結局ただ好きなだけ
いろいろ書いたが、写真を撮るならスマホで十分、というのはもはや間違いないと思う。わざわざフィルムで、しかもハーフカメラで撮る意味がどこにあるのか。
それはただ単に「好きだから」、それだけの話だと思う。さんざん書いた挙句がそれかよ、と思われるかもしれないが、試しに一度フィルムで撮ってみてください、面白いからさ。
こんど新しく発売されるフィルムカメラは「ハーフカメラ」なのだという。
今の時代、「ハーフって何?」「どういうこと?」と思った人も多いのではないか。
ハーフカメラファンとして、ここはひとつ説明させていただきたい。
「ハーフ」というのは半分という意味だ。
マヨネーズのハーフはカロリーが半分だし、ハーフパンツは裾の長さが半分なのである。
ではカメラにおけるハーフとはなにか。それはフィルムのサイズがハーフ、つまり半分ということだ。
一般的なカメラは36×24mmの横長サイズで撮影されるが、ハーフサイズだとこれを縦に二分割して、半分の17×24mmで撮ることができる。
フィルムの使用量が半分(ハーフ)なので、枚数は倍撮れる。つまり36枚撮りのフィルムを入れたら72枚撮れることになるのだ。
僕はこの昔ながらのハーフカメラが好きで、今でもたまに持ち出して写真を撮っている。
ハーフ(半分)で撮った写真を一コマ分に引き伸ばしてプリントすることもできるし、分割したまま2枚を1コマとしてプリントすることもできる。なんというか、フィルムを無理やりかつスマートに節約している感じが面白いのだ。
ハーフカメラが何なのか、おわかりいただけただろうか。それを踏まえて聞いてほしい。
先日、ペンタックス17という新しいフィルムカメラが発表された。
今時フィルムカメラの新作かよ!という驚きと共に、僕らカメラファンが目を疑ったのは、このカメラがハーフカメラだったことだ。
名前に付けられた「17」という数字はハーフサイズの17×24mmから来ているのではないだろうか(正式には17の意味はアナウンスされていないと思う)。
これは熱い。すでに忘れられた存在だったハーフカメラが、数十年の時を経て復活したのである。
値段を見たら9000円とかそのくらいだったので値段も当時のハーフカメラに合わせたの!と泣きそうになったのだけれど、涙を拭いてよく見たら9万円だった(今見たら10万円超えていた)。
現代なんだからまあそこはしかたがないのかもしれない。
最近は写真好きの間でフィルムカメラがまた流行りだしているらしいのだけれど、そもそもフィルム自体が高いので撮りたくてもなかなか気軽に撮れなかった。
となると倍の枚数が撮れるハーフカメラの登場は今の世の中に合っているのかもしれない。
いやどうだろう。
じつは正直、伝わらないんじゃないかとも思っている。だって写真のサイズが半分になっただけでしょう、と。そんなのデジカメなら設定一つで変えられるじゃん、と。言われてしまえばそれまでである。
それでも僕自身、わざわざハーフカメラで写真を撮っている理由を考えてみた。
ハーフカメラは36枚撮りのフィルムを入れると倍の72枚撮ることができる。72枚を撮り終えるのにはそこそこ時間がかかるのだ。僕はだいたい一ヶ月に1本くらいのペースで撮っている。
するとどうなるのか。現像して戻ってきたフィルムには直近一ヶ月分の日常が詰まっているのだ。一ヶ月分の自分の興味を、並べてざらっと眺められるのはとても面白い。
デジカメ全盛の世の中で「倍の枚数撮れます!」というのがどれほどの意味を持つのかはわからない。
しかしである。
32ギガのメモリーで2000枚撮れた写真が64ギガだと4000枚撮れます!って言われてもいまいちどうでもいいが、36枚が72枚になるというのは大きな意味があるのではないか。
つまりフィルムカメラにおける残り枚数というのは、今そこにある実態を持った危機なのである。ハーフカメラはそれを解消してくれる。
ハーフカメラは普通に構えると縦長の写真が撮れる。
もちろんカメラごと横に倒して撮れば横向きの写真になるのだけれど、このファインダーをのぞいたときの縦長が、なんとも新鮮で面白いのだ。
ハーフカメラは昭和の時代に大流行したので、その時のカメラが中古市場に大量に出回っているのだ。昔からある家ならば物置を探せば一つくらい見つかるかもしれない。
中古カメラ屋さんやフリマアプリにもたくさん出ていて、こだわらなければ5000円とか1万円くらいでちゃんと使えるハーフカメラを買うことができる。
カメラを可愛いとか言い出したらもうかなり進んでいると思った方がいいが、実際ハーフカメラは小さくて可愛いのだ。ついいろいろ集めてしまう。
そもそもこうしてハーフカメラについて説明できるのも、ペンタックスが新しくフィルムカメラを発売してくれたおかげだと思っている。
なにより、いつフィルムがお店からなくなって撮れなくなるのか、びくびくしながらフィルムカメラを使っていた僕たちに、一つの希望を与えてくれた功績は大きいのです。
これでまたしばらくハーフカメラを使い続けられます。
いろいろ書いたが、写真を撮るならスマホで十分、というのはもはや間違いないと思う。わざわざフィルムで、しかもハーフカメラで撮る意味がどこにあるのか。
それはただ単に「好きだから」、それだけの話だと思う。さんざん書いた挙句がそれかよ、と思われるかもしれないが、試しに一度フィルムで撮ってみてください、面白いからさ。
これがペンタックスの新製品 PENTAX17
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