開講!国旗講座
というわけで今回はまことに僭越ながら筆者が講師という立場で国旗の話をすることになった。
生徒はライターの西村さん、井上さん、編集部 林さん。頼もしいメンバーである。
〜頼もしいメンバー〜
当日は国旗の本を家から担いでくるほどの国旗好き。小学生時代は消しゴムで国旗のハンコを作っていた。
お子さんが保育園に通ってたころ国旗カルタが流行っていたらしい。自身は詳しくない、とのこと。
国旗エピソードは聞き忘れたけど、大体のことは詳しい。花粉症につき箱ティッシュを持参。
国旗の話をしよう
本日のメニューはこちら。
今回は「知らない国旗でも、色やデザインを見ればある程度どこらへんにある国かわかるようになるよ」という話をしたい。
さっそくですが国旗クイズです
まずは腕試しに国旗クイズをしてみよう。
これ、カタカナの”キ”って書いてありますね。キのつく国かな。
正解だ。すごいチームワークで当ててくる。
答えが出たのは上4つと下段のニュージーランド。
まあでも正確な答えは出ても出なくてもいいのだ、繰り返すが今回は「だいたいここらへんにある国だなー」とわかるようになる、という話。
上に挙げたものはそれぞれ地域の特徴が表れた国旗たち。このあと触れていこう。
デンマークの交差する白い線はなんだ?
最初にデンマークから…なぜこの国の話をはじめにするかというと、このデンマークが最古の国旗と言われてるからです。
ですです、1219年にできたと言われているので、今年でちょうど800周年。
で、この国旗、白い線が縦横に交差しているんですが、これにはどういう意味があるでしょうか??
そう、十字架です!というわけで、最初に「キリスト教と国旗」の話をしていきますー。
そうなのだ、いつもよりちょっとちゃんとがんばった。
十字を使った国旗ってけっこうありまして…例えばこんな具合。
十字がわかりやすいのではスイス。縦横比が1:1の珍しい国旗ですね。
そうだ!さっきのデンマークも実際の縦横比と違いますよね。
そうなんです、国によって縦横の比率ってわりとバラバラで…ただ国連やオリンピックでは2:3で統一してます。
※今回の資料は基本的にはこの2:3の比率にしている
元の比率を辿っても国旗の半数は2:3なんです。次に多いのが1:2。日本は2:3、イギリスなんかは1:2ですね。
比率が同じになってしまうと判別できない国旗とかあるんですよ。モナコとインドネシア。
さっそく脱線してしまった。でも国旗の比率は結構大事な話でもある。
で、十字架の話に戻りますが、あとはギリシャ、ジャマイカとか。
そうなんです、わりと珍しいパターンなんですけどX型十字というタイプ。
カッコいいですよね!実はこの国旗の左上の星、長く伸びている4本の光が十字を表しています。
そうなんです。余談ですけど、この斜めに入っている白とオレンジのラインが赤道。
です、ここが赤道で、我々の国はここ(赤道より少し北)にあるよって。
ジョージア…グルジアと言った方が馴染みがありますかね。※呼称が2015年に変更された
エレーネ・ゲデヴァニシヴィリっていう声に出したいスケート選手がいるんですよ。
ユニオンジャックの話も盛り上がったのだけど、今回テーマが8章まであるので割愛。話したいことがたくさんあるのだ。
話を戻しますと、この左寄りの十字たちを用いた国旗がこちら。
この十字を「スカンジナビア十字」と言います。こういった国旗はこのエリアだけ。
なので、「このデザインを使っていたらヨーロッパの北の方だな!」と判別することができます。
…という具合で、エリアに分けて話をしていきましょう、というのが今回の趣旨です。
そうなんです、全ての国旗のうち約40%とされています。
半数近いんですよね。なかでも最古と言われているのが、オランダ。
元はオレンジ、白、青の3色でしたが、オレンジは海上で色褪せやすいということもありやがて赤に変わります。
サッカーでもオランダのユニフォームと言えばオレンジ色ですからね〜。
ドイツの国旗、黄色の部分って”金色”らしいですね。
あーそうです、ナポレオン軍との戦いの際の軍服の色がモチーフです。
西村さん、生徒というより顧問の先生に近い。すごい安心感だ。
で、横3分割デザインにもルーツがありまして…それがオーストリア。
十字軍に参加したオーストリア公が敵の返り血を浴びて、で、腰のベルトを取ったら服の白が残って、それを旗がわりにした、という話。
オランダ、オーストリアとか、"ふた昔前のいけてる国"の発祥が多いんですね。
歴史がわかると国旗はさらに楽しい。改めて世界史を勉強したくなる。
横3分割があれば縦3分割もあります。中でも人気なのがフランス。
青を右にしないのは船のマストにつけたときに空の色とぶつからないようにって聞いたことあります。
ルーマニアの隣の国ですね。小さい国で、「ルーマニアと仲良くやっているよ」というイメージを持たせるために、同じ色使いにしてるんです。
外交的な意味合いを持たせる国旗もわりと多い。近隣の国旗と似てくるのはこの辺りの力関係が影響しているのだ。
PayPayアプリとビックカメラのアプリが同じデザインなのと似てますね。
ありますね、白・青・赤の3色が”汎スラヴ”と言われ、東欧・中欧(スラヴ)の特徴です。
西村さんがスムーズに話を移行させてくれる。
スラヴ人の統治する国たちが、会議において「白・青・赤を使おうぜ」ということになったんですね。
そう、白・緑・赤なんですけど、この汎スラヴにカウントされるんですよね。一応ロシアを元にした国旗で、「我々は農業すげぇから青を緑にするね」って。
で、ロシアがこの色使いの始まりなんですけど、どこの国に影響を受けたかっていうと、オランダなんです。
ピョートル大帝がオランダへ留学して造船技術とかを学んだ経緯で。
オランダ格好いいーってなって?色を写す順番間違えたんですかね。
「青と赤と白だったんだけどなー!なんだっけなー!」
という具合で、スラヴのように”色で判別できるエリア”というのがあります。
もう二つ例を紹介したいのですが、まずはアフリカ。
緑・黄色・赤を”汎アフリカ色”と呼びます。この組み合わせの国旗がアフリカにはいっぱいあります。
このエチオピアというのがまさにこの3色に影響を与えた国です。 アフリカ唯一、独立を守った国ということで「エチオピアかっけぇ!」と他の国が真似したんですね。
一方で「黒、緑、赤」を汎アフリカ色とする向きもあります。 黒を使う国は多いですね。これは肌の色が由来です。
そうですね、カラシニコフ(AK-47)。武器は国旗では珍しいですね。
こうやって見るとくっきり分かれますよね、西側は緑、黄、赤。旧フランス植民地ですね。
あー、東側、黒の方は旧イギリス植民地だ。国旗をポイントしていくとおもしろいねぇ。
そうなんです、国旗を地図に当てはめていくことで見えてくるものがある。楽しい。
で、アフリカの推し国旗をふたつ紹介させてください。 今のマリはシンプルな3色旗なんですが…マリ連邦だったころはこんな棒人間が。
カナガ、というのですが生命の力強さとか、エスプリを表してるみたいですね。
※「ファミマ入店音」の正式なタイトルは「大盛況」に決まりました https://dailyportalz.jp/kiji/150526193643
続けて、赤、白、黒、緑の4色。これを”汎アラブ色”と呼びます。
あー、確かにここら辺こんな色だ。
これはわからないなー。
影響を受けたのはこの左の「アラブ反乱旗」ですね。オスマン帝国からアラブが反乱を起こした際に用いられた旗です。
4色に分けるとしてこの三角を左に置いたレイアウトって言うのが。
ホントだ!!
で、イスラムに移りますと、さっきキリスト教は十字という話をしましたが、イスラムは三日月と星をシンボルにしている国が多いんです。
へー、イスラム教だったら地域は関係ないんですね。コモロは雨樋…くさり樋みたい。
星をあしらった国旗は多いが理由も様々。
島や州の数を表したり、アフリカなどで多いのは独立を意味するもの、旧ソ連やアジアでは共産主義の象徴だったりする。
この三日月と星、影響受けてるのはかつてのイスラムの強国、オスマン帝国です。
昔国旗のクイズを作ったことがあって、トルコの星の傾きを変えて、本物はどれっていう問題とか出したことありますよ。
という具合で、アラブとイスラムまとめるのは少し雑ですが、マップに起こすとこんな感じ。
アフリカの北とアジアの西の方がだいぶ埋まりますね。
見ての通り左上、カントンの部分がユニオンジャックになっている国旗が多いです。
国旗の位置にはそれぞれ名称がつけられている。
旗竿側(左側)をホイスト、逆の右側をフライ。特に左上部分はカントンと呼ばれる。
カントンのユニオンジャックはかつてイギリスの植民地であり、いまも英連邦に所属している名残ですね。
※英連邦(イギリス連邦):イギリスをトップに置くゆるい国家連邦だ
英連邦は仲良いみたいですね、みんなでクリケット大会したり。独立したから宗主国が憎いのかなと思ったらけっこう仲良い。
ニュージーランドなんかは国旗を変える変えないで話題になってましたよね。
結果的に現状維持となったが、他の国でもユニオンジャックどうすんべという話も出ており、10年、20年後には大きくオセアニアが様変わりしている可能性もありそうだ。
2015年に日本でも承認された国なのだけど、イギリスをデコるわ、背景が珍しい黄色だわ、完全にニューウェーブという感じがする。
でも基本的にはやっぱり青い国旗が多いんですね、島だから海のイメージ。
ですねー。青を多く用いた地域というのがもうひとつあって…
もともと上段の4国+コスタリカの5つは中央アメリカ連邦というひとつの国で、そこが分かれる形で国旗ができたので似てるんですよね。
で、この中米あたりの何が好きかって、立地を抽象化しているのがいいんですよ。
青を用いた国旗は多く、海や川を示しているものが目立つ。色で言うと赤も多い。青も赤も使っていない国旗は10にも満たないのだ。
国旗で世界が少し広がる、気がする
というわけで国旗を地域ごとに追いながら話してきた。冒頭で見せた国旗たちも見え方が少し変わってくるのではないかと思う。
「じゃああの国旗のシンボルにはどういう意味が?」「この色使いは不思議だなー」など疑問がもくもく湧いてきたらそれは”国旗沼”の入り口だ。
ようこそ、みんなでもっと国旗について話をしよう。
国旗は楽しい
長らくここまで読んでいただきありがとうございました。実はこれでも会話の半分くらい泣く泣く削って掲載したものである。
何かしら理由をかこつけてまた国旗の話をさせてほしい。「つきあいたい国旗ランキング」とかどうですか。