特集 2024年9月9日

ラマダン明けに食べるハラールマトンラーメンを考える

遠い異国の料理教室やレシピ同人誌を企画している「バングラデシュの家庭料理を食べる会」を主催されている方から、イスラム教徒がラマダン(日の出から日没まで断食するヒジュラ歴の第9月)のとき、日没後に食べる食事「イフタール」を経験するイベントがあり、その一環としてハラール(イスラム法で許されている食事)なラーメンを出しませんかと誘われた。

宗教的なことは一切わからないが、とりあえずおもしろそうなので参加させてもらったら、これまで食べたことのないラーメンが誕生した。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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ハラールラーメンの材料を考える

ということで、ハラールラーメンである。

一般的にラーメンといえば、豚骨や鶏がらをベースとしたスープに、焼豚などの具を乗せたものをイメージするが、イスラム教徒に豚は絶対NGである。

ちょっと調べたところ、他にも牙や爪がある動物(犬・虎・猫など)、キツツキ、フクロウ、タカ、ワシ、ロバ、ラバなどがダメらしいが、そのあたりは使わないので大丈夫。

豚の代わりにイスラムの法に乗っ取って処理された、ハラールマークの付いた牛、鶏、羊などのハラールミートを使うこととなるが、ではどんなラーメンが考えられるだろうか。

まず思い浮かんだのが、豚ではなく牛を使った二郎系ラーメン。名付けて牛二郎である(こちらの記事参照)。これなら食材が牛なので問題なさそうだが、ちょっと気になるのがニンニクの存在だ。

ショウガと共にカレーのベースでよく使われるように、加熱したニンニクがダメということはなさそうだが、祈りの前に生のニンニクを食べてはいけないという話もあるので、イフタールには不向きだろう。

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ニンニクをトッピングしなければ良い話だが、それだとつまらないよね。

 

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以前に埼玉県八潮市にあるハラール屋台村という場所を訪れたが(こちらの記事参照)、そこの成田屋では鶏がらスープのハラールラーメンを出していると伺った。

鶏がらをベースとしたラーメンであれば、これまで何度も作っているので、特に問題なく作れそうだ。

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イスラム教徒向けに日本料理を出す成田屋が出店しているハラール屋台村。
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ラーメンのスープは食材をたくさん使うのがコツだと思う。

なんなら鶏ガラや鶏皮に野菜をたっぷり加えてクリーミーなスープに仕上げた、天下一品風のラーメンを作ることも可能だろう(こちらの記事参照)。

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チャーシューを鶏肉に置き換えればたぶん大丈夫。

意外とハラールラーメンの選択肢が多く、どうしようか迷ってしまった。

ハラールショップで肉を選ぶ

頭の中だけで悩んでいても仕方がないので、埼玉県三郷市にある大型ハラールショップのボンゴバザールにやってきた。

イスラム教徒向けの食材を知ることで、ハラールラーメンの方向性が決まるかもしれない。

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ハラールの食材だけでなく、様々なスパイスやお米なども揃うボンゴバザール。意外とマグロなどの日本人向け商品も安い。

冷凍肉のコーナーを覗くと、「HALAL」と書かれた食材が各種並んでいた。

もちろん豚肉はないけれど、牛、鶏、羊は一通り揃っている。これなら想定していたハラールラーメンがなんでも作り放題である。

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牛二郎に使うハラール牛骨なんてあるのかなと思ったら、手頃なサイズと値段で売られていた。
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もちろん牛肉も各種揃っているし、冷凍ではない肉もいろいろあった。
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骨付きの鶏モモ肉でラーメンを作れば間違いない味となるが、せっかくなら変わった食材で攻めてみたい。
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いっそヤギラーメンで攻めるかとも考えたが、さすがに攻めすぎだろうか。ラマダンのイベントに来るお客さんのほとんどは日本人らしい。
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子羊のラムなら臭みが少ないスープが作れるかも。

肉の並んだ冷凍庫の前で30分くらい固まった結果、自分がこれまでラーメンに使ったことがなく、ラマダンイベントに来るような人を満足させる個性的なスープが作れそうで、値段も手ごろな材料として、「MIX BAKRA」と書かれた骨付きマトン(親羊)を試してみることにした。

ハラールマトンラーメン、まだその完成形をイメージできていないが、きっとおいしくできる気がする。

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マトンのMIX BAKRAに決めた。ボンゴバザールはPADMAという大手ハラール食材流通企業が経営しているので、PADMAブランドの商品が安く買えるのだ。

調味料などもハラールにこだわろう

メインの食材が決まったら、次は調味料である。イスラム教徒は酒類がダメで、それは煮立ててアルコールを飛ばせばいいという話ではないらしい。

そうなると料理酒やみりんは使えない。代わりのものはあるだろうかと商品棚をチェックすると、ハラールのみりん風調味料(甘味調味料)、そして醤油(しかもキッコーマン)が売られていた。

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金額はちょっとお高め。

ハラールなみりん風調味料の存在はわかるとして、わざわざ醤油まであるのはなぜだろうと調べたら、通常の醤油だと醸造過程でアルコール発酵をするからダメらしい。この醤油はわざわざアルコール発酵を抑制した独自製法で作られているのだとか。へー。

日本在住のイスラム教徒が醤油の製造方法まで厳密に気にしているかはわからないが、やはりこれらを使うべきだろうと購入。ハラール醤油の味も気になるし。

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マトンだけだとスープの味が弱かったときのために、ハラールなビーフ(牛脂の甘さと素材を焦がした香ばしさがある)とチキン(香草の風味が特徴的)のスープの素も購入。

ムスリムフレンドリーってなんだろう

イベント当日はハラールラーメン以外にも、希望者にファルーダというインド亜大陸で食べられている麺入りスウィーツ(こちらの記事参照)を出すため、それに使うアイスクリームも確認したところ、よく知っているブランドが「NON HALAL」と「Muslim friendly」の二種類に別れていた。

どうやらNON HALALはハラールではない食品(ハラーム)で、Muslim friendlyはハラールを認証する協会の認定は受けていないけれどイスラムの法に触れない食品ということらしい。ムスリム(イスラム教徒)にフレンドリーということか。

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バニラアイスでいえば、MOWがNON HALALで、ハーゲンダッツやスーパーカップがMuslim friendlyとなっている。

おそらく使っている原材料に豚由来成分や酒精が含まれている可能性の有無(あるいは使っていないとメーカーが公言しているかどうか)によって、その違いがでるのだろう。

このあたりの詳しいルールはよくわからないので、イベント当日はムスリムにフレンドリーなスーパーカップを使うことにした。

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ヨーグルトなどにもNON HALALとMuslim friendlyがあった。厳格に生きるのはなかなか大変そうだ。
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ラーメンといえばうま味調味料。いの一番なら使えるようなので購入。ちなみにマレーシアにはハラールの味の素工場があるらしいよ。

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