特集 2024年7月3日

ハーフカメラって何?なにがそんなに面白いの?

ハーフカメラって何?

こんど新しく発売されるフィルムカメラは「ハーフカメラ」なのだという。

今の時代、「ハーフって何?」「どういうこと?」と思った人も多いのではないか。

ハーフカメラファンとして、ここはひとつ説明させていただきたい。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:裏にこだわる(デジタルリマスター)

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

ハーフカメラとは

「ハーフ」というのは半分という意味だ。

マヨネーズのハーフはカロリーが半分だし、ハーフパンツは裾の長さが半分なのである。

ではカメラにおけるハーフとはなにか。それはフィルムのサイズがハーフ、つまり半分ということだ。

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これは何十年も前に出たオリンパスのハーフカメラ
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こうやって一般的なフィルムを入れますが
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写る写真は一般的なサイズの半分(ハーフ)なんです(シャッターが開くと真ん中の四角い枠に光が当たって写真が撮れます)

一般的なカメラは36×24mmの横長サイズで撮影されるが、ハーフサイズだとこれを縦に二分割して、半分の17×24mmで撮ることができる。

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これは一般的なカメラ。36×24mmの横長の長方形の写真が撮れる。ハーフカメラはこれを真ん中で分割した17×24mmの縦長の長方形の写真が撮れる

フィルムの使用量が半分(ハーフ)なので、枚数は倍撮れる。つまり36枚撮りのフィルムを入れたら72枚撮れることになるのだ。

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たくさん撮れすぎるので現像に出すときには「ハーフで撮りました」と断った方がいいです。お店によっては現像料金が違うこともあるので

僕はこの昔ながらのハーフカメラが好きで、今でもたまに持ち出して写真を撮っている。

ハーフ(半分)で撮った写真を一コマ分に引き伸ばしてプリントすることもできるし、分割したまま2枚を1コマとしてプリントすることもできる。なんというか、フィルムを無理やりかつスマートに節約している感じが面白いのだ。

ハーフカメラが何なのか、おわかりいただけただろうか。それを踏まえて聞いてほしい。

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新しくハーフカメラが出た!

先日、ペンタックス17という新しいフィルムカメラが発表された。

今時フィルムカメラの新作かよ!という驚きと共に、僕らカメラファンが目を疑ったのは、このカメラがハーフカメラだったことだ。

名前に付けられた「17」という数字はハーフサイズの17×24mmから来ているのではないだろうか(正式には17の意味はアナウンスされていないと思う)。

これは熱い。すでに忘れられた存在だったハーフカメラが、数十年の時を経て復活したのである。

値段を見たら9000円とかそのくらいだったので値段も当時のハーフカメラに合わせたの!と泣きそうになったのだけれど、涙を拭いてよく見たら9万円だった(今見たら10万円超えていた)。

現代なんだからまあそこはしかたがないのかもしれない。

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ちなみによく「フルサイズ」と言われるデジカメは36×24mmのフィルムのサイズを踏襲しています

最近は写真好きの間でフィルムカメラがまた流行りだしているらしいのだけれど、そもそもフィルム自体が高いので撮りたくてもなかなか気軽に撮れなかった。

となると倍の枚数が撮れるハーフカメラの登場は今の世の中に合っているのかもしれない。

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上が一般的なフィルムカメラで撮ったネガ。下がハーフカメラで撮ったネガ。一コマが半分のサイズであることがわかる

いやどうだろう。

じつは正直、伝わらないんじゃないかとも思っている。だって写真のサイズが半分になっただけでしょう、と。そんなのデジカメなら設定一つで変えられるじゃん、と。言われてしまえばそれまでである。

それでも僕自身、わざわざハーフカメラで写真を撮っている理由を考えてみた。

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ハーフカメラの好きなところ① たくさん撮れる

ハーフカメラは36枚撮りのフィルムを入れると倍の72枚撮ることができる。72枚を撮り終えるのにはそこそこ時間がかかるのだ。僕はだいたい一ヶ月に1本くらいのペースで撮っている。

するとどうなるのか。現像して戻ってきたフィルムには直近一ヶ月分の日常が詰まっているのだ。一ヶ月分の自分の興味を、並べてざらっと眺められるのはとても面白い。

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一ヶ月分の「写真を撮るほど気になった景色」が並んでいます

デジカメ全盛の世の中で「倍の枚数撮れます!」というのがどれほどの意味を持つのかはわからない。

しかしである。

32ギガのメモリーで2000枚撮れた写真が64ギガだと4000枚撮れます!って言われてもいまいちどうでもいいが、36枚が72枚になるというのは大きな意味があるのではないか。

つまりフィルムカメラにおける残り枚数というのは、今そこにある実態を持った危機なのである。ハーフカメラはそれを解消してくれる。

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ハーフカメラの好きなところ② 縦写真が撮れる

ハーフカメラは普通に構えると縦長の写真が撮れる。

もちろんカメラごと横に倒して撮れば横向きの写真になるのだけれど、このファインダーをのぞいたときの縦長が、なんとも新鮮で面白いのだ。

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ファインダーをのぞくとすでに縦長です
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いまだとスマホが縦長なので、むしろ縦長の写真の方が違和感なかったりしますかね
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ハーフカメラの好きなところ③ カメラ本体が安い

ハーフカメラは昭和の時代に大流行したので、その時のカメラが中古市場に大量に出回っているのだ。昔からある家ならば物置を探せば一つくらい見つかるかもしれない。

中古カメラ屋さんやフリマアプリにもたくさん出ていて、こだわらなければ5000円とか1万円くらいでちゃんと使えるハーフカメラを買うことができる。

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電池を使わない機械式のカメラが多いので古くても使えるものが多い。もちろん壊れているものも多いので、不安な人は整備されているものを買おう
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上のハーフカメラで撮った写真。古くてもちゃんと写るし、スマホ写真とはまた違った良さがある
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ハーフカメラの好きなところ④ 小さくて可愛い

カメラを可愛いとか言い出したらもうかなり進んでいると思った方がいいが、実際ハーフカメラは小さくて可愛いのだ。ついいろいろ集めてしまう。

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これはレンズが交換できるタイプのハーフカメラ。リコーのゼンマイ式のハーフカメラも家のどこかにある気がするんだけど見つけられませんでした
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しっかり写るけど、たまに光が入って変な色になったり
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暗すぎてザラザラになったりします。これもまたフィルムカメラの面白さ

そもそもこうしてハーフカメラについて説明できるのも、ペンタックスが新しくフィルムカメラを発売してくれたおかげだと思っている。

なにより、いつフィルムがお店からなくなって撮れなくなるのか、びくびくしながらフィルムカメラを使っていた僕たちに、一つの希望を与えてくれた功績は大きいのです。

これでまたしばらくハーフカメラを使い続けられます。 


結局ただ好きなだけ

いろいろ書いたが、写真を撮るならスマホで十分、というのはもはや間違いないと思う。わざわざフィルムで、しかもハーフカメラで撮る意味がどこにあるのか。

それはただ単に「好きだから」、それだけの話だと思う。さんざん書いた挙句がそれかよ、と思われるかもしれないが、試しに一度フィルムで撮ってみてください、面白いからさ。

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さらに小さいカメラもあるにはあるけど、ここまで行くと小さすぎて使いにくいので、やはりハーフくらいがちょうどいいのです
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