広告企画 2024年7月25日

シラフのまま酩酊した気分になれるバーチャル・バー~メタバ―スの端っこ探訪

ある文化が成熟期を迎えたときに、決まって出現するものがある。それが、個人の作ったフリーダムすぎるコンテンツだ。

ネットの黎明期にテキストサイトが流行ったように、いまメタバ―スには野放図かつ初期衝動にあふれた創作物がたくさんある、らしい。

このシリーズでは、有識者をナビゲーターに迎えて、そんな「メタバ―スの端っこ」を体験しに行きます。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

前の記事:モリンガ茶が梅昆布茶味、東京ドームは四角い ~ 今週の「これすごくない?」

> 個人サイト デイリーポータルZ

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ナビゲーター
田中 創一朗

メタバースサービス「Roblox」に詳しい有識者。GeekOut株式会社 代表取締役。デイリーポータルZとは長い付き合い。
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体験する人
安藤 昌教

デイリーポータルZライター。ゲームはずっと初心者。暇さえあれば外を走っています
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筆者
石川 大樹

デイリーポータルZ編集。インディーゲームが好き。ネットのジャンクコンテンツが好き。
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左、安藤。右、田中さん。「走るの趣味なんですけど、辛いだけなんですよ(安藤)」「僕も山登りするんですけど、しんどくて(田中)」と謎の愚痴を言い合いながらの1枚。

 

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子供にめちゃくちゃ人気のメタバース

メタバ―スとは、ネット上のバーチャルな三次元空間のこと。数あるメタバ―スの中から、このシリーズではRobloxというサービスを紹介していく。

Robloxは「ゲーム版YouTube」とも言われる。ユーザー数が3億人くらいいて、メインのユーザー層は13歳前後。たくさんのエクスペリエンス(ゲームやチャット空間)があり、それらのうち大半はユーザーが作ったものだ。

なお、前回までのウェブマスター林さんに変わって、今回からはライター安藤さんがゲームを体験する。安藤さんには事前に自分の分身であるアバターを作ってきてもらった。

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安藤さんのアバター

石川:イルカ?

安藤:サメですね。

石川:あ、サメか。

安藤:サメとドラゴンズが好きなんで。

石川:ドラゴンズの帽子なんてアイテムあったんだ。

安藤:違うんじゃないかな。青いキャップがあったからそれ使いました。

石川:雰囲気ドラゴンズ。

 

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シラフでも飲んだ気になれるバーチャル・バー

田中:弊社広報の伊藤がバーテンダーの経歴があるんですよ。今日はRobloxのバーで皆さんをおもてなしします。

安藤:バー?ゲームじゃなくて?

田中:[Drinks!] On Tapというワールドです。大人の空間で、17歳以上で年齢確認してないと入れないんです。

石川:そんなのもあるんですね。

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ほんとにバーだった

安藤:これは何ができるんですか?

田中:酒が飲めます。このテーブルに座りましょうか。

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椅子に座るサメ

バーの中はけっこう広くて、バーカウンターもあればこういうテーブル席もある。
その中でいろんなプレーヤーが思い思いに過ごしている。歩き回るとほうぼうからいろんな言語のボイスチャットの声が聞こえて、妙な臨場感がある。まるで海外旅行先で現地のバーに来たみたいだ。

 

伊藤:ビールどうぞ。

安藤:(受け取って)サメがビール持った!飲酒できるの?

田中:クリックすると飲めますよ。

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飲酒するサメ

安藤:ははは、飲んでる。かわいい!

 

アバターは人型もいればこういう動物だったり、モノみたいなアバターもいる。どんな変なアバターを使っても、こういう細かいアクションがそれなりにそれっぽく動くのが、Robloxの地味にすごいところだと思う。

ちなみにお酒はかなりいろんな種類があるようで、ものによってアルコールの強さも違う。強さはどこに影響するかというと……

 

田中:左下に酔いのゲージがあって、飲むと上がっていきます。

安藤:おお、ほんとだ。あー酔っぱらった酔っぱらった。

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(これはあとで別の場所で撮ったものですが)酔っぱらうとこんなふうに画面がゆらゆらし始めて
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最終的に意識を失って暗転します。

伊藤:はい、おかわりどうぞ。

安藤:あーなんか揺れてる。なにこれ!

伊藤:すごい酔っぱらってますよ(笑)

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酔っぱらってテーブルに乗り始める安藤さん(プレーヤー本人はシラフです)

安藤:なんかテーブル乗っかっちゃってるんだけど!
サメ、酩酊じゃないですか。なにこれ楽しい…。

 

自分は一滴も飲んでないのに酔っぱらった気分になれる。下戸の方にもおすすめのバーチャル飲み屋である。

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全員シラフです

 

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ケンカが始まる

伊藤:あっ、酔ってケンカが始まりましたよ。

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そうこうしているうちに後ろで乱闘が始まった。名前の下に表示されているゲージがHP。

安藤:(吹き飛ばされて)いて!叩かれたよ、いま!

石川:安藤さんがケンカに巻き込まれた。

田中:治安、悪(笑)

安藤:やめて!なんかボコボコにされてるんだけど!怖い怖い怖い
……あれ、なんか出たよ。

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「警察が到着し、乱闘が中断しました」

田中:ポリスが来ましたね。

石川:鎮圧された(笑)

安藤:すげーなこのゲーム。

 

こんな治安の悪いところで飲みたくない!という人は、実はバー内はものすごく広大なので、もっと人の少ないところに行って飲むこともできる。

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ここは大水槽の前で飲める部屋。同族のサメが泳ぐのを見ながら飲む酒はどんな味なのだろうか。
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奥のほうにあるビーチのバー。バーテンのカピバラ兄弟はNPC(※)ではなく、これもどこかの国から来ているプレーヤー。

※NPC…人が操作していない、ゲーム内に固定でいるキャラ

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労働は有料

石川:他の人にお酒を出すこともできるんですか?

伊藤:ドリンク作るにはロバックス(Robloxのゲーム内通貨)が必要なんです。

石川:働くのにお金払うの?価値が逆ですね。

田中:伊藤さん、かなりやりこんでるよね。

安藤:どういうときにやるんですか?趣味?

伊藤:そうですね。休日の午後3時ぐらいに、なんか何もやる気が起きないな~っていう時に入って、お酒作るんです。外国の大人たちの会話聞きながら。

 

前述したようにRobloxはローティーンのユーザーも多いサービスだが、このワールドは年齢制限がかかっているため、17歳以上しかいない。みんなわりと大人なのである。ワチャワチャしすぎず、休日の午後を浪費するにはちょうどいいテンションなのかもしれない。

そしてこのワールド、コミュニケーションをとるためのボイスチャットツールとしてもよくできている。

 

田中:ボイスチャットで会話もできるし、デバイスのインカメラに対応してて、アバターの表情を同期させることもできます。

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伊藤さんの表情と同期するアバター

安藤:すごい。

石川:VTuberみたいになってる!

安藤:これは友達誘っていっしょに喋ったりもできるんですか?

田中:ここでたまにケンカに巻き込まれたりしながら飲んでもいいし、知り合いだけが入れるプライベートサーバも作れますよ。

 

コロナの時にZoom飲み会とか流行ったけど、なんか画面上で格子状にならんだ人たちを一覧しながら飲むのはちょっと違和感があった。
むしろこういうツールを使って遊びながら、オンラインでお酒を飲むのがよかったのではないかな、と今になって思うのだ。

 

安藤:これは日曜日の午後にやったら出てこれなくなるかもしれないな。
いま、ゲームってこんなことになってるんですか。こういうところでソーシャル的に繋がるのがが楽しいっていうことなのかな。

田中:そうですね。Robloxって、ゲームとソーシャル的な交流機能の区別があんまりないんです。ここは交流する場所とか、ここはゲームする場所っていうのはあんまりなくて、交流しながら同じ場所でゲームもやって……っていう感じで。

安藤:やばい、めちゃくちゃ面白い。 出てこれなくなりました。

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素でめちゃくちゃ楽しんでいる安藤さん

 

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おまけの1本:世界を食べるゲーム

田中:もう1本ついでに紹介したいのが、Eat the World
わりと新しいゲームではあるんですけど、Robloxにおけるクラシックスタイルというか、「昔のRoblox」を感じさせるゲームです。

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レゴっぽいゲーム空間

安藤:おーなんだこれ、マイクラみたいじゃないですか。

田中:クリックすると床を持ち上げて、食べます。それをひたすら繰り返して大きくなる。

安藤:どんどん食べていけばいいんですか。

田中:はい、どんどんなんでも食べて。

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床を食べる安藤(左)。右の人はたくさん床を食べたからデカイ

石川:食べるとアバターが育っていくんですか?

田中:そうです。もっとデカくなると、他のプレイヤーも食べられまする。

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すごいデカい人がいる(左の派手な服のプレーヤー)

安藤:デカい!怖い!

石川:プリミティブな感想(笑)

 

いま収録時の録音を聞きながらこの原稿をまとめているのだが、話し声以上に4人のクリック音がカチカチカチカチと室内に響き渡っている。決して黙っているわけではなく談笑しながらプレイしているわけだが、しかしそれをなお上回る連打ぶりなのだ。

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カチカチカチカチカチカチカチカチカチ……

田中:これはクリッカーゲーム的な要素があって、たくさん食べると画面下のカウントが増えていくんです。最大になったら売ってください。

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メーターがMAXまで溜まったところ。

キャラの大きさはこのメーターの数字で決まる。

最初はメーターの最大値が小さいので、たくさん食べてもあまり大きくなれない。そしてMAXまで溜まった数字を売ると、キャラが小さく戻るかわりに、メーターの最大値が増えるのだ。これを繰り返してどんどん大きくなっていく。

 

石川:これやってると、「巨大になりたい」っていう、本来ない願望が呼び起こされますね。

安藤:うわ、なんかでかい人がいる。うわーでかいぞこいつは。

田中:でか!

石川:みんな「でか」しか言わなくなってしまった(笑)
これほんとずっとやってしまいますね。数字が増える系のはゲームはやばい。

安藤:今日帰りの電車でやっちゃう。

石川:ほんとに。一生やっちゃう。一生やります。

収録を終えて

田中:最近思いついたんですけど、デイリーポータルZにしてもYoutuberにしても、「やってみた」っていうコンテンツじゃないですか。コーラにメントス入れてみたとか、むかないで食べてみたとか。それを見て、自分もやってみようかなって思う人がでてきたり。

安藤:うん

田中:でもRobloxって、「やってみて」だと思うんです。「コーラにメントス入れられるワールド作っときました!」みたいな。
「むかないでバナナ食べるワールド作っときました!」って。

安藤:それってゲームじゃないですよね。

田中:ゲームじゃない。なんていうかわかんないけど、新しい表現方法。
だから今のZ世代がバナナをむかずに食べてみて、「あ、食べれるな」って思ったら、動画じゃなくてRobloxワールドを作るっていう選択肢があるんだなって。

安藤:その選択肢は新しいな。

田中:おもしろい世の中になったなって思うんです。

この連載は月2回くらいで続きます。次回もお楽しみに!

 

メタバ―スの端っこ探訪

メタバ―スサービス「Roblox」にある変わったワールドを訪ねるシリーズです。

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