知らない果物はおもしろい
中華街には他にもドリアンとか龍眼とか、日本ではあまりなじみのない果物が売られていて面白い。中でも生ライチはとにかく食べるとびっくりするし、今しか食べられないらしいので見つけたら食べてみてください。
横浜の中華街で見つけた「生ライチ」が、今まで食べていたライチとはまったくの別物と言っていいほど美味しかったんです。
生ライチ、今の時期しか食べられないらしいですよ。
ライター江ノ島くん、月餅さんと横浜の中華街を歩いていたときのことである。
ふとのぞいたお店に「生ライチ」が売られていたのだ。
僕はライチが好きで、食べ放題の焼肉屋さんなんかで見つけると喜んで食べていたのだけれど、あれだって生のライチじゃなかったのか。
お店の人に聞いたところ、生ライチはこの時期(5月下旬から6月にかけて)にしか入荷しない、冷凍ものとはまったく違うライチなのだとか。
ーーよく売られているライチとは違うんですか?
「ぜんぜん違うよ!生ライチが食べられるのはこの時期だけ!王さまの奥さんが好きだったやつね(楊貴妃のこと?)」
ーー冷凍してないってこと?
「それもだけど、この時期のライチは種が小さくて果肉が厚いのね。生ライチは先週入ってきて、私だいすきでもうたくさん食べちゃった」
ーー入荷するのはこの時期だけなんですか?
「そう、生ライチは一ヶ月くらいで終わっちゃう」
今まで僕が焼肉屋さんで食べていたのは、冷凍で輸入されたものを解凍したものらしかった。ぜんぜん違うと言われたら気になる。
とはいえ今の冷凍技術である、生とそんなに味の違いがあるとも思えないのだけれど。
とにかく生ライチを買って、近くの公園でみんなで食べてみることにした。
生ライチはほんのり赤味がさした山吹色をしていた。皮のままでもほんのりと、甘い花みたいな香りがする。本当は冷やした方がより美味しいらしいが、このままでも剥いて食べられるらしい。
生ライチを食べた江ノ島くんの動きが止まった。
「安藤さん、これ、ぜんぜん違いますよ」
月餅さんは生ライチ経験者だった。それどころかすでに生ライチにハマっていて、今月、これを食べたくて台湾に行くことになっているらしい。
僕はいまだ半信半疑のままひとつ食べてみた。
確かにぜんぜん違う。ぜんぜん違うじゃん!
まず食感からして驚く。プリっと弾力のある果実の部分がすごく分厚くて、月餅さんが言うように種が小さい。そして噛むと「いのち!」みたいなおいしい甘い汁が口の中にこぼれ出てくるのだ。しかも香りが強い。南の国のお花みたいな、甘くて豊かな香りがする。
月餅さんがこれを食べたくて台湾まで行く気持ちもわかる。焼肉屋さんで食べるあのライチも好きだけど、生ライチはまったく別の食べ物と考えた方がいい。
江ノ島くんが買ったマンゴスチンも食べてみることにした。お店の人によると、殻のような皮を剥くとみかんみたいな房に分かれていて、その中の一つだけに種が入っているのだという。聞いただけではさっぱり意味のわからない構造体である。
厚い皮の中から現れたマンゴスチンは、クリームみたいにやわらかかった。これをつるっと吸い込むようにして口に入れると、爽やかな甘酸っぱさを残したあと、溶けて消えていく。
これはまたこれまでに食べたことのない、何にも例えられない食感と味である。
三人で話し合った結果、スモモが熟して甘くなるとこんな感じになるのでは、という結論に達した。
食感はスモモよりもずっとトロトロで、本当に例えようがないのだが、斬新なパティシエが作った生マカロン、みたいな感じか。そして確かに房の中に一つだけ控えめに種が入っていてさらに謎だった。
中華街には他にもドリアンとか龍眼とか、日本ではあまりなじみのない果物が売られていて面白い。中でも生ライチはとにかく食べるとびっくりするし、今しか食べられないらしいので見つけたら食べてみてください。
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