起こりようがないのだが、物は試しである。
なんかね、こっちを見ている気がするんですよ。食べられる前のつぶつぶのグミたちがこっちを見ている。ジップロックを経由すると、グミたちの視線を感じながら食べなければいけない。
食感もなんかいつもよりぼてっとして、美味しさが欠ける気がする
果汁グミ(ぶどう)
背徳感 |
★★★★☆ |
工場っぽさ |
★★★★☆ |
原型のわからなさ |
★☆☆☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★★☆ |
これは微妙な気持ちがとても高い。今回の記事はこのような「モヤっと感」を特に掘り下げもせず淡々と実況していく。楽しいですね。
【Case 3】これは大変。クッピーラムネ
次はクッピーラムネ。僕はこのお菓子が本当に好きで、昔も今もよく食べている。人生で1万粒くらい食べていると思う。
しかしこれが、大変なことになってしまう。
押収された何かでしょうか。いいえ、違います。間違いなくクッピーラムネだ。しかし、どう見ても警視庁24時でよく見る何かに似ている。これは大変なことだ。
クッピーラムネ
背徳感 |
★★★★★ |
工場っぽさ |
★★★☆☆ |
原型のわからなさ |
★★★★☆ |
微妙な気持ち |
★★★★☆ |
背徳感がMAXである。こんなことがあって良いのか。
ただ、普通に便利な側面もあって、ジップロックは透明なので僕の好きないちご味だけを狙って取り出すことができる。でも結局いちご以外の味を最後にまとめて食べることになるので便利でもなんでもないな。
【Case 4】フエラムネ
ラムネ系は総じて見た目がやばいと思う。フエラムネはどうなるだろう。
どうでしょう。フエラムネ in ジップロック。これは完全にトローチだ。喉が痛い時になめるやつ。ただ、元々のパッケージの時点でむき出しになっているので、ふだんとのギャップは少ない。
フエラムネ
背徳感 |
★★★☆☆ |
工場っぽさ |
★★★☆☆ |
原型のわからなさ |
★★★☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★☆☆ |
フエラムネはジップロックに入れると見た目がトローチになったので警視庁24時っぽさはそこまでなかった。みんなも安心してジップロックに入れればいいと思う。
【Case 5】じゃがりこ
次はじゃがりこ。
じゃがりこのパッケージは保存が難しい構造なのでジップロックは普通に便利だと思う。
じゃがりこの、見てはいけない姿を見てしまったようだ。ぞわぞわする。筒型に均等に収められていたじゃがりこが、完全にだめになっている。仕事を終え、リビングでくつろいでいるじゃがりこたち。あふれ出る実家感。微妙さを超えて愛おしさすら感じる。ジップロックはじゃがりこの印象をこんなにも変えてしまうのか。
じゃがりこはジップロックに入れると取り出しにくくなる。じゃがりこが筒状の箱に入っているのはなぜか。取り出しやすくするためだ。一個一個が垂直方向に立っているのでつまみやすい。ところが、ジップロックを経由すると方向がばらばらになってしまう。なんて取り出しにくいんだ。
そして、取り出しにくいと微妙な気持ちになる。「次から次へと止まらなくなる」というじゃがりこの良さを打ち消してしまうからだ。
じゃがりこ(サラダ味)
背徳感 |
★★★☆☆ |
工場っぽさ |
★★★★★ |
原型のわからなさ |
★★★★☆ |
微妙な気持ち |
★★★★★ |
ついに★5つが出た。やった!微妙な気持ちが増してうれしい。
【Case 6】そろそろビールを飲ませてほしい
大人の悪い癖で、じゃがりこを食べているとビールが飲みたくなる。そもそもさっきからお菓子ばっかり食べているのだ。そろそろビールを飲ませてほしい。
飲みにくいし、泡の立ち方も悪い。ジップロックはビールを飲むために作られていない。でもジップロックでフタをすれば炭酸が抜けにくいとは思う。
ビール(Asahi)
背徳感 |
★★★★★ |
工場っぽさ |
★☆☆☆☆ |
原型のわからなさ |
★☆☆☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★☆☆ |
味は少しだけまろやかになる気がした。全然お勧めできないけど。
【Case 7】ミニおやつカルパス
ビールを解禁したのでしばらくおつまみ系が続きます。
これはね、普通にある。ジップロックに入れても何の違和感もない。カルパスはパッケージが透明なことが多いので、ビジュアルのギャップが少ないのだと思う。ジップロックに入ったカルパスを見ても、「ああ、カルパスだな」としか思わない。
ミニおやつカルパス
背徳感 |
★☆☆☆☆ |
工場っぽさ |
★☆☆☆☆ |
原型のわからなさ |
★☆☆☆☆ |
微妙な気持ち |
★☆☆☆☆ |
この状態でピクニックに出かけて、ジップロックから取り出してボリボリ食べたい。
【Case 8】蒲焼さん太郎
おつまみ系が続きます。ビールがまだ残っているので。
ビジュアルが無骨すぎて笑ってしまう。すごいぞ蒲焼さん太郎。ジップロックに入れてもイメージは変わらず、蒲焼さん太郎がただただ存在し続ける。
蒲焼さん太郎
背徳感 |
★★☆☆☆ |
工場っぽさ |
★★★☆☆ |
原型のわからなさ |
★☆☆☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★☆☆ |
ジップロックに入れても普段のイメージとのギャップはないが、工場っぽさがやや増す。無骨さとは、工場っぽさのことだと思う。
【Case 9】カラムーチョホットチリ味
おつまみばっかりでごめんなさい
カラムーチョは保存しにくいので、ジップロックは大変有用だと思う。それはさておき、このビジュアル、乾燥した人参っぽくて全然辛そうに見えない。カラムーチョのパッケージがここまで刺激的なのは、食べる人に少しでも辛そうな印象を与えるためだと思う。
カラムーチョ ホットチリ味
背徳感 |
★★★☆☆ |
工場っぽさ |
★★★★☆ |
原型のわからなさ |
★★★☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★★☆ |
食べたらまあまあ辛かった。それでもビジュアルのインパクトに欠けるぶん、 いつもより辛いという気持ちが入ってこない気がする。
【Case 10】にんじんホップライス
これ昔よく食べたけどいまでもあるんだなあ。わかりますか。
にんじんが完全に消滅した。ただのホップライスだ。ジップロックに入れると植物のタネのようなビジュアルになる。
にんじんホップライス
背徳感 |
★★★★☆ |
工場っぽさ |
★★★★☆ |
原型のわからなさ |
★★★★☆ |
微妙な気持ち |
★★★★☆ |
パッケージに依存しすぎるとジップロックの圧勝になってしまう。
【Case 11】ココアシガレット
子供が少し背伸びをして大人のような気持ちになれるお菓子。
チョークだ。これは完全にチョークだ。またしてもジップロックの圧勝である。パッケージがいかに重要かを思い知らされる。
ココアシガレット
背徳感 |
★★★☆☆ |
工場っぽさ |
★★★☆☆ |
原型のわからなさ |
★★★★☆ |
微妙な気持ち |
★★☆☆☆ |
そもそも元々のパッケージでもタバコを食べている気持ちになるわけではなかった。ジップロックに入れることでチョークの見た目になったとしても、微妙な気持ちは少ない。
【Case 12】タマゴボーロ
赤ちゃんでも食べやすいタマゴボーロ。これをジップロックに入れるとどうなるか。
なんだか、ビジュアルがディストピアの食事だと思った。味覚を失った人間たちが、ただ栄養を摂るためだけに食事をするようになる世界。
きりんさんといぬさんが居ないだけでこんなにも印象が変わるとは。ジップロックは保存機能しか提供せず、中身を無機質に見せる。
タマゴボーロ
背徳感 |
★★★☆☆ |
工場っぽさ |
★★★★★ |
原型のわからなさ |
★☆☆☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★★☆ |
これは大人のタマゴボーロだ。きりんさんといぬさんはもう居ない。
【Case 13】たけのこの里
記事が長くなってきたのであと2個にします。
ああこれは死んでいるなと思った。ジップロックの中のたけのこは死んでいる。たけのこ派でありながら、たけのこを殺してしまった。ジップロックは罪深い。
たけのこの里
背徳感 |
★★★★★ |
工場っぽさ |
★★★★★ |
原型のわからなさ |
★★★☆☆ |
微妙な気持ち |
★★★★★ |
ジップロックの中のたけのこはもはやグロテスクであった。パッケージと比べて何が違うのかと言うと、「里」がないのだ。里という組織が解体され、魂を抜かれバラバラになったたけのこがそこに存在した。
【Case 14】最高に微妙な気持ちになれるお菓子を見つけた
最後に、今回最高に微妙な気持ちになれるお菓子を見つけたので紹介する。
これをジップロックに入れると…
部品だ。電子工作の部品だ。電解コンデンサーの上のほうに付いているやつ。これはもはや部品をジップロックに入れて持ち歩いている人だ。
ジップロックに入れたらチョコベビーのビジュアルが食べ物ではなくなった。部品のように見えるものを食べると微妙な気持ちになる。
チョコベビー
背徳感 |
★★★★★ |
工場っぽさ |
★★★★★★★★★★ |
原型のわからなさ |
★★★★★ |
微妙な気持ち |
★★★★★ |
部品なので工場っぽさが5段階の限界を突破した。
結論。パッケージは素晴らしい
今回ジップロックに入れて微妙な気持ちになったということは、それだけパッケージがお菓子の美味しさに寄与しているということである。これは悪いことではなく、むしろ素晴らしいことだと思う。お菓子を楽しむということは、パッケージを見て、お菓子を手で触って、口に入れて、味わって、食べるということだ。視覚、触感、食感、味覚の全てがお菓子の楽しさに関わっている。
あえてパッケージを無くした姿を味わうことで、食品会社がパッケージのイラストや形状にどれほどこだわっているのかが見えてきた。どんなに美味しくても、パッケージをちゃんとしないとお菓子はチョークや部品になってしまう。パッケージは素晴らしい。