田中 創一朗
メタバースサービス「Roblox」に詳しい有識者。GeekOut株式会社 代表取締役。デイリーポータルZとは長い付き合い。
林 雄司
デイリーポータルZ編集長。トラックのシミュレーションゲームで走った場所をGoogleストリートビューで見るのが好き。
石川 大樹
デイリーポータルZ編集。インディーゲームが好き。ネットのジャンクコンテンツが好き。
子供にめちゃくちゃ人気のメタバース
メタバースとは、ネット上のバーチャルな三次元空間のこと。数あるメタバースの中から、このシリーズではRobloxというサービスを紹介していく。
Robloxは「ゲーム版YouTube」とも言われる。ユーザー数が3億人くらいいて、メインのユーザー層は13歳前後。たくさんのエクスペリエンス(ゲームやチャット空間)があり、それらのうち大半はユーザーが作ったもの。
なお、今回は石川のスマホが熱くなりすぎて落ちたため、林さんにプレイを任せ、ガヤに回らせていただいております。
田中:今回はなにしようかな……洗濯しますか。
石川:洗濯……?
田中:僕の好きなゲームなんですけど、これです。
林:ははは。ランドリー・シミュレーター!
空港の手荷物受取所みたいなベルトコンベアに、大量の洗濯物が流れている。我々の知っているコインランドリーとは少し違う世界観のようだ。
林:これはどこなんですか。どういう世界なんですか(笑)
田中:洗濯屋なんですよ。とりあえず自分の洗濯機を確保して、そしたら洗濯物を取って入れていきます。
林:(クリックしながら)こう?
田中:そうです。で、自分の洗濯機に持っていって洗うんです。
田中さんはこのゲームを結構やり込んでいるので(洗濯を…??)、いい洗濯機をたくさん持っている。一方でデフォルト状態の林さんは……
林:錆びた洗濯機がありますけど。
田中:林さんの洗濯機はそれです。
石川:ははは、ボロッボロ。
田中:最初はそういう弱い洗濯機からです。洗濯をするとコインがもらえるのでアップグレードできるんです。
もらったコインでカゴをアップグレードするのか、洗濯機をアップグレードするのかが戦略性らしい。
カゴをアップグレードすると持ち運べるアイテムの量が増え、洗濯機をアップグレードすると一度に洗える量が増えたり、洗濯が速くなったりするという。どっちにしろ働かされることに変わりはない。
ゲームというか、完全に労働である。でもそれがバーチャルになっただけで、なんか楽しい気がしてくるから不思議だ。と思いきや……。
田中:課金すると洗濯物を自動で集めてくれたりするんですよ。
働くのが楽しいのかと思ったら、今度はそれをやらなくていいように課金するというのである。なんなんだこの世界は……!
しかし個人的には、洗濯の中でいちばん面倒な、「たたむ」工程がないのが良いと思う。現実でも、こんな壁の穴に入れて終わりだったら洗濯は辛くないのではないか。
コズミック洗濯物
田中:たまに外に車がやってきて、洗濯物置いていくんですよ。
林:客ってこと?ここは白洋舎みたいな店なんだ。
田中:中には光ってる洗濯物もあって、これがポイント高い。
林:これいいゲームですね。おもしろい。
田中:Robloxにはこういう働く系がいっぱいあるんです。ピザ屋とか、ガソリンスタンドとか。
石川:林さんこういう労働系のゲーム大好きですよね。
林:家で最近、高圧洗浄機で掃除するゲームやってるんですよ。
田中:あと、ブラックホール呼べるんですけどやってみます?
林、石川:????
石川:コズミック・サファイヤ・タオル(笑)
田中:ブラックホールやると、このサーバー全体にコズミック洗濯物が流れてくるんです。
石川:これを洗うと儲かる?
田中:儲かります。
林:アイテム使った人以外も拾えるんですか?
田中:もちろんです。フィーバータイムみたいな感じです。祭りが始まる。
課金しないとブラックホールは出せないから、出すとほかのユーザーから「ありがとう!!」ってすごい感謝されますね。
あと核もあって。
林:核?
石川:ニュークリア・サファイヤ・シャツ(笑)。世界観が全然わからない
アイテム収集系のロールプレイングゲームだと、武器にいろんな称号が重ねがけされて「ポイズナス・ファストアタック・ラストプルーフ・ドラゴンスレイヤー・ファルシオン」みたいな感じでどんどん長い名前になっていくことがある。それが洗濯物に起こっているのである。
パワーインフレの世界観とおしごとゲームの交差点、それがランドリー・シミュレーターなのであった。
猫ミーム・スタジオ
もうひとつおまけで、流行りのネットミームに乗っかったコンテンツも紹介してくれたので軽くだけご紹介しよう。
田中:猫ミーム・ロールプレイ。日本の若者が作ったワールドです。猫ミームになれます。
林:猫ミーム、インスタのリールでほぼ毎日見てますよ。
猫ミームは、猫の画像にしゃべらせてエピソードを語る動画のこと。去年くらいからTiktok等の動画系のSNSで流行り出した。
ここでは自分のアバターをあの猫に変えることで、猫ミームの世界に入り込むことができる。遊び方は自由だが、一機能として撮影セットが用意されていて、演劇を演じるような感じで猫ミーム動画を撮影することもできる。
ここで動いたりセリフをしゃべっているところを、Robloxの録画機能やデバイスのキャプチャ機能を使って録画することで、簡単に猫ミーム動画を作ることができるのだ。
何人かで練習して作り込んだ動画を作ることもできるだろうし、即興で遊んでも楽しそうだ。
小学生の頃に親のビデオカメラを借りて、公園で友達とコント(未満の「ふざけ」)を撮っていた時のことを思い出した。途中から通りがかった別の友達が混じってきたりして楽しかった。
実はここでも、遊んでいる最中、スタジオに猫ミームの猫になりきった知らない人が混じってきて、そこで新しい即興ストーリーが生まれそうな予感があった。
動画編集ツールとして使えてしかもソーシャルでもあるという奇妙な世界。でもそこに、他にはない面白さがあると思う。
収録を終えて
林:洗濯ものすごい良かった。
田中:あれついやっちゃうんです。
林:ピザのもあるんでしたっけ?
田中:レジ係と焼く人と配達と分かれていて。
石川:分業する系は楽しそうですね。連係プレーとか生まれて。
田中:前に怒られましたよ。「ちゃんとやらないんだったら来なくていい」みたいな。
林:うちの近所のピザ屋もそんな感じだったな。ヴァーチャルじゃないピザ屋ほんとのピザ屋だけど。
石川:ははは。嫌すぎる。
この連載は月2回くらいで続きます。次回もお楽しみに!
メタバースの端っこ探訪
メタバースサービス「Roblox」にある変わったワールドを訪ねるシリーズです。
- #001 アメリカの学生の思い出が生んだ、全部盛りのヴァーチャル回転寿司屋
- #002 ブラックホールを呼んでコズミック洗濯物を洗う、労働系洗濯ゲーム
- #003 シラフのまま酩酊した気分になれるバーチャル・バー
- #004 指がつる!強制参加のハードすぎる連続陸上競技ゲーム
- #005 ピザ屋のバイトで豪邸を建てるゲーム vs 猫になって飼い主の家を壊すゲーム