特集 2023年7月19日

マーブルガムやフィリックスガムを作った会社に聞く「歴史」「ガム離れ」「チャッピー」のこと

子どものころ、「マーブルガム」を一気に口に入れたかった。あの紙の箱から、4粒の丸いガムたちを口にザーッと入れたかった。

もう大人なので、その夢はいつでも叶う。というか、今でもあの時のままマーブルガムが売られている。

これっていつから変わってないんだろう……と思って調べてみたら、1959年の発売開始からだった。64年前……!

その歩みを、作っている会社に全部聞いてきました。

1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

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「6粒アタリ付き」と「4粒アタリなし」

あの「マーブルガム」を作っているのは、名古屋市西区に本社を置く丸川製菓株式会社。創業は明治21年(1888年)、現在はガム一筋の老舗企業である。

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今回オンラインでお話を伺った、丸川製菓の森さん。着ているTシャツ(グレープ)と後ろのクッション(オレンジ)は、まさに「あのガム」のもの……!

「マーブルガム」の発売は1959年。オレンジ味、イチゴ味、グレープ味は今も現役で販売されている。パッケージを見ただけで味が思い浮かびますね……。

森さん この3つだと、グレープが一番売れていますね。次がオレンジ。3位がいちごです。

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発売されたのはオレンジ味(1959年)、いちご(1972年)、グレープ味(1982年)の順。グレープが一番後輩だけど売上トップ。若手の台頭である(以下、商品画像は丸川製菓株式会社提供)

このマーブルガム、パッケージを見ていただくとわかるように「6粒入り」である。

「昔は4粒入りで、正方形の箱だったような……」という方、ご安心ください。今も「4粒入り」は元気に販売されております。

ただ、「6粒入り」と「4粒入り」には個数以外に大きな違いがある。6粒は「アタリ付き」、4粒は「アタリなし」なのだ。

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こういうことです。ちなみに「6粒入り」が20円、「4粒入り」が15円。

マーブルガムといえば、「当たりが出たらもう1個もらえる」のも大きな特徴。昔は「4粒アタリ付き」でしたよね……?

なんで、アタリ付きとアタリなしに分かれちゃったんですか?

森さん 実は1990年に「6粒アタリ付き」にリニューアルして、4粒入りをやめたんです。ところが、その後コンビニなどで「当たりつきの交換は受け付けない」というところが増えてきまして……。

コンビニチェーンによっては、アイスの当たり棒などの「当たりつき商品」に対応してくれないことがあるのだ。

となると、「6粒アタリ付き」はお店に置いてもらえない。困る。

それならと、丸川製菓は「4粒アタリなし」として4粒入りを復活させた。UFOキャッチャーとかに入っているのも基本的に「4粒アタリなし」である。

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知らないうちにリニューアルして復活していたとは……!

というか、そもそも「アタリ付き」をお店に持っていったとき、お店はどういう処理になるんだろう。

店先に並んでいるものを「はい」ってタダで渡したら、お店が損しません……?

森さん もともとの仕入れ時に「交換用の商品」がサービスで入ってるんですよ。アタリを持ってきたお客さんがいたら、そのサービス分から渡せばいいんですね。当たりの確率は決まっているので、その分を入れてあります。

たとえば30個分を仕入れたら、「30個+2個」みたいな感じでオマケがついてくるイメージである。なるほど。それならお店は損しない。

ということは……オマケの個数を数えたら、当たりの確率が分かるってことじゃないですか。それっていったい、いくつなんですか……?

森さん まぁ、それは夢の部分なので。ご想像にお任せします(笑)

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本当は「四角いガム」を作るはずだった

もともと、丸川製菓はアメや落花生菓子などを製造する菓子メーカーだったという。

戦後、アメリカからチューインガムが入ってきたのをきっかけに、日本全国で数百社がガムに参入。丸川製菓がある愛知県でも70社くらいガムを作り始めた。まさにガムバブルである(フーセンガムだけに)

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現在の丸川製菓本社。そびえる「マルカワのガム」が青空に映える(画像提供:丸川製菓株式会社)

丸川製菓もその波に乗り、最初はブロック状のガムを作っていた(現在のフィリックスガムみたいな形)。

それとは別に、他の形も作ってみることにした。目指したのは長方形の糖衣ガム(今でいうボトル入りのタブレット状ガム)だ。

しかし、これがなかなかうまくいかない。

森さん 機械の都合なのかなんなのか、四角にしたいのに、どうしても丸くなってしまったらしいんですね。「じゃあいっそ丸いガムを作ろう」という逆転の発想から生まれたのが、今の「マーブルガム」なんです。

戦前から和菓子を作ってきた会社である。団子やまんじゅうといった「丸い形」を作るノウハウはあった。むしろそっちのほうが得意だったんじゃないか。

こうして、子どもサイズの小さな丸いガム・マーブルガムが誕生した。オレンジ味4粒で当時1個5円。パッケージも形も今とほとんど変わっていない。

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発売当初のパッケージ。「オレンヂ」という表記に時代を感じるけど、驚くほどそのまんま。(画像提供:丸川製菓株式会社)

変わっていないと言えば、紙箱なのも昔から。

なにせ戦後なので、ビニールもプラスチックも貴重である。「紙箱くらいしかなかったのでは」と森さんは言う。

とはいえ、箱は小さいし、アタリを見破られないよう印刷にも気を使わないといけない。小箱の製造業者ではトップクラスの技術が使われていたそう。

あの小さな箱に大いなる技術が注ぎ込まれていたとは……。

森さん 包装も苦労したみたいですね。のちに包装機械を自社開発するのですが、最初は内職の方が手でガムを詰めていたそうです。おばあさま方が乳母車を押して、会社までガムを取りに来ていたとか。

そのうち、あんなに活況だったガムバブルも弾け、ガムを作る会社がひとつふたつと減っていく。

一方で、マーブルガムは味や形、そして低価格が受けて、全国に広まっていった。

森さん このあたりは昔からお菓子の問屋街があるんです。名古屋独特の「旅問屋」と呼ばれる問屋さんが、日本各地を回って積極的に売っていただきまして、そのおかげで全国に広まっていきました。

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